
魔王
「勇者ってさ」
「ん?」
「魔王倒したあと、何するんだろ」
ドリンクバーの氷が鳴る。
「急だね」
「だって魔王いなくなったら、パーティ解散じゃん」
「まあ……平和ってそういうことじゃんね」
ポテトを一本取る。
「警察もさ、犯罪者いなくなったら仕事なくなるよね」
「それは無理でしょ」
「無理なんだけど」
窓の外を同級生が通り過ぎる。
「なんかね」
「どしたん?」
「誰かが幸せになると、一緒に消える仕事ってあるんだなって」
「ロスじゃん」
「そう、魔王ロス」
「もう勇者やん」
笑いながらケチャップを押す。
「発明家もさ」
「出し過ぎた?」
「全部発明し終わったらどうするんだろ」
「発明される側になるんじゃない?」
「量産型エジソン」
「ずっと舌出して煽られる」
「それアインシュタインやん」
ストローがぺこって鳴る。
「花火師って、始まる頃にはもう裏にいるらしいよ」
「見れないってこと?」
「たぶん」
「頑張った人が一番見れないの、なんか切ない」
ポテトを一本取る。
「サンタも、子ども全員大人になったら失業?」
「夢壊すのやめて」
「でも毎年期間限定雇用だよ」
「サンタ、非正規なん?」
二人で吹き出す。
「アイドルもさ」
「まだあるの?」
「推しが幸せになると、ちょっと寂しくなる時ない?」
「……あー」
「ずっとこのままでいてほしい、みたいな」
「ファンって勝手だね」
「人間ってそんなもんじゃない?」
テーブルの上のポテトは、
しなしなになっていた。
「文化祭もさ」
「あれも終わった瞬間寂しくなったよね」
「準備してる時が一番楽しかった」
「空気悪くなるまでがセット」
「喧嘩も青春よね」
窓の外で信号が青になる。
「核爆弾もさ」
「急にデカい話戻ってきた」
「全部なくなったら、本当に平和になるのかな」
「どうだろ。別の理由でまた揉めそう」
「でも結局、持ってるから撃てないのか、なくても撃たないのか分かんなくない?」
「難しい話始めたね」
「人類向いてないじゃん」
「でもさ」
「ん?」
「友情がなくなったらさ、青春って言葉も消えるのかな」
お皿の上に残った最後の1本を見つめた。

次回
選択と対価
警察が人によって機能していた時代があったらしい。