
【2026年6月第3週】Gemini CLI 停止で CI が壊れ、Claude Fable 5 は戻らず、Midjourney は医療ハードへ — 新モデルなしで足元が動いた週
今週(6月15日〜21日)は、派手な新モデルリリースのない静かな週でした。
ただし、その分だけ「すでに使っているもの」の地面が動きました。
予定通り6月18日に Gemini CLI の個人版が止まり、後継 Antigravity CLI のクォータが想定より厳しいと判明しました。
Claude Fable 5 と Mythos 5 は、先週の米政府命令で停止されたまま、今週もまだ戻っていません。
そして Midjourney が、誰も予想していなかった「医療ハードウェア」を発表しました。
今週、AIを使う人が押さえておきたい更新を出来事ごとに整理します。

1. Gemini CLI が予定通り 6/18 に止まり、後継のクォータが想定より厳しい
6月18日、Google の Gemini CLI 個人版が予定通りリクエストの受付を停止しました。
当日、Google の認証エンドポイントが切り替わったタイミングで、`gemini` コマンドは HTTP 410 Gone を返すようになりました(Tech Times)。
対象は free / Google AI Pro / Ultra / 個人 Gemini Code Assist のユーザーです。
組織契約の Standard / Enterprise と、Gemini API キー経由の利用は止まっていません。
技術者として今週受け止めるべきことは、停止そのものよりも2つの波及効果です。
ひとつめは CI/CD パイプラインの silent breakage です。
`gemini` を CI に組み込んでいた現場では、当日のジョブが原因不明で失敗するケースが多発したと報告されています。
事前にエラーログが詳細に出ず、まず認証エラーが返り、リトライしても 410 のままで気づくのに時間がかかった、という流れです。
6/18 以降に CI を組み直していない場合は、今週末のうちに `gemini` の呼び出しが残っていないか棚卸ししておくのが安全です。
ふたつめは クォータの大幅悪化 です。
Gemini CLI は無料枠で1日1,000リクエストでしたが、後継の Antigravity CLI は 週次計算で実質的に1日約20リクエスト相当にまで落とされたと、複数のメディアが報じています(Groundy 解説)。
ヘビーユーザーは早々に上限に到達し、数日のクールダウン待ちに入る、というかたちで「無料で気軽に試す」用途は事実上できなくなりました。
加えて、Antigravity CLI は クローズドソースの Go バイナリとして配布されています。
Gemini CLI は Apache 2.0 ライセンスのオープンソースで、105k スター・6,000以上のマージ済みプルリクエストを集めていた OSS プロジェクトでした。
その積み重ねがクローズドな後継製品の土台になった、という構図に対して、OSS コミュニティからの反発が今週可視化されています。
Google の CLA(Contributor License Agreement)は寄贈コードに対する永続的な利用権を Google に与える内容になっていて、これが法的にはクローズド化を阻まなかった、というのが論点です。
詳しい移行手順と「そもそも乗り換えるべきか」の判断軸は別の記事にまとめています(末尾にリンクを置いています)。

2. Claude Fable 5 と Mythos 5 は、1週間以上経った今もまだ復活していない
先週の最大の出来事は、6月12日に米商務省の輸出管理命令で Claude Fable 5 と Mythos 5 が停止された件でした。
今週はその続報です。
結論から書くと、今週末(2026-06-21)の時点でも、Fable 5 と Mythos 5 は復活していません(Anthropic 公式声明)。
Anthropic 側のスタンスは一貫していて、「これは誤解だと考えている。できる限り早く復活させたい」というものですが、復活の具体的な日付は出ていません。
今週も米当局との交渉が継続している、という説明にとどまっています。
ユーザー側のリアクションも形になってきました。
「Is Fable Back?」というステータスチェック専用サイトまで誕生しています(isfableback.org)。
このサイトは、Fable 5 と Mythos 5 が利用可能になったかどうかを、ユーザーが毎日見に来て確認するためだけのものです。
1モデルの復活待ちで専用ステータスサイトができたのは、フロンティアモデル史上ほぼ初めてだと思います。
それくらい「公開済みのモデルが政府命令で止まり、戻らない」という事態がユーザー側にとって異常な手触りだった、ということでもあります。
なお、停止の対象は依然として Fable 5 と Mythos 5 のみで、Opus 4.8、Sonnet 4.6、Haiku 4.5 は引き続き影響なしです。
業務影響の範囲は限定的なままです。
ただし、Fable 5 をベースに有償運用や評価を始めていた層は、もう1週間「先のスケジュールが読めない」状態が続いていることになります。
3. Midjourney が初のハードウェアを発表 — それは医療デバイスだった
今週いちばん意外な発表は、AI 画像生成の Midjourney から出ました。
6月17日、サンフランシスコのイベントで、Midjourney は Midjourney Medical という新しい部門と、その初のハードウェア製品を披露しました(explainx.ai 解説)。
製品は Full Body Ultrasonic Computational Tomography デバイス、要するに「全身を超音波で断層撮影するスキャナー」です。
8,960個の超音波トランスデューサーを搭載し、放射線を使わず、約1分で全身スキャンが完了する、という仕様が出ています。
1セッションの料金は数ドル程度(数百円から千円台)と発表されました。
展開の場として、サンフランシスコ Union Square に Midjourney Spa をオープンし、施設内でこのスキャンを受けられる、という設計です。
なぜ画像生成 AI が医療ハードへ、というのは正直まだよく分かりません。
技術的には「2D の超音波信号から3Dの臓器画像を再構成する」処理が、画像生成 AI のコア技術と地続きという説明は可能ですが、それでもジャンプの幅が大きい発表です。
実機評価や FDA まわりの状況はこれから出てくる話なので、今週時点では「Midjourney がそれをやると宣言した」という事実だけが確定情報です。
注目すべき動きとして記録しておくに値する1件です。
4. その他の動き — 大型新モデルは今週ナシ
主要4社(OpenAI / Anthropic / Google / xAI)から、今週は大型のフロンティアモデル新規リリースはありませんでした(LLM Updates)。
1週間でこの4社から何も出ないのは、最近では珍しいリズムです。
細かい動きとしては:
OpenAI: ChatGPT に「発音ヘルプ」「ワールドカップの会話アップデート」「接続済みアプリの制御強化」「ノート作成のスムーズ化」など、生活寄りのマイナーアップデートが入りました。新モデルではなく、既存モデルの体験改善という方向です
xAI: Grok 5 は依然 Colossus 2 で訓練中とされ、Q2 内のリリース確率は Polymarket で 12〜33% と評価されています。今週リリースは見送り
Cohere が North Mini Code、NVIDIA が Nemotron 3 Ultra 550B A55B をリリース。専門用途・自社エコシステム向けの位置付け
Midjourney V8.2 は今週も正式リリースには至らず(V8.1 がデフォルトのまま)。今週の主役は医療ハードに持って行かれた格好
「派手な新モデルが出ない週」は、運用ツール側の変化(Gemini CLI 停止、Fable 5 復活待ち、コミュニティの反応)に注目しやすい時期でもあります。
5. 業界の動き — Anthropic と OSS コミュニティ
製品の更新は静かでしたが、その裏の論点としては今週も Anthropic が中心でした。
ひとつは Fable 5 / Mythos 5 の停止が長引いていることです。
6月12日の停止当日、Anthropic は声明で「狭い、潜在的なジェイルブレイクが見つかったことを理由に、すでに数億人にデプロイされた商用モデルを取り下げる、という基準を業界全体に適用したら、すべての主要モデルプロバイダの新規モデル展開が止まる」と懸念を示していました。
今週はそれが具体的な「1週間以上のサービス停止」という形で続いていて、業界全体としては「政府命令でフロンティアモデルが任意の期間止まり得る」という前例が積み上がっています。
もうひとつは、Gemini CLI のクローズドソース化に対する OSS コミュニティの反応です。
Apache 2.0 + CLA で寄贈コードがクローズドな後継製品に組み込まれた、という構図に対して、AI ツール全般の OSS ライセンスと CLA の扱いを見直すべきだ、という議論が今週は活発化しました。
Claude Code、Codex、Cursor、Antigravity CLI のような AI コーディングツール全般に波及し得る話なので、今後のフォロー対象です。
まとめ
6月18日に Gemini CLI 個人版が予定通り停止。当日は HTTP 410 Gone を返し、CI/CD パイプラインの silent breakage が多発
後継 Antigravity CLI の無料枠は 1日約20リクエスト相当(Gemini CLI の1日1,000から大幅悪化)。クローズドソース化と CLA をめぐる OSS コミュニティの反発も続く
Claude Fable 5 / Mythos 5 は6月12日の米政府命令から1週間以上経過するも復活せず。Anthropic は「誤解」と表現、復活日は未定。「Is Fable Back?」専用ステータスサイトまで誕生
Midjourney が初のハードウェア発表。Midjourney Medical 部門と全身超音波 CT デバイス(8,960トランスデューサー、約1分でスキャン、Midjourney Spa で展開)。AI 画像生成会社が医療領域に踏み込んだ
主要4社(OpenAI / Anthropic / Google / xAI)から大型新モデルのリリースなし。Grok 5 は依然訓練中で、Q2 内リリース確率は 12〜33%
OpenAI は ChatGPT 側の生活寄りマイナーアップデートを継続。Cohere、NVIDIA がニッチ向けモデルをリリース
来週は、Fable 5 / Mythos 5 が動くのか、Antigravity CLI のクォータ問題に Google が反応するのか、Midjourney Medical の実機・規制対応の続報が出るのか、が焦点です。
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毎週、AIを使う人の視点で動向を1本にまとめています。
あわせて読みたい
Gemini CLI 停止と Antigravity CLI への移行を整理した記事はこちらに。CIに組み込んでいる人は今週末のうちに棚卸し推奨です。
Fable 5 を効率特大で触ったときの体験記録はこちらに(現在は政府命令で停止中の前提でお読みください)。
先週の動きはこちらに。