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短線小説四季を通しお、同じ景色が違っお芋える䞍思議【時の流れ】#note文芞郚倧賞2025

    春・桜の玄束

     駅前の桜䞊朚が満開だった。 ピンク色の花びらが颚に舞い、たるで䞖界党䜓が優しい色に染たったみたいだった。私は蒌倪の隣で、その景色をがんやりず眺めおいた。
    「来幎も、ここで花芋しようね」
    私がそう蚀うず、蒌倪は少し困ったような顔をした。
    「矎波、俺、来月から東京に行くんだ」
    時が止たったような感芚だった。桜の花びらだけが、ゆっくりず萜ちおいく。
    「急に決たったんだ。芪父の仕事の関係で」
    蒌倪の声が遠くに聞こえた。隣にいるのに、もうすでに遠くぞ行っおしたったような気がした。
    「䞀幎埌、たた䌚えるかな」 私は粟䞀杯の笑顔を䜜っお蚀った。
    「䌚えるよ。絶察に」
    蒌倪は真剣な顔で私を芋぀めた。
    「䞀幎埌の春、この桜の朚の䞋で、たたここで䌚おう。玄束だよ、矎波」
    私たちは小指を絡めた。桜の花びらが、私たちの呚りを舞っおいた。 それが、蒌倪ず過ごした最埌の春だった。

    倏・緑の蚘憶

     六月になるず、あの桜䞊朚は青々ずした葉に芆われた。 私は時々、あの堎所に立っおいた。蒌倪ずの玄束は来幎の春だけれど、この景色を芋るず圌のこずを思い出す。 同じ堎所なのに、春ずは党然違っお芋えた。
    桜色の優しさはなくお、濃い緑が力匷く生い茂っおいる。 蒌倪からメヌルは来る。でも、最初の頃に比べお、だんだん短くなっおいる気がした。
    「東京、楜しい」
    「うん、たあたあかな。矎波は」
    「盞倉わらずだよ」
    䌚話が続かない。画面を芋぀めながら、私は桜䞊朚の䞋に座り蟌んだ。 セミの声がうるさいくらいに響いおいる。
    倏の日差しが匷くお、朚陰に逃げ蟌むように座った。 ふず気づいた。春には芋えなかった。この朚の幹に、誰かが圫った萜曞きがあった。ハヌトマヌクず、読めないむニシャル。 同じ堎所でも、季節が倉われば芋えるものが倉わる。 それずも、芋る人の心が倉わるから、景色も違っお芋えるのだろうか。

    秋・色づく想い

     十月の終わり、桜䞊朚は玅葉しおいた。 春のピンクずも、倏の緑ずも違う、オレンゞず赀が混ざった色。この朚は秋になるず、こんな色になるんだず初めお知った。 蒌倪ずの玄束たで、あず五ヶ月。 メヌルの返信は、もう䞀週間に䞀床くらいになっおいた。
    「最近忙しくお」
    ずいう蚀葉が増えた。 私は毎週末、この桜䞊朚を蚪れるようになっおいた。理由はわからない。ただ、ここに来るず萜ち着いた。 ある日、若いカップルがこの朚の䞋で写真を撮っおいた。
    「ここ、春は桜がきれいなんだよね」
    男性が蚀った。
    「ぞえ、秋の玅葉もきれいだね」
    女性が笑顔で答えた。 私は少し離れたずころから、二人を芋おいた。 同じ堎所、同じ朚。でも二人は春の桜も秋の玅葉も、どちらも玠盎にきれいだず思える。 なぜ私は、春の桜の蚘憶ばかりにずらわれおいるんだろう。 萜ち葉を螏みしめながら、私は家に垰った。

    冬・癜い沈黙

     十二月、初雪が降った。 桜䞊朚は葉を党郚萜ずしお、现い枝だけになっおいた。その枝に雪が積もっお、癜い花が咲いたみたいだった。 蒌倪から幎賀状が届いた。メヌルじゃなくお、手曞きの幎賀状。
    「元気 来幎の春、楜しみにしおる」
    短い文章だけど、圌の字だった。私は䜕床もその字を撫でた。 䞀月、二月ず時間は過ぎおいく。 雪の日も、晎れた日も、私は桜䞊朚を蚪れた。誰もいない早朝に行くこずが倚かった。
    癜い息を吐きながら、朚の幹に手を圓おる。冷たい。 この朚は、春倏秋冬、ずっずここにあった。私が蒌倪を想っおいた間も、想いが揺らいだ時も、ずっず倉わらずここにあった。 でも、芋える景色は党郚違った。 ピンクの花、緑の葉、玅葉、雪化粧。 同じ朚なのに。
    ふず思った。蒌倪も倉わっおいるんだろうか。東京で過ごした䞀幎で、圌は春の日の圌ずは違う人になっおいるんだろうか。 そしお私も、きっず倉わった。 埅ち続けるこずを遞んだ私は、あの日の私ずは違う。

    春・再䌚の日

     䞉月の終わり、桜の蕟が膚らみ始めた。 玄束の日たで、あず䞀週間。 私は毎日、桜䞊朚の前を通った。ただ蕟だった。満開になるのは、もう少し埌。 玄束の日、私は朝から萜ち着かなかった。
    䜕を着おいこうか迷った。髪型も、い぀もず同じがいいのか、少し倉えた方がいいのか。
     結局、あの日ず同じ服を遞んだ。䞀幎前の春、蒌倪ず最埌に䌚った日ず同じ服。 午埌䞉時、玄束の時間。 桜䞊朚はただ五分咲きくらいだった。去幎の満開ずは違う。でも、確かに桜は咲いおいた。 私は朚の䞋に立っお、埅った。 䞉時五分。䞉時十五分。䞉時䞉十分。 人通りは倚かった。
    でも、蒌倪の姿はなかった。 四時になった。 メヌルを開いた。䜕も来おいない。こちらから送ろうかず思ったけれど、指が動かなかった。 五時。日が傟き始めた。 桜の花びらが、少しだけ颚に舞った。ただ満開じゃないから、花びらも少ない。
    私は朚の幹に背䞭を預けお座り蟌んだ。 ふず、芋䞊げた。桜の枝が、空に向かっお䌞びおいる。
    そういえば、䞀幎間、ずっず䞋ばかり芋おいた気がする。花を芋お、萜ち葉を芋お、雪を芋お。 空を芋䞊げたのは、い぀ぶりだろう。 倕焌けが、オレンゞ色に染たり始めおいた。

    倕暮れ・気づき

    六時を過ぎた。 もう、暗くなり始めおいる。 私はゆっくりず立ち䞊がった。膝に぀いた土を払っお、もう䞀床、桜の朚を芋䞊げた。
    「矎波」
    遠くから声がした。 振り向くず、走っおくる人圱が芋えた
    。蒌倪だった。 息を切らしお、圌は私の前で止たった。
    「ごめん、遅くなった。電車が遅れお」
    䞀幎ぶりの蒌倪。
    少し背が䌞びた気がする。髪型も倉わっおいた。
    「埅っおた」
    蒌倪が申し蚳なさそうに聞いた。
    「うん」
    私は笑った。
    「ずっず、埅っおた」
    その蚀葉には、今日だけじゃなくお、この䞀幎のこずも蟌めた。 蒌倪は困ったような顔をした。
    「本圓にごめん。最近、いろいろあっお」
    「わかっおる」
    私は蚀った。
    「メヌル、枛っおたもんね」
    「それも、ごめん」
    蒌倪は頭を䞋げた。
    私たちは䞊んで、桜の朚を芋䞊げた。 「ただ満開じゃないんだね」
    蒌倪が蚀った。
    「うん。去幎は満開だったのに」
    「でも、きれいだよ」
    蒌倪は蚀った。
    「満開じゃなくおも、桜は桜だ」
    その蚀葉を聞いお、私の胞が締め付けられた。

    答え

    「矎波、実は話があるんだ」 蒌倪が真剣な顔で蚀った。
    もう、わかっおいた。この䞀幎で、薄々感じおいたこず。
    「東京で、できたんだ。付き合っおる人」
    やっぱり。
    「そっか」
    私は笑顔を䜜った。
    「おめでずう」
    「ごめん」
    蒌倪は本圓に申し蚳なさそうだった。
    「でも、矎波に盎接蚀わなきゃっお思っお。メヌルずか電話じゃなくお」
    「ありがずう」
    私は本圓にそう思った。
    「わざわざ来おくれお」
    颚が吹いお、桜の花びらが少し散った。 「私ね、この䞀幎、ずっずここに来おたんだ」
    私は話し始めた。
    「春も、倏も、秋も、冬も。
    同じ堎所なのに、季節が倉わるたびに、党然違う景色に芋えた」 蒌倪は黙っお聞いおいた。
    「最初は、春の桜が䞀番きれいだず思っおた。
    私たちが玄束した時の、あの満開の桜」
    私は朚の幹に手を圓おた。 「でも、倏の緑も、秋の玅葉も、冬の雪も、党郚きれいだった。違うけど、どれもこの朚だった」
    蒌倪が䜕か蚀おうずしたけれど、私は続けた。
    「同じ景色が違っお芋えるのは、芋る人の心が倉わるからなんだね」
    「矎波」 「私、埅っおた。ううん、埅っおたんじゃなくお、埅぀こずを遞んでた」
    私は蒌倪を芋た。
    「でも、埅぀こずで芋えたものもあった。この朚の四季ずか、季節ごずの空の色ずか。䞀幎前の私には芋えなかったもの」
    桜の花びらが、たた䞀枚、颚に舞った。
    「だから、ありがずう」
    私は笑った。今床は䜜り笑いじゃなくお、本圓の笑顔で。
    「この䞀幎、埅たせおくれお」

    時の流れ

    蒌倪は䜕も蚀えないみたいだった。
    「幞せにね」
    私は蚀った。
    「蒌倪の圌女、きっずいい人なんでしょ」
    「うん」
    蒌倪は小さく頷いた。
    「矎波も、幞せになっおよ」
    「なるよ」
    私は答えた。
    「もう、なっおるかも」
    それは本圓だった。
    この䞀幎、蟛いこずもあった。
    メヌルの返信が遅くなるたびに䞍安になったし、冬の寒い日に䞀人で桜䞊朚に立っおいた時は泣きそうになった。
    でも、この朚を通しお、四季を感じられた。時の流れを感じられた。 同じ景色が、時間ずずもに倉わっおいくこず。
    それは切ないけれど、矎しいこずだず知った。
    「じゃあ、私、垰るね」
    私は螵を返した。
    「矎波」
    蒌倪が呌び止めた。
    「たた、䌚えるかな」
    私は振り返っお、にっこり笑った。 「どうだろうね。でも、䌚えなくおも、私は倧䞈倫」
    「そっか」
    蒌倪も少し笑った。
    「矎波、匷くなったね」
    「そうかな」
    私は桜の朚をもう䞀床芋䞊げた。
    「ううん、匷くなったんじゃなくお、倉わったんだ。時間ずずもに」

    新しい春

    蒌倪ず別れお、私は駅に向かった。
    振り返らなかった。振り返ったら、泣いおしたいそうだったから。
    電車に乗っお、窓の倖を芋た。 桜䞊朚が芋えた。あの朚も芋えた。
    五分咲きの桜は、来週には満開になるだろう。そしお散っお、たた緑の葉を぀ける。
    秋には玅葉しお、冬には雪をかぶる。 来幎の春も、たた桜は咲く。
    私がいおもいなくおも、蒌倪がいおもいなくおも。 それでいいんだず思った。
    家に垰っお、スマホを開いた。 蒌倪ずのメヌルを、党郚消そうかず思った。
    でも、やめた。 消さなくおもいい。これも私の䞀幎間だから。 代わりに、新しいメモを開いた。
    「来幎の春は、どこの桜を芋に行こうかな」
    そう曞いお、私は笑った。
    窓の倖は、もう暗くなっおいた。でも、明日はたた明るくなる。 季節は巡る。
    時は流れる。 同じ景色でも、芋る人が倉われば、違っお芋える。
    それは切ないけれど、垌望でもある。 私は明日から、新しい景色を探しに行こう。


    あずがき

    最埌たで読んでくださっお、ありがずうございたした。
    毎日通る道なのに、季節によっお党然違う景色に芋える。
    同じ朚なのに、春倏秋冬で印象がたるで倉わる。
    それっおすごく䞍思議で、でも圓たり前のこずですよね。
    矎波の物語は、切ない恋の物語でもありたすが、同時に時の流れを受け入れおいく成長の物語でもありたす。
    埅぀こずを遞んだ䞀幎間は、決しお無駄ではなかった。
    その時間があったから、圌女は倉わるこずができた。 私たちも日々倉わっおいたす。昚日の自分ず今日の自分は、同じようで少し違う。
    それは悲しいこずかもしれないけれど、矎しいこずでもあるず思うんです。 もしこの物語が、あなたの心に少しでも響いたなら、それは私にずっお最高の喜びです。
    これからも、小さな日垞の䞭にある䞍思議や矎しさを、物語にしおいけたらず思っおいたす。
    読んでくださっお、本圓にありがずうございたした。

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    婚掻、転職、友人関係...倧人になっおからの方が 人生っお耇雑だなぁず日々実感䞭。 そんな等身倧の想いを、フィクションずいう圢で 同䞖代の皆さんず共有できたらず思い曞き始めたした。 「あ、これ私かも」ず思っおもらえるような リアルで枩かい物語を目指しおいたす☕

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