
【エッセイ】異界への行き方、バスが一番怖い説
インターネット由来のホラーには、異界への行き方に関するものが数多あるが、その中でも怖いのは路線バスなんじゃないだろうか、とふと思った。
理由は単純に、何も考えずにふらっと入れる利用のしやすさからである。
異界アクセス怪談の怖さ、というのは8割くらいは「日常の中で自分でも簡単にやれそうな手軽さ」だろう。
有名な「エレベーターで異世界に行く方法」は、10階以上ある建物のエレベーターにひとりで乗り、特定の順番でボタンを押すことで、パラレルワールドにたどり着く事ができる、という話である。
日常的な空間であるエレベーターが、ある特定の条件下で非日常的な場所へと変貌するという恐怖感がこの話の肝らしい。
わたしがこの話を初めて聞いた時、市内でいちばん高いショッピングセンターが屋上駐車場ふくめて、4階までしかないことを思い出していた。
(12階くらいまであるマンションもあるが、住人以外がそこにいくのは、もう日常じゃないし。怪談の恐怖より不法侵入の恐怖の方が勝つなら、それはホラーとして致命的である)
そう!聞き手の身近なところで代替して想像できない日常ホラーってあんまり怖くない!日常にないから!
そのため、新幹線怪談は全然怖くないわけだ。東北新幹線は全席指定のため、バスほどには、なかなかふらっと使えない。前々からちゃんと予約しておく必要があるホラーって、なんかイヤだ。
てか、新幹線って、ホラーに使うには速すぎるし快適過ぎるかも。時速320kmの乗り物に追いつける幽霊なんて、いないし。時速320kmの乗り物って、それ自体が異界じゃないか?
飛行機怪談は、新幹線より怖いかもしれない。飛行機と新幹線のどちらが身近かはその人の環境に寄るが、一度乗ったら着陸するまで出られない当たり、新幹線よりホラー適性がありそうだ。
楽しい楽しい家族旅行の始まりと思って乗った飛行機が着陸してみれば、そこは異界であった。
うんうん、いい感じの書き出しじゃあないか。
でも、異界アクセスの怖さが、飛行機事故の怖さに勝てるのか?バードストライクとか、ハイジャックとか、それよりも怖くなれるのか?
てかやっぱり、空の上ってそれ自体がもう異界みたいなもんじゃないか?
バスの仲間だが、意外と怖くないのが夜行バスである。夜が日常のものに、「夜ってなんか不気味〜」理論は通じないのだ。
そして、間違ってサービスエリアで置いていかれる恐怖、隣の席のやつが変質者かもしれない不安、目を閉じても全然眠れない苛立ち、消灯した真っ暗な車内で光るスマホの画面へのムカつきなどに、異界アクセスホラーは勝てないのではないだろうか。
さて、ここまできたら、電車とバスの一騎打ちだろう。ここまできたら、というか、まあなに?ここまでコースを敷いてやったんだから、というべきか。フルコースだったんじゃない?なんなら。前菜とかもあったような気がするよ。エレベーターのくだりはかなり前菜かも。
電車。電車はね、こわい。
日常度では、路線バスと同等なのは言うまでもないし。新幹線ほど速くないし、飛行機ほど密室でもないし。
怖いけど、電車の駅とバス停じゃ、バス停の方が数が多いので、バスの勝ちです。
うん。やはり数ですね、戦の勝敗を決めるのは。