
étude ―あなたのためなら― #18 陽の当たる場所で息をする
私の卒業式の翌日、東条総合病院から現職の大臣への違法な献金が公となり、新聞の1面を飾った。そして長期に渡る脱税と、国からの助成金の不正受給が明るみに出た。
全て、海梛の内部告発によるものだった。
パパが院長の座から退くと同時に、着々とその準備を行っていた海梛は、勤務スタッフにも継続治療が必要な患者さんにも、何ら不都合のないように、驚くほどスムーズに病院を新しい継承先に引き継がせ、病院から「東条」の名前と、パパの不正に関わる人間だけを消し去った。
元々実家が資産家だったママは、パパと離婚すると逃げるように海外へ行ってしまった。
海梛はママの姓になった。
それだけでなく、海梛は協議離縁を成立させ、私を養女になる前の名前「天城優海禾」に戻した。
パパにはこれから長い裁判が待っている。
マンションにあった物や、ブランド品のバックや宝石なんかは全部売って、そのお金はboisへ、こども食堂の資金として使って欲しいと寄付をしたので、手元に残ったのは、ほんの少しの身の回り品と、ラズベリー色のクマ。
マンションのエントランスを出ると、外で待っていた海梛が、私を真っ直ぐに見て微笑む。
それが嬉しいのに、不安が顔を覗かせる。
もし、また海梛に何かあっても……私はもう二度と彼を救うことができない。
「優海禾、忘れないで。片方の犠牲の上で成り立つような関係ではいたくない」
まるで私の心を見透かすように言う。
「嘘をつかなくていいんだ。それだけで十分だよ」
お互いが守ってきた秘密は、もうどこにもない。
「もう暗闇の中で息をしなくてすむ」
「なぁに、それ? わかんないよ?」
「いいよ、わかんなくて」
海梛は笑うだけで、それ以上は教えてくれそうにない。
「ずっと一緒にいよう」
ふたりでした、いつかの約束。
秘密のなくなった私達は、本当の家族になる。
どうか、どうか少しでも長く、2人で同じ時間を過ごせますように――
END