
「いつか、また、どこかで。」
震えた文字で書かれた手紙。
ずっと返事を出せずにいた手紙。
君は僕のともだちだ。
君はいつも綺麗で華やかだった。
でも、気さくで賑やかだった。
君がいると空気が柔らかくなった。
色んな事を話した。
夢だって語った。
本気で頬を引っ叩いてくれたのは
君だけだったかもしれない。
あんな男やめとけよって
本気で説教したのも僕だけだったと思う。
君は優しくてずるかった。
君は僕のともだちだ
君が倒れたと聞いた時、
本当に驚いた。
どこか遠い国のニュースのように
ひどく現実離れしていた。
お見舞いに行ったけど、
結局会えずじまいだった。
君が聴きたがっていた
CDを置いていった。
盆の明け。
少し肌寒くなってきた夜、
電話をくれた。
君の声が聴けたのが嬉しかった。
また、日常が戻ってくるような、
そんな気がした。
「ずっと歌っていて欲しいな」
もちろん。
ずっとそうする気でいた。
ずっと聴いていて欲しかった。
君は僕のともだちだ。
秋になって、風が揺れた。
君の白かった肌は、
とうとう透明になってしまった。
線香の香りの中、
金木犀の匂いがした。
君はやっぱり綺麗だった。
最後に、手紙をもらった。
置いていったCDに
宛名付きで挟んであった。
震えた文字でたった5文字、
感謝の言葉が書かれていた。
たった5文字のその中に、
何かが詰まってるんじゃないかと
何度も何度も読み返した。
読み返せど、読み返せど、
出てくるのは思い出ばかりだった。
「ずっと歌っていて欲しいな」
言葉は呪いみたいに焼きついた。
感情は波のように
引いては満ちてを繰り返す。
途端に、何も出来なくなった。
どうすればいいかわからなかった。
どう考えても受け止めきれなかった。
また引いて、また満ちて。
気づけば、何度目かの春がきた。
ほこりを被ったギターケースに
あの日のCDが入っていた。
君の為に歌った歌に
君の言葉が詰まっている気がした。
君はやっぱり、優しくてずるかった。
君は僕のともだちだ。
そして、僕は君のともだちだ。
震えた文字で書かれた手紙。
ずっと返事を出せずにいた手紙。
また、歌い始めたんだ。
遅くなったけど、
やっと返事を返せるよ。
「いつか、また、どこかで。」