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夜を越えて君に会いにきた

「2週間、毎日学校に来れるか賭けをしようよ。」
「やだ。」
クラスの男子の提案を、私は二文字で切り捨てた。

私は、高校にほとんど行っていなかった。
そんな私に、ある日クラスの男子が賭けを持ちかけてきたのだ。

「ならさ、2週間休まず学校に来れたら、購買のもの奢るよ。」
「あ、じゃあ俺も奢るよ。きっちり2週間、絶対休まずに来れたら、だけど。」
何人かの男子が話に乗ってきた。

『どうせこの賭けは成立しないだろう』
その空気感が、負けず嫌いの私に火をつけた。
「いいよ、やる。全員しっかり奢ってもらうからね!」

毎朝、同じバスと電車に乗る。
「おはよう」の時間に「おはよう」と挨拶を交わして門をくぐり、教室に入る。
朝の小テストを受ける私を見て、先生の驚く顔。
「あと何日!」と、カウントダウンをする友人。
他の人には当たり前の、私には非日常の日々だった。


そんなある日。
父が家を出た。
両親は不仲で母が家出することはあったが、父が帰らないことは初めてだった。

狼狽える母と弟。
私は、その夜ひとりで考えた。
この二人を、これから先は私が支えなくてはいけない。
不思議と不安や絶望感はなく、とても冷静だった。
やることは、明確だったからだ。


翌日、私は学校へ向かった。
2週間の賭けに勝つためという意地に突き動かされて。
そして、学校生活をまともに過ごしてこなかった自分でも、最後に何かひとつだけでも成し遂げたいという想いを抱えて。

『2週間絶対に、学校を休まない。』
それはもう、みんなとの『賭け』というより『約束』のようになっていた。

2週間が経ったその日。
「私の勝ち!なに奢ってもらおうかな。」
消しゴムや鉛筆、紙パックのお茶。
なんて事ない購買の商品は、私の努力で勝ち取った戦利品である。
それらを大切にカバンにしまった。

窓から射し込む西日、揺れるカーテン、並んだ机、笑い声の響く教室。
なんて縁遠い景色。

私が学校に来ることは、もうなかった。



タイトル「最後の2週間、賭けをした。」
(792文字)

こちらは #夜を越えて君に会いにきた
という企画参加用に書き下ろしたエッセイです。

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