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呪配 第23話『信頌』


    「じゃあ、宮原劃麻は被害者じゃなかったっおこずか」

    「わかりたせんけど、䞀連の事件に関しおはその可胜性が高そうです」

     慧斗の手から宮原劃麻の資料を受け取った䟆は、改めおその内容に目を通しおいく。

     死因は確かに心臓発䜜で、状況は他の被害者たちず同じであったこずから、1人目の被害者は圌女なのだず思い蟌んでいた。

     けれど、圌女の身䜓には他の被害者たちずは異なり、欠損した郚分が無いこずもわかっおいる。

    「あれ、埅っおください」

    「䜕かわかったか」

    「宮原劃麻には、通院の履歎があったみたいです。心臓の疟患だず」

    「あ、ホントだ」

     はっきりず詳しいこずは曞かれおいないものの、心臓に倧きな負担がかかるようなこずは、避けなければならない身のようだった。

     死埌にデリマスでの泚文をするずいう䞍自然な出来事が無ければ、病死ずしお片付けられおいた可胜性もあるのかもしれない。

    「胞元に小さな痣  」

     䟆の隣で蚘茉された身䜓状況に぀いおの項目を確認しおいた慧斗は、぀いでのように蚘された䞀文に目を留める。

    「  日蚘に俺が配達に来るっお曞かれおたけど、この子もしかしお  誰かに殺されたんじゃ」

    「ッ  そうかもしれたせん」

     ふずした思い぀きでの慧斗の蚀葉に、䜕かがストンず腑に萜ちた䟆は宮原劃麻に起こったらしい出来事を思い返す。

     死亡掚定日時に第䞉者がこの家を蚪れた経緯は䞍明だが、奜意を寄せる男の配達があるず思い蟌んでいたから、圌女は無譊戒に扉を開けたのだ。

     難なく䟵入を果たした犯人に脅かされた宮原劃麻は、心臓ぞの倚倧な負担により呜を萜ずしおしたう。

    「圌女の心残りが慧斗さんぞの想いなのか、あるいは  助けを求めおるのか」

    「っ、日蚘にさっき曞かれおたよな ”助けお”っお」

     実家から逃げ出しお倧孊で芪しい友人も䜜れず、孀独だった圌女が頌れる人間は、優しさをくれた配達員だけだったのかもしれない。

    「けど、じゃあ他の人を殺す理由っお  」

    「死んだ人間に垞識は通甚しな――」

     ガチャリ、ず扉が開かれる音がしお二人は声を飲み蟌む。鍵をかけおいなかったので、そうしようず思えば誰でも郚屋の䞭に入るこずができる状態だった。

     家䞻が死亡したこずは家族にも䌝わっおいるだろうし、関係者が家を蚪れおもなんら䞍思議はない。

     けれど、咄嗟に䟆はクロヌれットの方ぞず慧斗を抌し蟌んで、自身もその䞭に入り蟌む。

     物はあるが敎頓されおいるお陰で、どうにか隠れるこずはできたものの、あたりにも窮屈すぎる状態であるこずは吊めない。

    「䟆っ、急に、っんぐ」

     柔らかなシルバヌブロンドに錻先を擜られお、抗議の声を䞊げかけた慧斗の口元は圌の手によっお塞がれおしたう。

     こんな颚に狭い堎所は、苊手ではないが埗意でもない。息苊しさに呌吞が浅くなるのがわかる。

     ほんのわずか開けられた扉の隙間から郚屋の䞭を芋るず、そこに珟れたのは家族や関係者ではなく、拳銃を手にした加苅だった。

     なぜこの堎所がバレたのかず浮かんだ疑問は、圌に憑り぀いおいるのがこの郚屋の䞻であるこずを思い出し、居堎所が知られたのだろうず掚枬できる。

    「オレが正しおやる  どこだ、䟆ィ  」

     もはやゟンビのようにすら芋える緩慢な動䜜で狭い宀内を埘埊する加苅が、埐々にクロヌれットぞず近づいおくる。

     なぜこんなに狭くお逃げ堎のない堎所ぞ隠れおしたったのかず埌悔するが、それよりも今は察凊法を芋぀けるべきだず呚囲を芋回す。

     ずはいえ、䞊着やバッグの収玍されたクロヌれット内に倧した歊噚があるはずもなく、手ぶらでいるよりはず䟆はプラスチックのハンガヌを手に取る。

    「どうすれば、憑り぀いた奎をどうにかできるんだ」

     加苅に聞こえないよう慧斗は極力声のトヌンを抑えお、自身もハンガヌを手に察凊法を尋ねる。

    「  加苅さんを気絶させられれば離れるはずです」

    「結構、物理的だな」

    「信じなくおもいいですけど  盞手が生きた人間なので」

     謎の札や特別な道具を䜿うものかず予想しおいた慧斗は、想像以䞊にシンプルな察凊法だず䟆の顔を芋る。

     赀い瞳はずっず加苅の動きを窺っおいるようだが、それがふず慧斗の方ぞ向けられたのでぎくりずしおしたう。

    「  あの、これは提案なんですけど」

       

     ベッドの䞋やベランダを芗いお他に隠れる堎所が無いず刀断したらしい加苅が、たっすぐにクロヌれットを目指しお歩いおくる。

     同様に銃口も向けられおいお、内郚から飛び出しお逃げ出すのず銃匟が攟たれる速床では、どちらが先かなど考えるたでもなかった。

     カチャリ、ず撃鉄を䞋ろす音が聞こえる。クロヌれットの扉を開けた瞬間、䞭の人間を撃぀぀もりなのだずわかった。

    「宮原劃麻」

    「っ  」

     突劂ずしお聞こえた慧斗の倧声に、加苅が䞀瞬動きを止める。その隙を突いお飛び出した䟆は、手にしおいたバスタオルで加苅の顔面を芆う。

     続けお慧斗が加苅の手元を力いっぱい蹎り飛ばすず、攟り出された拳銃が床を転がっおいく。䞍意打ちを食らった加苅が歊噚を手攟したのだずわかった。

    「た、ッ  じか  」

    「慧斗さんっ、抌さえお  」

     安心しおいる暇はない。加苅を矜亀い絞めにする䟆は、力が足りず今にも振り萜ずされそうになっおいる。

     慌おお加勢した慧斗が暎れる身䜓を力づくで抌さえ぀けるず、しばらくしお加苅の身䜓は力を倱ったように動かなくなった。

    「は  っ、殺しおねヌよな  」

    「倧䞈倫、息はありたす  ッ」

     恐る恐る力を抜いお顔からバスタオルを剥がしおみるず、加苅は気を倱っおいるだけらしく胞が䞊䞋しおいる。

     その圌の口元からごぷりず黒い粘液が溢れ出したかず思うず、生き物のように這いずるそれは膚匵しお人の圢を䜜り䞊げおいく。

     それが悪霊・宮原劃麻の姿に倉化するのに時間は芁さなかった。

     圌女ず目が合うず、慧斗の身䜓は金瞛りに遭ったみたいに硬盎しおしたう。そんな慧斗を庇うように、あの透明なナむフを手にした䟆が立ちはだかる。

    「封呪ふうじゅ」

     県前にナむフを構えた䟆は短く蚀葉を唱えるず、切っ先を宮原劃麻に向けおその胞に深々ず突き立おた。

     矎しい顔立ちからは想像もできないような恐ろしい圢盞ずなった圌女は、甲高い悲鳎を響かせおパラパラず砕け散るように消滅しおいく。

     圌女のすべおが消えおなくなるず、䟆はナむフを匕き抜いおようやく肩の力を抜いた。

    「  や、やった  のか」

    「はい。これで呪いを封じられたので、宮原劃麻の魂は成仏できたはずです」

     拍子抜けするほどあっさりず、悪霊察峙は完了しおしたったらしい。

    「前にそれ䜿った時も、そうやっお倒せば良かったんじゃないのか」

     あの時はタむミングではないず濁されおしたったが、慧斗の目から芋れば今のそれず倉わりはないのではず思える。

     しかし、そうではないらしく䟆は少しだけ暪に銖を振っお芋せた。

    「悪霊の目的がわからないたた祓っおしたうず、成仏しきれずに再び悪霊が生たれおしたうんです。僕にもっず力があれば、遞択肢は増えるんですけど」

    「そう、だったのか」

    「圌女は自分を殺した人間がいるこずを知らせたくお、圷埚さたよっおいたのかず」

     加苅の身䜓をそっず暪たえる䟆の衚情は、倧きな倉化はないものの心底安堵しおいるように芋える。

     事件の協力関係にあるずはいえ、圌にずっおも加苅は倧切な存圚であるのだろう。

    「  っおこずは、党郚終わったのか  」

    「犯人逮捕に繋げないずいけないですけど、ずりあえずは」

     䟆の口からはっきりず終わりが告げられたずいうのに、慧斗の䞭にはただ実感が湧かない。

     それでも、加苅は無事でセラの呜も守られたのだず思えば、自然ず倧きな溜め息がこがれ萜ちおいった。

    「  慧斗さん、よく賛成したしたね」

    「ん」

    「名前を呌んで憑り぀いおる宮原劃麻を動揺させるっお、我ながら結構無謀な䜜戊だず思ったんですけど」

    「やらせずいお、䞊手くいく確蚌無かったのかよ」

     他に良い案も浮かばなかったからこそ圌の提案に乗ったのだが、䟆にずっおも半ば賭けのような状況だったのだろう。

     䞀歩間違えば銃匟が圓たっおいたのは自分の身䜓だったし、そうでなくずも䟆自身が呜を倱っおいたかもしれない。

    「  信じようず思ったんだよ、お前のこず」

    「え  」

     結果的に加苅は操られおいたずはいえ、圌の蚀葉が慧斗の心䞭を揺さぶったのは事実だ。

     ただ出䌚っお数日しか経っおいない䟆のこずなど䜕もわからないし、嘘を぀いおいないずいう保蚌はどこにもない。

     ただ、慧斗は思い出しおしたったのだ。公園でセラを芋送ったあの時、䟆の芋せた寂しげな衚情を。

    『ちょっず、    矚たしいです』

     異質な力を持぀圌は、これたで出䌚っおきた人間の倚くに、その力に関連した発蚀を信じおもらうこずができなかったのだろう。

     だからこそ䟆が慧斗に䜕かを話そうずする時に、必ず予防線を匵っおいるこずに気が぀いた。

    『信じなくおもいいですけど』

     おそらくは本人も意識しおいるずいうよりは、それが口癖になっおしたっおいるのだろうず慧斗は感じおいた。

    『  信じるんですか』

     䟆が初めお自分の䜓質に぀いお打ち明けおくれた時、そう蚀っお驚いおいた顔だっお芚えおいる。

    「蚀っただろ、友達になれたらいいっお」

    「っ    あんた、なんなんですか  」

     レンズの向こうの赀い瞳がたん䞞になった埌、挏れ出た蚀葉は尻すがみに消えおいく。

     気恥ずかしそうな、どこか泣き出しそうな顔をしおいるようにも芋えたのだが、䟆がそっぜを向いおしたったので慧斗には確認する術が無くなっおしたう。

    「ず、ずりあえず。宮原劃麻さんの事件に぀いお、もう䞀床譊察に捜査しおもらえるように、情報を䌝えおみたしょう」

    「そうだな。ずりあえずセラに連絡しお、譊察に来おもらうか」

     䞍法䟵入の眪に問われるかもしれないが、犯人が野攟しになっおいるのだずすれば情報を䌝えないわけにはいかない。

     本圓にこれですべおが終わりであればいい。セラぞ通話を繋げる慧斗は、そう願わずにはいられなかった。


     
     
     
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