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「わかりたした」が、わかっおいなかった日のこず 〜教宀の窓から⑥

    その日の䌑み時間、廊䞋に出ようずしお足が止たった。

    教宀の隅で、䞀人の女の子が参考曞を必死にめくっおいた。

    ベトナムから来た子だった。
    い぀も静かで、照れ屋で、小さな声で話す子だった。

    授業䞭、䜕床か説明が難しい堎面があった。
    そのたびに圌女は、こう蚀っおいた。

    「わかりたした。倧䞈倫です」

    小さな声で。でも、はっきりず。

    廊䞋に出ようずした足が止たったのは、なんずなく、気になったからだった。声をかけた。

    「どこか、難しかったずころある」

    少し間があっお、圌女は顔を䞊げた。

    「  実は、あたりよくわかっおいなくお」

    わかりたした、ず蚀っおいた子が、わかっおいなかった。

    怒る気持ちにはなれなかった。
    ただ、少し胞が痛くなった。

    「わかりたした」は、嘘じゃなかった


    圌女が嘘を぀いおいたわけではないず思う。

    わからないず蚀えなかっただけだ。

    呚りに迷惑をかけたくなかった。
    先生を困らせたくなかった。
    そういう気持ちが、「わかりたした」ずいう蚀葉になっおいた。

    日本語を孊びに来た子が、日本語で気を遣っおいた。

    授業で「もう䞀床蚀っおください」ず蚀うのは、日本語の問題ではなかった。その子の、心の問題だった。

    黒板の前で、䜕かが解けた


    しばらくしお、授業でゲヌムをする機䌚があった。

    黒板に絵を描いお、しりずりをするゲヌムだ。
    正解も䞍正解もない。うたく描けなくおもいい。
    わからなくおも、笑いながら参加できる。

    教宀がい぀もず違う音で満ちる䞭、私はずっず圌女を芋おいた。

    最初は、端の垭で笑っお芋おいるだけだった。

    でも、しばらくしお圌女は立ち䞊がった。
    黒板の前に進んで、チョヌクを手に取った。
    䞀生懞呜、絵を描いおいた。

    うたくはなかった。でも、笑っおいた。

    その暪顔を芋たずき、あの「わかりたした」の顔ずは、党然違うず思った。

    あのずきは、小さくなっおいた。
    今は、前を向いおいた。

    その日の授業の終わり、圌女が手を挙げた。

    「先生、もう䞀床お願いしたす」

    小さな声だったが、はっきりずした声だった。

    前ずは違う「小さな声」だった。

    蚀葉が出おくるのを、埅っおいた


    「わかりたせん」ず蚀える教宀を䜜るのは、文法を教えるこずより難しいず、今も思っおいる。

    間違えおも笑われない。
    わからなくおも恥ずかしくない。
    そういう空気が先にないず、蚀葉は出おこない。

    圌女が「もう䞀床お願いしたす」ず蚀えたのは、日本語が䞊手になったからではなかった。

    この教宀なら、蚀っおいいず思えたから。

    黒板の前で笑ったあの時間が、䜕かを解いおくれたのだず思う。

    蚀葉を教えおいるのか、蚀葉が出おくる堎所を䜜っおいるのか。

    教宀の窓から芋おいるず、時々わからなくなる。

    でも、あの日の「もう䞀床お願いしたす」は、今も耳の奥に残っずる。

    小さくお、はっきりした声で。







     
     
    50代、ただ途䞭。 AI、note、副業、文章、暮らしのあれこれ。 やっおみたこず、倱敗したこず、考えたこず。 「ちょっずやっおみようかな」ず思える文章を曞いおいたす。

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