
ハリのおたより
どういうわけか、女子高生の娘の足には、よく、何かが刺さる。誰かが切ってこぼした爪のかけらとか、硬くなったお米とか……どうやったらそんなもの刺さるの?ってものが刺さったりする。
そして、毎度よく騒ぐ。今回も、そのうちおさまるだろうと聞き流していたら、いつまでも「ありえない!」と騒いでいる。
見に行くと、右足の親指の脇に、ハリネズミの針が刺さっていた。踏んづけたのではなく、横から刺さっていた。
えー! どっから出てきたの? どうやって刺さったの?
ちゃんと掃除はしているし、一緒に暮らしていた頃だって、そんなこと起こらなかったのに。本当に、ありえなかった。

可愛いうちのハリネズミが亡くなって、もう二ヶ月以上になる。部屋中をお散歩しては、あちこちの隅っこにうんちを残していく子だった。
亡くなってからは、隅っこを掃除するたびに、うんち落ちてないかなって、探したりもしたけれど、意外とちゃんと掃除できていたみたいで、「落とし物」を見つけることはなかった。
それがここへきて、突然の針。赤ちゃんの頃に我が家に来て、大きくなる中でたくさん抜けた針。最初は拾い集めていたけれど、ある時、今後も増えるよねと捨ててしまった。そして、その頃から、針があまり抜けなくなった。だから、手元に針は残っていなかった。
亡くなった後も、針はしっかりと体についていて、「一本もらうね」なんてことはできなかった。もう、二度と手に入らないと思ったのに、突然、娘の足に刺さった針。どこから出てきて、どうやって刺さったんだろう……。
痛くて、懐かしくて、娘は泣いていた。刺さったところは、ちょっとぷくっと膨れていた。どうしてそうなっちゃったかは、本当にわからない。
「僕のことを忘れないでー」って針を飛ばしてきたんじゃない? という説が今のところ有力。
そういえばここ数日、庭のお墓に行けていない。それで針を届けてくれたのかしら? だとしたら、お墓に行かない方が、こうして会えたりするのかな?──ってのは冗談。
今、うちの近くでは、桑の実がたくさん落ちている。今どき桑の実なんて誰もとらないのか、アスファルトの上に落ちて潰れている。
あの子は桑の実が大好きだった。もっともっとと欲しがって、でも食べるときはよく噛んで。おりこうさんだったなぁ。「また来年」と思ってたのに、来年はなかったなぁ……って思いながら桑の木の前を通る。
桑の実がアスファルトを汚す様子が悲しくて、鳥さん、落ちる前に食べてくれないかなぁ、ありさん、さっさとおうちに運んでくれないかなぁ、って思ったりする。
では、そんなセンチメンタルな日々ばかり過ごしているかといえば、そうでもない。別れの予感からお別れまでを、十分に悲しんだせいか、今ではそんなに悲しくもない。──と文字にしたら、ちょっと涙が出た。
でも普段は、普通に忘れているし、写真も飾ってない。スマホの写真の整理で、しょっちゅう動画は見返している。もう、スマホの中にしかいない子になったと思っていたら、突然針が現れた。
嬉しいな。二度と手に入らないだろうから、どうやって保管したものか。
また忘れた頃に、どんな形ででも会いにきてくれたら嬉しいな。
待ってるよ!
(トップの絵は娘が中学生の時に描きました)