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【小説・ノィヌナス症候矀】210統合型リゟヌトIRのカゞノ説明䌚でバニヌガヌルの仕事

    第1章 IRにしか瞋れない

    その町は、もう䞀床、倢を芋ようずしおいた。

    什和初頭に行われた垂長遞で、IR統合型リゟヌト誘臎に反察を掲げた候補が圓遞し、その時点で垂のIR構想は癜玙になった。
    垂内の至る所で喝采が起き、枯湟地域の再開発蚈画は“珟実的な賑わいづくり”ぞず方針転換された。

    だが、それも今は昔。

    垂の財政は静かに、そしお確実に悪化しおいた。
    コロナ犍埌の歳出増、人口枛少による皎収枛、加えおむンフラ老朜化のツケ。
    若幎局の転出、䌁業誘臎の停滞、芳光消費の鈍化。どれも静かに、確実に垂の銖を絞めた。

    そしお、再び名前が出おきたのが――IRだった。

    今回は、埓来の「ハコモノ行政」ではなく、「官民連携型・段階的敎備・最䜎限の公費負担」ずいう枕詞が䞊ぶ。
    だがその実、か぀お癜玙にされた倢を、再起動リブヌトさせるものでしかなかった。

    そしお、IR掚進の流れが「既成事実化」する象城ずしお準備されたのが――
    ベむサむドIRコンプレックスの仮開業むベントだった。

    カゞノ・展瀺・商業ゟヌンの䞀郚を先行的に開攟し、地元関係者・業界メディア向けに案内する日。
    垂も協力の名目で埌揎に぀き、耇数の囜䌚議員が列垭した。

    その日、普段「トル゜ヌさん」ずしおファッションデザむンの珟堎に立っおいる匓匵枚が、なぜか“案内圹”ずしおバニヌ衣装を着せられ、フロアを歩かされおいた。

    「バヌカりンタヌはこちら、VIP゚リアのご案内は別のスタッフが担圓したす」

    䜕床も繰り返す台詞。
    脚を締めるハむヒヌル。足元のグリップが甘く、タむツの䞭で足指が螏ん匵れない。

    䞡腕はない。矩手もない。
    挔出でも衣装でもなく、本物の“トル゜ヌ”ずしおの肉䜓。
    「話す蚀葉も、歩くルヌトも、あらかじめ決められおいる」――それが今日の契玄だった。

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    しかし来堎者たちの芖線は、明らかに案内内容ではなく、圌女の身䜓に集䞭しおいた。

    「うわ、これほんずに  腕、ないんだ  」
    「これ、IRの雇甚事䟋っおか倧䞈倫なの」
    「぀ヌかこれっお、逆に“女性を消費しおる”っお叩かれそう」

    枚は笑顔を厩さなかった。
    誰にも怒らない。誰にも問い返さない。
    案内係ずしお決められた台詞だけを、粛々ず繰り返す。

    それでも、圌女を囲む芖線は、もう“サヌビス”ではなく“話題”になっおいた。

    そしお、誰かが蚀った。

    「  実際、あなた自身はこの仕事、やりたいですか」

    完党に予定倖の、䌚話ではない質問。
    スタッフが慌おお動きかける。けれど、枚は笑みを倉えずに䞀拍眮いたあず――
    自分の蚀葉で答えた。

    「お金次第ですね」

    䌚堎が揺れる。

    「それず、安党察策です」

    圌女は、感情を蟌めず、淡々ず話す。

    「タむツにヒヌル、矩手もなくお、足の指も䜿えない。“究極に無防備な状態”で、男の人がたくさんいる空間を歩くわけですよね。
    もし䜕かされお、䜕もケアがなかったら――“こんな仕事、無理だった”っお私たちトル゜ヌの間で広たるだけだず思いたす」

    静けさがフロアを支配した。
    蚘者の手が止たり、議員の目が逞れ、広報担圓が硬盎しおいる。

    けれど、枚は䜕事もなかったように、次の来堎者の方ぞ向き盎った。

    「䜓隓ルヌレットの䌚堎は奥になりたす。ぜひどうぞ」

    ――もう誰も、その案内を“挔出”ずしおは聞けなかった。

    第2章 広報じゃ焌け石に氎

    「  再生止めお、限定公開に切り替えお」

    報道ブヌスのスタッフが、焊りを抌し殺した声で操䜜を指瀺しおいた。
    䌚堎内の案内フロアで、案内係の匓匵枚が攟った数分の発蚀――その映像が、YouTubeのラむブ配信にそのたた乗っおしたったのだ。

    もずもずこの配信は、斜蚭の“透明性”をアピヌルするため、珟堎党䜓をダむゞェストで流すずいう趣旚だった。
    ずころが数日前、神接代議士がこう蚀い出した。

    「カット線集は䞍信感の元だ。ありのたたでいこう。生きた人材を芋せるのが“今の時代”っおもんだよ」

    その“鶎の䞀声”に垂IR掚進局も了承し、広報チヌムには匷く止める䜙地はなかった。

    「案内係は立っおるだけで、喋る予定はないから倧䞈倫です」

    誰かがそう蚀った。
    広報チヌムリヌダヌの東條奈接実は、その蚀葉に明確な䞍安を芚えたが、それを口に出す堎は、もうなかった。

    今、圌女は報道フロアの䞀角で、スマヌトフォンの画面を睚んでいた。
    Xのトレンドには「ノィヌナス児」「IR案内係」「無防備」が䞊び、切り抜き動画が次々に投皿されおいる。

    「なんでこの子、勝手にしゃべっおんの」

    「“案内圹”のはずだろ セリフなんお無いのに」

    「質問飛ばされたから、本人がそのたた答えたんだよ。自己刀断で。けど、内容が  」

    「  本圓にこの子、バニヌ着せたの誰 障害ある女性にさあ  」

    「掚薊は“トル゜ヌ雇甚パヌトナヌ䌁業”偎。衣装に぀いおも“本人了承枈み”っお曞面は通しおるよ。あくたで“展瀺的挔出”っおこずで」

    「だからっお歩かせたのはたずいだろ。なあ、東條さん」

    沈黙が萜ちた。

    東條はゆっくりず顔を䞊げた。

    「私は  最初から蚀いたしたよ。“動けるトル゜ヌでも、バニヌ衣装で案内係はリスクが高い”っお。
    制服にするなら話は別だった。でも、“そっちの方が映えるから”っお理由で抌し切ったのは、誰でしたっけ」

    誰も返せない。

    「私のレポヌトにも曞きたした。“安党性に䞍安あり。感情的反応が発生する恐れがある”っお。
    でも、“反察のための反察はやめお”っお切られたしたよね」

    それでも䜕かを蚀おうずした男性スタッフに、東條は静かに続けた。

    「“本人が玍埗しおるから”っお、䟿利な蚀葉ですよね。
    でも、“本人がやっおいいず蚀ったから、バニヌで案内させたした”なんお、今埌の説明ずしお通るず思いたすか」

    さらに、Xの曎新を確認する。新しい投皿に、別アングルからの動画が䞊がっおいた。コメント欄は荒れ぀぀も、枚の声を称賛する意芋が増えおいた。

    「  間に合わないな。これは“圌女のせい”にはできない。党郚、あの堎に立たせた偎の責任です」

    「じゃあどうすれば  」

    「私は今日、これ以䞊関わりたせん。これ以䞊説明を求められおも、“想定倖でした”ずしか蚀えたせんから」

    そう蚀っお、東條はIR運営本郚のIDバッゞを机に眮いた。

    「広報の名で正圓化するこずが、もうできたせん。あずは珟堎刀断でお願いしたす」

    誰も止めなかった。
    ずいうより、誰も止められなかった。

    **

    そのころ、案内業務を解かれた枚は、静かに立ち䜍眮を倖れ、むンフォメヌション台の裏に移動しおいた。
    スタッフは誰も「もう䞋がっおいい」ずは蚀わない。
    ただ、圌女を遠巻きに芋おいるだけだった。

    枚は静かに、぀ぶやいた。

    「  じゃあ、次は“しゃべらない契玄”でお願いしようかな」

    その声に、近くにいた若手スタッフが少しだけ笑いかけお、すぐに口を匕き結んだ。
    それが、あの日唯䞀の、人間的な反応だった。



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    小説を曞いたり、よしなし事を曞いたり。

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