伊勢型紙を始めたあとで、祖父も彫っていたと知った。
伊勢型紙を知っていますか?
着物などの生地に模様を染めるために
使われてきた型紙で、
三重県鈴鹿市の伝統工芸です。
和紙を加工した型地紙に、
彫刻刀で細かな模様を彫っていきます。
私が暮らす鈴鹿では身近な伝統工芸ですが、
県外では知らない方も多いかもしれません。
私が伊勢型紙を初めて知ったのは、
中学生の頃でした。
学校で伊勢型紙の
しおりを作ったことがあります。
地元の伝統工芸なので、
存在そのものは身近だったけれど、
そのときはまさか、
大人になって自分が伊勢型紙を
習うことになるなんて思ってもいませんでした。
それでも、どこか気になるものでは
あったんだと思います。
それから何十年も経って。
以前の職場で一緒だった年上の友人が、
仕事を辞めたあとに伊勢型紙を始めました。
「一度、体験してみない?」
そんな感じで誘ってもらって、
私も体験に行くことに。
実際に彫ってみたら、
「これ、スキかも!」
細かい作業を黙々と続ける。
私はそんなに集中力があるタイプだと
思っていなかったのに、
やり始めると意外と止まらない!!
結局、そのまま私も
伊勢型紙を習い始めました。
「芸術の血は、おじいちゃんからだな~」
伊勢型紙を始めてから、
父にこんなことを言われました。
「芸術の血は、おじいちゃんからだな~」
おじいちゃん。
父方の祖父です。
祖父は私がかなり
小さい頃に亡くなっています。
私が知っていた祖父の姿は、
「お花の先生」。
だから父の言葉を聞いても、
「まあ、お花の先生だったからね」
くらいに思っていました。
すると父が、
「おじいちゃん、
昔は伊勢型紙の仕事しとったぞ」
・・・・・・え?
初めて聞いたけど?
バラバラだった話がつながった。
そこで、
ふと思い出したことがありました。
そういえば祖父の親戚に、
伊勢型紙をしていた人がいたような・・・
気になったので聞いてみると、
少しずつ話がつながってきました。
祖父の妹が、伊勢型紙の職人さんの
ところへお嫁に行っていたそうです。
どうやらその縁で、祖父も伊勢型紙の
仕事をするようになったらしい。
農業の合間に、下請けのような形で
仕事をしていたと聞きました。
でも昭和の初め頃には、伊勢型紙の
仕事もだんだん厳しくなっていたようです。
祖父は、
「これではだめだ」
と考えたらしい。
そこから祖父の人生は、
また別の方向へ進んでいきます。
そして後に、私が知っている
「お花の先生」の
祖父につながっていきました。
知らずに、同じものを始めていた。
不思議なのは、私は祖父が
伊勢型紙をしていたことを
知らなかったことです。
祖父がやっていたから、
「私もやってみたい!」
と思ったわけではありません。
中学生の頃に伊勢型紙を知って、
なんとなく興味があった。
大人になって友人に
誘われて体験してみたら、
「これスキかも!」
と思った。
ただ、それだけ。
そして始めたあとになって、
祖父も伊勢型紙を
彫っていたことを知りました。
父は「芸術の血はおじいちゃんから」と
言ったけれど、
本当に血なのかどうかは分かりません。
ちなみに父も、
父の兄弟も、芸術にはまったく興味なし。
・・・・・・一代、どこ行った?(笑)
でも、何も知らなかった孫の私が、
何十年も経って祖父と
同じ伊勢型紙を彫っている。
そう考えると、
なんだか面白いなと思います。
今だったら、聞きたいことがたくさんある。
祖父がもう少し長く生きて
くれていたらな~と思うことがあります。
どんな柄を彫っていたの?
どんな道具を使っていたの?
伊勢型紙の仕事は好きだった?
大変だった?
そして、どうしてお花の先生になったの?
今だったら、
聞いてみたいことがたくさんあります。
でも、祖父が亡くなった頃の
私はまだ小さな子ども。
そんなことを聞こうなんて
思うはずもありません。
だから今は、父から聞いた話や
親戚から聞いた話をつなぎ合わせながら、
「おじいちゃんって、こんな人だったのかな」
と想像しています。
そして孫は、今日も彫る。
祖父が伊勢型紙を彫っていた時代から、
ずいぶん時間が経ちました。
その間に一代すっ飛ばして(笑)、
今は孫の私が伊勢型紙を彫っています。
毎年11月には、
私が習っている公民館の文化祭があります。
もちろん今年も作品を出す予定。
ただ今年はいろいろあって、
大きな作品を作る時間がありませんでした。
なので、少し小さめの作品に
するつもりなのですが・・・
現在、かなりヤバいです。
間に合うのか??
祖父が今の私を見たら、
何と言うんでしょう。
「もっと早くから彫っとけ」
でしょうか。
たぶん、その通りです(笑)。
祖父から受け継いだものが
本当にあるのかどうか、
私には分かりません。
でも今日も私は、
伊勢型紙を彫っています。
知らなかった祖父の人生と、
今の私。
こんなところで
つながることもあるんですね。
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