
赤ん坊のわたし【創作風】
わたしは宴会場にいた。知らない女たちと一緒に。
司会の男がマイクを片手に質問を投げかける。よくわからないけれど、クイズを楽しむようにきゃっきゃっとはしゃいだ。
グラスに赤ワインがそそがれた。久しぶりだ。
昔、悪酔いをしたことを夫に諌められて、なかなか飲む気がわかなくなっていた。ーーけれど、今日は自由だ。美味しい。楽しい。ふわふわとした感覚に包まれる。
会場を取り囲む黒いスーツの男たちが、テーブルへ移動を促す。7cmのヒールをカツカツとならし、女たちは移動する。目の前には、大きな箱が並べられている。
ここには、赤ん坊が入っていることを、会場にいるみんなが知っている。この赤ん坊は私たち自身。私たちは彼女たちを殺すためにここに集まっている。
一番手前の箱が開けられた。
ーーわたしだ。生後4か月くらいのふっくらとした、裸の赤ん坊。かわいい。目を閉じて、眠っているかのようにふぅーっと息を吐いた。気持ちよさそう。
ほんとは、彼女はもう息絶えているはずだった。冷たく動かなくなった姿を想像していた。でも、生きていた。動揺が隠せない。
司会の男は、いかにもプロフェッショナルらしい堂々とした態度で、「私が対応する」と言い放った。
けれど、急に怖くなった。さっきまでは楽しいだけだった時間。けれど、目の前の赤ん坊が愛おしく、涙がぼろぼろと止まらない。
触れるのが怖くて、少し離れたところから、もう一度赤ん坊をじっと見つめる。
目の前の赤ん坊は、確かにわたしだ。娘じゃない。彼女は5歳だもの、絶対に違う。大丈夫。
自分に言い聞かせていると、どこからか声がする。
「本当に大丈夫なの?赤ん坊のわたしを殺しても?」
私の声だ。自分を大切にすれば、大丈夫なんて言えないはず。私のことを大事に想ってくれる人たちの顔が浮かぶ。心が大きく傷ついて、張り裂けそうだ。
ーーここで目が覚めた。この夢はメッセージだ。
まずは、誰よりも自分自身を大事に扱わなくては。やわらかな赤ん坊でなくても。どんな欠点をもっていても。