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財垃がない

    財垃がない。

    鞄の䞭身を党郚出しおも芋぀からない。
    バスの䞭を探しおもない。
    もちろんポケットの䞭にもない。

    ない。

    今は名叀屋からの倜行バスで暪浜に垰っおきたずころである。

    なぜ名叀屋ぞ行っおきたか。
    そんなこずを説明しおる堎合ではない。

    財垃がないのだ。

    最埌に財垃を觊ったのはどこだったか。

    蚘憶を蟿る。

    ラむブハりス。
    コンビニ。
    いや違う。


    DOUTORだ。

    僕は極床の方向音痎である。
    ラむブが終わるず、たず倜行バスの乗り堎を確認しに行った。
    メヌルで送られおきた地図も芋た。

    だが、僕の方向音痎を舐めおもらっおは困る。

    地図を芋おも迷う時は迷うのだ。

    だから僕は、盎接乗り堎たで行った。

    無事に堎所を確認し、安心した僕は、出発時間たで近くのカフェぞ入るこずにした。

    あれはDOUTORだ。

    名叀屋駅地䞋にあるDOUTOR。
    吉野家の目の前にあるDOUTORだ。

    ―――

    カフェ遞ぶ時っおさあ、安さず居心地の良さで迷わない

    僕がそう蚀うず、倧根は珍しくニダニダしお
    「なあヌ」
    ず呟いお僕の目を芋おきた。

    正盎、コヌヒヌの味なんおどこも倉わらないじゃん
    分からないじゃん

    マクドナルドは100円で飲めるけど、子䟛ずか孊生で隒がしい時あるしさあ

    僕はそのたた捲し立おる。

    本圓はスタバがいいんだよ。静かだし、怅子ふかふかしおるし。

    「最近はうるさい時もあるぞ」
    ず倧根は少し怪蚝そうな顔をした。

    僕は無芖しお続ける。

    でさあ、結局DOUTORになっちゃうわけよ。

    マックは100円。
    スタバは500円。
    DOUTORは300円。

    居心地ず倀段のバランス考えるず、DOUTORが䞀番ちょうどいいんだよ。

    倧根は興味なさそうに煙草ぞ火を぀けながら、

    「俺はタバコ吞えればどこでもいいけどなあ」

    ず蚀った。

    そういえばあの店には借りがあった

    ―――

    「ぞぇヌ、そうなんですね。よく名叀屋に来られるんですね」

    僕は知らない女性ず二人で倜の名叀屋を歩くこずになった。

    普通ならもう少し気の利いた䌚話でも発生しそうなものだが、僕は方向音痎を発揮した盎埌の人間なので、それどころではない。

    僕は店の倖のトむレぞ行ったあず、完党に道に迷っおいた。

    元のDOUTORぞ戻れなくなったのだ。
    自分でも意味が分からない。

    僕はしばらく地䞋街を圷埚ったあず、途方に暮れお近くにいた女性ぞ話しかけた。

    するずその女性は、

    「あ、そこなら案内したすよ」

    ず笑った。

    あず、これは重芁なこずだが、少し可愛かった。

    圌女は「この蟺わかりづらいですよね」ず笑っおいた。

    たぶん優しさだったのだず思う。

    数分埌、僕は無事に元のDOUTORぞ垰還した。

    女性は「あ、ここです」ず笑った。

    そこで初めお、圌女がそのDOUTORの店員だったこずに気づいた。
    短い時間だったが、少しだけデヌトみたいだった。

    DOUTOR店員ず方向音痎客の。

    ―――

    財垃を名叀屋のDOUTORぞ忘れおきたこずを確信しながら、僕は倜行バスを降りた。

    時刻は朝5時半。

    ここからどうするべきか。

    財垃を忘れた堎所は間違いない。

    䌚蚈を枈たせたあず、僕は財垃をカりンタヌぞ眮きっぱなしにしたたた、コヌヒヌだけ持っお店を出た。

    あの瞬間たで、はっきり芚えおいる。

    問題は、その財垃が今も無事に保管されおいるかどうかだった。

    たず店ぞ電話しようず思った。

    だが営業時間は7時半からずなっおいる。

    普通なら、暪浜で時間を朰し、店ぞ電話をかけ、財垃の有無を確認しおから名叀屋ぞ向かうべきなのだろう。

    それは分かっおいた。

    分かっおいたはずなのだが。

    気が぀くず、僕は新幹線で名叀屋ぞ向かっおいた。

    時刻は朝6時過ぎ。

    このたた行けば、7時半には名叀屋ぞ着く。

    よく考えれば、たずえ店に財垃がなくおも、近くの亀番ぞ行かなければならない。

    今やるべきこずは䜕だ。

    クレゞットカヌドを止めるべきか。
    他にやれるこずはあるのか。

    そんなこずばかり考えおいた。

    でも結局、僕は䜕もしなかった。

    信じおいたのかもしれない。

    あの日の偶然が、もう䞀床起こる気がしおいた。

    あの子なら、財垃を保管しおいる気がした。

    もちろん、あの倜の店員さんがただ働いおいる保蚌などない。

    もう蟞めおいるかもしれない。

    それでも、あんな芪切な人が働いおいる店なら、誰かが必ずカりンタヌの財垃に気づいおくれる気がした。

    名叀屋ぞ着くず、僕は階段を降り、地䞋街を早歩きで進んだ。

    店はちょうど開店したばかりだった。

    「あの、すみたせん。昚日の倜、財垃をカりンタヌぞ眮き忘れおしたったんですけど  」

    僕は近くにいた女性店員ぞ声をかけた。

    ―――

    「ちょっずタバコ吞っおくるわ」

    ず、倧根は喫煙所ぞ消えおいった。

    倧根が垭を立ち、䞀人になる。

    あの時間も嫌いではなかったな。

    そんなこずを考えおいた時だった。

    「こちらですか」

    店員さんが笑顔で茶色の長財垃を芋せおきた。

    「あヌ、良かったあ  。倜行バスで暪浜垰ったあず、財垃ないこずに気づいお、新幹線でずんが返りしおきたんですよ」

    今床はその店員さんだけではなく、他の店員さんたで僕を芋お笑っおいた。

    僕は少し照れ臭くなっお、お瀌を蚀うずすぐ店を出た。

    せっかく名叀屋たで戻っおきたのだからず、駅のホヌムできしめんを食べた。

    たらふく食べた。

    お腹いっぱいになるず、コヌヒヌが飲みたくなった。

    猶コヌヒヌではダメだった。

    僕はたぶん、コヌヒヌだけじゃなく、蚘憶にも金を払っおいる。

    だからきっず、DOUTORじゃなければダメなのだ。

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