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【34】ランチをやめた私が、お客さんと一緒にピザを食べている

ランチをずっと休んでいます。

4回も台風が来て、お店の周りの手入れができず、お店の中の掃除もちゃんとできていません。

そんなとき、何度も来てくれているお客さんから連絡がありました。
この方は、もう10回近く来てくれています。
最初は、たまたま加計呂麻島に来た観光客だったと思います。
それが、年に2、3回くらい。加計呂麻島に来るときは、いつも来てくれるようになりました。
尼崎の物産展に出展したときにも来てくれた。

8月にも来てくれる予定でした。
台風18号で奄美までは来られたものの、加計呂麻島のフェリーが欠航で渡ってこれませんでした。
すぐに「9月のチケット取ったから」と連絡をくれました。

私は一度、
「まだお店の掃除もできていないし、ランチも再開していないから……」
と断ってしまいました。

でも、8月に来られなくて、また9月にも来てくれる。
断ってしまったけど、もしかしたら私の店でランチするのが、加計呂麻島に来る目的の一つかもしれない。そうだとしたら、断わってしまうのは、あまりにもひどい。掃除が行き届いていなくても、きっと許してもらえるだろう。
そう思って、
「ランチは出来ないけれど、一緒にピザを食べませんか?」
と提案しました。

ランチのときは、話していても頭の中はフル回転

この方とは、ランチをやっていた頃もよくおしゃべりをしていました。

いつも、私の知らない奄美のことを写真やドローンで撮影した映像を見せてくれて、いろいろ教えてくれました。
だから、ランチ中も話は弾んでいました。

でも、今思えば、私はゆっくり楽しんで話しているわけではありませんでした。

焼いたパンを出して。
お水のおかわりをして。
ジャムのおかわりもして。
焼き上がったピザを出して。

話が盛り上がっていても、
「そろそろピザ焼けたかな?」
と中座する。
頭の中では、
「今、話を切っていいかな」
「次は何を出すんだっけ」
「お水は大丈夫かな」
と、ずっと考えている。
楽しく話しているようで、頭の中はフル回転でした。

それが今回は違いました。

真ん中が私


最初にピザを出したら、私も座る。
それだけ。
あとは何のタイミングも計らず、おしゃべり。
「ああ、これなら楽しいな」
と思った。

お金をもらわなければ、こんなに気楽なんだ

ピザを食べながら、
「一緒に食べられて楽しい」
「ピザ、美味しい」
と言ってくれた。
私も楽しかった。
そして、ふと思った。

お金をいただくとなったら、私はきっとまた、
「ちゃんとしなくちゃ」
と思う。
掃除をして。
きちんと準備をして。
お客さんを迎えて。
ずっと立ちっぱなしで料理を出して。
お水を気にして。
ちゃんとお店として成立させなくちゃいけない。
それが仕事だから、当然です。

でも、今の私には、それをするのはちょっと大変に感じてしまう。

お金をもらわないのなら、
「そこまで気を使わなくてもいいでしょ」
と思える。

お友だちと家でご飯を食べるような感じ。

私は一方的に、そんなふうに思っていました。

でも、これを誰にでもできるわけじゃない

そこで、ちょっと考えてしまいました。
じゃあ、これからもこういうことをしたらいいのだろうか。

でも、誰とでも一緒にピザを食べられるわけではない。
何度も来てくれていて、名前と顔が確実に一致していて、
「この人なら、家に遊びに来てくれたような感じで大丈夫」
と思える人だからできたことです。

では、誰ならできて、誰ならできないのか。
新しく来てくれた人は?
「私も一緒に食べたい」と思った人が、このことを知ったら?
「この人とは食べるのに、私は?」
と思われたら?

濃いリピーターさんとだけだと
新しい出会いがない。
それも、なんだか面白くない。

ランチをやめたら、別の形が見えてきた

今回、一緒に食べたのはピザとアイスコーヒーだけ。
いつものランチなら、パンもジャムもピクルスもスープもある。
もし「いつものランチが食べたい」と思って来てくれていたのなら、ちょっと物足りなかったかもしれない。

それでも、
「一緒に食べられて楽しい」
と言ってくれた。
私も楽しかった。
でも、同時に思った。
楽しかったけど、誰とでもできることじゃないな。
だから、これを新しい仕事にすればいい、という話でもない。

まだ、どうしたらいいのか分からない。

ただ、ランチをやめたことで、
「お客さんに料理を提供する」という関係だけではない、人とのつながり方があることを知った。
もしかしたら、これからの私は、
たくさんのお客さんを迎えて、忙しく料理を作ることより、
「また来たね」と言える人と、一緒にご飯を食べながら話す時間が、好きなのかもしれない。

新しい人との出会いも欲しい。
だから、まだ答えは出ていない。
ランチをやめたら、仕事がなくなった。
……と思ったけれど、
もしかしたら、仕事じゃないところから、次の何かが始まるのかもしれない。
今は、そんなことを考えている。

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