
小1の壁で検索しても出てこなかったこと。人はそれを「裸足ミミズ事件」と呼ぶ。
小1の壁について、本当にたくさん検索しました。
学校や学童はどんなところなんだろう。
仕事はどれくらい調整すればいいんだろう。
そんなことを一年以上、本当に調べまくりました。
「これだけ準備したんだから、大丈夫!」
と思っていたんです。
でも。
どれだけ検索しても出てこなかった出来事があったんです。
その日は、長女がお友達とマンション内の共有スペースで遊んでいました。
実はその日まで、
「プッチョが食べたい。」
と何度も言われていたんです。
「明日ね。」
と何度も先延ばしにしてしまっていたので、
「今日こそは買ってあげなきゃ。」
そう思ったんです。
「10分で戻ってくるから。
絶対にこのお部屋から出ないで待っててね!!!」
そう伝えて、近くのコンビニへ向かいました。
この約束は、その日だけのものではありません。
マンション内の共有スペースで遊ぶ日は、
「ここから動かない。」
それを何度も何度も練習してきて、ちゃんとできていました。
だから、その日も大丈夫だと思ったんです。
仕事終わりの夕方で、もうヘトヘトでした。
私のダッシュは、早歩きみたいなものでした。
それでも、一秒でも早く帰らなきゃ。
その気持ちだけで、急いで走って帰りました。
でも。
娘がいません。
ふと床を見ると、
赤いイクラみたいな粒が散らばっていました。
「え、血!?」
と思ってゾッとしました。
娘の靴も、その場に残っていました。
靴がある。
でも娘がいない。
何度名前を呼んでも返事がない。
娘を呼ぶ私の声だけが、どんどん大きくなっていきました。
絶対人なんて入れる大きさじゃない戸棚まで、全部開けて探しました。
どこにもいません。
マンションの前には、とても大きな道路があります。
もし飛び出してしまったら。
その考えが頭をよぎって、慌てて正面玄関へ向かいました。
いつも誰かしら遊んでいる場所ですが、
そこにいたママたちも、娘の行方は知りませんでした。
慌てて、もう一つの入り口を確認しにゴミ捨て場へ向かうと、一緒に遊んでいたお友達をたまたま見つけました。
娘の居場所を聞くと、
「ゴミ捨て場の方にいるよ。」
「オートロックで入れなくなっちゃって、今、正面玄関の方から回ってきてると思う。」
と教えてくれました。
私は慌てて正面玄関へ向かいました。
すると。
いました。
靴下のままで。
そして、
手にはミミズ。
「え? ミミズ?」
「え、ミミズじゃん!!!」
もう情報量が多すぎます(笑)。
後から長女に話を聞くと、
お友達は習い事があって、とにかく急いでいたようです。
「ゴミ捨て場までついてきて。」
と言われ、長女も慌てて一緒について行きました。
急いでいて靴を履く時間もなく、オートロックでも閉め出されてしまい、正面玄関まで回ることになりました。
その途中で、ミミズを見つけたんです。
「踏まれたらかわいそう。」
いつもなら木の棒で道の端へ移してあげるのですが、
その時は棒を探している時間もなく、とりあえず手で持った。
早く戻らないと。
ママが心配しちゃう。
それだけだったそうです。
ちなみに、あの赤いイクラみたいな粒は、お友達が壊してしまったおもちゃの中身だったそうです。
お友達はお友達で一生懸命。
長女は長女で一生懸命。
きっと二人とも、その時は頭の中がいっぱいだったんだと思います。
どれだけ検索しても、
「子どもが急にいなくなって、靴下のままミミズを持って現れます。」
なんて、どこにも書いてありませんでした。
私はこの事件を、
「裸足ミミズ事件」
と呼んでいます。
「あ、この子らしいな。」
そう思いました。
あの時は、
「なんで10分の約束を守らなかったの?」
頭の中は、それでいっぱいでした。
でも、後から全部話を聞いてみると。
お友達のこと。
締め出されてしまったこと。
ミミズのこと。
一つひとつに、ちゃんと理由がありました。
そして最後に残ったのは、
「踏まれたらかわいそう。」
そう思ってミミズを手に取った、この子らしい優しさでした。