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ホタルイカで名残の春を|酒と肴 その三

    今年の春は家で過ごすことが多かったので、花粉症は軽くて済んだけれど何とも物足りない気分が残ってしまった。

    いつもの年なら晴れた空の下で木蓮なんかを眺めて春の訪れを楽しんだりするのだけれど、今年はそういった機会もないまま初夏を迎えてしまいそうな気配だ。
    そんな気分でテレビを見ていると、ホタルイカが豊漁なのに外食需要が減ってしまったとのニュース。冷蔵設備もいっぱいで漁獲制限を行うとのこと。

    ということで今回のテーマ(肴)は名残のホタルイカを選ぶ。春の食材を料理する事でくさくさした気分を季節の余韻で塗りかえることにした。

    スーパーに行き鮮魚コーナーを覗くと、富山湾で獲れた大粒なホタルイカが並んでいたので2パック手にとる。ここは地元の野菜も充実しているのでクレソンも購入、これもそろそろ旬を過ぎる頃だ。

    で作ったのがこちら。

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    なるべくたくさんのホタルイカを食べたかったのでトマトソースのパスタに。
    細かくたたいたホタルイカを入れているので濃厚な味わい、彩りに細かく刻んだクレソンの茎を散らす。クレソンのサラダは爽やかな辛味と苦味でパスタと相性が良かった。

    窓を開けると初夏の風がカーテンを揺らしたので泡盛のソーダ割りを合わせることに。家に新玉ねぎが余っていたのでホタルイカとマリネにしたものもつまみにする。
    いい気分で何杯目かの泡盛を口に運ぶ。何度も読んだ草野心平の『酒味酒菜』を読み返す。

    パスタもマリネも食べきってしまって、僅かに残ったクレソンのサラダをちょこちょこと摘まむ昼下がりは静かだ。
    普段なら子供たちの遊ぶ声が外から聞こえてくるけれど、この頃はたまにしか耳にしない。

    出掛けて過ごすばかりが季節を感じる方法ではないとあらためて気づいた。


    メニューと材料
    ホタルイカのパスタ(ホタルイカ、トマト缶、ニンニク、唐辛子、塩、胡椒)
    クレソンのサラダ(クレソン、オリーブ油、わさび、醤油、レモン汁)
    ホタルイカのマリネ(ホタルイカ、新玉ねぎ、オリーブ油、塩、レモン汁)

    酒と肴|その二 チリビーンズで願う夏の日
    酒と肴|その四 馬刺しと暮らし
     
     
     
    飲食系書店「本と豆料理 豆千」の店主。食にまつわる古書を中心に新刊本も取り扱い。 コンセプトは“ビールが呑める大人の図書室“、各種アルコールとつまみ、軽食に甘味もご提供。御書印承り。営業情報はnote、Xから。 埼玉県川口市本町3-3-16オーパスホームズ川口101※建物裏側

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