
耳で聞いてた「第1話」カセットテープの思い出
カセットテープが全盛期だった頃、アニメの曲が入ったテープを買ってもらうのは、子供にとって最高に特別なイベントだった。
だけど、そこには今のサブスク時代では考えられないような、ほろ苦い「罠」が潜んでいた。
「じゃない方」の洗礼
タイトルを信じて、買ってもらったアニメ主題歌のオムニバステープ。
知ってるアニメの曲だけど、歌っている人が違う…地味なショックだった。
それでも「次はドラえもんの曲だ」とワクワクしながら待っていると
流れてきたのはお馴染みの「こんなこといいな~」ではなく、
「ぼっくのドラえもんが、まっちをあるっけば〜」という全く知らない歌。
あの時の「これじゃない……」というショックは、今でも思い出せる。
贅沢なドラマ仕立ての「怪物くん」
一方で、同じテープでも宝物になった記憶もある。
大好きだった『怪物くん』のテープは、今思えばかなり豪華なドラマ仕立ての構成だった。
怪物くん、オオカミ男、ドラキュラ、フランケン、そしてヒロシくん。
キャラクターたちが賑やかにわちゃわちゃと喋り出し、「次は私の番です」なんて曲紹介をしてイメージソングが始まる。それぞれのキャラに専用の歌があるのが嬉しくて、何度も何度も繰り返し聴いた。
これって今のドラマCDみたいなもの?あの頃からあったんだ。
音だけの世界が「動いた」日
そして、そのテープの最後には、テレビ版の第1話が収録されていた。
映像のない「音だけ」の第1話。
アニメの本編は、ヒロシが怪物屋敷に飛び込んだ野球のボールを探しにいくという回なんだけど、お化け屋敷のような屋敷にこわごわ入るヒロシ。
物音がしてビビるヒロシ。ってな感じで映像がないと何が何やら、の世界。
画面が見えないということに子供の私は、その音の断片から必死に想像を膨らませ、何度も聴くお気に入りのテープだった。
それからずいぶん経って、何かの機会でようやくその「第1話」をテレビで観ることができた時のこと。何度も耳にしたあのセリフ、あの効果音に合わせて、怪物くんたちが画面の中でいきいきと動き回っている。
「ああ、ここはこういう場面だったんだ!」
長年、頭の中の想像力だけで補ってきたピースが、本物の映像と合致した瞬間のあの感動。それは、便利になった今ではなかなか味わえない、音から入った世代だけの特別な体験だったと思う。