第26回 #書き出し祭り 第二会場 全感想
こんにちは。お祭り大好き、まさかミケ猫です。
第26回 #書き出し祭り がついに始まりましたね。先に読んだ第一会場の方はとんでもない戦場でしたが、次はどんな会場になっているのやら。怖い怖い、まんじゅう怖い。
さて、このnoteでは第二会場の感想をまとめていきたいと思います。
企画概要
公式ポスト
https://x.com/kakidashi_fes/status/1972978899467558949?s=20
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感想
2-01 私はあなたの“遺族”です
第二会場も最初からいきなりガツンと面白い作品が来ましたね。
まず、キャラがいいですよね。路上生活者のユキは戸籍がない。人生をやり直したくても必要な身分がないわけですね。スカッと分かりやすくて良い性格をしている。一方の旺志郎はミステリアスな男で、今のところ何を考えているか分からない。言ってることは明確に理解できるのに、背景が全然分からないという造形をしていて、ユキとは対照的です。この二人の組み合わせというのがもうすごく良いですよね。
旺志郎の目的は、ユキを幸せにして何かを得ようとしているというより、ユキを幸せにすることそのもののような気がします。それなら血縁か……うーん。もし血縁上の父親だったら、妻ではなく養子として迎え入れそうですし。年の離れた兄妹か、恩人や知り合いの娘か、可能性はたくさんあると思いますが。何かしら、ユキを幸せにしたい理由がありそうですよね。
そして、旺志郎が「もうすぐ死ぬ」とはどういうことなのか。けっこう裏社会の空気も感じるので、命を狙われていてもおかしくはなさそうですが。それに対して、ユキが何かしらの手を打てたりするのか。この先の展開が気になりますねぇ。すごく面白い書き出しでした。
2-02 転生シンデレラはガラスの靴を落とさない
いやぁ、シンデレラに切り込んでいくのかぁと思って、ワクワク読ませていただきました。面白い作品でしたね。
原作ありの転生モノの場合、大抵は作者の創作した架空の世界に入っていくことが多いと思います。というのも、既存の物語に知識を持って介入するという物語は二次創作ではよくあるパターンですが、それを一次創作に持ち込もうとすると「原作」にあたるものが必要になりますからね。そこに本作は、みんなが知っているシンデレラを持ってくる。シンデレラはつまり、ザマァものの祖先みたいなものだと思うので、「ざまぁではなく愛ある物語を描きたいのだ」という作者様の熱意が伝わってくるようです。
冒頭の「どこに逃げようと、必ず君を捕まえる」というのが、ホラーになってくのか溺愛になっていくのかが少し恐ろしいところではありますが。原作ではちょっとグロい結末が待っていたりして、姉たちはざまぁ対象になってしまうのですが。ここから、真に平和なハッピーエンドを目指して、エラには頑張ってほしいものですね。面白かったです。
2-03 100万分の1のオメガになった俺、24時間以内に契約しないと爆発するらしい
24時間以内に番契約を結ばなければ爆発する……爆発?
いやぁ、勢いのある作品でしたね。オメガバースは私は守備範囲外なので、どこまでが世間一般の設定でどこまでが本作の設定なのかはよく分かっていないのですが、未覚醒とかあるんですね。未成年みたいなものでしょうか。爆発するのはたぶん本作の独自設定ですよね。軽く調べた範囲ではオメガが爆発するって話は特に出てこなかったので、たぶんそうかなと。フェロモンはどうなんだろう。うーん。
それはさておき、タイムリミットを設定するというストーリーラインはいいですよねぇ。作品に一気に緊迫感が出ますから、とても良い手法です。そして、形は違えど友のために走る姿は、メロスのように誇り高くも見えました。果たして、彼らの恋愛模様がどこに着地するのか、先が読めなくて面白いなと思いました。面白かったです。
2-04 悲報! 抜きゲーみたいな星でパスポートをなくした俺はどうすればいいですか!?
これはいいですねぇ、かなり好きな作品です。
SFの中でもけっこうぶっ飛んだ設定だと思うのですが、かと思えば妙に現実的な設定も混じっていて、ところどころクスリとさせられてしまうところもありました。村上春樹の差し込み方とか。独特な世界観なのに引っかかりは感じず、楽しんでいるうちに最後まで読み終わってしまいました。
冒頭からエキサイティングな展開で引き込まれましたし、会話も楽しかったです。また、ジュペット星の文化の描写も、まるでファンタジーの世界に来たような印象を受けました。本当に違う星に来てしまったんだなぁと、描写だけで自然と納得できましたからね、こういう書きっぷりは好きです。
キャラクターも良かったですよね。主人公の綺麗すぎない雰囲気と言いますか、等身大のキャラって感じは、この特殊な世界に読者を連れてくるためには必須だろうなとも思いますし。ミステリアスな少女の正体もいろいろと気になるところです。言葉も通じないとなると、果たしてどうなるのか。
最後の「確実に同族にすぐに会える道」というのが何なのか、気になりますよね。この先の展開がすごく気になる作品でした。
2-05 できそこないの巫女は狂犬辺境伯に愛される
溺愛もので押さえたいポイントをしっかりと掴みにきた入りで、マリエラの人柄にすごく好感を持ちました。いいですねぇ。
本作で良かったのは、やはりマリエラの応援したくなるキャラ造形でしょうか。これまで周囲に軽く見られ、冷遇されて過ごしてきた中でも、礼儀正しく振る舞おうとする健気さがいいと思うんですよ。これぞヒロインという感じで、すごく良かったと思います。それに、内心に復讐心などの強いマイナス感情を抱いていないのも好感度が高くなる要因かなと思っています。
そして、辺境伯ですよね。彼の登場は短いながら、鮮烈な印象を残しています。というのも、彼本人だけではなく、お付きの人たちの振る舞いから浮き彫りにするようにして彼の性格が分かるような描き方をしているのが上手いなぁと思っていまして、登場前から期待させてくれたのが大きいですね。そして、血まみれで笑顔の男というイメージを叩きつけられると。この初対面のインパクトは、マリエラにとっても読者にとっても大きなものだったと思っています。
あらすじにあるように、マリエラには何か秘密がある様子。その秘密が何なのかは分かりませんが、これからは良い人生を歩んでいってくれるといいなと思っています。面白かったです。
2-06 ホラーゲームに転生した!……かもしれない
上手いなぁ、これはすごく好きです。面白かった。
本作については特に、私はなかなか真似できないなぁと思ったんですけど、会話文がめちゃくちゃ少ないのにしっかり読ませてくるじゃないですか。これがもう、いいなぁと思っていて。地の文のくどさもなくて分かりやすく、それでいて描写もしっかり五感に突き刺さって、こりゃあ上手い人が書いたやつだなぁと思いました。すごくのめり込みました。
それと、情報の隠し方だったり謎や不思議の提示方法が上手いのも大きいですよね。必要最低限の情報提示によって進行していくので、つい気になって先を読み進めてしまう力を感じました。「通りゃんせ通りゃんせ」の怪しさったらないですからねぇ。こういう雰囲気ってどうやったら出せるようになるんだろうなぁ。
ストーリーもいいですよね。今後どうなってしまうのか気になります。それに、状況としてはめちゃくちゃ恐ろしいんですけど、主人公の「ホラーゲームだ!」の内心が読み味を軽くしていて、いいバランスのところを狙ったなぁと思います。いやー、すごく面白かったです。
2-07 魔狼の剣 〜裏切りのベルトラン〜
これは妄想広がるハイファンタジーでしたね。
あらすじにある猪人族は、なんとなくオークのようなイメージを持っているんですが、合っていますかね。馬人族がケンタウロス、鬼人族はオーガみたいなイメージを勝手に持っています。さて、それらは魔族と呼ばれていて、ベルトランたちは魔王を倒しましたが……それで戦争が終わったわけではないと。今は蛇王が魔族たちを指揮していて、魔族のはぐれ者であるベルトランは馬人族の魔の手から皇女殿下を助けた。が、帝国は落とされる寸前というところ。これはワクワクする戦記ものの匂いがしますね。
グイードとのバディも今後に期待できますよね。ベルトランは巨軀の戦士、グイードは黒尽くめの魔術師ということなので、役割が明確に練られているのかと思います。アルカディアは強さとしては彼らには劣る感じでしょうかね。この出会いがどんな物語に発展していくのか楽しみです。
本作は世界観がかなり練り込まれているのかなと思っていまして、おそらく作中に語られていない設定がまだまだあるのかなと思います。今後ベルトランがどんな活躍をするのか、私も読者として色々と妄想しつつ楽しませていただきました。
2-08 ランナウェイ・ボーイ ~四人が死に、やがて一人が生まれた。そして時は流れ……~
いいですねぇ、硬派な作品という印象を受けました。つい引き込まれて最後まで読んでしまいました。面白かったです。
考えてみれば、当たり前のことだとは思うんですよね。何か事件があった時に、その被害者や加害者の親族にも人生というものがあって、それは世間が忘れたとしても続いていくものだというのは。まして、自分の子が死んだ上に責め立てられ、夫が自殺してという状況ですから。その後再婚して平穏な家庭を築いたと言っても、息子に過去を打ち明けることはないのかもしれませんね。ましてこういうことについてメディアの力は大きく、「正義」の斧を振りかざす民衆は冷たいものです。彼女自身もきっと、死ぬまで忘れられなかったんでしょうね。そういうことを、考えさせられるような作品だったと思います。
気になるのは、過去の真実ですよね。本当にイジメによってこの事件が発生したのか。掘り下げていくにつれて、事件の別の一面が見えてきたりするのではないかと考えてしまいますよね。たぶん鍵になるのは、三人が死んだ時にイジメられていたと主張するもう一人だとは思うのですが……さて、どんなどんでん返しが待ち受けているんでしょうか。この作者さんであれば、すごいものを用意してくれそうな期待を持てますよね。
2-09 ゾンビの方がまだマシだった
なるほど。本作はパニックSFの一種でしたが、脅威がないというのもまた残酷ではあるのかなぁと考えさせられました。
ゾンビなんかの脅威があって、どうにか生き延びようと戦うのは、それはそれで刺激的なものだと思います。とはいえ、私はちょっと御免被りたいですけどね。一方で、ただ原因も分からず人がガクンと減るというのは、それはそれで大変だと思うんですが……ゾンビとどっちがマシかと言われると、私はまだこっちの世界の方がマシだとは思います。やっぱり脅威は少ないほうがいいですよね。ただ、たしかに受け入れられない人には辛いものがあるのかなぁとも思います。
80分の1ということは、日本人の生き残りは150万人くらいという計算になるかと思います。年齢や職業に偏りがないのだとすると、人がある程度集まればインフラ系の技術者や農業技術者はある程度確保できるのかなぁと思いますが、どうなんでしょうね。そういう人たちはあまり東京に来なかったりするんでしょうか。そのあたり、復旧に苦しんでいる理由なんかも私なりに色々と考えながら読んでいました。それと、もう少し状況が変わってくると支配者層になりたがる人も出てきそうだなぁと思ったりだとか。80分の1って話だと、国会議員なんかにも生き残りがいそうですしね。
宮田さんの絶望や、この先人類がどうなるのか、いろいろと気になる第一話でした。面白かったです。
2-10 万博に行ってきました☆
これは良きSFでしたねぇ。いろいろと妄想の広がる話でした。
まず本作は、冒頭からキャラの掛け合いで魅せてきましたよね。先輩後輩の会話の楽しさが読みやすさに繋がっていて、ラブコメ的でもありながら、話の転がし方はやっぱりSFって感じでした。万博の話題から自然とタイムマシンへと繋がていく手口も面白かったです。それと、「金属とプラスチックとケーブルがごちゃ混ぜになった、電子レンジと公衆電話の中間のようなもの」みたいな表現とか、すごく好きですね。愉快でした。
そして教授の「太陽の塔の爆発事故」って言葉がまさに、これから混沌とした展開に転がっていくSFの起点って感じで面白いなぁと。いや、岡本太郎が「芸術は爆発だ」と言ったのは、「芸術を爆発させよ」って意味ではないと私は思うんですけどね。太陽の塔を爆発させちゃったかぁと。もしかして(もしかしなくても)、このタイムマシンのせいで歴史が変わってますよね。これから二人が過去に異変を起こすのかもしれませんし、実は別の要因で過去に影響が出たのかもしれませんが……そのあたり、どう展開していくのか見ものだなと思っています。すごく面白い書き出しでした。
2-11 竹光に月は映らず
いいですね、これは面白い和風ファンタジーでした。
タイトルからちょっとお洒落ですよね。竹光には普通はまあ月は映らないんですが、こう書いてあると何か別の意味がありそうでワクワクしますよね。こういうタイトルの書き方もいいなぁと思います。
話の筋としては、怪異討伐の導入と言った感じでしょうか。時代背景としては、蛇の恩返し的な構造で、竹光で怪異を切ることができるのは小雨さんの加護と。なるほど、これは小雨さんが単に守る対象ではなく、戦うための肝になる能力を握っている感じですかね。後方支援ではありますが、一緒に戦ってくれる良き相棒になっていきそうです。
本作は戦闘描写がまた上手くて勉強になりますよね。鬼の恐ろしさが際立っている中、引けを取らない志摩さんの強さがまたワクワクさせてくれます。鬼と戦うのはおそらくはじめてかと思いますが、そんなことを感じさせない堂々の戦いっぷりでした。竹光が効くという予想外の事態になったとはいえ、戦闘狂っぽさが出ていて味わい深い戦闘シーンでしたね。
ここから、二人(一人とあやかし)による怪異狩りが始まるのかなと思います。そのうちそれぞれの過去なんかも語られたりするのでしょうか。楽しみになる書き出しでした。
2-12 幽境のリストランテ
なるほど、これはどうなるんでしょう。ホラーになっていくのかなぁ、なかなか先が読めませんね。
本作はまず、兄の描き方がいいですよね。絶妙なところを突いてくるなと思いまして。彼は悪人ではなく、言ってることは正論ではあります。ただ、一緒にいると息苦しいんですよ。世の中に本当にいそうな人物として、兄の解像度がすごく高いんですよねぇ。そして主人公は、そんな兄と比較されることによるコンプレックスを抱えてしまうと。これもすごく身につまされますよね。実家に帰る気が起きないのも自然です。アキラにとっても、自分の料理を美味しそうに食べてくれるヒロの存在はきっと嬉しいものだったんじゃないかと思いますが、きっと帰ってこない気持ちも理解してくれていたんじゃないかなと思いたいところです。
ヒロがそこから、東京で自分の店を持つまでになったのは、きっとすごい努力をしたんだろうなと思います。ちゃんと周囲への恩返しまで考えられる。このまま、過去のことは忘れて幸せな暮らしをしていってもらいたいなと願ってしまいますが。そんな時に届いたメッセージが、アキラからのものだった。それと同時に、兄からもアキラの訃報を知らされる。これはなんとも怪しげですよね。
ここからどんな風に物語が転がっていくのか。ドキドキする書き出しでした。面白かったです。
2-13 全知の悪役令嬢は愛する全てを壊したい
いいですねぇ、すごくドロドロとした感情が煮詰まっているこの感じを、こうも上手く表現するのはすごいなと思っています。この腕前を私なりに再現できないかなぁと、いろいろと考えていました。
まず大事なのは、キャラの二面性ですよね。ルネの「ざまぁみろ」であったり、ヴィオレーヌの令嬢的な振る舞いもそうですが、周囲の環境ですら誰も本心で過ごしていないような空虚なシチュエーションをしっかり背景に用意することでしょうか。そうすることで、地の文でのヴィオレーヌの独白が本心であるというのを強く印象付けられる。そして、追い詰められた状況を提示したところで、王太子の手紙をきっかけに笑わせる。怒りを通り越した笑いというのが、やはり狂気的なまでの破壊衝動を表現しているのかなぁと思います。また、手紙の内容をここで伏せているのがまた先の気になるポイントになりますよね。
ストーリーとしては、ひとまずルネの毒殺を身を張って防いだことで、彼女に被せられるはずだった毒殺未遂の汚名はいったん回避できたと思っていいでしょうか。ですが、父が謀反を起こすという濡れ衣を着せられる流れはいまだ変えようがないって感じでしょうかね。その場面で、ヴィオレーヌが何をできるのか……なかなか難しいですよね。私だったら、王太子からの手紙をコピーしてばら撒くかもしれません。
舞台は13世紀の欧州で、西暦とあったのでキリスト教圏が舞台になっているはずです。この年代でいうとキリスト教の権威がめちゃくちゃ強いのと、モンゴル帝国の侵略もあった頃だと思うので、そういう外部勢力を上手く味方につけられるといい感じにぶっ壊せるかもなぁという妄想をしながら読んでいました。どうなるのか楽しみですね。
2-14 朱(あか)き城が燃え落ちる前に
いいですねぇ、時を遡っての政治劇。自由に生きたいと言っていますが、逃げ出すのではなく夫の罪を暴いて戦う方向に行くのかなと思います。
舞台となっている国はファンタジックですが、人間模様はかなり腐敗してドロドロした雰囲気ですよね。今のところ尚隆は悪人にしか見えませんが、おそらく今のアオリヤから見えているのは全体のほんの一部だと思うので、真の問題点がどこにあるのかは分からないなと思います。それと、やり直しが今回の一回だけなのかというのも気になるポイントですよね。
また、鍵になってくるのは竜神かなぁとも思っています。時を戻したのがこの竜神だとして、その意図は元の世界線の惨状を回避するためだと思います。アオリヤに同情したというより、世界を変えるための最善手として誰の記憶を持ち越すかという判断において、彼女を選んだんじゃないかなと思うんですよね。というのも、人間に同情して何かをするような神様にはどうも思えないので。どちらかというと、人の営みを理解しながら、どうでもいいと思っている類の竜神のように見えています。
それぞれの思惑が交差する中で、アオリヤがどのような決断をして、世界を変えていくのか。すごくワクワクする書き出しでした。
2-15 スパダリご主人様は「白い結婚」をご所望です!
なるほど、バートは朴念仁だなぁ。これはいいですね。
本作は勘違いラブコメのシチュエーション作りが上手いですよねぇ。というのも、この朴念仁のスパダリってなかなか作るのが難しいキャラだと思うんですよ。基本的には、イケメンで女性の扱いを弁えている者が純朴なわけがないですし、女性慣れしているのに女性の影がないわけがないのがベースにあるので。だからこそ、そういうイケメンが物語上での憧れのヒーローたりえるわけですが。
世間一般にはその点を不自然に見せないための工夫がいろいろとされていまして、例えば女性嫌いで冷酷な仮面を被っているだとか、忌避される魔法を持っているだとか、何かしらの不遇属性を持たせたりすることが多いのかなと思っています。その点を、本作では「死んだ妹の夫」という乗り越え方をすることで、主人公と結婚する理由とも繋げて自然な流れにしているのが上手いなぁと思わされました。そして、「白い結婚」を提案する理由として主人公の小説家設定を持ってきて、それがまた「嫁ぎ遅れ」の理由とも繋がっている。設定が有機的に繋がることで、作品としてまとまりが出ているのがすごいなと思って読んでいました。
すれ違いはあるものの、きっと二人は上手くいくんじゃないかなぁと思っています。いろいろと障害もありそうですが、ちゃんと惹かれ合っているとも思うので、幸せになってほしいものですね。
2-16 ガラテイアの聖骸
あらすじからそうかなぁとは思いましたが、やはり単純なミステリではなさそうですね。興味深いです。ふむふむ。
鷹見には何か秘密があり、企みをもって江ヶ崎を誘導している。江ヶ崎はこれから事件の謎を追っていくんですが、それはミステリ的なストーリーラインとは別に、鷹見の手のひらの上のような感じですよね。「彼女はガラテイアになれなかった」というのは何やら意味深ですが、現段階ではどうにも判断しようがありませんからね。謎で引っ張ってきますね。
この、謎の一部を提示しながら全体像をぼかして読者を引っ張っていく手口がすごくいいですよね。こういうのを私もサラッとやりたいものです。謎って無造作に散りばめすぎても分からないんですが、一部分かりそうで分からない、ヒントらしきものを提示していくやり方は参考にさせていただきたいなと思います。すごく意味深でいいですよね。
また本作で、江ヶ崎の性格の置き方がまた良いなと思っていまして、事件を途中で投げ出さない&正義のために自分を犠牲にするような性格も早々に提示していただいたので、ここから先のストーリーの不穏さが引き立つようで良かったです。面白かったです。
2-17 非課税の5000兆円を受け取ったら○○だった件
なるほど、短い夢でしたね。詐欺くさいなぁ。
しかし、これは可哀想でしたねぇ。5000兆円で好き勝手していたとはいっても、けっこう良くやっていたと思うんですよね。根が善良だというのが良く分かるような仕事っぷりだったと思います。悪事に手を染めようとは欠片も考えずに、犯罪率の低い大都市を築くというのは、良い仕事をしたと思います。もちろん、まだ一年目ということもあるのかもしれないので、長い時間が経って周囲に肯定する人しかいない中で、倫理観を保てるかは別の話かなぁとも思いますが。それでも、かなり良くやっていたんじゃないかなぁと思うんですよね。
おそらく彼の都市にいる人は、多かれ少なかれ彼に対して好意的な感情を持っていたんじゃないかなと思います。なので、彼の資産が突然消えると、いろいろと社会が回らなくなると思うんですよね。今のところ、読者感情としては老人へのヘイトがものすごく強い状態かなと思うのですが、かといってそう簡単に対抗できるような人物でもない(そもそも地球人類よりも上位の存在だとは思いますが)ので、この先どんな物語に転がっていくのか気になるところです。
5000兆円ともなると本当に莫大な金額だと思うので、いろいろと妄想が捗りますよね。思考実験的な面白い作品でした。
2-18 蒼天の羊人某
めっちゃ面白かったです。これはいいですねぇ。
世界観がしっかりと江戸時代なのに、羊人だけがおかしいという。おそらくは用心棒→羊人某から作品を構想していったのだと思いますが、それをここまでハイレベルに仕上げてくる腕前には惚れ惚れします。プロじゃなかったら、そっちの方がびっくりですけどね。めっちゃ面白かったですし、私の目指す先にある作品だなぁと思いました。突飛なアイデアと精緻な世界観を滑らかに組み合わせる手腕は只者じゃないです。面白いなぁ。
この作品のすごく良いところは、背景にいるメインじゃない人たちがちゃんと生きてるってところですよね。モブといえばそうですし、容姿や名前が描写されているわけではないんですが……例えば常連が席を開けたりだとか、三味線弾きの娘の手が止まったりだとか、そういった端々の描写がこの世界の存在を読者に信じさせてくれるのがすごくいいんですよ。こういうところはどんどん真似していきたいですよねぇ。勉強になります。
小助の憎めない感じがいいですよねぇ。彼の存在が物語に波を作ってくれますし、「エ、エレキテルだっ」みたいに世界観の語彙を用いての説明役をしてくれるところに、小回りの良さを感じます。こういうキャラをさらりと配置できるのもすごいなぁ。いろいろと勉強させていただきました。
2-19 ストロベリーフィンガー
ほう、不思議な話でしたね。最後の方の描写からすると、桃子と美沙は悪魔的な存在なんでしょうかね。契約というのは、現状ではぼかされていますが、魂を差し出す類のものなんでしょうし。
人間が存在ごと消失する、というのは只事じゃないですからね。記憶だけでなく痕跡すらなくなり、歴史が書き換わるくらいの大事です。もはや良く似た別の世界線に迷い込んだと言ったほうが正しいのかもしれません。ただ、一緒に幼稚園に通っていたことなんかを考えると、ちゃんと人間として育ってきてもいたんだろうなとは思いますが。そのあたりは、まだ手持ちの情報では判断しきれませんね。気になるなぁ。
美沙がオカルト部をしているのも何か意味がありそうだなぁとは思うのですが、そこもまだ想像の域を出ませんよね。それに、この後どうなっていくのかがいろいろと気になるところです。桃子が消えた事情からすると、異能バトルものに移っていってもおかしくはないですし、ホラーとしても成立しますし、ファンタジーとしてもSFとしても転がしていける可能性があると思うので。いやぁ、妄想が広がる楽しい作品でした。
2-20 トイレットペーパー以外は流さないでください
うんこは二十五回出てきましたね。
それはともかく、私もトイレの張り紙を見てまったく同じことを考えたことがあります。トイレットペーパー以外を流しちゃいけなかったら、うんこは救出してそのへんに置いておかなきゃいけないことになりますからね。緩い日だったら特に大惨事です。これはトイレの存在意義が問われる事態ですよねぇ。というのを起点にして、本作は面白いSFに仕立て上げてくれました。いやー、ニヤニヤと笑わせていただきました。
これは日本中のトイレに急いで回収装置を仕込まないといけませんね。もちろん、溜め込んだうんこ由来素材を回収する業者も手配する必要がありますし。それを買い取って事業に活かす業者とも契約を結んだりする必要があります。政府としても緊急事態なので急いでやらなきゃいけない一方、海外企業なんかを排除しないと、日本のうんこが国外で活用される本末転倒なことになってしまいますからね。ここは頑張ってほしいところです。
いやぁ、こういうの考えるの楽しいですよね。ありがとうございました。
2-21 カノジョの妺は小悪魔
青春ですねぇ、ニヤニヤしちゃいます。
本作はキャラがみんな活き活きとしていていいですよね。陽介、里奈、それから咲についても。記号的ではなく、ちゃんと人間味をもって描かれているのがとても良いと思っています。
それと、こと恋愛関係で「一緒にいて楽しい、息が合う」っていうのはすごく大事ですよね。容姿という要素はもちろん大切ではありますが、自分がコンプレックスに思っているレベルでは他の人は気にしていないことも多いんじゃないかなと思っています。陽介はきっと、ちゃんと里奈が恋するに値する男の子なんだろうなと。このあたり、一目惚れにせずちゃんと恋する過程を提示してくれているのが、いいなぁと思いました。
私はこういう奥手な二人が徐々に距離を詰める物語を読みながら「はよくっつけ」する話が大好きでして。それともちろん、そんな二人の片方に片想いをしながら言い出せないでいる切ない子も大好きですので。本作は良いとこ突いてくるなぁと悶えさせていただきました。面白かったです。
2-22 夜を吸い、羽虫を喰らう
これはなかなかヘビィなお話でしたね。
十三歳の結愛は、家で嫌な思いをしながら、夜に抜け出して仲間と時間を潰している。まぁ、いろんな奴がいますからね。彼女の場合は、母親の彼氏がクズなので逃げているという感じのようです。辛いですよねぇ。
そんな中、家で違法薬物を見つけ、信頼できる先生に頼るところから物語は始まります。警察不信もあるようで、頼れる大人が先生しかいない――にもかかわらず、どうやらその先生も良い存在ではなさそうです。ここから、どのように物語が展開されていくのか楽しみですよね。
あらすじには、ダーク青春ミステリーとあるので、この薬物の謎を追う展開があるのかもしれません。もしくは、何か仲間が危険にさらされたり、彼女が警察に捕まったりといったイベントがいろいろと待ち受けているのかもしれませんね。世界観としてはかなり裏社会寄りだと思うので、そんな中を十三歳がどうやって生きていけるのか……やっぱり年齢的に考えると可哀想になってきちゃうんですよね。どうか、ここから頑張って、どんでん返しのハッピーエンドをもぎ取ってもらいたいものです。
2-23 君はアノニム
正気を問いかけてくるようなお話でしたね。
自分に関する記憶をまるっと失い、妙ちきりんな世界で迷っていた主人公の元に、正体不明の者が助けに来る。最初の社会人の世界についても、次の学生っぽい世界についても、最後のホラー的な世界についても、彼の本来の暮らしていた場所とはまったく違うんでしょうね。目まぐるしく変わっていく世界は、映像作品でサイケデリックに演出してほしいなぁなんて思いますかね。
スコタディはギリシャ語で「闇」という意味なので(調べました)、雰囲気からすると死神的な存在に近いんだろうなと思いますが。どうも、助けようとしてくれているようですね。自分の記憶を取り戻す必要があると知らせてくれます。なるほど。黄泉の国に迷い込む話は古今東西たくさんあると思いますが、日本神話的な世界観だとすると、例えばヨモツヘグイをしちゃいけないだとか、そういう制約も今後いろいろありそうですよね。
今後はどういう展開になっていくのか。第一話で見たような、自分のものとは明らかに違う記憶を見ながら、自分の気付きを探っていく話になるんですかね。テーマ性がぐんぐん深まりそうな気がしています。
2-24 政略的な離婚のはずなのに、その人は誰?
いやー、どんな事情でこんなことになったんでしょうかね。
作中には舞台が明示されていないんですが、新聞は広く流通していてもテレビはないくらいの時代感で、シュティアは有名人のようです。ただ、中世の貴族制だとするとあまり新聞が気軽に騒ぎ立てるわけにはいかないと思うので、近世以降くらいの時代だとは思います。シュティアがどういう立場なのかは気になりますねぇ。あまり軍人という風には見えないので、政治家なんだとは思いますが。このあたりの背景によって今後の物語展開も大きく変わってくると思うので、気になるところなんですよね。
偽装結婚ものは世にたくさんあれど、偽装離婚というと新しいのかもしれませんね。そこまでする理由が、アゼリアを守るためなんだとしたら……そうですねぇ。アゼリアが予想外の行動をとってめちゃくちゃになるリスクの方が高いので、彼女には全部説明した上で大人しくしておいてもらうのが良いのかなと思ってしまいますが、そうはできない事情ってことなんでしょうかね。今のところ、可能性が広くて予想はできないのですが、どういった事情があるのか気になります。
独特なコンセプトの書き出しだったと思います。面白かったです。
2-25 NTRな彼女。必ず寝取られるエロ漫画のヒロインを助けて、イチャラブエンドを目指す
これは可哀想でしたねぇ。そして、なかなかに尖った作品だったと思います。
作品としてのNTRの感情のゆらぎは実はそれほど嫌いでもないんですが、私は自分の目の前でNTRが発生するとスンと冷たくなって、相手の女と間男をズバズバと切り捨てるタイプですので、最初のループ発生時点でもはやサヤカへの興味関心がゼロになってしまうだろうなぁと読みながら思っていました。
やはり、NTRというのは積もり積もった感情を裏切られる瞬間での爆発的な情緒が味なのかなと思うので、ループして継続的にNTRを繰り返されるのはただの「浮気女に縋る男」の構図になると思うんですよね。NTRは花火のようなものと言いますか、一度きりで散るからこその情緒だと思っていて。ループして二回目以降に、どうもモチベーションが湧きづらいと思うんですよね。読者的にもサヤカ自体には特に思い入れも何もないので。
そうですね、私がこの立場だったら、送られてきた動画をコピーして、知り合いにばら撒くくらいはしますかね。あと、サヤカの親御さんに一部始終を報告するくらいでしょうか。特段、彼女のNTRを止めるための行動とかは考えない気がします。だって、こんな簡単に落ちるやつは、いずれまたやるに決まってるじゃないですか。例えば「コウイチにも悪いところがあった」なんて主張するなら、なおさら「じゃあ別れてから新しい恋愛をすればいい」「わざわざNTRビデオレターを送る性格の悪さは直しようがない」みたいに思ってしまうんですよね。これが結婚後なんかだと目も当てられないですし、早い内に自らの醜さを自覚させてやるのがサヤカのためでもあると思います。クズという自覚のないクズが一番たち悪いですからね。
というのを色々と考えさせられる、興味深い作品だったと思います。こうして長々と感想を書いていること自体が、作者様の手のひらで転がされているなぁと感じています。面白かったです。
