
君を280日でつくった“設計者”の話|連載『治る力を引き出し、信じる人』第5回
ここからは、連載のいちばん奥にある話をします。
でも、むずかしい話はしません。
ある一人の学生が、あることに気づいた夜の話を、あなたに聞いてほしいのです。
「私には、何もない」
彼女は、いつも自分のことを"平凡"だと思っていました。
特別な才能があるわけじゃない。手技がずば抜けてうまいわけでも、要領がいいわけでもない。
夜、スマホを開けば、同世代の誰かが賞をとり、誰かが起業し、誰かが「好きを仕事に」と笑っている。
そのたびに、胸の奥がすっと冷たくなる。
みんな、何かを持ってる。私だけ、空っぽだ。
「自分には、何もない」。その感覚は、彼女の心に、ずっと居座っていました。もしかすると、あなたにも、覚えがあるかもしれません。
小さな手に、触れた夜
ある日、彼女のお姉さんに、赤ちゃんが生まれました。
病院で、彼女は初めて、その子を抱かせてもらいました。びっくりするほど、小さい。なのに、指も、爪も、まつ毛の一本まで、完璧にそろっている。にぎってきた手の、あたたかさ。
ふと、授業で聞いた言葉を思い出したそうです。
この子は、たった一つの細胞から、280日でここまで来た。
誰かが設計図を渡したわけじゃない。「次は心臓をつくって」と指示した人もいない。マニュアルも、監督も、いなかった。それなのに、こんなに完璧な命が、ちゃんと出来上がった。
その小さな手を見つめながら、彼女の中で、何かがひっくり返りました。
待って。それって……私も、同じだったってこと?
あなたの中に、“設計者”がいる
そうなんです。あなたも、たった一つの細胞から、280日で、今の姿に組み上がりました。
その、命を寸分の狂いもなく組み立てる、途方もない知性。
カイロプラクティックでは、それを イネイト・インテリジェンス(内なる知性) と呼びます。生まれながらに、あなたの中に備わっている、あなたを"つくり、整え、治し続ける"力のことです。
そして、ここがいちばん大事なところ。その設計者は、生まれたあとも、一度も現場を去っていません。
今この瞬間も、あなたの心臓は、命令しなくても動いている。食べたものは、考えなくても消化される。
切り傷は、いつのまにか塞がっている。あなたが眠っている間も、落ち込んでいる夜も、その力は休まず、あなたを生かし続けています。
創業者の言葉に、こんな一文があります。
The Power that Made the Body, Heals the Body.
(あなたの体をつくった力が、あなたの体を癒す。)
才能なんて、いらなかった
彼女は、その夜、気づいたそうです。
自分は「何も持っていない」んじゃなかった。むしろ逆で、生まれた時点ですでに、"奇跡みたいな作品"だった。
才能を証明しなくても、いいねを集めなくても、その価値は、最初からそこにあった。
イネイトは、あなたの成績も、フォロワー数も、見ていません。ただ、あなたという存在を、無条件で、完璧に、動かし続けている。
「すごい人にならなきゃ」と焦って外を探す前に、思い出してほしい。あなたを280日でつくり上げたほどの設計者が、今もあなたの中にいる。 それ以上に、すごいことがありますか。
そしてこれは、あなたの将来の仕事の"根っこ"でもあります。
柔整も、鍼灸も、リハも、看護も、美容も施術者がすることは、この内なる設計者が働きやすいように、環境を整えること。
あなたは「治す人」ではなく、その人の中の"設計者"を信じ、引き出す人になるのです。
そっと、ひとつだけ
今日は、たった一つ。
あなたの体が、今"勝手にやってくれていること"を、ひとつ数えてみてください。
まばたき。心臓の鼓動。この文章を読むあいだも、ピントを合わせ続けてくれている目。どれも、あなたが頑張っているんじゃない。
あなたの中の設計者が、静かに、完璧に、やり続けてくれていることです。
その力は、生まれた日から一度も、あなたを見捨てたことがありません。
もっと知りたい人へ
次回は、その設計者との"正しい付き合い方"の物語を。「治す」んじゃない、「引き出す」んだ。ある実習生が、痛い失敗から学んだ話です。
あなたをつくった力は、今日もあなたの中で働いています。
私が学び、日々実践しているカイロプラクティックの生命観は、塩川カイロプラクティックで紹介しています。
そして「手技をもう一段深めたい」と感じたなら、シオカワスクール オブ カイロプラクティックという学びの場もあります。