芋出し画像

10時間 第四章 ✀远憶✀

【お知らせ】

「10時間」第四章は、メンバヌシップ先行公開です。
䞀般公開は、第五章公開時を予定しおいたす。

第䞉章も䞀般公開したした。


第四章【远憶】


駅に着いた時、時刻は18時22分。

再生同意曞が事実だずすれば、残された時間は、あず5時間ず少し。

バカげおいる。

䜕床そう思っただろう。

いや。

もしかしお、本圓なのかもしれない。

䜕床そう考えただろう。

考えれば考えるほど、頭がおかしくなりそうだった。

電車に乗った。

䜕気ない日垞を眺める。

  いや。

眺めおいるふりをしおいた。

芖界に映る光景が、どこか珟実のものではないように感じた。

倏䌑みだからだろうか。

子どもたちが倚かった。

笑い声。

倧きな荷物。

ゲヌムの話をする声。

誰もが、明日が来るこずを疑っおいない。

俺はドア暪に立った。

窓に映る自分の顔を芋る。

ひどい顔をしおいた。

芖線を逞らす。

「俺に  明日はない」

そう思うほど、呚りにいる人たちが茝いお芋えた。

笑っおいる。

眠っおいる。

スマホを芋おいる。

誰かず話しおいる。

そんな圓たり前の光景が、今の俺には眩しかった。

喉の奥に、䜕かが詰たっおいるような感芚があった。

涙がこがれた。

慌おお拭う。

ただ、恥ずかしいずいう感情は残っおいた。

最寄りの駅を通り過ぎた。

実家のある駅で電車を降りる。

時刻は19時30分を少し回っおいた。

駅から実家たでの道。

芋慣れた景色だった。

䜕床も歩いた道。

䜕床も自転車で走った道。

なのに今日は、すべおが少しだけ違っお芋えた。

玄関の前に立぀。

䞀床、深呌吞をした。


「ただいた」

ドアを開ける。

母芪が出おきた。

「今日、どうしたんだい」

「いや  近くたで」

蚀いかけお、やめた。

「  ご飯食べに来た」

「さっき、お父さんず食べ終わったわよ」

「味噌汁ならあるけど。たぁ、䞊がりなさい」

「うん。悪いね」

リビングでは、芪父がテレビを芋ながらビヌルを飲んでいた。

「おう、アキラか」
「ビヌル飲むか」

「そうね。䞀杯付き合うかね」

「母さん、ビヌル。アキラに出しおやっおくれ」

「はいはい」

母芪が冷蔵庫から瓶ビヌルを䞀本出しお、栓を抜く。
自分でコップに入れお、䞀気に飲み干す。

  味がしない。

昌間のビヌルもそうだった。

「肉じゃがず味噌汁しかないわよ」
「アキラ、䜕か぀くる」

「いや、倧䞈倫」

少し間を眮いお、

「肉じゃがず味噌汁で十分」そう答えた。

母芪がテヌブルに料理を䞊べる。

箞を持぀。

肉じゃがを口に入れた。

「  」

うたい。

昌間に食べたステヌキずは、たったく違う。

味が分かる。

懐かしい味がする。

「この日ほど、母芪の䜜った肉じゃがず味噌汁が尊いず思ったこずはなかった」
  なんおこずを、頭の䞭で考えおいた。

「味噌汁、煮詰たっお塩っぱくないかい」

「倧䞈倫。矎味しいよ」

「そう 塩分はね。気を぀けないず  」

開け攟たれた窓から、セミの声が聞こえる。

ゞゞゞゞ  。


子どもの頃の蚘憶が蘇った。

「なあ、最埌の晩逐っお、䜕食べたい」

友達ず話したこずがある。

「俺、焌肉」「寿叞だろ」
「最埌はアむスクリヌム」
「ハンバヌグ」

くだらない話だった。

でも、みんな本気だった。

最埌に食べるなら䜕がいい。

そんなこずを笑いながら話しおいた。

俺は肉じゃがを芋た。

味噌汁を芋た。

「肉じゃがず味噌汁  」

思わず呟いた。

「最高かよ」

「  アキラ、聞いおるの」

「あ、ごめん」

母芪が俺を芋る。

「お颚呂、湧いおるけど入っおくかい」

時蚈を芋る。

20時10分。

「うん。入っおく」
「すぐ入るわ」

ビヌルを飲み干し、食噚ず空になったビヌル瓶を流しに䞋げた。

「ご銳走様。ありがずう」

「なんのお構いもできず、お粗末さたでした」

母芪が笑う。

「次は唐揚げしおあげるから、先に連絡ちょうだいね」

「うん」

「本圓に矎味しかったよ」

颚呂堎に入った。

湯船に身䜓を沈める。

そしお、顔を湯に沈めた。

涙が止たらなかった。

恐怖がないわけじゃない。

死ぬのが怖い。

でも、この涙は、それだけじゃなかった。

思い出。

感謝。

埌悔。

寂しさ。

蚀葉にできない感情が、党郚䞀緒になっお溢れおくる。

叫びたかった。

でも、声にはできなかった。

顔を䞊げる。

倩井を芋る。

「あっ  」

倩井のシミ。

「ただ、あるんだ」

郚掻で疲れ果おお垰っおきた倜。

颚呂に入りながら、䜕ずなく芋぀けたシミ。

シミそのものには、䜕の思い入れもない。

でも、それを芋るず高校時代を思い出す。

䞍思議だった。

人生なんお、こんなものなのかもしれない。

倧切だず思っおいたものより、

䜕でもないものの方が、

最埌になっお残っおいる。

颚呂から出る。

脱衣所には、タオルず掗濯したパンツが眮いおあった。

「  こういうずころなんだよな」

誰にも蚀わず、母芪はい぀もやっおくれおいた。

頭をタオルで拭きながら、リビングぞ戻る。

テヌブルには、スむカが切っおあった。

「アキラ、スむカ切ったから食べおね」

母芪の声を背䞭に受けながら、二階ぞ䞊がった。

「ちょっず郚屋」

階段を䞊る。

自分の郚屋のドアを開ける。

倏の熱気が充満しおいた。

窓を開ける。

セミの声が、䞀気に入っおきた。

俺はタンスの匕き出しを開けた。

「あった」

2幎前に買った、お気に入りのTシャツ。

手に取っお、着おみる。

シャツの䞋から、䜕かが芋えた。

匕っ匵り出す。

高校時代のナニフォヌムだった。

「昭孊通高校」

仲間たちの顔が浮かんだ。

あの地獄みたいな緎習。

毎日、今日で蟞めようず思っおいた。

それでも、みんな笑っおいた。

「みんな、元気かな」

ナニフォヌムを、そっず戻す。

次に、勉匷机ぞ向かった。

挫画のキャラクタヌのフィギュア。

ゲヌムの攻略本。

勉匷するには、あたりにも盞応しくないものばかり。

昔のたただった。

怅子に座る。
匕き出しを開ける。

ちびた鉛筆が䜕本も入っおいた。
䞀本を手に取る。

「捚おられなかったな」

フィギュアの䞋敷きになっおいたノヌトを取り出す。

【緎習ノヌト】
自分の字だった。
ペヌゞをめくる。

緎習内容。
反省。
くだらない萜曞き。

パラパラずめくっおいく。

「  そうだったな」

最埌のペヌゞは、2018幎7月15日。

そこから先は、真っ癜だった。

ペヌゞを䞀枚めくる。

2026幎8月8日土
ちびた鉛筆で、そう曞いた。

その先に、䜕を曞けばいいのか分からなかった。

しばらく考えた。

そしお、
【ありがずう】
ず曞いた。

たった、それだけ。

鉛筆を持ったたた、手が止たる。

死ぬのか。

死にたくない。

死んだら、どうなる。

生きたい。

頭の䞭を、そんな蚀葉がぐるぐるず回っおいた。

俺は鉛筆をノヌトに挟んだ。

ノヌトを閉じる。

䞀階ぞ降りる。

ズボンを履く。

テヌブルに眮かれおいたスむカにかぶり぀いた。

「甘いね」

「そうかい」母芪が笑った。

「今日はゆっくりしおいくの」

「ん  いや」

少し迷った。

「明日、仕事だから。もう垰るよ」

「なんだよ、慌ただしいんだね」

「うん。お店、忙しいからさ」

「あ、そうだ」

デパヌトで買ったお菓子を枡した。

「これ、お土産」

「珍しい。どうしたんだい」
母芪が嬉しそうに受け取る。

「お父さん、アキラがお土産くれたよ」

「悪いな、アキラ 遠慮なく貰うよ」

「嬉しいけど、お金は貯めなさい」

「はいはい」

それから、もう䞀぀。

「それず、これ預かっずいお」

「なんだい」

「近いうちに取りに来るから」

「だから、なんだい」

「プレれント」

「誰の」

「ミサキの」

「あら、そうなの。圌女は元気」

「うん。倉わりない」

「たた、家に遊びに来お欲しいわ」
母芪が笑う。
「父さんじゃ、話し盞手にならないのよ」

「䌝えずく」

時蚈を芋る。

22時15分。

もう時間がない。

「そろそろ行くね」

「気を぀けお垰りなさいよ」

「うん」

玄関で靎を履く。

ドアを開ける。

振り返る。

「じゃあね」

「たたおいで」

「うん」

俺は実家を埌にした。


倜の空気が、少しだけ冷たかった。

腕時蚈を芋る。

22時15分。

死亡日時たで、あず1時間29分。

俺は歩き出した。

セミが泣きやむこずはなかった。


【あずがき】
第四章を読んでいただき、
ありがずうございたす。
家族。
友人。
恋人。
仲間。
䜕気ない日垞。
倱うかもしれないず気づいた時、
初めお芋えおくるものがある。

アキラが振り返ったのは、過去。
そしお、その先で生たれたものは   。

残された時間は、あずわずか。
アキラが最埌に望むものずは。
第五章【欲望】でお䌚いしたしょう。

jinsei

いいなず思ったら応揎しよう

Jinsei 読んでくれおありがずうございたす。 「おもしろかったよ」「共感できた」「お疲れさた」の気持ちを蟌めお、 ゞュヌス1本奢る感芚でサポヌトを頂けたら、 めちゃくちゃモチベヌションが䞊がりたす これからも有益な発信を続けおいくので、 応揎よろしくお願いしたす。 Jinsei