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【創作大賞2026応募作品】ブラック信長(頂点を目指した男)

    あらすじ

    戦国時代の史実を「現代の極道・ヤクザもの」という世界観に落とし込み、それをコミカルに描いた物語です。

    信長は、史実の「うつけ者」から転じて「キャバクラで愚痴をこぼす若頭」として描き、信長の妻の帰蝶を勝ち気で理知的な姐さん気質とし、信長の父の信秀が息子より嫁の器量を認めるという、史実の道三が信長に抱いたような感情を信秀に持たさせたり、斎藤道三は、娘帰蝶にメロメロな父親とし、
    藤吉郎をフリーター、犬千代をかなりヤバい奴、今川義元は、ダンディーな
    キャラクターとするなど登場人物の元キャラとのギャップや個性を強調する
    ことで史実にはない個性を出した人物像にしています。

    そんな個性豊かな登場人物が、歴史的事実を現代風に味付けし直して奇想天外な活躍を展開していきます。

    物語は、帰蝶が織田組の若頭の信長に嫁いだ時から始まります。 そして、ヤクザの頂点を目指す信長の奇想天外な現代ヤクザの一生(不思議と歴史に符号するような事件が起こる)を追いかけていくという話になっています。

    隠れた楽しみの一つが、歴史と符合する箇所を探すという楽しみが隠された物語になっています。

    政略結婚1550

    斎藤組と敵対していた織田組は和睦の為に、
    斎藤道三組長(46)の娘、帰蝶(きちょう)
    を織田信秀組長(39)の息子の信長に嫁が
    せました。

    織田信長は16歳、帰蝶は15歳という若さで
    した。

    「帰蝶ちゃ~ん」と言って信長は帰蝶に抱
    きつこうとして・・・

    「パシッ」と、信長の頬を帰蝶が叩きまし
    た。

    「何すんのよ、バカ」と、帰蝶は怒ってい
    ました。

    「俺たち結婚したんだから~」

    「法的には、まだ結婚してないんだから」

    「でも、この前盃交わしたよね?」

    「あれはあれ、法は法よ」

    「ヤクザに法を守れって~」

    「守れないなら私は家に帰るわよ」

    「そんな~」

    そんな二人を見ていた信秀が、
    「こら信長、帰蝶ちゃんは組にとっても
    大切なお客人だ。 粗相をするな」と、
    信長に向かって注意しました。

    「ほーらっ怒られた。私がこの組に身を預
    けているのは、織田組に喧嘩や抗争が起こ
    った時には、斎藤組が助っ人するってこと
    なんだからね。」と、帰蝶は得意げに言い
    ました。

    「いやー、信長より帰蝶ちゃんにうちの組
    を継いでもらいたいもんだな」と、信秀は
    帰蝶ちゃんに惚れ込んでいました。


    キャバクラで、両脇に女をはべらせて派手な
    衣装の二人の男が遊んでいました。

    「犬千代、帰蝶が俺の言う事を全然聞かな
    いんだよ、あいつ」と、信長が愚痴ってい
    ました。

    犬千代(11)と呼ばれた男は、「良いん
    じゃないっすか、おぼこい帰蝶ちゃんより、
    ここのおねーちゃんの方が」と、言って
    自分の両脇にいる女の肩に両手を回して
    自分に引き寄せていました。

    「犬千代、お前この辺で毎晩暴れているみ
    たいやなー」

    「全然骨のある奴がおらんにゃー、この栄
    には」と、犬千代は喧嘩したくてたまらな
    いという感じでした。

    「お前はホンマに、酒より女より喧嘩が
    スキだよなー」と、信長が笑って言いまし
    た。

    「それでこそ、信長若頭をお守りできるん
    ですよ。」と言って、犬千代は、両側の女
    のスカートをめくろうとしました。

    「キャー」


    父信秀の死1552

    18歳を目の前にした信長は、帰蝶の膝に頭
    をのせて、帰蝶に耳掃除をしてもらってい
    ました。

    遠くから、「わかー、わかー」と言って
    組の若い者が走って来ました。

    それを聞いた信長は、「なんかバカー、
    バカーっていつも聞こえるのだが気のせい
    ?」と、帰蝶に聞きました。

    「みんな、あんたのことを陰でそう言って
    るよ」と、帰蝶は笑いながら答えました。

    「バカー、おやっさんが・・・・」

    信長は、「今バカって言った?」とすかさ
    ず問いただしました。

    「滅相もない、あっ、それより、わか、
    おやっさんが倒れました。」

    信長が、急いで信秀の住む末森屋敷に行く
    と、信秀は横たわり顔に白い布がかけられ
    ていました。 信秀42歳と言う若さでした。

    「おやじ、今川組との抗争もこれから山場
    と言う時に・・・・・」と、信長は凄い
    ショックを受けていました。

    帰蝶は、信秀の手を取って「これからは
    わたくしが信長様をお守り致します」と、
    自分に優しかった義理の父を思って涙を
    流していました。


    信秀組長の葬儀は、万松会館(ばんしょう
    かいかん)で執り行われました。

    300人の僧侶と700人の参列者という非常に
    盛大な葬儀が執り行われました。

    葬儀に遅れて来た信長は、パジャマ姿でし
    た。 慌てて祭壇に向かった拍子につまづ
    いて、祭壇にぶっ倒れて行ってしまいまし
    た。

    その拍子に、抹香(まっこう)がひっくり
    返ってしまい位牌に飛び散ってしまいまし
    た。

    「帰蝶が起こしてくれなかったんで、寝坊
    しちゃったよ~」と、祭壇の直ぐ側に座っ
    ていた帰蝶に嘆きかけました。

    「あんたね、何回起こしたと思ってるの?
    私は、お父さんを迎えに行くって言った
    でしょ!」と、夫婦喧嘩が始まりそうに
    なってしまいました。

    「まあ、まあ、まあー」と、帰蝶の父の
    道三組長が止めに入って行きました。

    この一件を見ていた織田組の古参幹部達は、
    織田組の将来を危うんでいました。

    その中の、林秀貞本部長(39)、柴田勝家
    若頭補佐(30)佐久間信成若頭補佐(24)
    の幹部達は心穏やかではいられませんでし
    た。

    葬儀後、林本部長と柴田若頭補佐は織田
    信行若頭(16)の車に乗りました。

    その車は、クラブ末森へ直行しました。

    高島礼子似のママが、信行若頭にお酌を
    していました。

    酒の酔いが回ってきた頃、「若頭、
    そろそろ信長組長に取って代わる決心を
    されたらどうです?」と、柴田若頭補佐
    が酔った目つきで言い出しました。

    その言葉を待っていたとばかりに、
    「私も同じ考えです」と、林本部長が
    メガネの奥で細い目を光らせて言いまし
    た。

    信行若頭は、何も言わずに美味そうに
    ママが入れたお酒を口に持っていきま
    した。


    料亭聖徳の会談1553

    信秀の死から1年後、帰蝶の父の斎藤道三
    (49)から信長に会って話がしたいと連絡
    が来ました。

    斎藤道三には、織田組を継いだ信長のダメ
    ぶりを再確認しておこうという魂胆があり
    ました。

    会談場所は、尾張と美濃の間にある、
    料亭聖徳で行われました。

    「あのダメ組長が相変わらずなら、娘の
    帰蝶に取って代わらそうか」と、道三
    は思っていました。

    「娘の帰蝶からも、信長のダメ亭主ぶり
    をよく聞かされていたこともあり、時期は
    そろそろかな?」と、道三は考えていまし
    た。

    そんなことを思いながら道三は、先に料亭
    に入って信長を待っていました。


    一方、会談場所に向かっている信長は、
    「やばいよなー、帰蝶のおやっさん、
    あだ名がマムシだよ。 俺、ヘビ超ー苦手
    なんだけど」と、さえない信長がいました。

    「組長、そんな気持ちじゃ斎藤組にうちの
    組が飲み込まれてしまいまっせ」と、信長
    とガキの頃から一緒に悪さをして来た悪友
    で義兄弟の恒興(つねおき)(18)が言い
    ました。

    「つねおは、ヘビ怖くないの?」と、信長
    が聞きました。

    「俺は平気だよ、ほら昔、組の長老の平手
    の爺さんによく𠮟られていた時、仕返しで
    平手の爺さんが風呂に入っている時に、俺
    がヘビ掴んで投げ込んだの覚えてないんで
    すか?」

    「あー、あの時の平手の爺さんの驚いた
    姿は今思い出しても大爆笑だよな」と言っ
    て、死んだ平手の爺さんを懐かしく信長は
    思っていました。


    料亭聖徳で待っている道三組長の下へ
    配下の者がやって来て、「織田信長組長
    さんが到着されました。」と、報告しに
    来ました。

    「それで、人数はどれほど連れて来てた
    ?」と、道三組長が質しました。

    「それが、ぼろい車一台でお二人だけで
    いらっしゃいました。」

    「何? 二人だけで? それで、恰好は?
    どんな服装をしていた?」

    「そうそう、派手なチャラチャラした服装
    で、ありゃーダメですね。」

    それを聞いた道三組長は、ニヤッと笑い
    ました。

    しばらくして、襖(ふすま)が開きまし
    た。

    そこに現れたのは、ぴっしとスーツに身を
    包んだ織田信長組長でした。

    道三組長は、驚きを隠すために必要以上に
    顔に威厳を作って座っていました。

    信長は、道三組長を見つけるなり、足早に
    道三組長に近づいて行きました。

    一瞬、道三組長側に緊張が走りましたが、
    それは、信長が発した次の言葉によって解
    かれました。

    「パパ~、会いたかったでちゅ~」と、
    信長は、道三組長に抱きついていました。

    信長の意表を突く行動で、道三組長は
    タジタジになってしまいました。

    「帰蝶から、『パパにあったら先ずはハグ
    してねっ』て頼まれていたんですよ」と、
    信長が抱きついた理由を話しました。

    帰蝶を目に入れても痛くないほど可愛いが
    っている道三組長しては、何も言い返す
    言葉がありませんでした。

    夕食を交えての会談は無事に終わりました。

    料亭聖徳の前に、いつの間にか黒塗りの車
    が埋め尽くしていました。

    その黒塗りの車の中に信長は消えて行きま
    した。

    その黒い車の波を見送りながら、斎藤道三
    組長は、

    「人の裏を読み、己を無くして人の懐に飛
    び込むことが出来て、この威風堂々とした
    去り方、あれはただのうつけとは違うな」

    「うちのたわけが、信長の軍門に下る日は
    そう遠くないかも」と、道三組長は娘婿の
    変わりように感慨深いものを感じていまし
    た。

    黒塗りの車に乗った信長は、「帰蝶、助か
    ったよ。 乗って来てた車がガス欠で、帰
    りどうしようかと考えていたところだった
    ので」と、後部座席に信長と並んで座って
    いる帰蝶に話かけました。

    「ちょうどオフ会の帰りだったの」と、
    帰蝶が答えました。

    「オフ会?」

    「そう、私のYouTube番組のファンと
    のオフ会だったの」

    「えっ、帰蝶ユーチューバーなの?」

    「そうよ、帰蝶の姐御チャンネルって言う
    の、登録者はまだ、10万人ほどだけどね。」

    「今日は最初のファンとのオフ会だったの、
    それで組の車50台ほど借りちゃった。」

    「ユーチューバーも、ファンサービスしな
    いと大変なんだよ」


    道三組長の死1556

    ユーチューブの銀の盾が飾られた帰蝶の
    部屋で、信長は来月の自分の22歳の誕生日
    のプレゼントを帰蝶におねだりしていまし
    た。

    「帰蝶ちゃ~ん、レクサスSUV(LX)が
    欲しい~」と、信長が言うと

    帰蝶が、「それっていくらするの?」

    「う~ん、二千万円ぐらいかな?」

    「アホー、そんな金がどこにあるのよ」と、
    帰蝶が怒りました。

    「だってー、今川組の組長さんも最近買っ
    たみたいだしー、そろそろ軽から卒業した
    いなーって、思ったりしてね」

    「バカ、あの軽は私の嫁入りの時にパパが
    買ってくれた私の宝なんだから」

    そんな話をしているところに、帰蝶の
    スマホが鳴りました。

    「あっ、パパからだ! 今の話が聞こえた
    のかもよ、マムシのパパ怒らせたらこわい
    わよ」と、帰蝶が言って電話にでました。

    「もしもし、パパ」

    「帰蝶か、義龍が裏切りよった。あのバカ
    部下にそそのかされやがって」

    「嘘っ、今パパどこにいるの?」

    「長良川の組事務所じゃ・・・」

    その時、「パン、パン、パン」と銃声の
    音がしました。

    「多勢に無勢じゃ、帰蝶、達者でな」

    「パパ、パパ、パパー・・・・・・」

    側で聞いていた信長が心配になり、
    「帰蝶どうした?」と、聞きました。

    「私、長良川の組事務所へ今から行く」
    と、怒りと不安の混ざった顔を帰蝶は
    していました。

    言うや否や帰蝶は、飛び出して行きまし
    た。

    黒塗りの車が猛スピードで、名神高速道路
    を走って行きました。

    ハンドルを握る信長の横で、無言で前を見
    つめる帰蝶がいました。

    名神高速道路の木曽川橋を超えたところで、
    信長のスマホにLINEの通知音が鳴りました。

    信長は、片手でスマホを取ってLINEの
    メッセージを見ると、道三組長からの
    「帰蝶を頼む、天下布武」という
    メッセージがありました。

    長良川の組事務所に着くと、そこは
    パトカーと救急車で埋まっていました。

    帰蝶は、車から飛び出して組事務所へ入っ
    て行きましたが、しばらくして肩を落とし
    て車に帰って来ました。

    斎藤道三会長(52)の息子で二代目組長
    の義龍(27)が内紛を起こして実の父親
    の道三組長を殺してしまいました。

    信長は、帰蝶を抱きしめ、「俺が必ず
    敵(かたき)を取る」と、宣言しました。


    弟の死1558

    信長(24)の頭に、帰蝶(23)は冷た
    いタオルをのせて上げていました。

    「死ぬ~、死ぬ~、もうダメだ~」と、
    信長が叫んでいました。

    「あんたちょっと熱でたぐらいでいつも
    大げさなんだから」と、帰蝶がたしなめて
    いました。


    柴田若頭補佐のスマホに、「信長組長が
    危篤そうだ」という連絡が組長宅に潜らせ
    ていた配下の者から連絡が入りました。

    林本部長(45)と柴田若頭補佐(36)は
    織田信行若頭(22)と一緒にクラブ末森で、
    密談をしていました。

    林本部長が、「最近、私が信長組長の電話
    に電話しても出ないところが怪しいですわ」
    と、言いました。

    「よし、俺が兄貴の容態を確認して来る」

    「いよいよ、俺が兄貴に代わって織田組を
    仕切る日が来そうだな」と、信行は嬉しそ
    うに言いました。


    「帰蝶~スマホ新しいの買ってよ~」と、
    信長が帰蝶に懇願していました。

    「アホ、あんたがトイレに落して勝手に壊
    してしまったせいでしょ」と、帰蝶が相手
    にしませんでした。

    そこへ組の若い者が、「信行若頭が、組長
    のお見舞いにと、いらっしゃてますが」と、
    告げて来ました。

    しばらくして、信行若頭が信長の病室に顔
    を出しました。

    信長は、頭のタオルを取って起き上がろう
    としましたが信行若頭は、「兄さんそのま
    まで」と言って静止しました。

    信長は、信行の手を取って「信行、俺は死
    にそうだ、もし、俺に何かあったら後は
    頼んだよ」と、力ない声で頼みました。

    帰蝶が、「アホ、たかがインフルエンザ
    ぐらいで死ぬ死ぬとほざくな」と、信長
    を諫めました。

    信長が、「そうだ、お前も好きだった
    青柳ういろうがあるから食べていけ」
    と、信行に青柳ういろうを勧めました。

    信行は、「じゃ一つだけ」と言って手で
    つまんで青柳ういろうを食べました。


    林本部長と柴田若頭補佐は織田信行若頭
    と一緒にクラブ末森でまたまた密談をし
    ていました。

    信行が、「帰蝶姐さんが、たかがインフ
    ルエンザと誤魔化したのが怪しいと俺は
    思ってるよ」と、打ち明けました。

    柴田若頭補佐が、「じゃー、時間の問題
    ってことですね」と言ってタバコに火を
    つけました。

    林本部長は、「我々、忙しくなりそうで
    すね」と、目を細めていました。

    信行が、「ゴッホン、ゴッホン」と咳を
    しました。


    信長は、帰蝶と一緒に信行が乗る霊柩車
    を見送っていました。

    「まさか悪性のインフルエンザで急死す
    るなんて・・・」と、信長が呟きました。

    「ホント、私もインフルエンザで死ぬなん
    て思ってもいなかった」と、帰蝶も呟きま
    した。

    「私、あんたに『たかがインフルエンザ
    ぐらいで死ぬ死ぬとほざくな』て、言っ
    てたけど、あんな軽はずみな言葉は使う
    べきでなかったと反省してるの」と、い
    つになく優し言葉を信長にかけていまし
    た。

    「あんた長生きしてね」

    信長は、新しく買ってもらったスマホに
    夢中になっていて帰蝶の言葉を聞いてい
    ませんでした。

    「バシッ」

    帰蝶は、信長の頭を思い切り叩きました。

    「痛った!」

    藤吉郎参上1558

    「帰蝶ー、帰蝶ー」と、信長(24)が帰蝶
    を探していました。

    「誰もいないのか? 物騒だなー、 一応、
    組長の家なんだけどな」

    そんなことを信長が呟いているところへ

    「すみませーん」と、さえない若者が現れ
    ました。

    信長が、「どちらさんで?」と聞くと、

    「はい、本日から住み込みで働かせて頂く
    ことになっております者で、藤吉郎(21)
    と申します」と、そのさえない若者が答え
    ました。

    「住み込み? 帰蝶からは何も聞いていな
    いが?」と、信長は思いました。

    「そうか、うちで働いでくれるんか・・・」

    「サル」

    藤吉郎は、自分の顔を指さして今の「サル」
    が、自分に向けて言われた言葉か確認しま
    した。

    信長は、「そう、お前お猿さんに似てるか
    らな」と、答えました。

    「サル、早速だがコーヒーを買って来て
    くれるか? 家の直ぐそばに自販機がある
    ので、上の段の右から一番目のコーヒーを
    買って来てくれるか?」と、信長が藤吉郎
    に頼みました。

    藤吉郎は、俊敏に動いてコーヒーを買って
    来ました。

    「サル、やることが早いな」と、藤吉郎が
    戻って来た速さに信長は感心していました。

    「ところで、コーヒーはどこにあるの?」
    と、信長が尋ねると、

    藤吉郎は、懐で温めていたコーヒーを取り
    出して信長に差し出しました。

    「あのなー、ホットのコーヒーならまだ
    分からないでもないが、これは冷たい
    コーヒーやで?」と、信長はあきれ果てて
    いました。

    「でもなんかお前はおもろい奴や」と、
    信長は笑っていました。

    そこへ、帰蝶が帰って来ました。

    「ただいまー」

    帰蝶は、思いがけない男がいたので不信
    な顔をしました。

    信長は、「今日からうちで住み込みで
    働くことになってるサルや」と、帰蝶に
    説明すると、

    「いや、そんなの頼んでないよ」と、
    帰蝶が言いました。

    「サル、確かにここか?」と、信長が
    藤吉郎に問いただすと、

    「へい、おだ様のお宅と伺ております」
    と、藤吉郎が答えました。

    「分かった! あんたお隣の小田さんと
    間違ったんじゃないの?」と、帰蝶が
    言いました。

    藤吉郎の手にある紙に、「小田」の文字
    が書いてありました。

    「だから私は前から言ってたでしょう!
    表札を英語でODAてするのはダメって
    言ってたのよ」と、帰蝶が信長にまた
    切れていました。

    「まあ、藤吉郎もヤクザの家に靴を脱い
    だのも何かの縁じゃ、うちで住み込みで
    働いていけ」と、信長は藤吉郎を誘いま
    した。

    「いや、いや、いや、ヤクザのお宅
    だとは知らなかったです~」と、藤吉郎
    は青ざめていました。

    「藤吉郎さん、良かったら身の上話を聞
    かせてもらえますか?」と、帰蝶が切り
    出しました。

    藤吉郎は、自分の不幸な生い立ちを話し
    ました。

    「それで今はフリーターをしてたのね」
    と、優しい言葉を帰蝶は藤吉郎にかけま
    した。

    「よし、うちで住み込みで修行してらっ
    しゃい」と、藤吉郎に有無を言わさない
    気迫で帰蝶は藤吉郎に住み込みを勧めま
    した。

    信長と帰蝶の魅力に負けた藤吉郎は、こ
    うして織田組で働くことになりました。


    犬千代の過ち1559

    犬千代(20)がキャバクラまつわで飲んで
    いました。 

    そこに、信長の学友のテレビ局のプロデュ
    ーサーの順ちゃんがベロベロに酔って入っ
    て来ました。

    犬千代は、この順ちゃんを前から面白く思
    っていませんでした。

    キャバクラまつわのキャストの女の子の
    何人かは、このプロデューサーに騙されて
    不幸な目にあっていました。

    「あいつ、プロデューサーかなんか知らん
    けど鼻にかけやがって、それに何かあった
    ら組長の名前を勝手に使っているようだけ
    ど、あまり粋がっていたら只では済まさな
    いぞ」と、犬千代は怒りをあらわにしてい
    ました。

    少し離れた席で、順ちゃんは早速店の女の
    子へ卑猥な行動をしてその場の女の子達を
    困らせていました。

    それでも、犬千代の怒りがおさまっていた
    のは、犬千代のお気に入りの女の子が横に
    座ってくれていたからでした。

    そんな時に、順ちゃんは犬千代のお気に入
    りの女の子を自分の席い呼びつけました。

    「ごめん、犬千代さん直ぐに戻って来るね」
    と言って、お気に入りの女の子が行ってし
    まいました。

    順ちゃんは、犬千代のお気に入りの女の子
    を無理やり自分の横に座らせて、なかなか
    その子を犬千代のもとへ帰そうとしません
    でした。

    順ちゃんは、信長組長との関係をかさに着
    て犬千代をいたぶっていました。

    事件はその時起こりました。

    順ちゃんが、犬千代のお気に入りの女の子
    に、キスしようと抱きついていきました。

    とっさに女の子は、順ちゃんの頬を叩いて
    いました。

    順ちゃんは、怒って叩き返しました。

    それを見た犬千代、電光石火の如く飛んで
    行き、順ちゃんの心臓に深々とドスを刺し
    ていました。


    信長は、犬千代からことの顛末を聞きまし
    た。

    信長は、警察に自首すると言った犬千代を
    引き留めました。

    「男が女に手を上げたら終わりだ、それを
    見て許すようならヤクザをやってる資格が
    ない」と、信長は言いました。

    「ちょっと間、高飛びしとけ」と、信長は
    大金を犬千代に手渡しました。


    フィリピンへ向かう飛行機のファーストク
    ラスの席に座って、窓の下に見える尾張の
    景色を犬千代は見ていました。

    「信長組長のためなら俺はいつでも死にま
    すよ」と、決心をあらたにしていました。

    犬千代は、客室乗務員の女性のお尻を叩い
    て、

    「おねーちゃん赤ワインちょうだい」と、
    うそぶいていました。


    桶狭間抗争1560

    ダンディーな男がテニスをしていました。
    その男は、今、飛ぶ鳥を落とす勢いの
    今川組の今川義元(よしもと)組長(41)
    でした。

    暑い中、テニスのボールボーイとして
    若者が先ほどから走りまわっていました。

    「元康」と、その若者に向かって
    義元組長が呼びかけました。

    元康(もとやす)と呼ばれたのは、後の
    徳川組の組長になる徳川家康(17)でし
    た。

    「元康、織田組にかちこむぞ」と、義元
    組長は、遠くを見つめて言いました。


    今川組がかちこみをかけて来るという噂
    は、直ぐに信長組長(26)のもとに届き
    ました。

    「チース、元康でーす」という電話の
    タレコミで、信長は今川組のかちこみを
    知りました。

    「組長、その元康て何者ですか?」と、
    義兄弟の恒興(つねおき)(24)が聞き
    ました。

    「竹千代だよ」

    「あー、あの竹千代、昔うちの組で一時
    預かっていた時のあのガキか」

    「そうそう、あいつなんだか俺を慕って
    てな、その上、なんか俺に怯えとんねん」
    と、信長が言いました。

    「きっとあれがいけなかったのかな? 」
    と言って、信長は昔の竹千代とのことを
    思い出していました。

    あれは、竹千代(6)がうちの組で一時
    預かることになった時のことでした。

    俺(14)が、竹千代とチンチン比べを
    した時、俺は隠しもっていたヘビを
    股間から出して、「どうだこれが俺の
    チンチンだ」と見せてやったら、
    竹千代は、ヘビが口を開けて威嚇した
    のを見て気絶してしまったことを思い
    出していました。
     
    あの日から、あいつ俺を恐れていてな、
    可愛い奴やで。

    「組長は、ヘビ苦手じゃなかったんで
    ?」

    「それが、竹千代にヘビちんちんを見せ
    た後、そのヘビに俺のチンチン噛まれち
    ゃって、それから俺もヘビが苦手になっ
    てしまたんだよ」と、信長が答えました。

    「それより組長、今川組がかちこんで来
    るって、織田組にとっては最悪の状況で
    すぜ」


    信長は、帰蝶に膝枕されながら目をつむ
    って何かを考えているようでした。

    「今川組が、かちこんで来たら織田組は
    大丈夫なの?」と、帰蝶が聞きました。

    「・・・・・・・・・・・・・・・・」

    膝の上の信長の反応がないので、帰蝶が
    不思議に思って信長を見ると、なんと
    信長は寝ていました。

    「あんた!何考えてんの!アホちゃうか
    !」と、帰蝶の怒りが三連発で、出まし
    た。

    その声で目覚めた信長は、「帰蝶ちゃん
    どうしよ~」と、情けない声を出してい
    ました。

    その時ドアが開いて信長と二卵性の双子
    のお市(26)が入って来ました。

    お市は、帰蝶が見てもほれぼれするほど
    の容姿を持っていました。

    「お兄様、私も織田組の娘として何か
    お役に立つことがあれば何でも致します」
    と、健気に申し出て来ました。

    その時、信長のLINEのメッセージに、
    「鷲津組、丸根組が今川組に落ちた」と
    いうLINE連絡が入りました。

    「なんでも最先端で、っていうか、なん
    かこんな重要なことをLINEで良いのか」
    と、そんなことを心配する信長でした。

    「そうだ、今川の義元がバー桶狭間に
    今晩来ると、元康からタレコミもらった
    のを使えるかも」

    「お市、バー桶狭間で義元組長を探って
    くれないか?」と、信長は頼みました。


    バー桶狭間の扉が開いて、義元組長と
    ボディーガード入って来ました。

    今日は、バー桶狭間は義元組長の貸切にな
    っていて、女の子達は全員義元組長の周り
    に座ってもてなしていました。

    「もうすぐこの辺も、今川組の縄張りに入
    るから、お前たちも下品な織田組の連中を
    相手にしなくて良くなるよ」と、上機嫌に
    義元組長がダンディーな笑いを振りまいて
    いました。

    席の一番はっしこに義元組長の目が、釘付
    けにされてしまいました。

    「あの一番向こうに座っている子をここに
    呼んでくれ」と、ママに囁きました。

    ママが、その子を呼んで義元組長に
    「お市ちゃんです」と、紹介しました。


    お市は、義元組長の車に乗って移動中でし
    た。

    お市は、「もしかして、私が信長の妹だと
    気が付いたのかも?」という不安を胸に抱
    いていました。

    車のフロントガラスに、ホテル田楽という
    ラブホテルが見えて来ました。

    車は、そのホテルに吸い込まれるように入
    って行きました。

    義元組長は、ダンディーにお市を部屋へ
    エスコートして行きました。

    部屋に入ると、100万円の札束を机の上に
    静かに置きました。

    「シャワーを浴びて来るよ」と、義元組長
    は言い残してシャワーを浴びに行ってしま
    いました。

    お市は、織田組のために覚悟を決めていま
    した。

    義元組長と入れ替わりにお市がシャワーを
    浴びに行きました。

    義元組長は、ベッドでお市の裸を想像して
    だんだんと興奮が収まらなくなって来て
    いました。

    お市がシャワーを浴びてバスローブ姿で
    髪を拭きながら出て来ると、

    義元組長が、丸裸でベッドに仰向けになっ
    たまま寝ていました。

    義元組長の股間から、真っ直ぐにそそり
    立っているものが、お市の目を釘付けに
    しました。

    お市は覚悟を決めてバスローブを脱ぎ、
    義元組長の体を上から跨いでいきました。

    「あれ?」

    義元組長が白目をむいて事切れていまし
    た。

    お市は、救急車を呼びましたが義元組長
    は帰らぬ人となりました。 なんでも、
    興奮しすぎた結果の心臓発作だったよう
    でした。

    「それにしても駿河の国の組長さんだけ
    あって、あそこが富士のごとくそそり立
    っていた、海道一の一物だは」と、お市は
    真面目に関心していました。

    「それに100万もらってラッキー、何を
    買おうかな」と、思ったりしていました。


    信長は、義元組長が亡くなったことで、
    織田組の危機が去った喜びから、敦盛を
    ラップ調で歌い出しました。

    「♪♪♪ 人生 五十年 下天の うちを
    くらぶれば 夢 幻の 如くなり・・・」

    それを、帰蝶はTikTokにアップしました。


    義龍の急死1561

    信長(27)のLINEメッセージに、「タマ
    を取りました」と表示がされていました。

    帰蝶(26)が、スマホを見ながら信長の
    部屋に入って来ました。

    「義龍(32)死んじゃったって」と、腹違
    いの兄の死を複雑な心境で信長に告げまし
    た。

    信長はうっかり、「そうみたいだね」と、
    言ってしまいました。

    「なんであんたがもう知っているのよ?」
    と、帰蝶がすかさず問い詰めました。

    「いや、いや、いや、お前の顔にそう書い
    てあったから・・・」と、信長は苦しい言
    い訳をしました。

    「それにしても、父を殺し、弟二人を殺し
    た憎い兄だったけど、死んだとなると複雑
    な心境になるもんだね」と、帰蝶が人の心
    の不思議さを感じていました。

    「お前は、優しい妹だったんだよ」と、
    信長は帰蝶に労りの声をかけていました。


    元康、信長との再会1562

    今川義元組長の死の翌年に、元康(19)は、
    伯父の水野信元(41)の仲介によって織田
    組との清州同盟を結んでいました。

    その翌年、元康(20)は信長(28)と再会
    を果たしました。

    元康は、信長との再会が怖くて怖くてしか
    たありませんでした。 あの蛇のことを思
    い出すと今でも気を失ってしまいそうにな
    る元康でした。

    「よっ、竹千代久しぶりだなー」と、信長
    は、喜んでいました。

    「チース、ご、ご、ご無沙汰しております」

    「なに固くなってんだよ。ほら、昔のように
    してりゃー良いんだよ」と、信長は元康の
    首に手を回して言いました。

    「俺たちは死ぬまで友達だと誓ったじゃな
    いか!」と、昔の話を持ち出して来ました。

    「ハ、ハ、ハイ、友達です、死ぬまで、
    ハイ」と、元康が答えました。

    「よし、それでこそ元康だ」

    「これで安心して西を目指せるよ」と、
    信長が野心ある目つきで言いました。

    元康と別れぎわに信長は、「元康!名前
    は変えた方が良いよ」と、最後に言いまし
    た。

    元康の「元」の字は今川義元組長の偏諱
    (へんき)を与えられたものであったので、
    そのことを信長は指摘したようでした。

    翌年、元康は、家康と名を改めました。

    それによって、家康に対する今川組からの
    風当たりは増して行きましたが、義元組長
    亡き後の今川組は家康にとってはさほどの
    威嚇にはなりませんででした。


    小牧山へ引っ越し1563

    「あなたが歌う敦盛、世界中でバズってる
    よー」と、帰蝶が嬉しそうに信長に抱き
    ついて言いました。

    「そんなに凄いことなの?」と、信長は
    関心なさそうに言いました。

    「何言ってるの、もうすぐ1億再生だよ」

    「暇な奴が多いってことだよ」

    「もー、私の喜び全然分かってくれない、
    すれ違い夫婦だよ」と、帰蝶が愚痴りま
    した。

    「あっ、そうだ、言うの忘れていたけど、
    明日小牧山へ引っ越しするよ。 良い物件
    が見つかったので・・・」と、信長が思い
    だしたように突然言いました。

    「聞いてないよ、何それー?」と、帰蝶
    はさらに怒りました。

    「まーまー、あちの方が何かと今後の
    仕事に便利だし、それから夜景も綺麗だ
    よ」

    「もー、勝手にしたら」と、帰蝶が切れて
    しまいました。


    名門武田組との同盟1565

    織田組が尾張一帯のシマを完全に掌握する
    と、甲斐の名門の武田組のシマと境界を接
    するという問題が発生しました。

    武闘派で知られている武田組の信玄組長
    (44)との争いごとは避けたかった信長
    (31)は、同盟を結ぶことにしました。

    同盟の証しとして、信長は海がない武田組
    の現状を考えた上で、信玄組長に塩の道な
    らずヤクの道を提供しました。

    「まあ、これで大人しく山の中に引っ込ん
    でいてもらえれば安いものだ」と、信長は
    考えていました。

    「やっぱり、ここから見る夜景は綺麗よね
    ー」と、引っ越しする時の怒りを忘れたか
    のような帰蝶がいました。

    「あっ、そうそう、ガレージに塩が入った
    袋がいっぱい積まれているけど、あれ、
    邪魔なんだけど」

    「あーあ、武田組に持っていく塩だ」

    「武田組の組長さん塩好きなの?」

    「あんなに食べたら体に悪いわよ」

    「そ、そ、そうだね」

    「あっ、家も塩切れそうだったので、
    一袋もらっても良い?」

    「ダ、ダ、ダメ、ダメ、ダメ」

    「帰蝶には、もっと良い天日干しの
    塩を買ってあげるから」

    「あなたって意外と天然物志向なんだね」
    と、帰蝶が笑ってしまいました。


    すまたの一夜城1566

    信長(32)の家で、組幹部が集まり会議が
    開かれていました。

    道三組長の敵(かたき)を討つために斎藤
    組のシマに橋頭堡(きょうとうほう)を誰
    が作るかというい議題でした。

    織田組の古参幹部の林本部長(53)、
    柴田若頭補佐(44)佐久間若頭補佐(38)
    は、数々の失敗を見て来ているために、
    自分から何かを発言しようとは考えていま
    せんでした。

    重い空気が流れていた時、末席に座って
    いた、藤吉郎(29)が「私に任せて頂け
    ないでしょうか」と声を張り上げました。

    一斉に藤吉郎に目が注がれました。

    幹部の誰もが、「下っ端の分際で、片腹
    痛いわ」と、みんなが思っていました。

    「サル、勝算はあるのか?」

    「はい、あります」

    「この大勢の前での大言壮語、許す代わ
    りに、もし、失敗したら名古屋湾に沈め
    るぞ、その覚悟でやれ」と、信長は厳し
    く藤吉郎に命じました。


    「兄者、あんなこと信長組長に言って
    大丈夫かや?」と、藤吉郎の弟の小一郎が
    心配になって聞いていました。

    「やれんかったら死ぬまでよ」

    藤吉郎は、斎藤組のシマで夜の怪し仕事を
    経営している人物を一人知っていました。

    「そいつに当たってダメなら死ぬまでよ」
    と、藤吉郎には変なクソ度胸がありました。

    「俺らみたいな人間が上にのし上がって行
    くには死を恐れていたらダメなんだ」と、
    藤吉郎はしみじみと言いました。


    派手なネオンが煌めく中を通って藤吉郎は、
    あるビルに入って行きました。

    ビルの中は巣窟のような場所でした。

    ビビる小一郎をよそにして、藤吉郎は頑丈
    そうな鉄のドアを叩きました。

    重そうにドアが開くと、中から厳つい顔の
    男が現れました。

    「よっ、小六、久しぶりだのー」と、
    藤吉郎が声をかけました。

    「サル、何しに来たんだ!」と、小六(40)
    が言いました。

    「そう、俺のことをお前と同じように
    『サル』と呼ぶ新しい主人の依頼でお前に
    会いに来たのよ。」と、藤吉郎が答えまし
    た。

    「誰だ、お前を『サル』という奴は?」

    「知りたいか? 織田組の織田信長組長だ」

    「ゲッ、織田組? サルお前ここをどこか
    知ってるのか?」

    「小六様の楽園では」

    「アホも休み休み言え、チェッ、ここは
    斎藤組のシマじゃ」

    「そこでよ小六、お前織田組に転べ」

    「な、な、何を突然ぬかすかボケ」

    「小六、悪いことは言わん、信長組長
    の時代が来るぞ」


    長い時間をかけて藤吉郎は、とうとう
    小六を説得するのに成功しました。

    「それで俺に何をしろと?」と、小六
    が藤吉郎に聞きました。

    「簡単なことだ、可愛い女を集めて、
    斎藤組の幹部を篭絡(ろうらく)させ
    て行くだけだ」と、藤吉郎が答えまし
    た。

    「すまた専用の大人の遊ぶ夜の店を
    オープンして斎藤組の幹部を引き込んで
    遊ばせて、ハニトラ、マネトラ、を仕掛
    けるんや」

    「店の名前は、『すまたの一夜城』じゃ」

    「キャッチーな名前だろ!」

    と言って藤吉郎は、大笑いしました。


    稲葉山抗争1567

    信長(33)は、岐阜市内の料亭井ノ口に入
    って行きました。

    その席に、斎藤組傘下の西美濃三人衆と呼
    ばれている、稲葉組組長の稲葉 良通(いな
    ば よしみち)(52)、安藤組組長の安藤
    守就(あんどうもりなり)(64)、氏家組
    組長の氏家 直元(うじいえ なおもと)
    (54)が同席していました。

    三人の組長を代表して安藤組長が、「本日
    我らは、織田信長組長の盃を頂きに参りま
    した。」と、畳に頭を下げて願い出ました。

    「お前ら、斎藤の三代目との盃を水にする
    ってことか?」

    「へい、初代の道三組長には大変義理がご
    ざいましたが、二代目、三代目はどうも」

    「・・・・よし、盃をとらす」


    斎藤組三代目組長の斎藤 龍興 (たつおき)
    (20)は、稲葉山の自宅で斎藤組の傘下の
    組が離れていっている事実を知らされまし
    た。

    「組長、ここは一旦岐阜を離れ、姻戚関係
    のある越前の朝倉組を頼るのは・・・」と、
    部下が龍興組長に提案しました。

    龍興組長は、部下の提案に従い越前の朝倉
    組の朝倉 義景(よしかげ)(34)組長のも
    とへ客分として迎えられて行きました。


    信長は、龍興の稲葉山の自宅を接収してそ
    こに拠点を移しました。

    「あんた、また引っ越しって・・・」と、
    帰蝶がぼやいていました。

    「帰蝶、ここからの眺めは、小牧山より良
    いだろう」と、信長は上機嫌で言いました。

    「小牧山は86mだったが、稲葉山は329m
    もあるんだよ」と、自慢げに信長が言いま
    した。

    「え~、コンビニに行くのに不便じゃーん」
    と、帰蝶が言い返しました。

    「大丈夫、サルを使えば良いよ」と、信長
    が答えました。

    「そうだね~」と、帰蝶も軽く答えました。

    「なんでそうなるの」と、藤吉郎が柱の陰
    で思っていました。

    信長が突然、「サル」と叫びました。

    藤吉郎が、今思ったことが信長にバレたの
    ではと大変驚き「申し訳ございません」と、
    言って信長の前に土下座して出て行きまし
    た。

    「サル・・・何謝っているんだ? 例のも
    のは出来上がって来たか?」と、信長が
    藤吉郎に聞きました。

    「はっ?」

    「あのバッジだよ」と、信長は藤吉郎が思
    い出すように言葉を足しました。

    「組の新し代紋(だいもん)のことで、
    ハイ、出来上がって来ております、ハイ」と、
    藤吉郎が答えました。


    しばらくして藤吉郎が新しい代紋を信長の
    前へ持って来ました。

    信長は、その新しい代紋をしみじみ眺めて
    から、帰蝶に差し出しました。

    「何これ~、天下布武って?」と、帰蝶が
    その意味を聞きました。

    「お前の父さんが、理想に掲げていた
    『ヤクザの力で天下に平和と秩序をもたら
    す』その言葉を短くしたのが天下布武だよ」
    と、帰蝶に説明しました。

    「ふ~ん・・・・・あっこれ、私のユーチ
    ューブのメンバーシップ参加者に配っても
    良い?」と、帰蝶が信長に聞きました。

    「そうだ、私のチャンネル登録者100万人
    越えの記念品として使える~」と、帰蝶が
    喜んでいました。


    信長は、尾張・美濃の二つのシマを縄張り
    にするほどの組長になりました。

    「義父(ギフ)の道三組長も、冥土で喜ん
    でくれているかな」と、信長は心の中で思
    っていました。

    道三組長の遺影の前に、道三組長が好きだ
    った日本酒がなみなみとコップに入ってい
    ました。 そして、その横に「天下布武」
    の代紋が一つ置かれていました。


    お市の輿入れ1567

    「やぱりはめられたー」と、お市(33)
    が叫んでいました。

    「おかしいと思たのよね、あのお見合い
    写真、イケメンだと思って嫁いで来たら、
    なに、ぜんぜん顔が違うじゃん」と、お怒
    りのお市がいました。

    「その上よ、あの舅(しゅうと)が、
    キモーイ、うぁ~、金もらってとっとと
    退散しなきゃ」と、考えていました。

    「でも、私も年齢23歳と10歳サバ読んだ
    し」と、美魔女のお市は微笑んでいまし
    た。

    浅井組の誰もが、お市は23歳にしか見え
    ていませんでした。


    「お市ちゃんの結婚式良かったね」と、
    帰蝶(32)が信長(33)に話しかけていま
    した。

    「あいつのお陰で、織田組も京都へ進出し
    やすくなったよ」と、信長が感謝していま
    した。

    お市の政略結婚のお陰で、信長は浅井組の
    浅井長政(あざい ながまさ)(22)組長
    と同盟締結が出来ました。


    お市の部屋に、長政が入って来ました。

    長政は、「今日からよろしくお願い致しま
    す」と、丁寧にお市へ挨拶をして来ました。

    お市は、そんな長政を見て「ふ~ん、こい
    つまだ女を知らないな」と、見破っていま
    した。

    お市は、美魔女の魅力を活かして長政を
    臥所(ふしど)に伴いました。

    長政のあそこはお市が満足できるだけの
    大きさがありました。

    「まー合格ね、今川様のには及ばないけ
    ど」と、お市は、あのホテル田楽で見た
    義元の富士のごとくそそり立っていた
    一物を思い出していました。


    「お市、凄い良かったよ」と、長政が
    ハーハーしながら言いました。

    「私も」と、お市も答えましたが、本心
    では、「ぜーんぜんダメ、欲求不満に
    なっちゃうよー、お肌に悪いじゃん」と、
    不満を抑えていました。

    「まーこれで、長政は私の言いなりだけ
    どね」と、お市は満足していました。


    赤ちょうちんで、酒を飲んで泣いている
    藤吉郎(30)がいました。

    「お市様が、嫁入りされてしまった」

    「俺は、お市様が好きで好きでたまんな
    かった」

    「なんで、お市様が・・・・・」
    と、涙をボロボロながして藤吉郎が泣い
    ていました。

    「兄者、お市様はわしらのような者とは
    世界が違う人だぎゃー」と、弟の小一郎
    (27)が藤吉郎を慰めていました。


    明智光秀1568

    信長(34)が、一枚の名刺を見ていました。 
    そこには、コンサルタント明智光秀
    (あけちみつひで)(40)と書かれていま
    した。

    「よし、通せ」と、信長が言いました。

    信長の部屋のドアが開いて、スーツが似合
    う男が入って来ました。 きりっとした
    知的な印象を与えるメガネが、いかにも
    仕事が出来そうな感じを醸し出していまし
    た。

    光秀は、信長への丁寧な挨拶の後、本題に
    入りました。

    光秀は、室町連合に一応君臨する足利組へ
    の出資を求めて来ました。

    足利組は内部崩壊していて、組長が不在の
    ままでしたが、足利組12代目の足利 義晴
    (あしかが よしはる)組長の子供に義昭
    (よしあき)(31)という人物がいて、
    それを組長につけるために、光秀は信長に
    協力を要請しに来ていました。

    「俺がその義昭を押せば、俺に何が入るの
    か?」と、信長は光秀に聞きました。

    「天下でございます」と、光秀は頭を下げ
    て言い放ちました。

    「おぬしも悪じゃの」と、信長はニヒルに
    笑ていました。


    信長の大金の出資のお陰で、足利組は息を
    吹き返すことが出来ました。

    義昭は、14代足利組組長となりました。

    そして義昭は、室町連合の再編をしていこ
    うと考えていました。

    「信長組長には、足を向けて寝れないなー」
    と、義昭が光秀に向かって言いました。

    「信長組長をお父上と思われ、慕うことが
    何よりも今は大切な時期でございます」と、
    光秀が答えていました。

    「そりゃそーだ」と、あまり何も考えずに
    義昭が答えました。

    金ヶ崎抗争1570

    信長(36)は、配下を連れて福井県敦賀市
    の金ケ崎ホテルに滞在していました。

    信長は、越前にシマを持つ朝倉組を一気に
    潰す手配で動いていました。

    そんな信長のスマホにお市(23)からLINE
    で一枚の写真が送られて来ました。

    信長は、お市からLINEが来るのは珍しいと
    思いながら写真を見ました。

    それは、お市がディズニーランドの前で
    ミッキーマウスの袋を指さしている写真で
    した。

    その時、信長のスマホに帰蝶から電話がか
    かって来ました。

    「あんた今どこにいるのよ。」

    「福井県の敦賀の金ケ崎ホテルに来てるん
    だけど」と、信長が答えました。

    「浮気してるんじゃないよね」と、帰蝶が
    かまをかけて来ました。

    「し、し、仕事で、で、です」と、信長が
    ビビりながら答えました。

    「あっ、そう・・・」

    「なんかお土産買って帰ろうか?」と、
    信長が低姿勢で聞きました。

    「そうだね~、谷口やの油揚げが良いな」
    と、帰蝶が答えました。

    「じゃーね、おやすみ」と、一方的に帰蝶
    は、電話を切りました。

    「なんか今日は不思議なことが起るな」と、
    信長は思いました。


    夜中に信長はふと、「お市は、ディズニー
    ランドをあんなに嫌っていたのに、なぜ
    お市が・・・」と、考えていました。

    「ねずみが大嫌いで、ディズニーランド
    も嫌っていたよな 」

    「写真にミッキーマウスの袋」

    「ミッキーマウス、ねずみ」

    「ねずみ、袋」

    「袋のねずみ」

    信長は飛び起きました。


    朝、家康(28)がホテルの朝食のバイキ
    ングで食事を取っていると、「良く寝た
    ー」と、大声で藤吉郎(33)が現れまし
    た。

    「あれ? まだみんな寝てるんかな?」
    と、藤吉郎が不思議そうに誰もいない
    席を見ていました。

    そこへ弟の小一郎(30)が、「兄者、
    兄者、大変だ」と、青い顔で急ぎ入って
    来ました。

    「何朝っぱらから慌ててる、怖い夢でも
    見たんかい」と、藤吉郎が諫めました。

    「違うんだって、あ、あ、あ、朝倉組が」

    「朝倉組がどうした?」と、藤吉郎が言う
    と、

    「このホテルをぐるっと囲んでるーう」
    と、小一郎が床にへばりこんでしまいまし
    た。


    「お市は、ディズニーランドへ行くと言っ
    てたが、その後お市が信長に連絡した気配
    はなかったか?」と、長政(25)は自分の
    妻の動きを手下に聞いていました。

    「へい、LINEで写真を一枚信長に送って
    る以外は・・・」

    「どんな写真を送ったんだ?」

    「それが、ディズニーランドの前で写した
    だけのただの写真でして・・・」

    「そうか、なら良し、そろそろ朝倉組が、
    ホテルへ乗り込んでいるころだろう」と、
    長政は、信長を朝倉組と挟み撃ちした作戦
    が成功したと確信していました。


    朝倉組の連中が、ホテルをくまなく探した
    が、織田組の連中は一人も見つかりません
    でした。

    「はい、誰もいません」と、朝倉組の者が
    電話で話している横を、女装をした三人の
    ホテルのハウスキーパーが通り過ぎて行き
    ました。

    「おい、待てー」と、朝倉組の者が三人に
    向かって呼びかけました。

    「は~い、何でございます」と、女装した
    藤吉郎が答えました。

    「ぶっさいくな女やな、この階の客はいつ
    チェックアウトしよた?」と、聞いて来ま
    した。

    「いや~私たち、バイトですから~分かり
    ませんわ」と、藤吉郎が答えました。

    「もうえーわ、あっちいけ」

    「嫌な感じだね~いえ子ちゃん」と、
    藤吉郎は女装した家康に話しかけるように
    大声で言いました。

    「張っ倒されたいんかババー」と、朝倉組
    の者が三人の後ろから叫んでいました。

    その声を無視して三人は廊下の遠くへと
    消えて行きました。


    クリーニング屋の車を光秀(42)が運転し
    ていました。

    荷台の洗濯物の中に紛れ込んで、家康、
    藤吉郎、小一郎の三人がいました。

    荷台の中の三人は、光秀が命がけで助けに
    来てくれたと思っていました。

    本当は、光秀が意図的にこの三人を起こさ
    なかったことを三人は知る由もありません
    でした。

    勿論、なぜ光秀が命がけで助けに戻って来
    たかも知りませんでした。

    その訳は光秀は墓まで持っていく覚悟でし
    た。


    「あなた~おかえり~」と、家に帰って来
    た信長を帰蝶が抱きついて迎えました。

    「あっ、首にキスマークが付いてる」と、
    帰蝶がまたかまをかけました。

    「うそ、うそ、うそ」と、信長が驚きまし
    た。

    「バーカ」と、帰蝶が嬉しそうにしていま
    した。

    「はい、お土産と、谷口やの油揚げだよ」
    と、信長が帰蝶の顔の前にお土産を突き出
    しました。

    「命がけで買って来たんだからね」と、
    信長が言いました。

    「またまた、大げさなんだから」と、帰蝶
    は、笑っていました。

    「俺は、帰蝶のためならいつでも命をかけ
    るからね」と、信長が背伸びをしながら言
    いました。

    「私もよ」と、帰蝶が答えていました。


    比叡山炎上1571

    霊感商法のネットビジネスで、暴利を貪っ
    ていた比叡山ドットコムは室町連合との裏
    取引もあってなにかと織田組の邪魔をして
    来ていました。

    消費者の不安を煽り、高額な開運グッズや
    祈祷サービス、不当な寄付を購入・契約さ
    せる悪質商法に止まらず、ヤクザが二の足
    を踏むような数々の悪事に手を染めていま
    した。

    また、裏には悪徳国会議員がいて何かと
    比叡山ドットコムを支えているようでし
    た。

    ネットという世界の特殊性で、実態がなか
    なかつかめずに信長も頭を悩ませていまし
    た。


    信長(37)が、おでこに手を当てて考えて
    いた所に、帰蝶(36)が入って来ました。

    「そんな真剣な顔して何考えているの?」
    と、帰蝶が信長に聞きました。

    信長は、帰蝶に比叡山ドットコムの悪行
    について語りました。

    「な~んだ、そんなの簡単に潰せるよ」と、
    帰蝶は言いました。

    帰蝶は、スマホに何か打ち込んでいました。

    「はい、終わったよ」

    「何やったの?」と、信長が不思議そうに
    聞きました。

    「ま、明日になれば分かるよ」


    次の日、比叡山ドットコムの運営会社は、
    パニックを起こしていました。

    「社長、うちのホームページが炎上して
    います。」と、社員が社長に叫んでいまし
    た。

    その日の全国テレビのニュースで、
    「比叡山ドットコムが炎上する」と報じら
    れ、ネット上でも「#比叡山ドットコムが
    炎上」がトレンドワード1位になりました。


    「帰蝶、凄~い、いったいどういう事?」
    と、比叡山ドットコムを追い詰めた方法を
    信長は知りたくてしかたありませんでした。

    「簡単なことよ、私のYouTubeチャンネル
    を利用したのよ、私のチャンネル登録者
    は200万人いるのよ」と、帰蝶が答えまし
    た。

    「帰蝶の姐御チャンネルって、すごい力
    持ってるんだね」

    「まーね、これでもファンをつなぎ止めて
    置くのに毎日苦労してるんだからね」

    「へー、どんなことアップしてるの?」

    「そうねー、色々アップしているけど、
    人気トップ5教えちゃおうかな?」と、
    帰蝶は信長に聞いて欲しくてたまらない
    という感じで話だしました。

    「まずは5位、ヤクザの姐御シリーズ、
    これはね各組長さんの姐御にインタビュー
    していってるのよ。みんな組長の奥さん
    見たいみたいで人気あるのよ」

    「それから4位は、藤吉郎の苦労話シリー
    ズ、これはね、藤吉郎の話術と苦労話が笑
    いと涙を誘って安定の人気があり、私も少
    し楽できて助かっているのよ」

    「サルも手伝ってるの?」と、少し信長
    は驚きました。

    「次は3位ね、ヤクザの女の悩みシリーズ、
    女の悩みは尽きないテーマだから強いの
    よ」

    「そして2位は、織田組抗争の裏話よ」

    「おい、おい、組の裏話はヤバくない?」
    と、信長が聞きました。

    「そこは、ぎりぎりバンされないように
    注意してるから」

    「で、1位はね、帰蝶の入浴ライブ~」

    「お風呂に入ってライブしてるだけなんだ
    けど、凄い人気でね、投げ銭もガンガン
    してくれるのよ」と、帰蝶は全然悪気なく
    話ました。

    信長は、空いた口がふさがりませんでした。


    室町連合滅亡1573

    藤吉郎(36)は、名字を木下から先輩幹部
    である丹羽若頭補佐(38)と柴田若頭補佐
    (51)の名前から一文字ずつもらい、
    「羽柴藤吉郎」と名乗り始めました。

    藤吉郎は、隣の家に住んでいる犬千代(34)
    と酒を飲んでいました。

    犬千代は、フィリピンから戻って来ていま
    した。

    「それにしても、犬千代のフィリピンでの
    大立ち回り何回聞いても凄いなー」と、
    藤吉郎が犬千代に酒を注ぎながら語ってい
    ました。

    犬千代は、フィリピンで特殊詐欺グループ
    のアジトに一人で乗り込んで主だった
    リーダーを叩き斬り、騙されて働かされて
    いた架け子(かけこ)を助けていました。

    「いやいや、俺は頭に来るとあかん男だ
    わー」と、これでも少しは大人になった
    犬千代でした。


    台所で、犬千代の妻まつ(26)と藤吉郎の
    妻ねね(24)が仲良く話していました。

    犬千代の妻まつは、あのキャバクラまつわ
    の犬千代のお気に入りの女の子でした。

    まつは、犬千代が自分の為に人を殺めてし
    まいフィリピンへ高飛びしなくてはいけな
    くなった犬千代をずーっと想っていました。

    「まつちゃんとはずーっと仲良くしていき
    たいな」と、ねねが言いました。

    「ねねちゃんとは、ずーっと仲良しだよ」
    と、まつが言いました。

    二人は本当の姉妹のように見えていました。


    足利義昭組長(36)がとうとう、信長を
    見限りました。

    二人の仲は、ずーっと前から冷え切ってい
    ましたが、しびれを切らしたのは義昭組長
    でした。

    信長は、

    「俺の信を裏切った者は許さない」

    という覚悟で義昭組長を潰しました。

    「自分の力でのし上がった訳でもないのに、
    室町連合を仕切れると思っていたのが笑わ
    せるよ」と、信長は吐き捨てました。

    義昭組長は京都から追放され、ここに
    室町連合は事実上滅亡しました。

    「うるさいハエが一匹消えた」と、信長は
    京都の夜の明かりを眺めていました。

    朝倉・浅井組の滅亡1573

    信長(39)は、東海、近畿に縄張りを確実
    に築き上げつつありました。

    そこで信長は、金ヶ崎抗争の決着をつける
    動きにでました。

    浅井組の本拠がある小谷山の組本部を織田
    組の組員で取り囲ませました。

    そして信長は、別働隊を朝倉組の本拠があ
    る一乗谷の朝倉組本部へ向かわせました。

    朝倉義景組長(40)は、組員の逃走や裏切
    りに遭い織田組に拘束されました。


    一方、浅井組の長政組長(28)は、小谷山
    の尾根筋に建てられた堅固な組事務所に籠
    っていました。

    お市(39)は、長政に離婚届の紙を突き出
    していました。

    「なんで?お市」と言って、長政が唖然と
    していました。

    「あなたは、私の兄を裏切り、この前の
    姉川の抗争でも負けて、このありさまです。 
    ヤクザの娘としてこんな男に愛想が尽きま
    した。」と、きっぱり言いました。

    「・・・・・・」長政は何も言えませんで
    した。

    「三人の娘は私が育てますので、よろしい」
    と、お市が冷たく言い切りました。

    お市たちの向かいの車が来たと、召使が知
    らせに入って来ました。

    お市は娘たちに向かって、「さあ、パパに
    挨拶しなさい」と、言いました。

    長女の茶々(4)が、「パパまたね」と、
    次女の初(3)が「パパバイバイ」と、
    三女の江(0)は、乳母が江の手を振らせ
    ていました。

    「あなた長い間お世話になりました」と、
    お市が言って部屋を出て行ってしまいま
    した。

    「・・・・・・・」長政は絶望のどん底に
    落ちっていっていました。

    しばらくして、お市が戻って来ました。

    長政は、お市が考えを改めたのかと思って
    少し明るい顔になりました。

    「言い忘れていたけど、子供達の養育費は
    毎月私の銀行口座に振り込んでよ」と、
    言って足早に出て行ってしまいました。

    長政は、どん底からさらにどん底へと落ち
    て行ってしまいました。

    長政は底なしのどん底から立ち直れず、
    浅井組は壊滅しました。


    長政の本宅の近くの舅の家の明かりを見て、
    「小うるさい舅と一緒の家でなかって良か
    った」と、お市は思っていました。

    向かいの車の後部座席にお市は座りました。

    召使たちが勢ぞろいしてお市親子に頭を下
    げる中を車は静かに動き出しました。

    車は、小谷山を下って行きました。

    「もう、泣けて来ちゃうわ・・・この年で
    シングルマザーよ、それも3人の子持ちよ、
    私この先どうしたら良いのよ。」と、
    お市が嘆いていました。

    「あっそうだ、マッチングアプリに早速
    登録しなきゃ」

    「えー、歳ねー、23歳は無理かな? 
    25歳ならクリスマスケーキ、ギリ売れる
    んじゃない? よし、25歳クリック」

    「プロフィールね、料理、掃除、洗濯
    着物の着付けや繕い物、茶道、華道、
    香道、テーブルマナー、冠婚葬祭の知識
    と書いてと、出来るとは書いてないから
    ね」

    「欠点は男の人の前では緊張してしまう
    ことですと、書いとけばうぶな女の子と
    大体の男は思うからね」

    「金持ちの良い男ゲットするぞー」と、
    気合が入って来たお市でした。


    お市が乗っている車をガチガチになって
    藤吉郎(36)が運転していました。

    藤吉郎は、お市が言った「金持ちの良い
    男ゲットするぞー」という言葉を聞いて、
    「俺が日本一の金持ちになったらお市様
    を振り向かせることが出来るのでは?」
    と、思って運転していました。

    藤吉郎は、お市様に声をかけたく思って
    いましたが、毎晩夢に出るほどに恋焦が
    れたお市様と一緒の車の中にいると思う
    と、緊張しすぎて言葉が出て来ませんで
    した。

    そんな時に、助手席に座っていた長女の
    茶々が、「ママ~この車おサルさんが運転
    しているよ~」と、後ろに向かって言いま
    した。

    「あっ、そう」と、お市はスマホに夢中で
    上の空でした。

    茶々は、藤吉郎に向かって「キーキー」と
    猿の鳴き声の真似をしました。

    藤吉郎も、「キー、キー」と茶々以上に
    本物にそっくりな猿の鳴き声をしてかえ
    しました。

    茶々は、「キャッキャ、キャッキャ」と
    笑いました。


    突然信長は、藤吉郎に浅井組のシマだった
    北近江三郡のシマを与えました。

    藤吉郎は、今浜の地を「長浜」と改め、
    長浜に羽柴組の組事務所を構えました。

    これは、信長の姪の茶々が藤吉郎に
    車の中で大変楽しませてもらったことを
    お市から聞いた信長からの藤吉郎への
    感謝の気持ちだったとは、藤吉郎は知り
    ませんでした。


    お市の夢を見ていた藤吉郎は、寝言で
    「お市様」と呟いていました。

    横で寝ていたねね(24)が、「このハゲ
    今なんて言った!」と、藤吉郎を叩き
    起こしました。

    「なんじゃーねね」

    「おみゃあさん、今何て言った?」

    「なんも言っとらんぞ」

    「いや、確かに『お市様』と、おみゃあ
    さんは言っただわー」と、ねねが怒って
    いました。

    「そんなことは言っとらん、あー思い出
    した、夢の中で美味いウリを食っとて、
    それがあまりにも美味いもんだから、
    おいちーおいちーと言ったのを、あみゃあ
    は、勘違いしたんだわ」と、苦し紛れの言
    い訳を藤吉郎がしました。

    「言い訳するところがすかん」と言って
    ねねは布団に潜り込んでしまいました。


    黄金のドクロ1574

    信長(40)は、元旦のことはじめに幹部
    たちを驚かす見世物を出しました。

    それは、元浅井組の浅井久政会長(48)、
    長政組長(29)と元朝倉組の朝倉義景
    組長(41)の全身を金粉で塗りたくって
    幹部たち一人一人に酌をさせて回らせま
    した。

    信長の幹部達は、この異常な光景を固唾
    を飲んで見守っていました。

    信長をこれほど異常な行動にかき立てた
    のは、彼らに対する信長の強い怒りにほ
    かなりませんでした。

    信長には、自分の信用を裏切った奴はと
    ことん憎むという悪弊がありました。


    「あんたね!やることがえげつないの!
    反省しなさいよ!」と、ことはじめの
    一連の話を知って帰蝶は怒り心頭でし
    た。

    「ごめんなさい。俺が悪かった!本当に
    反省しているから・・・」と、自分の
    怒りに負けたことを悔い改めている信長
    でした。


    長篠の抗争1575

    朝倉組と浅井組を壊滅させた信長は、長年
    目の上の瘤だった武田組へ勝負をかける
    決心をしました。

    武田組の信玄組長が麻薬の取り過ぎで急死
    したのも信長が決心した大きな理由でした。

    信玄組長は、日本一の武闘派で恐れられて
    いましたので、信長も直接対決は極力さけ
    て来ていました。

    信長は、自分が開いた武田組への
    『ヤクの道』が、こんな結果を生むとは思っ
    てもいませんでした。

    信玄組長が亡くなったと知っても、信長は
    慎重でした。

    藤吉郎を使って、武田組の組事務所に麻薬入
    りの浄水型ウオーターサーバーを売り歩かせ
    ました。

    その作戦は、藤吉郎の巧みな話術で売り込み
    に成功していきました。

    このウオーターサーバーは、麻薬を少しずつ
    溶かして行き、知らず知らずに組員を麻薬
    中毒にさせることが出来ました。


    武田組の武田勝頼組長(29)は、父親であ
    る信玄組長の三回忌法要を終えた後、三河
    の家康の縄張りに山猿連合の無敵のバイク
    隊を先頭に攻め込んで来ました。

    徳川組の長篠の組事務所をバイク隊が十重
    二十重(とえはたえ)に取り囲みました。

    浜松の徳川組本部にいた家康(33)は、2
    年半前の三方ヶ原の出入りで、武田組の
    山猿連合のバイク隊に手ひどい目に遭って
    いましたので、織田組の信長組長(41)に
    応援を頼みました。


    信長は、藤吉郎(38)と光秀(47)に密命
    を授けました。


    藤吉郎と弟の小一郎が乗ったトラックが、
    静かに徳川組の長篠の組事務所に近づい
    て行きました。

    何百台ものバイクが組事務所を取り囲ん
    でいました。

    「あ、あ、あ、兄者、本当にやるのかよ
    ?」と、小一郎が恐る恐る聞きました。

    「や、や、やらないでどうする」と、
    ビビりながら藤吉郎が答えました。

    藤吉郎が、「エイヤー」と、スイッチを
    押すとトラックのサイドパネルに織田組
    参上という大きなネオンサインが点きま
    した。

    それと同時に、拡声器から武田組を揶揄
    する罵声が大音響で流れ出しました。

    「小一郎、逃げろー」と、藤吉郎は
    小一郎にトラックの急発進を命令しまし
    た。

    異変に気が付いた山猿連合のバイク隊は、
    藤吉郎の乗るトラックを目掛けて追跡を始
    めました。

    藤吉郎たちは、トラックを国道151号線か
    ら新城インターチェンジへ向かって走って
    いました。

    「兄者、だんだん追っかけてきとるがや!」

    「ヤク中の山猿は頭に血がのぼると前後の
    見境がなくなるからなー」と、藤吉郎が言
    いました。

    新城インターチェンジから新東名高速道路
    に藤吉郎たちは入って行きました。

    その頃になると、藤吉郎たちのトラックに
    山猿連合のバイク隊が追い付いて来ました。

    「兄者、もう無理だ」と、小一郎が弱音を
    吐きました。

    「何言ってんだ、俺らみたいなもんは死ぬ
    気にならなければ浮かばれんと言っただろ
    う」と、藤吉郎は小一郎を励ましていまし
    た。

    とうとう、藤吉郎たちのトラックは山猿連
    合のバイク隊に取り囲まれてしまいました。

    そして、長篠設楽原 パーキングエリアへ
    藤吉郎たちのトラックを山猿連合のバイク
    隊が導いて入って行きました。

    「兄者、死ぬときは一緒に死にょーよ」と、
    絶望した顔で小一郎が呟きました。


    赤い無数のライトが一斉に点きました。

    長篠設楽原 パーキングエリアで待ち構えて
    いた警察のパトカーが山猿連合のバイク隊
    をぐるりと取り囲んでいました。


    信長の前に藤吉郎と光秀が控えていました。

    「サル、命がけの仕事ご苦労だった」

    「光秀、警察を裏で動かす手配あっぱれな
    働きだった」

    と、信長が褒めました。

    山猿連合のバイク隊は、信長が考えた、
    道路交通法違反、麻薬及び向精神薬取締法
    違反、銃刀法違反の三段構えで検挙させて
    潰すという方法が功を奏して壊滅しました。


    安土の客人1579

    信長(45)は、今後の自分の縄張りの拡大
    を考慮して、琵琶湖の畔の安土山に組本部
    を引っ越しさせました。

    「帰蝶、今度は湖の景色が絶景だろー」と、
    帰蝶に自慢していました。

    「そんなことより、193メートルで稲葉山
    よりは低くなったのは嬉しいのだけど、周
    りにコンビニも何もないじゃん」と、帰蝶
    は不服でした。

    力をつけた信長の下には、国内ならず海外
    からもお客人が来るようになっていました。

    そんな中、イタリアのマフィアの紹介で、
    1人の黒人の若者が信長の家にホームステ
    ーに来ました。

    「ワタシのナマエは、ヤスケです」と、
    その若者が言って挨拶したことから、
    みんなから、弥助(やすけ)と呼ばれる
    ようになりました。

    弥助18歳で2メートルを超える大男でし
    た。

    弥助は、日本文化が大好きで、中でも
    ヤクザと日本のドラァグクイーンに凄く
    関心がありました。

    「ワタシ 二ホンに ジロチョウさん
    と ナンジャさんに アイ二 来ました。
    」と、弥助が言いました。

    「じろちょう?」と、帰蝶が問い直しまし
    た。

    「ハイ、シミズのジロチョウさんデス」

    「あー、清水次郎長親分ね・・・200年も
    前に亡くなってるよ」と、帰蝶が言いま
    した。

    「シミズのオヤブンさん・・ナクナッタ」

    「二ホンいちのオヤブンさんにアイタかっ
    た」

    「弥助は、面白いね。 この人はね日本一
    じゃないけど、一応親分さんだよ」と、
    帰蝶は信長を指さして言いました。

    弥助は、

    「お控えなすって」

    信長が弥助の前に座ると、

    「さっそくのお控え、ありがとうござんす」

    「「手前、生まれはアフリカのモザンビー
    クで産湯を使い、育ちはイタリアのシチリ
    ア島、姓はヤ、名はスケ、人呼んでフリチ
    ンの弥助と発します」

    「弥助、立派な口上だ、どこで習ったんだ
    ?」と、信長が関心して聞きました。

    「ハイ、とらサンとニンキョウえいがミテ
    べんきょシタね」と、答えました。

    「仁義(じんぎ)、手打ち(てうち)、
    兄弟分(きょうだいぶん)、盃(さかずき
    )を交わす、イエますネ」

    「弥助は昔のヤクザが好きなんだね」と、
    信長が笑いながら言いました。

    「それからもう一人のナンジャさんって
    誰なの?」と、帰蝶が聞きました。

    「ハイ、ナンジャ・ゴールデンレッドリ
    バー知ってマスカ? 二ホンのユウメイ
    ドラァグクイーンですネ」

    「ワタシ、ゲイですネ、だからトッテモ
    あいたいデス」


    大坂十年抗争1580

    本願グループは、織田組に大阪のシマを渡
    すことになり、大阪十年抗争は終わりを告
    げました。

    この十年間は、織田組に敵対する組織が
    織田組包囲網を結成して織田組を東西南北
    から苦しめ、被害も小さくありませんでし
    た。

    正に、信長(46)にとって綱渡りの十年間
    でした。

    思えば、亡き斎藤道三組長が信長に、
    「古い体制を壊し、新しい時代を創るのは
    若き力だ」という言葉を信じてやって来た
    苦節の十年間でした。

    信長は、今のヤクザの中に淀んでいる時代
    遅れの考え方を憎んでいました。

    言い換えれば、江戸時代の侠客(きょうか
    く)が持っていた任侠道(にんきょうどう)
    「仁義を重んじ、弱きを助け、強きを挫く
    ために自己犠牲をも厭わない」ヤクザの
    復活を目指していました。

    「今のヤクザより弥助の方が侠客だ」と、
    信長は思っていました。


    信長は、光秀(52)の今までの功績を称え
    て、光秀に京都府の丹波のシマを与えまし
    た。

    光秀は、福知山に明智組の組事務所を開い
    て丹波一帯に睨みをきかせました。

    光秀は、織田組の中でも異色の頭脳派でし
    た。 政財界などの既得権を持っている
    人物との強いパイプを生かして信長組に
    貢献して来ていました。

    信長に重宝される反面、他幹部からの光秀
    への風当たりは強くなる一方でした。


    ある日、SNSのXに、織田組の佐久間信盛
    若頭補佐(52)の誹謗中傷の投稿がされま
    した。

    その投稿には、如何に佐久間若頭補佐が、
    大坂十年抗争の責任者として無能だったか
    と綴られていました。

    この誹謗中傷は、織田組内部の人間しか知
    れない情報を基に作られた可能性が高い
    悪質なものでした。

    運悪く、このXの投稿がバズってしまい
    多数のユーザーにいいねやリポストとされ
    てしまい、結果、テレビのワイドショーの
    美味しいおかずになってしまいました。

    それにより織田組の世間の風当たりが強く
    なっていきました。


    「組長、組に大変の迷惑をかけてしまいま
    した。 組の間違った恥を世間にさらして
    しまった以上、この佐久間を破門にして下
    さい。」と、決死の顔つきで信長に頼み込
    んでいました。

    佐久間のことを良く理解していた信長は、
    しばらく佐久間をじっと見つめていました。

    そして信長の口から、

    「佐久間を破門に処す」

    と、苦渋の言葉が漏れました。

    「ありがたき幸せ」と、佐久間は頭を床に
    つけて感謝を述べていました。

    この佐久間若頭補佐の引き際の良さを、
    織田組の組員は後々、
    「退き佐久間(のきさくま)」と、称し
    ました。

    しばらくして、織田組の佐久間若頭補佐
    の誹謗中傷のXの最初の投稿者のハンドル
    ネームが、TOKISHIということが分かりま
    した。


    「お疲れ様でした~」と、帰蝶が花束を
    林秀貞本部長(67)に手渡しました。

    「ヤクザが定年退職って変ですね。」と、
    林本部長が照れていました。

    「良いの、良いの、林本部長は十分働いて
    来られたんで。 それで、これから何をす
    る予定なんですか?」と、帰蝶が聞きまし
    た。

    「いやー、女房に長年迷惑ばっかしかけて
    来てたんで、柄にないけど二人で旅行でも
    行こうと思っています。」

    「うわ~素敵! 奥様きっと喜ぶわよ。
    あんたも早くこんなこと言えるようになっ
    てよね」と、帰蝶が信長に向かって言いま
    した。

    「信長組長、私の我がままを聞いて頂き
    ありがとうございました。」と、林本部長
    は、「色々あったがこの人の下で働けて
    本当に良かった」と、思っていました。

    「いつでも遊びに来いよ」と、信長が声を
    かけました。


    この時点で織田組には、5人の若頭補佐が
    いることになりました。

    柴田勝家若頭補佐(58)
    滝川一益若頭補佐(55)
    明智光秀若頭補佐(52)
    丹羽長秀若頭補佐(45)
    羽柴藤吉郎若頭補佐(43)

    そして、この5人は織田組の中の激しい
    出世争いに入っていくことになりました。


    武田組滅亡1582

    (煩悩タワー炎上3ヵ月前)

    畿内で絶対的な力をつけた信長(48)は
    甲斐、信濃にシマを持つ武田組の一掃に
    乗り出しました。

    一世風靡した「風林火山そば」の破れた旗
    が、街道の所々にはためいていました。

    信長が、黒塗りの車の後部座席に座って
    「あーあ、風林火山そば食いたかったのに」
    と、残念そうに言いました。

    信玄組長(51)亡き後は、風林火山そばが
    鳴かず飛ばずでそば屋の閉店ラッシュにな
    っていました。

    「信玄組長さんも、風林火山そば屋の
    フランチャイズ一本で勝負しとけば良かっ
    たのに、多角経営で事業を無理な拡大を
    したのが良くなかったかな」と、信長が
    武田組の滅亡の理由を考えていました。

    「その上、長期間に渡っての上杉組との
    安売り合戦が響いたかな?」

    信長は、抗争らしい抗争もなく、武田組
    の甲斐と信濃のシマを取ってしまいまし
    た。

    「帰りに、富士山を見て浜松で久しぶりに
    家康と会うのが楽しみだ」と、信長は思っ
    ていました。


    家康(40)は、信長組長へのおもてなし
    をあれこれ考えていました。

    「金に糸目を付けないで、信長組長が満足
    するおもてなしをしないと・・・・・
    あとがこわいよ~」と、家康は心の中で
    叫んでいました。

    「組長ー、信長組長がお着きです」と、
    家康の部下が言って来ました。

    「ま、ま、ま、マジー?」と、家康は青ざ
    めてしまいました。

    「浜松に来るのは一週間後だったのに~」
    と、家康がパニックているところへ、

    「家康~、久しぶりだったのー」と、
    信長が現れました。

    「ひえー」と、驚く家康に信長は、

    「お前相変わらずだなー」と、信長は家康
    の首に手を回して再会を楽しんでいました。

    「チース、こんなに早く着かれるとは思い
    もよらず大変失礼致しました。」と、家康
    が詫びると、

    「YouTubeの旅番組で行く予定の所を観た
    ら、なんか行った気になったんで行くの止
    めたんだよ、それでこんなに早くなっちま
    った。今の世の中、便利になったのー」と、
    信長が早くなった理由を家康に説明しまし
    た。


    次の日、信長は娘婿だった信康(20)の墓
    に手を合わせていました。

    「俺がお祝いに贈ったバイクで事故を起こ
    して家康の大切な息子を死なせてしまった
    ことが、・・・大変申し訳なく思っていた
    んだ。」と、信長が詫びました。

    「信長組長、そう言ってもらえて信康は幸
    せものです」と、家康が涙を流して答えて
    いました。


    信長が安土の組事務所に帰ると机の上に
    信長宛のメッセージが書かれた紙が一枚
    ありました。

    「あなたお帰り~、お仕事お疲れ様!
    私とお市ちゃんと二人でイタリアへ旅行
    に行って来ま~す。 お留守番お願いね。
    P.S. 料理は個別に冷凍してるので、
    チンして食べててね」という、帰蝶(47)
    からのメッセージがありました。

    「弥助ー、お前メシ作れるか?」と、
    メッセージを読んだ信長が叫びました。

    「ワタシ? めしダメね、でも、
    ダイジョウブ、ウーバーイーツあるネ」
    と、弥助(21)が答えました。


    夕食の後、信長(48)と弥助は相撲をと
    っていました。

    巨漢の弥助が面白いほど投げ飛ばされて
    いました。

    「お前は、体がでかいわりに相撲は弱い
    な」と、信長が笑って言いました。

    信長は、弥助と肌を合わせているうちに、
    信長の両刀遣い(バイセクシャル)の心
    に火を点けてしまいました。

    弥助も信長と同じような気持ちになって
    いました。

    気が付くと信長は、弥助の大きな黒い
    背中を見て腰を振り続けていました。 

    その大きな背中が波打ち、信長の征服欲
    を満たしていました。


    その信長と弥助の情事を遊びに来た蘭丸
    (17)がドアの陰から見てしまいました。


    光秀と家康1582

    (煩悩タワー炎上14日前)

    「ただいま~」と、帰蝶がイタリア旅行か
    ら帰って来ました。

    「やっぱり安土が落ち着くわ」

    「オーかえたネ、かんちょうネーサン」と、
    弥助が帰蝶を迎えました。

    「かんちょうじゃないでしょ、き・ちょう
    よ」と、帰蝶は旅の疲れがドッと出て来ま
    した。

    「あっ、帰蝶、明日から家康(40)が泊ま
    りに来るんだけど・・・」と、信長が恐る
    恐る言いました。

    「私は何もしないからね、あんた勝手にお
    世話してよ」と、帰蝶は投げやりに信長に
    言いました。

    「大丈夫、光秀にたのんでいるので・・・」
    と、信長が帰蝶を怒らせないように言い返し
    ました。


    「チース、お世話になります」と、家康が
    光秀に挨拶しました。

    つづけて家康は、

    「光秀殿、金ヶ崎抗争の時は貴殿がクリー
    ニング屋の車に乗って決死の覚悟で私と
    藤吉郎兄弟を助けに来て頂いことを家康
    死ぬまで忘れませぬので」と、家康は光秀
    の手を取って言いました。

    「信長組長は、もうじきに戻って参ります
    ので、しばらくはお部屋でごゆっくりして
    お過ごし下さい。」と、光秀が家康に言い
    部屋を出て行こうとしました。

    そうすると家康は光秀にすり寄り、
    「光秀殿は信長組長が怖くないのですか?」
    と、変な質問ししました。

    「いや、別に組長には可愛がってもらって
    おりますが・・・」と、光秀が戸惑って答
    えました。

    「いやー、私はね、信長組長が怖くて怖く
    て、第六天魔王って自称されているけど、
    私、昔ねその証拠を見たことがあるんだよ」
    と、あのヘビちんちん事件を家康は思い出
    していました。

    そんなことを家康が言っていると、
    「のぶながクミチョウ、かえってキタね」
    と、弥助が知らせに入って来ました。

    「ひーっ」と、家康が飛び上がっていまし
    た。


    光秀は、安土山の織田組本部から自分の
    組本部に車で向かっていました。

    光秀は、「光秀殿は信長組長が怖くないの
    ですか?」「第六天魔王」と、言っていた
    家康の言葉が気になっていました。


    信長は、家康の部屋に「初花」の茶器を飾
    ってあげていました。 この茶器は、縄張
    り一国分の価値以上があると言われていま
    した。

    家康は、茶器に疎くその「初花」が、中国
    の楊貴妃から室町連合足利義政8代目組長に
    渡り、義政組長が「初花」と命名したとい
    う曰く付きの名器だとは知る由もありませ
    んでした。

    信長の家康へのもてなしは、家康本人だけ
    でなく家康の幹部連中の奥様へと徹底して
    いて、今年流行の紅色地のシルクの帷子
    (かたびら)をお土産に持たせました。


    眠れない2日間を過ごした家康は、もうろ
    うとして出発の準備をしていました。 
    そして、間違って「初花」を自分の旅行
    カバンにしまってしまいました。

    「ヘビちんちんが夜な夜な襲って来たらと
    思うと、よちよち寝てられなかった」と、
    ぶつぶつ独り言を家康が言っていました。

    「おタヌキサマ、あさメシあるネ」と、
    弥助が入ってきました。

    黒人の大男に慣れていない家康は、これま
    た平常心を無くしてしまい、弥助の言葉が
    頭にまったく入っていませんでした。


    信長は、「畿内は織田組の完全なシマなの
    で安心して遊んで行ってくれ」と家康に言
    いました。

    家康は、安土での2日間の歓待を受けた後、
    京都、大阪、堺へ向かいました。


    愛宕百陰会1582

    (煩悩タワー炎上7日前)

    愛宕百陰会のメンバーが光をバックに座っ
    ていました。

    光秀(54)からはそのメンバー達の顔は、
    黒い陰になっていました。

    その陰の中の一人男が、

    「そろそろ信長を裏切る時なのでは?」

    と、光秀に迫っていました。

    光秀の人一倍強い出世欲を見抜いた愛宕百
    陰会のメンバーは、光秀の首を真綿で首を
    締めるように光秀を追い詰めて来ていまし
    た。

    金ケ崎抗争の時の光秀の小さな裏切りの
    証拠を握ってから愛宕百陰会は、光秀に急
    接近していきました。

    その後、愛宕百陰会は、佐久間若頭補佐の
    罠を光秀に加担させて光秀を完全に絡め取
    っていました。

    別の男が続けて光秀に、

    「お前には頂点を取る資格がある」

    と、言って光秀をそそのかそうとしていま
    した。

    そんな時に、光秀のスマホの電話がなりま
    した。


    「もしもし、光秀か? 信長だけど備中
    で毛利組と対峙しているサルから連絡が入
    って救援に来て欲しいと言って来やがった」

    「サルの事だから、俺に花を持たせようと
    考えておるに違いないが、お前の組を先遣
    隊として考えてるので、そのつもりで準備
    しておいてくれ」


    電話を光秀が切ると、また別の男が、

    「時は今、ワインが滴る 今宵かな」と、

    言ってワインを光秀に注ぐ男の顔を光秀は
    凝視していました。

    薄笑いを浮かべた愛宕百陰会の代表の
    千利休(60)の顔がありました。

    その時、外で大きなカミナリの音が鳴り
    ました。

    「あれは13年前、信長は我が堺を脅して
    信長のシマに強制的に入れてしまいよっ
    た。」と、凄い形相で利休が吐き捨てまし
    た。

    「その上、最近のあいつはまるで自分がこ
    の国の主になったような振舞だ。」と、
    利休は、怒りを隠しませんでした。

    既得権を死守したい愛宕百陰会のメンバー
    と既得権を破壊しようとしている信長との
    亀裂が取り返しがつかないところまで来て
    いました。

    信長が少人数で京にいるという千載一遇
    のチャンスを千利休は見逃しませんでし
    た。


    煩悩タワー炎上1582

    京都市内に、織田組を誇示するように
    煩悩タワービルがそびえていました。

    京都の景観を損なうその超高層ビルは
    京都市民から不評を買っていました。

    このビルを建てた信長には、深慮遠謀
    がありました。

    それは、京都市民に京都の景観を守る
    覚悟を持たせて、昔の古都の風景に
    戻すことでした。

    それが実現するならいつでもビルを
    壊す覚悟を持っていました。


    煩悩タワーは、最上階の信長の住居のみ
    が完成していました。

    その最上階で、

    「かんちょうネーサン、これトドイタね」
    と言って弥助が宅配の大きな段ボール箱を
    抱かえて持って来ました。

    「あんたね、何回いったら覚えるの、私の
    名前は「き・ちょうよ」

    「ハイ、わかりました。 かん・ちょう
    ネーサン」

    「あんたいい度胸してるわね」

    「女はアイキョ~ウ、ゲイは度胸~デス」

    「はい、はい、それあっちに置いといて」

    帰蝶は、段ボール箱を指さして弥助にあき
    れ果てて命令しました。


    弥助が去って行くと、蘭丸が怖い顔をして
    立っていました。

    「あら蘭丸ちゃん、そんな怖い顔してどう
    したの?」

    「別に・・・」

    「あっ、そうか! イタリアのお土産買っ
    てこなかったからすねてるのかな?」

    「そんなんじゃありませんよ」

    「ごめんごめん、次はちゃんと忘れずに
    買ってくるからね」


    信長(48)に呼ばれた光秀が煩悩タワー
    の地下駐車場へ車で入って来ました。

    車を運転していたのは明智組の斎藤利光
    若頭(48)でした。

    地下駐車場でエレベーターから出て来た
    お市が、バッタリ光秀に会いました。

    「光秀さん、いつもダンディーですね。」
    と、言いつつ光秀の身だしなみをチェック
    して懐具合を探ったお市でした。

    お市は「それでは」と、言って光秀と別れ
    たが直ぐに振り向いて光秀の背中に向かっ
    て「あっ、そうだ、あんな兄ですけど、
    末永く宜しくね!」と、言いました。


    最上階に着いた光秀を帰蝶がまず出迎えま
    した。

    「ようこそ光秀兄さん」と、光秀に話しか
    けました。

    光秀は、帰蝶がいつも自分に対して若頭補
    佐でなく兄さんと言ってくれるのが嬉しく
    思っていました。
     
    また「こんな妹がいたら良かったのに」と、
    光秀は思っていました。


    信長(48)は煩悩タワー最上階にある
    千利休が設計した茶室に光秀と二人でいま
    した。

    信長は、光秀のためにお茶を点てていまし
    た。

    「俺はこの国の為に働いてきたが、どうも
    国民には理解されていないとつくづく最近
    思うよ」と、部下の前で珍しく弱音を吐く
    信長でした。

    「国民のほとんどが、ミカン箱の中の腐っ
    たミカンを取り出す勇気がなく一緒に腐っ
    ていっているミカンだ。」

    「その元凶が愛宕百陰会だが、奴らを知れ
    ば知るほど闇が深いし巧妙だ」

    「でも、俺は奴らをいつか潰す」

    信長は、光秀に自分の胸の内を語っていま
    した。

    長い二人の時間が終わり、光秀は信長に別
    れを告げて帰ろうとしました。

    「結局は、誰を信じるかだ」

    と、光秀に向かって信長が言いました。


    光秀が、帰りの車の中で斎藤利光若頭に
    手配はどうだったかと聞きました。

    「万事整っております」

    光秀は、

    「仕掛けは本能タワーにあり」

    と呟いていました。


    光秀が帰って、帰蝶と二人で京都の夜景を
    見下ろしながらワインを飲んでいました。

    「信忠が生きていたら、今日で25歳になる
    んだね」と、義理の息子の死を帰蝶は自分
    の子のように悼んでいました。 

    信忠の仏壇の前には、お市が信忠の為に持
    って来てくれたハナショウブの花が飾られ
    ていました。

    信長は、夜景の中に信忠の顔を思い浮かべ
    ていました。

    帰蝶と二人だけの夜が深けていきました。

    「あんた明日、家康ちゃんとのゴルフで朝
    早いんじゃないの?」

    「そうだなー、そろそろ寝るか」と言って
    信長は自分のベッドルームへ向かいました。

    帰蝶は、わたしはこれからYouTubeの入浴
    ライブなの・・・

    それを聞いた信長はこけてしまいました。


    信長は、ベッドに横になったがなかなか
    寝付けなかったので、スマホに手をのばし
    ました。

    信長はYouTubeを開いて、帰蝶の入浴ライ
    ブが少し気になりましたが、見に行く勇気
    がなかたので、「おすすめ」に出て来ていた
    「本能寺の変、信長は死んでいなかった?」
    を観ることにしました。

    その中で、信長の最後の言葉、「是非に及
    ばす」という言葉が心に刺さりました。 
    「俺も人生最後はこの言葉を吐いて死にた
    いものだ」

    そんなことを考えているうちに信長は、
    眠ってしまいました。


    女の笑顔が出て来ました。 その女の顔が
    日めくりカレンダーのように色々な表情に
    変化して行き、最後は、その女の喘ぎ顔に
    なっていきました。 信長は、その喘ぎ顔
    に白いものをかけた瞬間目を覚ましました。

    股間に手をあてるとパンツが濡れていまし
    た。

    「なんて夜だ」

    帰蝶にバレないようにパンツを履き替えま
    した。

    その時、信長は異変に気が付きました。

    「蘭丸」と鋭く呼びました。

    蘭丸は直ぐに信長の部屋に入って来ました。

    「蘭丸、何か変だ、見て前れ」

    「はっ、」

    蘭丸が急ぎ戻って来ると、

    「防犯カメラに明智組の者たちが映って
    います。 奴らがビルに何かの細工をし
    たようで・・・」

    ビルの下から炎が押し迫っていました。

    「蘭丸!帰蝶と弥助を起こしてこい」
    と、信長が鋭く言いました。


    4人がエレベーターに乗って地下の
    秘密の逃げ道へ向かおうとしましたが、

    エレベーターのドアが開いた瞬間炎が
    ドアから噴き出して来ました。

    その炎を見て信長は、

    「なんて火だ!」

    と、叫んでしまいました。

    帰蝶は、「あんた、ここで死んだら
    あんた『なんて火だ!』が、あんたの
    最後の言葉として残るんだよ。 他に
    何か良い言葉なかたの?」と、帰蝶が
    詰め寄っていました。

    「じゃ、これは」と信長がひねり出した
    のが、

    『心頭滅却すれば火もまた涼し』

    「こんな時にそんな涼しい顔してそんな
    ことよっく言ってられるよね」と、帰蝶が
    あきれ果てていました。

    そんなやり取りをしていたので、信長たち
    は、完全に逃げ道を閉ざされてしまいまし
    た。

    「あっ、そうだあの段ボール」と、帰蝶が
    叫びました。


    帰蝶が宅配で届いていた段ボール箱を開け
    ると、中からフライングスーツが出て来ま
    した。「良かったー、これあんたと一緒に
    やろうと思ってネットショッピングで衝動
    買いしてたのよ」

    「これを着けてここから飛び降りたら助か
    るわ」

    「飛び降りる高さは足りているのか?」

    「大丈夫、最低300mだから、ここの高さ
    と同じよ」

    「あっ、でも3着しかないよ、2着買った
    ら1着おまけだったんだけど・・・」

    それを知った蘭丸は、弥助に「組長を頼
    むぞ」と言って部屋から飛び出して行っ
    てしまいました。

    エレベーターが落ちてた後に大きな空間
    が空いていました。

    真っ逆さまに紅蓮の炎へと落ちて行って
    しまった蘭丸の後を追いかけようとした
    信長を弥助と帰蝶が必死に止めていまし
    た。

    信長は、蘭丸を制し出来なかった自分を
    恨んでいました。


    3人は、蘭丸が落ちて行った下に向かっ
    て手を合わせていました。

    「さあ、あなた蘭丸ちゃんの命を無駄に
    してはいけないよ」

    帰蝶が信長を引っ張って屋上へと向かい
    ました。

    高所恐怖症の信長にとって300mの高さ
    から飛び降りるのは、死ぬより怖いこと
    でした。

    煩悩タワーは、煙に包まれようとしてい
    ました。

    弥助が、「ゴッホン、ゴッホン」とむせ
    ていました。

    足がすくんで中々飛び降りない信長に
    イラついて帰蝶は、

    「是非に及ばす」

    と言って帰蝶が信長をけり落としました。


    多くの京都市民が、巨大な火柱となった
    本能タワーを見上げていました。

    やがて、本能タワーは内側に吸いッ込まれ
    るように崩れて行きました。

    これは、信長が本能タワー建設時に一番
    重要視したことで、万が一の時は周りへの
    被害を最小限にするという設計志向の考え
    があったからでした。

    お陰で周りへの損害は、驚くほど少なくて
    すみました。

    炎と煙が本能タワーを包んでいきました。

    その周りを明智組が取り囲んでいました。


    光秀の三日天下1582


    信長とのゴルフの約束の為に早朝堺のホテ
    ルを発って煩悩タワーへ向かう途中に、
    家康のスマホがなりました。

    「ま、ま、ま、まじー」と、家康が叫んで
    しまいました。

    それは茶屋四郎からの煩悩タワー炎上で
    信長組長が亡くなったらしいという情報
    でした。

    先日、茶屋四郎がもう一泊堺に宿泊するよ
    うに家康に進めていたことで、家康は煩悩
    タワー炎上の災難から身を守ることが出来
    ました。

    茶屋四郎も愛宕百陰会のメンバーでした。


    光秀の懸命な捜索にもかかわらず、信長の
    身柄はみつかりませんでした。

    ある者は、煩悩タワーと一緒に崩れ落ちた
    と、

    織田組は、信長組長の突然の死で、指揮系統
    が混乱していました。


    光秀は、自分の正当性を訴えるために、

    「安土での家康の接待の落ち度があった
    と信長に無責任に責められたことや、
    丹波のシマよりもっと大きなシマをお前に
    あげると空約束を迫られたことや、数々の
    パワハラや、この国を最終的に支配したい
    と考えている信長の野心を正すために立ち
    上がった」と、日本全国の組長グループ
    LINEに書き込みました。


    藤吉郎は、毛利組との早期の手打ちを済ま
    せて、姫路の羽柴組の組本部に急いで戻る
    車の中で、「もうサルと呼んでくれる人が
    この世にいなくなった」と、信長組長を偲
    んでいました。

    その時、「サル」と言った茶々を思い出し
    ました。


    藤吉郎が率いる羽柴組連合の奇襲で明智組
    は、大敗しました。

    雨の中を光秀は一人で歩いていました。
    光秀は、子供の頃を思い出していました。
    妾の子だという劣等感から友達と遊ばない
    で一人勉強を続けていました。 

    「頭が良ければなんにでもなれる」と、光秀
    は信じて勉強を続けていました。

    突然、母が亡くなる時にもらったお守りの
    ことを思い出しました。

    「本当に困ったらこの中を見なさい」と母
    が亡くなる前に光秀に手渡したお守りでし
    た。

    その時のやせ細った母の手とは違う大きな
    手が、お守りを不器用な手つきで開けてい
    ました。

    お守りの中の小さな紙に「あなたの父さん
    は、斎藤道三です・・・・」と、書かれて
    いました。

    「帰蝶姐さんが俺の妹?」

    突然、光秀は後ろから男に刺されました。

    その男は、光秀が蹴落とした元織田組の
    佐久間若頭補佐でした。

    「TOKISHI、下手なハンドルネーム使い
    やがって」と、佐久間が吐き捨てて去って
    行きました。


    シチリア島1582

    (煩悩タワー炎上から2週間後)

    地中海の青い海が真下に広がっていま
    した。

    イタリア南部のシチリア島のカターニア・
    フォンターナロッサ空港に到着したプラ
    イベートジェット機から3人が降りて来ま
    した。

    その3人を迎えに来ていたのはイタリア
    マフィアのイエズス組の若頭補佐の
    ヴェリニャーノ(43)でした。


    青い地中海が暗い部屋とは対照的に眩しく
    輝いていました。

    長旅を終えた3人は、夢のような幻のよう
    な2週間を振り返っていました。

    煩悩タワー炎上からの2週間を・・・・・


    稲葉山にある織田組のお屋敷にお市(35)
    はいました。

    「兄さん死んじゃって、これから私どうす
    れば良いのよ?」と、嘆いていました。

    まぁー、帰蝶ちゃんから教わったYouTube
    で食いつなぐしかないかしら?」

    お市は、「美魔女シングルマザーの子育て
    奮闘チャンネル」というYouTubeを始めて
    いました。

    「そう言えば、YouTubeライブの投げ
    銭に日最高額の5万円を毎日してくれる
    太客が付いたのは、ホントに助かるわ」

    「確か、『ひでよし』って名前だたけ、
    なんでも最近仕事で大成したとか言ってた
    けど・・・」

    「えっ、もしかして私の体が目的だったり
    して・・・」

    「イケメンであそこが大きい人なら良いの
    だけど・・・」

    と、お市は相変わらず逞しく生きていまし
    た。


    「弥助、富士の山が見えるぞ」

    「あれワ、ふじサンないネ、エトナやまネ」

    トイレの窓から見えるエトナ山を見ながら
    信長はおしっこをしていました。

    「富士の山に向かってしょんべんするのは
    爽快じゃのー」と信長が言いました。

    「こらー、トイレはドア閉めるって何回
    言わすの、あんたは!」と、帰蝶が怒って
    信長に注意していました。


    ブラック信長

    南イタリアのミラノと呼ばれるカターニア
    の「マッシモ・ベッリーニ劇場」で弥助の
    サプライズ誕生日パーティーが開かれまし
    た。

    誕生日パーティーは、なんと日本から弥助
    の憧れの人のナンジャさんが「さあ祝おう
    ・・・・」と歌いながら登場して来て、
    弥助は両手を口に当てて凄く驚きました。

    なんとナンジャの後ろから蘭丸が登場した
    時は、信長も帰蝶も椅子からひっくり返っ
    ていました。


    蘭丸は、照れくさそうに信長たちの席に
    やって来ました。

    蘭丸は、「あの時、急にお腹が痛くなった
    ので、トイレに行って戻って来たら、みん
    ないなくて、仕方なく屋上にいったらフラ
    イングスーツが置いてあって・・・」と
    煩悩タワー炎上の時のいきさつを話しまし
    た。

    帰蝶が信長に、「えー、そういえばあんた
    あの時フライングスーツ着てたの?
    着るのなんの、帰蝶にけり落とされて着る
    暇なんて」

    「で、どうしてあんた無事だったの? 」

    「あー、あの時忘れてたんだけど、俺の
    寝巻は特注でいざという時にフライング
    スーツになるって藤吉郎がプレゼンとして
    呉れていてね・・・・」


    その時盛大な花火があがりました。
    その花火の下で、弥助と蘭丸も花火を散ら
    していました。

    「ナンて、ヒだ」と、弥助が言いました。


    盛大なパーティーが終わった次の日

    エトナ山が見えるテラスで朝食を信長は食
    べていました。

    「弥助、昨日ナンジャさんに会えて良かっ
    たの」と信長が言うと

    「ナンジャさん二アエタ、でもジロチョウ
    さんアエナかったネ」

    「あの世で会えるよ」と信長が言うと、

    「アノよ?」と弥助が反応しました。

    「そう、お前が死んで天国にいったら
    次郎長さんと会えるよ」

    「わたし、て・ん・ご・く? ノー、ノー、
    ノー、てんごくワタシいけないネ」

    「どうしていけないんだよ?」

    「ヤスケのかみサマ、てんごくイケるヒト、
    イケないヒト、キメるネ」

    「ヤスケのかみサマ、ひとりッコ、わが
    ママよー、二ホン、やおよろズーのカミ
    いますネ」

    「ヨーロッパも、ムカシ、ムカシ、やおよ
    ろズーのカミいたネ」

    「やま、カワ、もーり、みずウミにも
    いたネ」

    「かみサマ、ひとりサビシーね」

    「だったら、弥助が沢山神様の子供を産ん
    だら?」と、信長が言いました。

    「ヤスケ、のぶながサマのコドモほしいネ、
    でもムリネ、できるコト、できないコト、
    あるネ、できないコトしてワだめネ」

    「お前は偉いな、多くの人間は出来ないこ
    とを出来ると思ってるのに」と、信長は
    感心しました。

    信長は、「俺もその多くのバカの一人だっ
    たな」と、思っていました。


    カターニアの海岸沿いに建っているノルマ
    ンノ城が遠くに見える地中海の青い海上に、
    信長は一人ヨットを浮かべていました。

    信長は、船首のデッキに寝転んで青い空を
    見上げていました。 太陽がいっぱい信長
    に注いでいました。

    子供の頃、太陽を浴びて遊んでいた尾張の
    景色をなつかしんでいました。

    そんなことを思いつつ信長は深い眠りに落
    ちていってしまいました。

    信長が目覚めると夜になっていました。

    真っ暗な夜空にきらめく星

    天の川が亡くなった組長たちの笑顔に見え
    て、冷たい星の光に温もりが宿った気がし
    ました。

    信長は、ヨットの舳先への進み

    敦盛を舞い出しました。

    その信長の姿がやがて闇に溶けて、暗闇か
    ら敦盛を吟じている声のみが聞こえていま
    した。

    やがて、声も途絶えて暗闇だけが、

    黒い

    黒い 

    暗闇だけの世界がそこにありました。

    天下布武の代紋が

    海深く沈んでいきました。

     
     
    人生の意味、目的、価値、そしてどのように生きるべきかを、歴史小説を通して学んだ私なりの考えを記述して行きます。生き方に迷った時や、人間としてどうあるべきかを思い悩んだ時の指針となる「生きるための知恵」が伝わればと思っております。

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