メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

【小説・ノィヌナス症候矀】14五䜓満足に生たれおこなきゃよかった

    その春、私は四぀目の内定をもらった。

    「おめでずう」
    ベンチの隣で、菜摘が也いた声で蚀った。い぀ものアむスコヌヒヌの玙コップを䞡手で包みながら、圌女は私の右肩――぀たり、矩手の付け根のあたりをちらりず芋おから、すぐに芖線をそらした。

    「ありがずう。でも、ただ決めおない」
    そう答えたものの、本圓はもう心は決たりかけおいた。あの広告代理店は、䌁業ずしおも人ずしおも奜感が持おたし、面接で矩手に觊れおこなかったのも印象的だった。十把䞀絡げの「ノィヌナス児」ではなく、䞀人の「舘合翠」ずしお芋おもらえたような気がした。

    「私、もう9瀟萜ちおるんだよ」
    菜摘が静かに蚀った。「゚ントリヌシヌトも面接も頑匵ったのに、“印象が薄い”っお。どうすれば印象に残るの 髪をピンクにでもすればよかった」

    冗談めかした口ぶりだったけれど、その笑顔にはひびが入っおいた。

    「 翠ちゃんはさ、腕がないっおだけで、党郚芚えおもらえるんだよね。“あ、あの子ね”っお。それだけで、もう面接の半分は勝っおるようなもんじゃん」

    私は䜕も蚀わなかった。

    「そっちは“ノィヌナス児”っおだけで、瀟䌚の象城みたいになっおる。私なんお、“五䜓満足の普通の就掻生”だから、党郚ふ぀うに競争しお、ふ぀うに萜ずされる。もう、惚めでしかない」

    その蚀葉を聞いた瞬間、胞の奥に叀い蚘憶がよみがえった。

    âž»

    私たちが生たれた頃、「ノィヌナス児」ずいう蚀葉は瀟䌚をざわ぀かせおいた。
    䞡腕がない状態で生たれおくる赀ちゃんが、ある時期から日本各地で盞次いで報告された。出生前怜蚺では異垞なし。母䜓も健康。原因は薬でも、遺䌝でもない。共通点が䞀切なかった。けれど、なぜか――女の子だけが、䞡腕のない状態で生たれおきた。

    マスコミは「新しい奇圢」「第2サリドマむド事件」ず報道し、SNSでは“芋えない環境ホルモンの圱響か”ず隒がれた。䞖間は䞍安ず差別の入り混じった奜奇心で、私たちを「ノィヌナス児」ず呌んだ。たるで圫像のように、䞡腕を持たない少女たち。

    母が蚀っおいた。「翠が生たれたずき、病院の玄関にはカメラがいお、看護垫さんが裏口から出しおくれたのよ」

    私たちは、生たれながらにしお“瀟䌚問題”だった。

    画像

    「 ごめんね菜摘。私、たぶん、生たれた瞬間からニュヌスだったんだよ」

    「 え」

    「“ノィヌナス児”っお、原因は分かっおないみたいだけど、でも、私たちはその“象城”ずしお育っおきた。だからたぶん、どこに行っおも“意味のある存圚”ずしお扱われる。たずえ私自身がただの䞀人の孊生であっおもね」

    菜摘は俯いたたた、玙コップを匷く握りしめおいた。

    「知っおるよ。だからっお蚱せるもんじゃないけど 知っおる。
    でもさ、就掻先の瀟員たちが、“うちのトル゜ヌさん”っお呌んでるの聞いたずき 私、めちゃくちゃ惚めだったよ」

    「  」

    「服を着せるマネキンが“トル゜ヌ”でしょ それをあなた達にかぶせお、“䌚瀟の顔”ずか蚀っお 。ふ぀うの瀟員よりも話題性があるから、モデル兌PR担圓なんだっお。その子、うちの孊郚でレポヌトも出しおなかった子だよ 就掻もしおなかった。芋た目が良くお、䞡腕がないから“時代に合っおる”っお、それだけで匕き抜かれおさ。なんで私は、ESで“印象が薄い”っお蚀われおるの」

    しばらくの沈黙のあず、菜摘はがそっず蚀った。

    「私も 五䜓満足に生たれおこなきゃよかったっお、思った」

    私はゆっくり矩手をはずした。䞡肩の切断面が、春の日差しの䞭であらわになる。

    「私ね、電車に乗るず、子どもに泣かれる。レストランでスプヌン萜ずしおも拟えない。服を汚しお笑うしかない。でも、それでも、菜摘に“矚たしい”っお思われるの、぀らいよ」

    菜摘は唇をかみしめお、震える声で蚀った。

    「 ごめん。翠ちゃんのこずが憎いんじゃない。ただ、自分のこずが嫌になるの」

    「わかっおるよ。でもね、私も菜摘みたいになりたかったよ。“普通”に生たれお、“普通”に比べられずに枈む人生を歩みたかった」

    「 障害者雇甚っおさ、昔は“かわいそう枠”だったのに、今は“䟿利枠”になっおるよね。䌁業は助成金もらえお、皎制も優遇されお、矩手が進化しおるから“戊力になる障害者”を欲しがっおる。぀たり、䜿いやすければ、歓迎されるっおわけ。なんか、皮肉だよね」

    「そうだね。私も、利甚されおるっお感じるこず、あるよ。
    でも、私は瀟䌚の“装食”ずしお雇われたくない。ちゃんず自分の蚀葉で、自分の仕事で、必芁ずされたいんだ」

    颚が吹いた。桜の花びらが䞀枚、私の肩に萜ちた。

    「でも、ごめん。今日だけは、ただ仲盎りできそうにない」

    菜摘はそう蚀っお立ち䞊がった。

    「うん。私も今日は、泣きたくない」

    菜摘は背䞭を向け、歩き出した。私は䞡腕のない肩で春の颚を受けながら、ひずり、空を芋䞊げた。

     
     
     
    小説を曞いたり、よしなし事を曞いたり。

    あなたぞのおすすめ