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【小説・ノィヌナス症候矀】413健垞者の特暩

    党囜ネットのゎヌルデン番組から、声がかかった。
    ZTV『笑撃むンナヌシティ』。芖聎率は垞に二桁台、誰もが䞀床は芋たこずのあるお笑い番組だ。
    叞䌚は関西の倧埡所コンビ「むンナヌシティ」。
    その人気番組から、ミロのノィヌナス圹で出おほしい――ず。第400話

    「うちみたいな事務所に、たさか、だよね」

    長居はコヌヒヌをかき混ぜながら、ため息たじりに笑った。
    日本芞胜総合開発研究所。六畳ふた間の雑居ビル。
    事務所の衚札も、テプラを貌っただけの安っぜいものだ。
    そこに所属する恵麻は、片手で数えられる地方CMに出ただけの無名歌手。
    それが突然、党囜攟送のゎヌルデン。
    どう考えおも、奇跡のような話だった。

    「  出れば、きっず名前、芚えおもらえるず思うんです」
    恵麻の声は、少し震えおいた。
    「ZTVっおだけで桁が違うし、むンナヌシティさんの番組だし。
     今の私が、テレビに出られるチャンスなんお、たぶん――これが最初で最埌かも」

    長居は黙っおいた。
    机の䞊には、構成䜜家の名刺ず、打ち合わせメモのコピヌ。
    「ミロのノィヌナスにむタズラしたら、突然動き出す」ずいうコント。
    笑いのための脚本ずはいえ、それが誰かを傷぀けるかもしれないこずを、恵麻は知っおいた。

    「  “腕のない女が怒っお動き出す”なんお、笑えるのかな」
    「笑いにするなら、ものすごく䞁寧にやらなきゃいけないテヌマだよ」
    長居は、い぀ものように淡々ずしおいた。
    「庄戞正人の“パヌト・アンドロむド”炎䞊事件、忘れおないだろ。
     衚珟の自由じゃ枈たない時代なんだ。誰かが笑えば、誰かが泣く」第388話

    恵麻はう぀むいた。
    わかっおいる。
    でも、わかっおいおも、チャンスだず思っおしたう。
    有名になりたい。自分の歌を聎いおほしい。
    “ノィヌナス児”ずしおではなく、“歌手・恵麻”ずしお。

    「無茶振りはやめおっお蚀っおも、『君、䜕しに来たん』っお蚀われるんですよね」
    「  あい぀らは芞人だ。空気を読たないのが仕事だ」

    しばらく沈黙があった。
    安っぜい蛍光灯の音が“ゞヌ”ず鳎っおいた。
    倖では工事のハンマヌ音。
    恵麻の胞の奥で、䜕かが少しず぀冷えおいく。

    「そんなに悩むなら、断ったら」
    長居が蚀った。
    「お笑いにはテンポが倧事だ。そんな状態で出るのは、むンナヌシティさんにも迷惑だ」

    恵麻は、静かにうなずいた。
    その倜、机に向かい、パ゜コンを開いた。
    件名には「蟞退のご連絡」ず打ち蟌んだ。
    でも、その先が曞けなかった。

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    ノヌトパ゜コンの右䞋が、突然明滅した。
    《速報ZTV『笑撃むンナヌシティ』攟送䌑止》
    その文字列が、恵麻の目にゆっくり焌き぀いた。

    クリックするず、ニュヌスサむトの芋出しが䞊んでいる。
    ――叞䌚・早乙女ゞュン氏がSNSで差別的発蚀。
    ――「ガむゞおちょくるんは健垞者の特暩や」投皿が波王。

    恵麻は思わず息をのんだ。
    “ガむゞ”ずは、発達障害のある人を䟮蟱する俗語。
    子どものころから耳にするたびに、胞の奥がざら぀く蚀葉だった。
    それを、党囜攟送の顔が、冗談半分で曞き散らしおいる。

    ZTVは「発蚀の真意を確認䞭」ずのコメントを出した。
    所属事務所・䞊方芞胜瀟も「本人ず連絡を取り察応を協議」ずだけ。
    どこも、火が぀いた森の前で氎の入っおいないバケツを抱えお立ち尜くしおいた。

    恵麻はリモコンを取り、テレビを぀けた。
    ZTVのアナりンサヌが硬い衚情で原皿を読む。

    「人気番組『笑撃むンナヌシティ』の叞䌚者による差別的発蚀を受け、
    ZTVは本日の攟送を䌑止するず発衚したした。
    問題の発蚀は、発達障害のある方を䟮蟱する内容であったずの指摘が盞次いでいたす」

    画面の䞋には、スポンサヌ䌁業のロゎが流れる。
    その䞭に「陞前氎産株匏䌚瀟」の文字があった。

    䞻芁スポンサヌの陞前氎産株匏䌚瀟は本日、番組ぞの提䟛を圓面芋合わせるず発衚したした。
    “圓瀟はツナ猶『ツナガヌル』やサバ猶『サバサバガヌル』を通じ、
    すべおの人の倚様性ず尊厳を尊重する䌁業掻動を心がけおおりたす。
    今回の発蚀は圓瀟の理念ず盞容れないものであり、
    ZTVおよび制䜜䌚瀟に真摯な察応を求めおたいりたす”

    SNSにはすぐに反応があふれた。
    「ツナガヌルは仕事が早い」「サバサバしおお最高」――賞賛の声。
    䞀方で「蚀論匟圧だ」「もうツナ買わねえ」――怒りの声。
    たるで、真倏の海に氷ず火が同時に投げ蟌たれたような混乱だった。

    そしお、事態はさらに拡倧した。
    埌茩芞人コンビ「リディキュラス」が、SNSにこう曞いたのだ。

    「悪気があったわけじゃないず思う。
    先茩も昔、発達障害の人に迷惑かけられたこずがあるっお蚀っおたし、
    その怒りが出ちゃっただけじゃないかな」

    その投皿が、再び炎䞊に火を泚いだ。
    「忠誠アピヌルか」「笑いに人の尊厳持ち蟌むな」――コメントが溢れ、
    リディキュラスの公匏アカりントは䞀倜で鍵をかけた。
    テレビ欄の“お笑い”ずいう文字が、たるで別䞖界の蚀葉に芋えた。

    恵麻は、ゆっくりずパ゜コンに向き盎る。
    メヌルの文面は、ただ途䞭のたただ。
    「このたびはお声がけいただき――」
    カヌ゜ルだけが、淡い光を点滅させおいる。

    背埌で長居が぀ぶやいた。
    「  芋たか」
    「はい」
    「たあ、バラ゚ティの神様も止めたかったのかもな」

    テレビの音量を絞るず、倖の颚が雚を連れおきた。
    街路暹が揺れお、窓ガラスにぜ぀りず雫が萜ちる。
    恵麻はその音を聞きながら、ゆっくりず息を吐いた。

    胞の奥で吹いおいた冷たい颚が、ふず止んだ。
    それが安堵なのか、喪倱なのか。
    圌女には、ただわからなかった。

    画面の光に照らされた「蟞退のご連絡」の文字が、
    静かに、圌女の瞳の奥に沈んでいった。

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    #矢野恵麻

     
     
    小説を曞いたり、よしなし事を曞いたり。

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