後日談 十九年後――
十九年後――
春先の朝。
段ボールがいくつも積み上がった部屋には、まだ生活の名残が少しだけ残っていた。
カーテン越しのやわらかな光が、床に淡く広がっている。
「彩乃ー、準備できたのー?」
「もう引っ越し屋さん来ちゃうよー」
廊下の向こうから、母の声が届く。
「はーい……もうちょっと……」
彩乃は机の前にしゃがみ込み、奥のほうをがさごそと探った。
指先に、紙の感触が引っかかる。
「あれ……これ……」
一枚の紙を引き抜き、しばらく見つめる。
「ねぇ、お母さーん」
「どうしたのー?」
「ちょっと来てー」
足音が近づき、母が部屋をのぞく。
「どうしたの?」
「これ……机の奥から出てきたんだ」
彩乃が差し出したのは、少し色あせた鉛筆画だった。
「これ……私?」
小さく首をかしげる。
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「サインが……Ayaneって……しかも、2025年……今から……26年前……」
母は絵を見つめ、ふっと懐かしそうに目を細めた。
「お母さんが大学のときに描いた絵かな」
「なんか……私に似てない?」
「そうね……彩乃に似てるね」
「ふふふ」
彩乃は、絵をそっと胸に抱いた。
「さ、もう来ちゃうから」
「はーい」
彩乃は絵を丁寧に畳み、段ボールの上に置く。
他の人が聞いたら、嘘のような話かもしれない。
でも――
あの時、間違いなく一緒にいた。 一緒に過ごしていた。
私の心の中に、今でも――
守護霊さんといた記憶が、確かに残っている。
「お母さーん」
「これも持って行っていい~?」
「はーい。今行くから」
玄関のほうから、また慌ただしい音がする。
「ふふ……」
「あの時と同じように……今も幸せ……」
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