夜を越えて君に会いにきた
池袋で語り明かした夜が、何度あっただろう。
その日の稽古を振り返っては、
台詞の解釈を同期と話し合ったり
思うように演じられない悩みを先輩に相談したり。
朝まで眠らず語って、そのまま次の日のクラスの稽古を見学。
芝居漬けの日々だった。
そんな稽古場の主は、あまり先生らしくない人だった。
誰より先陣を切ってふざけに行くし、面白くてチャーミングで情熱的で、ちょっと魔法が使える不思議な人だった。
先生は「同じ釜の飯を食う仲間」をとても大切にしていた。
稽古が終わると、稽古場は炊事場となり、宴会場へとその様子を変える。
貧乏生活を送る役者陣にとって、先生や仲間と食べられる料理と空間が、どれほど安心できるものだったろう。
芝居も、稽古場も、大好きだった。
縁あって、舞台やマイク前で芝居をさせてもらうことも何度かあった。
金額としては本当に少額であっても、「仕事」としてお金をいただいた時の感動は、それはそれはとてつもないものだった。
夢が叶っていく、それを実際に形として受け取ったような気がした。
役者時代の後半、私は子どもショーに出演させてもらう機会を何度かいただいた。
ぬいぐるみアクターにとっては、体の小さい人が良い役になれるという特徴があり、未経験なのに主役を任され驚いた。
そんな中、今も忘れらないショーがある。
大きめのホールで、本編が終わってから観客席の花道で握手をしていく時間があった。
私は、その役でいることで、たくさんの「ありがとう」とパワーをいただいた。
笑顔いっぱいの子どもたち、涙ぐむおばあさん。
手の、温かさ。
私は病気で役者を辞めることになってしまったけれど、あの日の子どもショーがきっかけとなり、その後、子どもと関わる仕事に就くことになった。
舞台のライトから、
子どもたちの笑顔へ。
拍手から、
「先生!」と呼ぶ声へ。
私の夢は、形を変えて、今も続いている。
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こちらは #夜を越えて君に会いにきた
という企画参加用に書き下ろしたエッセイです。
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