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Neon Diver 外伝編 ― 特別な夜は、山崎に限る ―

ネオン街が、本性をむき出しにする
週末の22時過ぎ。

俺は一人静かに「ありがとう」を噛み締めていた。

仕事仲間と酒を飲んだ後、
余韻と共に歓楽街を歩いていた。

時折、前髪を撫でる風が
心地よい夜だった。

プロジェクトの立ち上げから4年。
ようやく契約が成立し、
売り上げを上げるところまで辿り着いた。

行けると踏んだ案件も、
実際は山あり谷あり。

希望と挫折の繰り返しだった。

プロジェクトチームのリーダーとして、
仲間に支えられてきた。

それでも、一人、孤独に悩んだ夜も
一度や二度ではない。

4年なんて、振り返ればあっという間だ。

けれど、
その道のりの一日、一日。
一歩、一歩は長かった。

ゴールは見えている。
でも、辿り着けるかは分からない。

暗闇の中、
灯りの見える方へ、手探りで進んだ。

「いつかきっと」

「今度こそは」

「大丈夫」

「なんとかなる」

「よくやった」

「頼りにしてる」

「どうなった?」

「ありがとう」

この4年間、
俺たちはいったい、どれだけの言葉を交わしたのだろう。

紆余曲折あった。
それでも、ようやく結ばれた。

肩の荷を少しだけ下ろして、
チームの仲間と乾杯した。

「お疲れ様」「乾杯」

ビールに始まり、
日本酒、焼酎、ウイスキー。

それぞれが飲みたいものを飲み、食べたいものを食べた。

苦労話に愚痴。
「あの時こうしていれば」という、たられば話。

笑いながら話しているうちに、
あっという間に時間が過ぎていった。

二次会の話も出た。

でも、こういう飲み会は、
楽しいピークか、
その少し手前で終わる方が印象に残ると考えている。

チームには若手も女性もいる。

俺は、仲間との二次会には行かず、
一人で静かに祝うことにした。

頭の中で店を探す。
そして、この夜をどこで過ごすかを考えた。

答えは、すぐに出た。


歓楽街の雑居ビル。

エレベーターを降り、
目的の店へ向かい、ドアを開けた。

「いらっしゃいませ」
店長の声がカウンターから聞こえた。

「一人、大丈夫?」

「大丈夫ですよ。どうぞ」

ソファに座ると、店長が
キープボトルの【角】と【知多】をテーブルに並べた。

「Renkonさん、いつも通りソーダで良いですか?」

「あぁ、ソーダも置いといて」

少し考えてから、聞いた。
「今、山崎ってボトルあるの?」

「山崎、ありますよ」

「NV?、12?、18?」

「NVです」

「じゃあ、NV入れるから持って来て」

「ありがとうございます」
「山崎、頂きました~」


「来てくれたんだ✨️」

かんなちゃんが、おしぼりを持って来て、
ちょこんと隣に座る。

運ばれてきた山崎のボトルを見て、

「何か、いいことあったの?」

さすがに、よく見ている。

「まぁね」と一言だけ返した。

「飲み方は?」

「ロックで。一緒にチェイサーもらえる?」

「はーい」

「店長、ロックグラスお願いします」

かんなちゃんが、グラスに氷を入れて
山﨑をグラスに注ぐ。

山崎のボトルネックと、
緩やかなショルダーをくぐり抜け、
グラスへと注がれる琥珀色の液体。

その首元が静かに奏でる、
重厚でありながら軽快な、心地よい水音。

飲む前の時間まで、
特別なものにしてくれる。

「乾杯」

この一口が、格別だった。

尖らない。
角のない、まろやかで密度のある風味。
体温とシンクロするような包容力。

何度、骨抜きにされたことか。

この酒は、俺を裏切らない。


かつては、いつでも飲めた。

響も、山崎も、白州も。

ところが、いつの間にか
特別な酒になってしまった。

だから俺も、
特別な夜に山崎を飲むことに決めた。

そう決めた日から、山崎は俺の時計の針を止め、
一日の静かな締めくくりをする酒になった。

「あたしも、山崎頂いてもいい?」

「どうぞ」

グラスを傾けながら、
俺は静かに夜を味わった。

4年間、一緒に走ってくれた仲間たち。

ありがとう。

俺は、空間へグラスを傾けた。

ND Renkon


今回は、サントリー×note
「#お酒で伝えるありがとう」に
Neon Diverとして参加させて頂きました。

Renkonが選んだ、特別な一杯。

最後までお付き合い頂き、
ありがとうございました。

Jinsei


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