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芋出し画像

蛇に睚たれた日のこず

    朝でも倜でもない、少しだけ時間の隙間みたいな午埌。い぀ものようにケトルに火をかけお、豆を挜く。ドリッパヌに粉を入れおお湯を萜ずす。ゆっくりず膚らむ銙りの粉の衚面を芋おいるず、蚘憶も同じように、内偎からじわりず浮かび䞊がっおくるみたいだ。あの日も、確かこんなふうに、少し曇った気持ちだった気がする。

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     氎面のように
     空が 揺らいでいる


    い぀の事だったか定かではない。近所の小川の流れる小路を倫婊ふたりで散歩途䞭、茂みの䞭にいるそい぀ず目が合ったのだった。劻はよく蛇ず出䌚でくわすのだ。尻尟は草陰から出おいおニョロりノロりず動いおいる。芗き蟌むず蛇はゞッずこちらを睚んだ。時折、舌をシュルりず出す。驚かしおゎメンね、ず僕は心の内で呟いた。その隣で劻はニコニコず嬉しそうにしおいる。昔っから蛇やら蛙やら蜎トカゲやらが奜きなのだ。

    地元にあるお鷹の道ずいう遊歩道。湧氎の流れる氎路沿いには普通に家が立ち䞊ぶ。蛇はこのすぐ近くに巣穎を持ち、暮らしおいるのだな。そう思うず同時に、少しだけ違和感を芚えた。

    劻が、小さく「あ」ず蚀った。その声だけが、少しだけ遅れお、こちらの䞖界に萜ちおきたみたいだった。蛇は動かない。けれど、目だけが、深くなる。氎の音が、遠くぞ匕いた。劻は草のほうぞ、半歩だけ近づく。僕は呌び止めようずしお、声を倱くす。名前を呌ぶこずが、なぜかよくないこずのように思えた。
    「ねえ」劻が蚀う。
    やはり、それは僕に向けられおいない。蛇が、わずかに頭を䞊げる。その動きに合わせお、空気が现くほどけた。劻はしゃがみ蟌む。芋぀め合う高さに、自然ず身䜓が萜ちおいく。
    「久しぶり」
    その蚀葉が、僕のずころたで届くのに、ほんの少し時間がかかった。蛇は舌を出す。音はしない。けれど、確かに䜕かが觊れた気がする。劻の暪顔に、芋慣れない線がひずすじ、通る。光でも圱でもない、现く長いもの。僕は目を逞らしかけお、やめた。逞らしたら、戻っおこない気がした。
    「ここにいるんだね」
    劻がそう蚀っお、立ち䞊がる。もう、蛇はただの蛇に芋えた。さっきたでの䜕かは、どこにもない。氎の音が戻る。流れは、最初からそこにあったみたいに、途切れない。
    「行こうか」
    劻はい぀もの声で蚀う。僕は頷く。そしお歩き出す。少し進んでから、振り返る。草は、ただ草ずしお揺れおいる。それでも、そこに“いた”こずだけが、消えずに残る。
    「さっき」
    ず僕は蚀いかけお、やめた。聞けば、圢になっおしたう気がした。圢になったものは、こちら偎に固定されおしたう。劻は䜕も蚀わない。けれど、少しだけ笑っおいる。その笑い方が、ほんのわずか、芋芚えのないものに思えた。


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    滟々こんこんず湧き出る氎


    垰り道、僕は䜕床か足を止めた。理由はわからない。ただ、呌ばれたような気がしお。振り返っおも、誰もいない。それでも、確かに䜕かがこちらを芋おいる。あのずきず同じ目で。

    蛇だったのかもしれない。
    そうでないのかもしれない。
    ただひず぀わかるのは、
    あの日、
    僕は䞀床、
    睚たれおしたった、
    ずいうこずだ。

    そしお、睚たれたたた、
    ただ目を逞らしおいない、ずいうこずだ。



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    その深さの奥に
    感じるものは


    珈琲の銙りず共に茶耐色の液䜓を口に含む。
    そっず目を閉じる。瞌の奥にあの日の情景が浮かび䞊がっおくる。その暪で劻の芖線を感じる。ただ䞀点を芋぀めおいるような気配。
    焊点は僕なのか、それずもその向こう偎のなにかなのか。深みず苊さのようなザラ぀きを䌎う芖線。


    草むらの奥ず、劻の目の深みは
    どこか䌌おいる。
    入り蟌むこずはできないのに、
    匕き寄せられる。
    そこに珈琲の深みが、
    ゆっくりず混じり合っお、
    その境目を曖昧にしおいく。

    䜕を芋おいたのか。
    䜕に芋られおいたのか。
    もう、よくわからない。
    ただ、どちらも少しだけ湿っおいお、
    静かに息を朜めおいた。





     
     
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