
有給理由「ヘラクレスオオカブトを見にボルネオ島へ行きます」が社内に広まった日
会社員時代、私は社内で「休暇になると海外に逃亡する人」として知られていた。
コロナに入る少し前、年内最終出社日の忘年会で、私は乾杯だけして少し挨拶をし、ダッシュで帰った。翌朝早くから台湾に行く予定だったからだ。
当時よく一緒に仕事をしていた社長には、妙に納得された。
「なるほど、飲み会より明日の飛行機ね」
そうです。飲み会より明日の飛行機です。
絶対に飛行機✈️に乗るんです。
そんな私には、もうひとつ社内で有名になったエピソードがある。
ある年の有給申請で、私はこう書いた。
「ヘラクレスオオカブトを見に、ボルネオ島へ行くので有給をください」
当時の私は管理職だったので、申請先は社長だった。社長は特に驚いた様子もなく、承認してくれた。おそらく「またか」という感じだったと思う。
問題はその後だった。
どうやら社長から聞いた管理職の先輩が爆笑し、話は社内に広まったらしい。出社したら、空港で買った「いまいちおいしいのか謎」のチョコレートが、あっという間になくなった。

これはごく一部にだけあげた

ここで正直に言っておくと、私は虫にまったく興味がない。
本当に、1ミリもない。
だから最初は「夫と息子の2人で行けばいいんじゃない?」と思っていた。
息子がヘラクレスオオカブトにハマったのは保育園のころだった。図鑑を読み込み、動画を見て、いつかボルネオ島の本物を見たいと言い続けていた。夫も「せっかくなら家族で行こう」と言い出した。
でも、虫に興味のない私がボルネオ島へ行く理由が見当たらない。
すると夫はなぜか慌てて、ホテルの部屋をグレードアップした。さらに、私の好きなホテルスパも夫持ちになった。
そこまで言うなら、家族で行くしかない。
虫よりスパです。私の優先順位はそういうことです。

バルコニーにジャグジーがついたお部屋になった
ボルネオ島では、息子は目を輝かせていた。
ジャングルの中で本物のヘラクレスオオカブトを見たとき、彼は静かに、でも確かに興奮していた。私はというと、虫にはやっぱり1ミリも興味がなかったが、その顔を見ていたら、来てよかったとは思った。
スパも最高だった。

おいしかった!



子どもの「好き」に付き合うって、必ずしも親が同じ熱量で好きになることではないのかもしれない。
私は虫が好きになれなかった。でも「そんなに好きなら、本物を見に行ってみる?」という経験は、家族の中にちゃんと残っている。
ちなみに息子はその後、ヘラクレスオオカブトから生物部に進むかと思いきや、鉄道研究部に入り、今は建築に興味を持っている。子どもの興味は、まっすぐには育たない。でも、どこかでつながっているような気もしている。
そういえば今、息子の建築への興味から、スペインのガウディやアルハンブラ宮殿を見に行きたいと思っている。ヘラクレスオオカブトが、建築に変わっただけなのかもしれない。
子どもの好奇心に付き合う旅は、親が聖人になる旅ではない。
興味ゼロでもいい。ホテルとスパで釣られてもいい。それでも「一緒に見に行く」という経験は、あとから家族の中に残るものだと思っている。
だから私はまた、飛行機に乗るのだと思う。
飲み会より明日の飛行機。そして、できればSlackの届かない場所へ。
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