共生の黎明 番外編①:ありがとうの居場所 連続小説
静かな午後、教室の窓から差し込む光が、掲示板に貼られた小さなメッセージカードを照らしていた。
「ありがとうを見つけよう」
その取り組みは、生徒たちの間で自然に始まったもので、日々の中の何気ない感謝を、色とりどりの紙に書いて壁に貼るというものだった。
ある日の放課後。
教室に残っていた数人の生徒と、担当の教師がぽつりぽつりと話し始める。
「ねえ先生、ユラって、なんのためにあるんだと思う?」
問いかけたのは、生徒会に所属する女子生徒。
窓際に座る男子生徒が言葉を継ぐ。
「お金みたいに“得するため”じゃないんだよね。
でも、“気持ち”だけじゃ続かない気もして…なんか、ふしぎな感覚でさ」
教師は黒板に目をやりながら、しばらく考える。
「“ありがとう”を形にするって、不思議だけど、ちゃんと意味がある気がするよ。
たとえば誰かのために動いたことが、ただ“いいことしたね”で終わらないっていうか…
“伝わる”って、案外むずかしいからね」
「うん、わかる。…でもさ、これって、点数になるわけでもないし…進路に役立つわけでもないし…」
「そう。でもね、誰かの“気持ち”に触れて変わる瞬間って、試験より、ずっと大事かもしれないよ」
ふと、一人の生徒が壁に貼られたカードを手にとって呟く。
「…これ、私が書いた“ありがとう”だ。読んでもらえてたら、嬉しいな」
そのつぶやきに、みんなが一瞬、静かになる。
光の中で揺れるメッセージカードが、ささやかな希望のように見えた。
〜番外編あとがき〜
皆さま、いつもありがとうございます。
今回は、連続小説「共生の黎明」の番外編となります。
既に本編をお楽しみいただいた方、これから物語に触れていただく方、どちらにも世界観を感じられると思います。
第一部【#0〜#100】の前半頃をイメージして描いてます。
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「共生の黎明 小さな光、大きな希望〜」本編
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島江長しろまる(しまえなが しろまる)
