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Photo bymiyabe_hotaru

音声燻製

     うらぶれた路地の片隅にその店はあった。
    『くんせいや』
     どんなものでも一流の燻製品に変えるという。

    「すみません」
     一人の男がくんせいやの暖簾をくぐった。
    「こいつの声を燻製にしていただけませんか?」
     男がさしだしたのは一匹のニワトリ。
     ずっとコケッコー、コケコケ鳴きわめいている。
    「ひよこの頃から育てたピーすけです。朝の五時から甲高い声で鳴きつづけるもので、ご近所から迷惑と言われましてね。せめて声をスモーキーなワントーン抑えたものに変えられないかと」
     店主は難しい顔で腕を組み、やがてうなづいた。
    「失敗するかもしれませんが、やってみましょう」

     仕上がりの連絡をうけ、男は再びくんせいやに赴いた。
     店主が奥からゆらりと登場する。
     店主の両手の上にいるのは、ピーすけだ。
    「ピー……すけ?」
    「失敗しました」
     店主が重々しくスモークドチキンを男に手渡した。
     ナイフとフォークで丁寧に切り分ける。
     ぱくり。
    「ピーすけ、うめぇ」
     男の目から涙がこぼれた。

    *

    『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』

    たらはかにさんの【#毎週ショートショートnote】に参加しています。

    【毎週ショートショートnote】『ショートショート書いてみませんか?』お題発表!10/30|たらはかに(田原にか)|note


     

     
     
    大阪府在住 / ショートショート好き / 観葉植物大好き

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