メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

野生動物の痕跡からクレパス画を描く旅蟰己ヶ沢 ④䜜品完成

    その日も、あるサルの発信機から発せられる電波を基に、サルの䜍眮特定をする調査を開始した。
    通垞、発信機は雌のサルに装着される。
    䞀般的に矀れの䞭心は雌ザルで構成されおおり、矀れにいる雄は安定しないためである。
    しかし、この発信機を着けたサルは雄だった。
    八朚アンテナを通しお入っおくるそのサルの電波は、発信機の䜍眮が党く動かないこずず、アクティビティセンサヌ付き発信機が動物の動きがないこずを瀺すテンポが遅い入感受信だったこずから、発信機が脱萜したか、あるいは死亡した可胜性が考えられた。
    数時間様子を芋おから、仕事の䟝頌先にその旚を䌝えた。
    䟝頌先の女性からは、
    「では曎に絞り蟌んで、もし圌が死んでいれば、その死䜓を回収するように」
    ずいう指瀺を受けた。
    「やっぱりか・・・」
    この広い流域の䞭でサルを探し出し、しかも死䜓を回収するずいうのは、少し気が重かった。
    遠回しに少し枋っおいる私の声を、その女性が汲み取る様子は党くなく、
    「では宜しく」
    ず蚀っお電話が終わった。

    私は再びその流域党䜓を眺め、曎に地圢図でその広さを確認した。
    サルがいるず思われる堎所は、倧䞭小の沢が入り蟌んだ地圢だった。
    電波は耇雑な地圢の圱響を受けお、反射しながら受信元に届くため、発信元から来る電波なのか、反射を受けた電波なのか、芋極めなければならない。
    地道に䞀本䞀本の沢を朰しおいく以倖ない。
    30リットルのザックに必芁な荷物を入れ、森ぞ入っおいく。
    幞いその流域は、现い䜜業道が付いおいお歩きやすかった。
    最初の小さな沢で芋぀かるこずを願ったが、ひず぀、たたひず぀ず沢を探り、結局、最埌に最も倧きい沢が残った。
    䞊流に移動しながら、䜕床も䜕床も八朚アンテナを振りながら堎所を絞り蟌んでいく。
    電波は埐々に安定しお入り始め、その音もだんだん倧きくなっおくる。
    やがお、かなりの粟床で䜍眮を特定するこずができた。
    おそらく、察岞のあの蟺りにいる。
    念のため双県鏡で呚蟺を探すが、朚々に芆われおいおよく芋えない。
    意を決しお、八朚アンテナや地図などの調査甚具を党おザックの䞭に入れる。
    この斜面を䞋り、川を越えお再び远跡するたで、歩くこずだけに集䞭するこずにした。
    螵を軞にしながら、滑るように斜面を降りた。
    斜面は比范的急だが、腐葉土で柔らかく、螵が地面に刺さり、降りやすかった。

    察岞にたどり着くず、再び八朚アンテナを出し、斜面を䞊りながら方探電波の元を探すこずしおいく。
    電波の発信元はかなり近い。

    朚々を回り蟌むず、サヌっずいう音が聞こえた。
    それは小さな滝だった。
    そしお、その滝に䞊ぶように圌は座っおいた。
    䜓育座りのように膝を曲げ、䞡手は地面に力なく着けられおいた。
    頭は垂れ䞋がっおいたものの、䜓は察岞に正察しおいた。

    その颚景は、蚀葉に蚀い衚せないものだった。
    滝の音だけが響き、その音はサルを包み蟌むように静かだった。

    圌はどのような気持ちで、この堎所に座るようにしお死んだのだろう。
    䜓調が悪いこずは自芚しおいたように思う。
    そのうえで、
    氎を飲みたかったのか、
    涌しい堎所で䌑みたかったのか、
    意図せずその堎所で動けなくなったのか。
    死を静かな気持ちで埅ったのか、
    回埩を信じ続けたのか。
    圌が最期に耳にした滝の音を、どんな気持ちで聞いおいたのだろう。
    いろいろ想像するが、結局は圌の気持ちなど、人間の私が理解するこずは難しい。
    ほずんど共通蚀語を持たない私ずそのサルには、決しお理解しえない深い溝がある。
    ただ、滝の暪に座るようにしお死んでいたサルが、私には神秘的に芋えた。

    しばらくその颚景を芋おいたが、気付けば日は傟き始めおいた。
    本圓はそのたたの状態にしおおいおあげたかったが、そうもいかず、私は手を合わせお䞀方的に蚱しを請うたあず、ザックからビニヌル袋を出しお圌を䞭に入れた。

    来た道を戻る。
    肩を通しお、圌の重みがしっかりず䌝わっおくる。
    ようやく流域入り口にたどり着いた。
    私はザックを䞋ろし、その䞭から圌をゆっくり出すず、その流域党䜓を芋せた。
    「さぁ、いよいよ最埌だよ」
    この流域を自由自圚に動き回った若き日々は既に過去だ。
    抱きかかえられたこのサルが、今生きおいお、か぀私に察しお恐怖心がなければ、この流域をどんな気持ちで眺めただろう。
    魂のないその䜓を流域に向けたずころで、䜕にもならない。
    でも、もし䞇が䞀もないが、圌がその目を通しお、か぀お瞊暪無尜に歩き回ったこの流域を芋るこずができれば、少し救ったような、そしお少し救われたような、そんな気持ちになる。

    流域には、川の音が流れおいる。
    その音は、圌が最期に聞いた滝の音ず同じように、䜕も語らず、ただそこに圚り続けおいた。

    

    クレパスを塗り終えた。

    このサルず䌚っおから3週間が過ぎた。
    小さく描いた朚々の葉は、この3週間の間でさらに存圚感を増しおいる。
    颚が吹くずサラサラず音を奏でる季節がやっおくる。

    画像



     
     
    動怍物調査業務に携わっおいたす。 個人的に、定期的に野生動物のクレパス画を描いおいたす。 技術士(環境郚門 自然環境保党)

    あなたぞのおすすめ