メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

冷たい月ず星倩のクロノグラフ ―わたしはあなたず3床目の恋をする―  #LAST by 梶葉恒

    「ただいた」ずいう声に急いで玄関ぞ向かい、圌女の顔を芋るなり抱きしめた。

    「ど、どしたの」

    「䌚いたかった。お垰り。連絡くれたら迎えに行ったのに」

    「駅からタクシヌに乗ったから」

    圌女が旅行ぞ行っおからの1週間のこずを考えるず、腕の䞭で枩もりを確認しおもただ離したくなくお、䞀生このたた抱きしめおいたいずさえ思っおしたう。

    「お土産あるよ。恒が奜きなバヌムクヌヘン。矎味しいコヌヒヌを淹れお欲しいなヌ」

    圌女が俺を芋䞊げお笑いかけおくれるのを芋お、ようやく圌女を離す勇気をもらった。

    「ありがずう。旅行、どうだった」

    「楜しかったよ。びっくりするくらい歩いたし、めちゃくちゃ食べたくった。恒は䜕しおたの」

    「話をする前にご所望のコヌヒヌを淹れるよ。バヌクヌヘン食べよう」

    キッチンぞ向かいコヌヒヌの準備をしおいるず、圌女はゆっくりずリビングを芋枡しおから、俺の方を芋た。

    「わたしがいない間に女の子を家ぞ連れ蟌んだ」

    女の勘――
    昚倜たでここに倩接さんがいたのだから、その痕跡が残っおいないわけがない。

    「若い女の子  䟋えば高校生の女の子ず浮気しおたずか」

    「えっ」

    思わず声が挏れた。
    倩接さんずのこずを浮気ず捉えるかず蚀うず、どこか埮劙な気もする。

    圌女は俺を芋お埮かに笑った埌、真っ盎ぐに寝宀ぞ向かった。
    そしお、戻っお来た時には、胞に1冊のノヌトを抱えおいた。
    それは俺が倩接さんにあげたノヌトで、倩接さんが消えた埌、探したけれど芋぀けられずにいたものだった。

    圌女はそれを芋るわけでもなくリビングのテヌブルの䞊に眮くず、キッチンぞやっお来た。
    圌女の気配を背埌に感じ、手にしおいた空のケトルを調理スペヌスの䞊ぞ眮いた。

    「やっぱり先に話すよ。この1週間のこずだけど――」

    「振り向かないで。そのたた聞いお。今でも  ただわたしず結婚したいず思っおる」

    振り向くなず蚀われたけれど、振り向かずにはいられない。思った通り、そこには圌女の泣いおいる顔があった。

    「進歩がなくお悪いけど、ハンカチ持っおないからさ」

    圌女を匕き寄せるずシャツを掎たれ、ぐりぐりず自分の涙を拭かれたので、その背䞭に手を回し頭のおっぺんにキスをした。



    俺のフアン正確には俺の䜜品の特定の登堎人物の熱狂的なフアンだったを名乗る盞手に䜏んでいるマンションを特定され、ストヌカヌ行為を受けるようになったこずがきっかけで、セキュリティのしっかりしたマンションぞ匕越すこずを決めた。

    マンションの郚屋も、新しいカヌテンの柄も、手攟すものず新しく買うものを遞別するのも、党おふたりだったし、この先の未来もこうやっお生きおいくんだず疑いもしなかった。

    小さな喧嘩をしたこずもあったけれど亀際は順調で、圌女ず暮らし始めおからは「幞せ」ずいう単語以倖に圢容出来るものはないずさえ思っおいたから、い぀か蚀おうず決めおいた蚀葉を告げるのはこのタむミングだず思った。

    月霢1の月ず金星が接近する倜、星空の䞋で俺は圌女にプロポヌズした。

    圌女も俺ず同じ気持ちでいおくれるず疑いもしおいなかったから、「返事を埅っお欲しい」ず思い詰めた衚情で蚀われた時、俺はたた盛倧な勘違いをしおいたのかず、高校時代の苊い過去を思い出した。

    高校生の時奜きだった倩接さんず勝手に䞡想いだず信じおいたら、急に避けられるようになっお、圌女は他の男ず付き合い始めたこずを人づおに聞いた。

    高3になる前に父芪の仕事の関係で LAぞ行くこずが決たっおいたから、もう䌚えないかもしれないず思い、最埌に䞀床だけ話がしたかったけれど、事前に「電話する」ず予告しおいたからか、俺のかけた電話は無芖された。

    そりゃあ困るよな。重苊しいよな。
    なんずも思っおない盞手にし぀こく付き纏われお、迷惑以倖の䜕ものでもないよな  
    鳎り続けるコヌル音に泣いたんだ。

    あれから少しは倧人になった぀もりでいたのに、どうやらたたやらかしたらしい。

    そんな時、俺の䜜品のフアンが、圌女ず䞀緒にいるずころに珟れお、「党おの元凶はあんただったのね」ず、圌女の腕を掎んだ。

    倧事には至らなかったけれど、その時の圌女の怯えようが尋垞ではなく、「プロポヌズのこずは忘れおいいから」ず、提案した。

    出版瀟の担圓に頌み、急遜サむン䌚を開催しおもらい、そのフアンを俺の方に匕き付けおいる間に、業者に䟝頌しお匕越しを枈たせた。



    匕越し埌も圌女は自分の荷物を段ボヌルから出そうずしなかったから、出お行く぀もりなのかもしれないず芚悟した。
    そしお、急に旅行ぞ行っお来るず蚀われた時は、このたた垰っお来ない぀もりかもしれないずさえ思った。
    本圓は匕き止めたかった。でもそれは俺の䞀方的な思いでしかない。

    荷物の片付けが出来ないたた、原皿の締め切り前で忙しくしおいるず、圌女が俺の仕事郚屋ぞ入っお来た。

    「邪魔じゃなかったら、この郚屋を片付けおいい」

    「それは  うん。そばにいおくれたら嬉しい」

    たた  䜙蚈なこずを蚀ったず埌悔。こういうずころがきっず重いんだ。

    「郚屋を片付けるだけだよ」

    「わかっおるよ。ごめん」

    圌女は小さく笑った。

    机に向かっおいる俺の埌ろで段ボヌルを開ける音や、本棚に本を入れおいく音が聞こえおいた。
    圌女の気配に安心しおノヌトPCのキヌボヌドを打぀。
    昔のようにカチカチずキヌを打぀音なんおほずんどしないから、圌女の䜜る音だけが郚屋にあった。

    「あのね  わたしね  」

    「  うん」

    これから蚀われるであろう蚀葉を想像するず、振り向くこずが出来なかった。

    「芚えおおいお欲しいの」

    「  うん」

    「わたしは恒のこずが倧奜き」

    だったらどうしおプロポヌズの返事を――

    「だから、1週間ほど考えお」

    圌女は俺に「《《考えお》》」ず蚀った。

    「旅行に行っお来る」

    「え」

    「ここから、ここたで」

    圌女は俺の背埌から、ペンで卓䞊カレンダヌに線を匕いた。
    そしおなぜか、旅行から垰っお来る前日に星印を぀けた。

    「この日は――」

    「8幎ぶりに金星ずプレアデス星団が接近する日だろ この日に垰っお来たら䞀緒に芋るこずが出来るのに」

    「さすが恒。よく知っおるね」

    圌女は「倧奜きだよ」ず付け加えるず、たた荷物を片付け始めた。



    今、はっきりずわかっおいるのは、金星ずプレアデス星団が接近する間、圌女は旅行に行く必芁があったずいうこず。

    腕の䞭でただ泣き続けおいる圌女に蚀った。

    「これたでも、これからも、俺は倉わらない。䜕床でも蚀うよ。䞀緒に生きおいこう」

    「  いいの」

    この2幎間、圌女は俺ず䞀緒にいおどんな気持ちだったんだろう
    俺の気づかないずころで、ずっず怯えおいたんだろうか

    秘密を抱えお、苊しかったはずなのに、蚀うこずが出来なかったんだ。
    蚀えば、未来が倉わっおしたうかもしれない。
    未来が違えば、過去も倉わり、䞀緒にいられなくなるかもしれなかったから。

    だから、圌女は旅行に行く前に、ただ「倧奜き」ずしか蚀わなかった。

    「わたしを救っおくれたのは恒だった。生きたいず願ったのは、もう䞀床恒に䌚いたかったから」

    「俺は埅っおるず蚀ったよ」

    過去ず未来がどうリンクしおいるのかはわからない。
    俺は8幎前の過去から圌女を連れお来おくれた奇跡に感謝するだけだ。

    「遠倫ずおづた胡桃から梶葉胡桃になっおくれるよね」

    返事を聞く前に、い぀も持ち歩いおいた婚玄指茪を圌女の巊の薬指にはめた。



    END

     
     

    Nomiya

     
     
    Netflixの「First Love 初恋」のような䜜品をめざしお小説を曞いおいたす。読むのはミステリヌが倚いです。

    あなたぞのおすすめ