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Photo bymonkeyhitomi

・あらすじ

ツアヌコンダクタヌの小宮山ひたり(23歳33æ­³)は、喜々ずしお無䌑で働き、
noteクリ゚むタヌ【ひがちゃん沖瞄】の、実話を元にした小説。


◆第1章 2003幎平成15幎


「ひたり あんた、私に䌚わずに東京に戻るっおこず⁈」

ボリュヌムが倧きすぎお、小宮山ひたりは思わず携垯電話を耳から離した。
顔の巊偎が条件反射でホンの少し匕き攣぀った。芋ようによっおは、倧きな巊目でりむンクしたみたいだ。

恐る恐る、改めお携垯電話に耳を近づけ䌚話を再開する。

「だっおさヌ、仕方ないさ」
「仕方ないじゃないわよ あんたお母さんにも䌚わないワケ」

「ツアヌだからさ、私だけ那芇空枯で『さよなら』っおワケにはいかないんだっおさヌ」
「で、その宮叀島のツアヌっおい぀なの」

「2か月埌。6月さ。さっき契玄も枈たせたの。もう埅ちきれないさ」
「あのね。そもそもひたりは『1幎だけ東京を芋孊しおくる』っお蚀ったんじゃなかった もう、䞞2幎になるじゃない」

幌なじみの仲村恵は、たた、い぀もの愚痎を蚀い出した。ここ半幎は、電話のたびに同じ愚痎を聞かされおいる。
ひたりは、恵の愚痎をさえぎる為に蚀葉をねじ蟌む。

「私は今、もの凄くホヌムシックなの。正確には沖瞄シック。確かに20歳はたちの私は、テレビでしか芋たこずのない東京に憧れおたさ。東京がキラキラ茝いお芋えおたもの。
  でも、もう2幎も沖瞄に垰っおないからさ、沖瞄の海が恋しくお。これが䞍思議なんだけどね、オカアが恋しいずかじゃないのよ。恋しいのは海なの。もう海が恋しくお恋しくお、狂っちゃいそうなのさ」
「だったら尚曎よ。玠盎に嘉手玍に垰っおくればいいしょ。䜕で宮叀島なワケよ」

「嘉手玍に垰ろうず思ったさ。そしたら、たたたた宮叀島のツアヌを芋぀けおね。これが激安だったの。しかも私、離島っお1回も行ったこずがないからさ。これっお䞀石二鳥なわけなのよ わかる 沖瞄の海も芋れお、離島にも行けお、しかも安い あ、䞀石䞉鳥だ」
「䞀石䜕鳥でも、どうでもいい。それより、ひたり 私ず䞀緒に起業する玄束、忘れおないでしょうね」

「忘れおなんかないさ。私はメヌグヌず䌚瀟を䜜る。そのために今私は、花の郜倧東京で瀟䌚勉匷をしおいる。うん。党然忘れおなんかいないよ」
「お盆やお正月もたったく垰っおこないし、やっず2幎ぶりに沖瞄に来るず思ったら宮叀島っお 。ふっ。タメ息が出ちゃう。
  あんたぁ、東京に染たったんじゃないの」

「ははは。東京は玠敵さ。でもね、ここには沖瞄の良さがないの。沖瞄の海もないし、うちなんちゅヌもいない。だから私は、必ず沖瞄に垰るから安心しお」
「はいはい、分かりたした。
  私、圌氏ずデヌトだから、もう電話切るね」

「ははあん。○○ず䌚うのね」
「そ。ひたり、ただ圌氏できないの」

「うるさいなぁ。できないんじゃなくお、䜜らない●●●●の」
「ハむハむ。時間ないから、たた聞くね。じゃあねぇ」

ツヌ、ツヌ

ひたりは携垯電話を閉じお、小さなタメ息を぀いた。

「ハむは1回でいいさ。
  同い幎なのに、なんでい぀もい぀もお姉ちゃんみたいに蚀うワケ」

恵は将来、芳光客をタヌゲットずした䌚瀟を䜜るず決めおいお、䞭孊生の頃から、ひたりにも、そしお呚りにも、自分から宣蚀しおいた。
身長は150センチ匱ず小柄で、顔もポメラニアンみたいに可愛い。そんな容姿からは想像できないのだが、野心家で倢も倧きく頭も良い。䜕よりも気が匷い。

ひたりから芋おも、恵は間違いなく、経営者に向いおいるず思う。

レンタカヌ䌚瀟か飲食店か。はたたた土産屋か宿泊業か。業態は決たっおいないし、開業時期も未定。
しかし、「女性起業家になる」ずいうこずず、「芳光に関わる」ずいうこずだけは決定事項ず蚀っおいた。

もう1぀決定事項があった。
恵は䜕故か、「ひたりは共同経営者だからね」ず宣蚀するのだった。

もちろん、そう蚀われおひたりは嬉しかった。

珟圚、恵は将来のプラスになるず考えお、沖瞄県の芳光課の職員ずしお働いおいる。高校時代、県の職員になる為に、毎日猛勉匷を続けおいたこずも、ひたりは誰よりも知っおいる。

ひたりは、アパヌトの窓を開けた。
すぐ目の前の小さな公園の桜が、ほが満開だった。沖瞄の桜ず違っお、゜メむペシノの花びらはピンクには芋えない。ほが癜だよね、ずひたりは思う。

ヒマワリやハむビスカスが奜きな花だったが、゜メむペシノも奜きになっおいる。そう自芚した。

「それに比べお私は」ず小さくツブダク。

ひたりは、努力家の恵みを尊敬しおいたが、同時に、自分が恵に埌れを取っおいるこずも自芚しおいた。
だから、東京で孊がうず思ったのだった。

いや、東京に逃げたのだろうかず、ひたりは思った。

この考えが時々浮かぶ。
そしお、ハッキリず「No」ずは蚀えない自分がいる。

ブティックの店員は、党く楜しくなかった。田舎者を「カモ」ず陰で嘲あざけり、売れ残りを䜕がなんでも売り぀けろずいう䞊の方針に、どうしおも玍埗できなかった。

今の、居酒屋のアルバむトは楜しいし、お店にも貢献できおいるず思う。
お客さんにも、キチンずお圹に立おおいるず胞も匵れる。

しかし、ず思う。
しかし、この皋床のこずで「東京で勉匷しおいる」だなんお蚀えやしない。

恵には蚀えなかったが、嘉手玍に垰ったら東京ぞ戻る気力がなくなる、そんな予感のようなものを感じおいた。
母や友人に、優しく「戻っお来なよ」などず蚀われたなら、そうしおしたいそうなのだ。

芪友の、努力する姿から逃げお東京にやっお来た。
東京での理想ず珟実のギャップから逃げるために、私は宮叀島ツアヌに申し蟌んだ。

私、逃げおばかりだ、ず思った。


◆宮叀島

䜐々朚は、うたた寝から目芚めた。
原因は、埌ろの座垭の若い女性の声だ。

朝、矜田を発った那芇行きの機内。
寝䞍足ず二日酔いで頭が痛く、読みかけの貎志祐介をあきらめ目を閉じたのだった。

20歳はたち前埌ず思われるの若い嚘が、ずなりの老女ず䌚話をしおいる。
その声が、ずにかくデカむ。

「あきさみよ〜 じゃあオバァは、やんばるの人なわけ⁈」

圓人は倧声ずいう自芚がないようだ。
「機内は、おたえの家ではなく公共の堎だ」ず、い぀もなら説教の1぀でもするずころだが、今は䜐々朚に、その気力がない。

その若く明るく元気な女性は、おそらくは蚊ねられおもいない身の䞊話を、やはり、明るく元気に語り出した。

「蟲業䜓隓があるの。あず持業䜓隓も。
 ホテルじゃなくっお民宿。あえおの民宿っお、そこがむむのさ。
 沖瞄本島の実家には寄らないのよ。
 そしたら友達に、でヌじ怒られたさ。
 沖瞄の海が 海なのよ、海。海が恋しくっお恋しくっお恋しくっお」
 東京に行っおもう䞞2幎過ぎたさ。うん、1床も垰っおないの」
 初めおの垰省なんだよ。
 実家じゃなく、宮叀島に行くのだから”垰省”っお蚀わないかヌ
 アハハハハ」

䜐々朚は思った。
あれ、同じツアヌに参加しおいるんじゃないか

やはり、このツアヌはキャンセルすれば良かったず䜐々朚は悔いた。
䞀緒に来るはずだった陜子が、圓日の朝、ドタキャンしたのだ。

母芪が倒れたっお、本圓かなぁ。たぶんり゜だな。
 誕生日プレれントをケチったのがマズかったか 

小さなスナックに半幎前から行くようになった。
䜐々朚ず同い幎だず蚀うママの楊子は独身だった。䜐々朚は35歳。

楊子はたぶん40歳
䜐々朚は幎䞊の女性が奜き。元劻も5歳幎䞊だった。

急成長の販売䌚瀟で、同期の䞭で1番の出䞖を果たした。他人の2倍以䞊働いた自負がある。そしお、結果は3倍以䞊出した。゚リアマネヌゞャヌずしおの営業成瞟は断トツだった。
意気揚々ず独立起業をしたものの、赀字が続き、2名の郚䞋に絊料が払えなくなった。

倧手䌁業の゚リアマネヌゞャヌずいう肩曞を倱くした人間は、ただの䞀般人だった。いや、事業を成功させおいない経営者は、ほがニヌトずいう扱いなのだ。それが䞖間ずいう実態だった。

盞談もせず勝手に䌚瀟を蟞めお、事業も赀字。劻は、圓たり前だが䜐々朚を責め、そしお去っお行った。子䟛がいなかったので、実にアッサリずした離婚だった。

起業しおすぐに倒産。
そしお離婚。泣きっ面に蜂だった。

劻に逃げられ、䌚瀟も畳んだ。か぀おは高収入だったが、倫婊共に浪費が過ぎお貯金はほずんど無い。
法務局ぞ行っお開業届を出し、個人事業䞻ずしお営業コンサルタントを始めたが党く皌げず、アルバむトで糊口をしのいだ。

就職掻動をしなかった理由は、芋栄だけだった。

実情はアルバむト店員なのだが、個人事業䞻ず蚀えるこずが䜐々朚には重芁だったのだ。

地獄の2幎間だった。寝る間も惜しんで働いた。副業のアルバむト深倜の亀通譊備員が䞍芁になったのが半幎前。倧きな顧問契玄が取れお収入が増えるず、たたすぐに、倜の女に散財するようになった。

䜐々朚は、そのルックスから金がなくおも女が切れるこずはなかった。
身長は180センチ以䞊ある。痩せお芋えるが身䜓は筋骚隆々だ。氎泳郚だったので肩幅もある。
二枚目で、「俳優の玉朚宏さんに䌌おいる」ず蚀われる。

長続きするわけではない。
別れおもすぐに恋人ができるのだ。
今の䜐々朚に金はないのだが、金遣いの荒い、良く蚀えば気前のむむ男ずいうニオむは残り、挂っおいるからなのかもしれない。

だから、そういう女性が寄っおくるのだろう、ず、最近は自己分析できるようになった。

きっず楊子も、別れた劻ず同じだ
オレを奜いおいるのではなく、金を奜いおいるだけさ
今のオレには金なんおないんだけどな
きっず、それがバレたのだろう

それが䜐々朚の分析だった。


那芇空枯で乗り換え、プロペラ機が宮叀島に着陞した。


ハむビスカス。
青い空。

倪陜の日差しが真䞊から泚ぐ。

スケッチブックを、頭䞊に掲げおいる青幎がいた。
『民宿島袋』ずマゞックで曞かれおいた。かなり䞋手くそな文字だ。

背の高いその青幎は、キョロキョロず呚りを芋おいる。その暪にシヌサヌそっくりな顔をした老人がいた。

若い嚘が匟けるように動く。
スキップをしおいる。

「私、 ひたりです」

䜐々朚は、譊戒心を匷くした。
あの嚘は、䜕かずオレの神経を逆なでしそうな予感がする 

そんなこずを思った時、「ササキサン、いたせんか」ずいう声がした。
あの青幎だった。䞀瞬、無芖しようかず思ったが、青幎の声が埐々に倧きくなり、䜐々朚はあわおお名乗り出た。

「䜐々朚です」
「わ ササキサン、いらっしゃいたせ。長旅、お疲れ様です」

青幎は愛想よくしゃべるが、ずなりの老人は無口だった。
ニコニコしおいる。シヌサヌが笑うずこんな顔になるのだろうず、䜐々朚は思った。

「ササキサン、もう1人の方は」
「あれ 矜田から電話したけど もう1人はキャンセルですよ」

老人がニコニコ肯いおいる。それで若者も玍埗したらしい。
どうやらこの民宿には、【連絡】ずいう抂念はないみたいだなず、䜐々朚は思った。

楊子のドタキャン、うるさい嚘、そしお、簡単な連絡さえできない民宿。

泣きっ面に、蜂ず虻たで来やがったか

䜐々朚は前途倚難を芚悟した。


「あず、田蟺さんはいたすか」
「はい。田蟺は私です」

「田蟺さん い぀の間にいたのですか 党然気づきたせんでしたよ」
「こんにちは」


「オゞィ、みなさんそろったよ」
「んん」


「みなさん 僕に぀いお来おください レッツゎヌです」

「レッツゎヌです」ず、ひたりが応えた。


「ハハハ、ひたりさんは可愛いだけじゃなく、元気なんですねヌ」
「そんな、可愛くお矎しいなんお、本圓のこず蚀ったらテレるさヌ」


䜐々朚にずっおは、ひたりずいう若い嚘が眩しすぎた。
今日のような憂鬱な気分の時には、いちいち癇に障った。


  


民宿の車は、癜ず氎色のツヌトンカラヌのワヌゲンバスだった。
ひたりは、ワヌゲンバスを芋お、

「なに めっちゃカワむむんだけど」ず喜んだ。

運転垭には青幎ではなく、シヌサヌ顔の老人が座る。
青幎は、助手垭から身䜓を180床ひねり、満面の笑顔で語り出した。爜やかな笑顔だった。


「みなさん、今回は僕たちの宿、『民宿島袋』を遞んでくださっお、ありがずうございたす。僕は、゚むショヌです。高校を卒業したばかりの18歳です。よろしくお願いしたす」

「よろしくね、゚むショヌくん」


「ひたりさん、ありがずうございたす。
 運転しおいるのが、僕のオゞむです。宮叀島では、”オゞむ”は尊敬を蟌めお呌ぶ蚀葉なので、皆さんも『オゞむ』ず呌んでください。
  ずいうこずで皆さん 民宿たでのこの車の䞭で、自己玹介を枈たしちゃいたしょう」

「む゚む むむぞ、゚むショヌくん」


「ひず回り目は、名前ず幎霢だけにしおくださいねぇ。それ以倖の話題はふた回り目以降にしたしょう。じゃあ、ひたりさんからどうぞ」

「どうぞっお、私から 聞いおないさヌ。ったく。ええっず、私は、小宮山ひたりです。幎霢は、レディヌに聞いちゃダメなんです。゚むショヌくんの少しお姉さんです。よろしくお願いしたす」


「では、次は私が 。私は、田蟺憲䞀朗です。生粋の江戞っ子で、歳は55歳です。あ、江戞っ子っお䜙蚈でしたね。ごめんなさい。よろしくお願いしたす」

「え あきさみよ〜 ゎメンね田蟺さん、私、もっず䞊っお思っおたさ」


「小宮山さん、私は幎霢を気にする”レディヌ”ではないので、なんの問題ありたせん。それに、このガリガリの身䜓ず、こんなシワシワの顔では、私でも老人に芋えたすから」

「わは やさしい 田蟺さんっおゞェントルマンですね」


「ええっず、最埌は僕ですね。䜐々朚です。䞋の名前は別にいいでしょう。35歳です」

「え 逆 20代だず思っおた、若い むケメヌン 俳優の誰かに䌌おたすよね あっ」

ひたりが叫んだ。

「海だ
 ああ、最高
 みなさん 海です」

右手に、真っ青な海が芋えた。
氎平線が芋える。芖界の端から端たでの海だ。

「あえお、海がたくさん芋えるルヌトで走っおいたす。
 こっちのルヌトが、ホンの少しだけ、12分だけ遠いんですけどね」

「゚むショヌくん、グッゞョブ 最高よ」


䜐々朚も、ひたりほどではないが、海を芋お感動しおいた。
海は、よく芋るず青ではなかった。゚メラルドグリヌンなのだろうが、ハワむのそれずは、どこがどうずは蚀えないが違っお芋える。

䜐々朚は、空の青さにも驚いた。
空枯でも驚いたが、海ずセットで芋る空は、自然の迫力ずアヌトの圧を感じる。


゚むショヌずひたりが、ごく自然に雑談を始めた。ほかの3名は、もっぱら聞き圹。゚むショヌが語る宮叀島自慢は、嫌味がなく、ずおも魅力たっぷりだった。

オゞむは、聞いおいるのか、よく分からない顔をしおいる。やや笑顔なような真顔のようなず、䜐々朚には刀断が぀かなかった。
もしかするずオゞむは、ほが笑顔が真顔なのかもしれない。

田蟺は、県をパッチリ開き、真剣に聞いおいる。笑顔は少ないが、むダな雰囲気ではない。楜しんでいるように芋える。盞づちも適床に打っおいた。

䜐々朚は、このメンバヌなら、そこたで䞍快な思いはしないで枈みそうだず安堵した。
だんだんず、ひたりの倧きな声も䞍快に感じなくなっおきた。


ワヌゲンバスは舗装された道を曲がり、ずある民家の畑の䞭に、どんどんず入っおゆく。

そしお、ワヌゲンバスは停車した。

宿に着いたのだ。
宿ずいっおも、ここではこれが普通の民家なのだろう。本州の人間には倉わった叀民家に芋える。
広い瞁偎が玄関を兌ねおいるようなのだ。赀瓊がいかにも南囜颚ずいった味わいで、青い空にずおも映えおいる。

各自の泊たる郚屋や、トむレやお颚呂などを、ひず通り案内された。
「食事は、雚が降っおいなければ畑で食べたす」ず説明された。
䜐々朚は、「食事は基本、ガヌデンで食べたしょう」ず脳内で倉換した。そのように倉換するだけで、オシャレかもなず思うのだった。

決しお掗緎はされおいないが、しかし䞍思議ず野暮ったくはない。
それは、南囜の雰囲気のなせる業わざだず思われる。同じサヌビスが、もし寒い東北地方なら、単に貧乏くさく感じるのかもしれない。

ここは本州から遠く離れ、沖瞄本島からもさらに300㎞も南西の島なのだ。


「さっそく、蟲業䜓隓に行きたしょう」ず゚むショヌが明るく蚀うず、
「やったヌ これ、楜しみだったんですよヌ」ず、ひたりが反応した。

「〇▌ヌ※¥◎◇」ず、珍しくオゞむが䜕か蚀った。

オゞむの蚀葉は、小さくお聞き取れない。それに加えお、かなり幎季の入った宮叀島の方蚀のようだ。たずえボリュヌムが正垞でちゃんず聞こえたずしおも、䜐々朚に意味は分かるたい。

゚むショヌは、オゞむの発蚀に驚き、そしお抵抗を瀺しおいる。
やがお、枋々ずいう感じで頷いた。䜐々朚はむダな予感を感じた。

「え、実は昚日の午前䞭、台颚が宮叀島の近くを通過したしお、うちの畑のビニヌルハりスが少し倒されちゃいたしたヌ」

「あきさみよ〜 じゃあ、蟲業䜓隓はできないの」


「倧䞈倫です。こういうのはショッチュりヌありたすから。
 そういうわけで、リアル蟲業䜓隓です。
 これから皆さんで、ビニヌルハりスを立お盎したしょヌ」

「わヌい オモシロそヌ」


「おいおい、本気で蚀っおいるのか」ず、たたらず䜐々朚は発蚀した。

「はい 本気の本気です これぞ、本物の蟲業䜓隓 滅倚にできる䜓隓じゃありたせんよ」ず゚むショヌが笑顔で答えた。


「冗談じゃない そんな颚に、いいようにタダ働きさせられおたたるか」

「お、䜐々朚さんは乗り気じゃないですね。他の方はいかがですか」


「私は䜓隓させおいただきたす。人生で初めお、ビニヌルハりスの立お盎しができるのですから」ず田蟺が蚀った。

「䜐々朚さん、キャンプ堎のバヌベキュヌも、考えおみれば働かされおいたす。焌肉屋もそうです。でも客は、自分で焌きたい。私は、このビニヌルハりスの修繕も、きっず同じ䟡倀があるず思うのです」

物静かな田蟺が、小さい声ながらも明瞭に蚀った。


「私もやりたヌい 盎しおみたヌい」

「おお、ありがずうございたす。䜐々朚さん、どうされたすか」


「䜐々朚さん、手䌝っおください 私は女で力なんおないし、たぶん田蟺さんも同じです。䜐々朚さんが手䌝っおくれないず、゚むショヌくんの負担が倧きすぎるず思うんです」

「はあ、本圓にやる気 正気か」


「はい お願いしたす」

「ったく、わかったよ。倚数決には埓いたすよ」


「やったヌ ゚むショヌくん、党員参加です」

「では、レッツゎヌですね。みなさん、僕に着いお来おください」


  


確かに貎重な䜓隓だった。
オゞむが、䜕かしらの指瀺を出す。゚むショヌが、それをみんなに圹割分担しお䌝える。
骚組みを確認し、少し曲がった皋床のモノは、゚むショヌや䜐々朚が腕力で盎した。ひどく折れた骚が1本あっお、それは皆で亀換した。

ビニヌルは砎れおいなかったから、亀換は必芁なかった。これは、䞍幞䞭の幞いだ。

結局、1番働かされたのは䜐々朚。
ただ、その䜐々朚の2倍以䞊も゚むショヌが目たぐるしく働きたくった。

それを芋おいたから、䜐々朚に䞍満は無かった。
逆に、その゚むショヌに1番頌りにされお、少し喜びを感じおいた。

䜐々朚の顔には、笑顔がこがれるようになった。


「みなさん 䌑憩したしょう
 オゞィが、『氎飲んで』っお蚀っおたす」

畑の暪の、怅子やテヌブルがある堎所に、みんなが集たった。


「䜐々朚さん、ありがずう」ず、田蟺が蚀った。
「䜐々朚さんが、力仕事をいっぱいしおくれお、メッチャ助かったわ」ず、ひたりが続く。

゚むショヌが、「䜐々朚さんがいなかったなら、ただ、半分も終わっおいたせんね」ず付け足した。

オゞむが、䜐々朚に、ダカンを手枡した。
䜐々朚はダカンを受け取り、自分でコップに泚ぎ、それを飲んだ。

「ブッ ペッ、ペッ
 なにこれッ⁉ 
 コレ、氎じゃないぞ」


同じダカンの氎を、ひたりが恐る恐る飲んでみる。

「オゞむ これ、泡盛でしょヌ なに飲たしおんのよ」

゚むショヌが、
「ごめんなさい みなさんの氎は、こっちのダカンです
 そっちはオゞむの氎です。
 たぶんオゞむは、䜐々朚さんに特別サヌビスをした぀もりなんですよ」ず解説した。


゚むショヌは続けお蚀った。
「オゞィは、普段の蟲䜜業のずきも、泡盛の氎割りを飲みたす」
「薄いので、『これは氎だ』ず蚀い匵りたす。ハハハハヌ」
「ケッコヌ高玚な泡盛なんですよ」

みんなが笑うしかなかった。
䜐々朚も、少し笑っおしたった。


  


2日目の午前䞭は、島内芳光だった。
ベタな芳光地を案内されただけなのだろうが、みんな満足しおいるようだ。

もちろん、ひたりは倧満足だった。

どこたでも広がる癜い砂浜。
360床、党方向オヌシャンビュヌの展望台。
それらの景色は、たさに絶景だった。
そしお、神秘的な通り池。

真っ青な空。
青い海。

海の青は、いろいろな青があった。

ずきどき芋かける真っ赀なハむビスカス。
濃い緑色の島バナナ。

ひたりは、党力でハシャギ、党力で楜しんだ。
南囜の海や空や倧地から、゚ネルギヌを吞収した。

䜐々朚さんは笑顔が増えた。声を出しお笑うこずもある。
田蟺さんも、幞せそうに埮笑んでいる。

゚むショヌくんずは、よく目が合う。
可愛い匟のように思っおいたけれども、もしかしお、゚むショヌくんは、私のこずが奜きなんじゃないかなず思うようになった。

そう思うず、ひたりたでドキドキしおしたう。


  


「午埌からは、今床は、持業䜓隓です」
「む゚む」

゚むショヌくんの掛け声に合の手を入れるこずは、もう、無意識で行なえるようになっおいた。タむミングもどんどん良くなっおいる。

䜐々朚さんが䜕か難しい顔をしおいたが、文句を蚀うワケではなかった。
ひたりは䜐々朚さんを、少し、からかっおみたくなった。

「あれれれ。䜐々朚さん衚情が曇っおたすが、もしかしお泳げないずかですか」
「䜕を 。僕は孊生時代、氎泳郚だったの。むルカに負けないくらい泳げる自信があるぜ」

「あきさみよヌ。氎泳郚 あ、確かに肩幅が吉川晃叞しおたすねぇ」
「ふふん」

「ずころで゚むショヌくん。泳ぐずきは氎着に着替えるの」
「ああ、それは皆さんの自由です。
 宮叀島の僕らは、このたた海に入りたす。皆さんも日焌けには気を぀けおください。本土の人は䞊半身裞になりたすけど、ここの日差しは危険ですからね」

ひたりも、うちなんちゅヌが氎着にならないこずは知っおいる。
しかし、今日のひたりは、ちょっずむむ掋服を着おしたっおいた。
そんな、ひたりの乙女心をスルヌしお゚むショヌくんが発蚀した。

「みなさん 僕の友達です
 玹介したす ほら、挚拶しお」

「リュヌセヌです」
「カむトです」

「远い蟌み持をしたすので、助っ人を頌みたした」


「あきさみよ〜 持業䜓隓っお、远い蟌み持をやるの」

「はい ひがちゃん、远い蟌み持、やったこずありたすか」


「ないないない。で、氎着に着替えるの」

「ん 僕たちはこのたた  。あ、着替えるずころですね。
 ワヌゲンバスでできたす。䞭から目隠ししたすから」


結局、党員、着替えるこずなく海ぞ入った。
田蟺が、「私は、郷に入りおは郷に埓いたす」ず蚀っお、そういう流れになったのだった。

ひたりも、海に入ったら、もう楜しくお、掋服の心配など忘れおしたった。

远い蟌み持は、ひたりの想像以䞊に長い網を䜿うのだった。
たずは、倧きく広がり、埐々に範囲を狭せばめおいく。

範囲が広い時には感じなかったが、狭くなっおくるず、倧持だず分かっおきた。
゚むショヌくんたち若者3人ずオゞむは、機敏に動き、機敏に泳ぎ、そしお敏感に朜った。
䜐々朚さんも泳ぎは達者だった。さすが氎泳郚だ。

ひたりはハシャギながらも、田蟺さんず、ただ網を持っおいるにすぎない。しかし、興奮は抑えられなかった。

気分は圧倒的に、私達の持。
私達の倧持だった。

「スゲヌ 倧持だ」
「こんなに獲れるの⁈ すごい」
「ホント、凄いですね」
「今日は、特に倧持です」

みんなが興奮しおいた。


  


魚は焌いお食べた。

オゞむが、手際よくりロコを萜ずし塩を振った。その塩加枛が最高で、焌き加枛も絶劙だった。

単なる魚の塩焌きが、こんなにも矎味しいずは、これには沖瞄県出身のひたりでさえも驚いた。

そのたた庭でバヌベキュヌずなり、それが晩ごはんだった。
デザヌトのマンゎヌの矎味しさは、䜐々朚さんず田蟺さんが倧声で唞ったほど。

ひたりも、「でヌじたヌさん」ず思いが声になった。


゚むショヌの友達2人が垰った。

若者が垰る少し前に、田蟺さんがさり気なく、゚むショヌ含めた若者3人にポチ袋を枡しおいた。

ひたりは、偶然、それに気づいたのだった。
ゞェントルマンの気配りずいうものを、孊ばせおいただいたず思った。


  


バヌベキュヌの炭が、ただ燃えおいた。

宮叀島の遅い倜がやっおきお、蟺りがやっず暗くなった。
倜の炎は、独特な魅力を攟っおいた。

ひたりは、䞍芏則に揺らぐ薪の炎を芋぀めた。芋おいお飜きないのだ。

遠巻きながら、みんなが炎を囲んでいた。
オゞむは、い぀ものシヌサヌのような笑顔で、泡盛をロックで飲んでいる。

それがスゎク矎味そうに芋えた。


各々、奜きなお酒を飲んでいた。
ひたりは、焌酎の炭酞氎シヌクワヌサヌ割りにハマっおしたっおいた。

「自己玹介の、2呚目をしたしょ」ず、゚むショヌくんが切り出した。


゚むショヌくんが、ひたりにアむコンタクトを飛ばす。

「え、たた私から た、むむかぁ。
 実は、私は、うちなんちゅヌです 沖瞄出身なんです」


みんな呆気にずられた。
少し間があっお、苊笑いに倉わった。

「ええ なに
 もしかしお気づいおいたワケ
 シンケン」

驚いおいるのはひたりだけ。

䜐々朚が、
「隠しおいた぀もりだったのか そっちに驚くよ。
 君は、飛行機の䞭でも倧声でしゃべっおいおじゃないか。実家に寄らないずか、初の垰省だずか。
 僕だけじゃなく、田蟺さんにも聞こえおいたず思うなぁ」

田蟺も、「はい、もちろん聞こえおいたした」ず蚀う。

゚むショヌも、
「たさか、内地の人を挔じおたのですか」ず小声で蚀う。


「あきさみよ〜 だっお私、暙準語で話しおたしたよね」

「その『あきさみよ』ずいうのは、沖瞄の蚀葉だろ」ず䜐々朚。
「あず、むントネヌションが垞に、沖瞄のむントネヌションでしたねぇ」ず田蟺。


「あら。じゃあ私、2呚目で話すこずが、なくなっちゃったさヌ」

「私は、小宮山さんの、倢や目暙が聞きたいですねぇ」ず田蟺が蚀った。


「倢⁈ ゞェントルマン田蟺さんの垌望なら、語っちゃうかヌ。
 私は、東京でビゞネスの経隓を積んで、やがお沖瞄に戻っおきお、そしお芪友のメヌグヌず䌚瀟を䜜るんだ。
 私が、内地ず沖瞄を繋げたい。内地の良さず沖瞄の良さは、それぞれ別なんだよね。そういうのを沖瞄の子䟛たちに、ちゃんず䌝えたいなぁっお、ただ、挠然ずしおいる倢なんだけどね」

䜐々朚が、口を開いた。

「そんな甘い考えなら、起業はやめた方がむむ。
 䌚瀟を起業するっお甘くないんだ」


ひたりは驚いた。
いきなり、倢を吊定されたず思った。

「オレは1床䌚瀟を䜜っお倱敗した。
 甘くないず身をもっお䜓隓したんだ。
 倜、眠れなくなったんだ。りトりトするず、胞や腹がザワザワしおな。
 無数の虫が身䜓を這っおいる感觊なんだよ。でも、もちろん虫なんか1匹だっおいやしないんだ。
 たぶん、今思うずあの時のオレは鬱病う぀びょうだったんだろう。
 オレは、そんな思いを君にはしお欲しくないんだよ」

ひたりは蚀った。
「ありがずヌ、䜐々朚さん」

「え」


「心配しおくれお、本圓にありがずう。
 䜐々朚さんっお、優しい。
 ただ旅行で、偶然に䞀緒になっただけなのに。
 こんなに本気で心配しおくれるなんおさぁ。
「たるで、お父さんみたいだ」
「嬉しい」

「え あ、ああ  」


䜐々朚は、完敗だず思った。
悪意があるずは思わないのか 吊定されたずは取らないのか

自分が起業しお、もの凄く苊劎したから、぀い八぀圓たりした。
䜐々朚はそれを、自分自身分かっおいながらも、思いを吐き切っおしたったのだ。

ひがちゃんに、どんな蚀葉を返すか考えた。


そのタむミングで、田蟺が口火を切った。

「私の自己玹介。ふた呚り目の自己玹介ですが、語っおもむむですか」

「どうぞどうぞ」ず゚むショヌ。


「私はガンなのです。それも、末期ガンです」
「医者からは『䜙呜3か月』ず、宣告されたした」
「それが、先月のこずです」
「もしも、その通りになるのなら、私はあず2か月しか生きられたせん」

田蟺の声は、小さい。
しかし、ちゃんずみんなに聞こえた。

悲壮感はない。
だからなのか、䞍思議ず深刻な雰囲気にはならなかった。

ずはいっおも、みんなが息を呑んだ。


田蟺の蚀葉にはり゜の欠片かけらも感じない。
海颚たでが空気を読んだのか、蟺りはシヌンず静たった。


「今、私が思うのは、『もっず、やりたいこずをやれば良かった』ずいう埌悔です。埌悔ばかりしたした」
「埌悔をし぀くしお、次は考えたした。残り3か月を、どう過ごすかず」
「医者からは延呜治療を勧められたのですが、結局私は、それを断りたした。延呜治療するのなら、お酒は飲めたせんし、この旅行にも参加できたせん。おそらくは死ぬたでベッドの䞊です」
「たった3ヶ月ですが、私は、やりたいこずをやるず決めたした」
「  」
「ここには、劻ず䞀緒に来れば良かった」
「劻は同行を申し出たのですが、私が断ったのです」
「劻が䞀緒だず、  劻が䞀緒だず、垞に死を感じおしたいそうで、なんか蟛かったのです」
「1人なら、束の間でも死を忘れられるかも、ず思ったのです」
「でも、それは間違いでした」
「宮叀島の矎しい景色を、劻ず䞀緒に芋たかった。远い蟌み持を䞀緒に䜓隓したかった。この堎で、私の隣にいお欲しかった」
「垰ったら、劻ず行動したす。私は劻ず旅行したす」
「みなさん  、どうか、やりたいこずをやっおください。人生は思った以䞊に短い」
「なんのチャレンゞも冒険もしなかった私の人生は、䜕ずも぀たらない人生です。老埌の心配をしお、貯金に励んで、それで終わる人生なのです」
「やりたいず思ったなら、ためらわないで、すぐにやっおください」
「あず3か月の呜なら䜕をするだろうか、ず、時に考えおみおください」


䜐々朚の頬からアゎを぀たっお、涙が、畑の土に萜ちた。

ひがちゃんも、ぐしゃぐしゃに泣いおいた。
䜕もできないのだろうが、でも、䜕かをしおあげたい。

ひがちゃんは、田蟺の隣に移動した。
田蟺の膝の䞊にある田蟺の手に、ひがちゃんは自分の手を添えた。

田蟺ず目が合う。

蚀葉はない。

田蟺が泣いた。
声を䞊げお泣いた。

ひがちゃんの肩にすがっお泣いた。

「くくっ・・・」

田蟺の嗚咜がしばらく続いた。


◆モスクワの空枯で

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「あきさみよ〜 埅お 埅お埅お」
「え”⁈ 考えおみ 自分がハネムヌンだったらどうするど」
「フリムンが バカ者が ぬヌあびずヌが 䜕を蚀っおるか」

モスクワのシェレメヌチ゚ノォ囜際空枯内では、ちょっずした隒ぎずなっおいる。

事情を知らない通行䞭の人も、䜕ごずなのだろうず立ち止たりだした。

ロシア人の倧男、むワンが埐々に埌ずさりする。
うちなヌぐち沖瞄の蚀葉になったのが、たるでスむッチだったかのように、ひがちゃんの声はボリュヌムMAX。女性の声だからか、良く響いた。

たさに猛抗議。1人デモ状態。

ツアヌ客の22名が、心配そうにひがちゃんを芋守っおいる。
ツアヌ客22名の呚りに、さらに、野次銬たちの局もできあがっおいた。

空枯のスタッフが2名、駆け぀けおいた。
さらに、もう2名のスタッフが駆け寄り、そのうち1人は日本人だった。
誰かが「日本語の分かる人を」ず指瀺を出したのだろう。

その日本人女性スタッフが、錻息の荒いひがちゃんに声をかけた。

「䜐倉ず申したす。どうされたのでしょうか」

「くぬ、ぜっおかすヌがこの、たぬけがぁ」


「え・・・」

「あっ」

ひがちゃんは我に返った。うちなヌぐちで話しおいたこずに気づく。

「す、ふう。す、ふう」

小さい深呌吞を、2床おこなった。

冷静さを取り戻したフリをしお、暙準語で説明を始める。

「ツアヌ客の1人が、この空枯内でチケットを玛倱したした」
「成田からここたで䞀緒に同行しおきたお客さたです。目的地はむスタンブヌルです」
「ツアヌのみんなで、倱くしたチケットを党力で探したしたが芋぀からななくお 」
「そしお、圌に事情を話したのですが、別の䟿を取り盎せの䞀点匵り」
「これっおオカシむですよね」
「䟋倖が認められる条件に該圓しおいるハズです 手続きが面倒なだけでしょ」
「ハネムヌンツアヌなのに、倫だけ埌の䟿で行けっお蚀うんですよ ひどすぎたす」

「それは、うちのスタッフが、倧倉倱瀌いたしたした」
「すぐに、手続きをいたしたす」
「むワン、ППжалуйста, сЎелайте этП МеЌеЎлеММПすぐに、やっおちょうだい」

䜐倉は、拍子抜けするほど簡単に応じおくれた。

圓然だず蚀わんばかりに、ひがちゃんは胞を匵った矎しい姿勢のたた180床「クルッ」ず振り返る。

ツアヌ客ず、立ち止たった欧米人䞭心の野次銬たちに、満面の笑顔で埮笑んだ。
その動きは、たるで、舞台女優のようだ。

「みなさん 無事、乗れるこずになりたした」
そう蚀っお、䞡手を倧きく振った。

「お隒がせしおスミマセンでした。I'm sorry for making a noise」

自身で通蚳しながら、䜕床も䞡手をふりながら愛嬌を振りたく。

拍手が起こった。

ツアヌ客の拍手が野次銬にも䌝染しおいる。

そこぞむワンが近づき、恐る恐るしながらも、ひがちゃんにこう蚊ねた。
「アヌナヌ、ゞャパニヌズ」

※参考動画 ↓


ひがちゃんは、笑顔のたた察応した。

「む゚ス You thought the Japanese were quiet, right?あなた、日本人は倧人しいず思っおたんでしょ」
「Watch Japanese movies and study.日本の映画を芳お勉匷しなさい。 I'll teach you this wordこの蚀葉をあなたに教えるわ」

「なめたらいかんれよ」

カワむむ顔で凄んで芋せお、最埌に「ニコッ」ず、満面の笑みを添えお、むワンずの䌚話を打ち切った。


そしおやっず、ずっずひがちゃんの暪にぞばり぀いお、オドオドしおいる男性に顔を向けた。

その男性は、チケットを倱くした瀬戞さん。お瀌を蚀いかけた瀬戞さんが慌おお走り出す。ひがちゃんが走ったのだ。

「瀬戞さん、ずにかく今は急ぎたしょう。フラむトたであず5分しかありたせん」

「は、はい、隊長」


  


䜐倉はむワンに歩み寄った。

「むワン、あなたどうしお あなた英語だけじゃなく、日本語だっおペラペラじゃない」

「䜐倉さん。あのヒトはホントりニ、日本人なのですか」


「ええ。どうしお」

「ボクは、あの女性のコトバは、トチュヌからたったくワカリマセンでした 」


「ああ、確かに。方蚀が凄かったわね」

「ほうげん、デスカ」


「あれだけ意味が分からないずいうこずは、圌女は青森県民ね。あれはきっず、接軜匁じゃないかな」

「ツガルベン。・・・トテモ、怖かったです」


◆隊長ずゆかいな仲間たち

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新宿駅東口から歩いおすぐの、居酒屋チェヌン店。焌き鳥や䞲カツなどが、安くお矎味いず評刀のお店だ。

店内の、広いお座敷の1぀が倧いに賑わっおいる。金曜日の倜だから、その他のお座敷も、カりンタヌ垭やテヌブル垭も、ほが満員の状態。

ひがちゃんが、モスクワの空枯でグランドスタッフに啖呵たんかを切ったのは、4ヶ月前のこず。
今倜は、ひがちゃんずツアヌに参加したお客さんずの『懇芪䌚』が行われおいる。懇芪䌚ずいう名の飲み䌚で、今回が2床目の開催だった。

倧いに賑わっおいるお座敷の真ん䞭には、ゞヌンズに薄いピンクのボタンダりンずいう、カゞュアルな装いのひがちゃんがいた。

むスタンブヌルのハネムヌンツアヌで仲良くなったお客さんたちが、
「日本でもこの仲間ず、たた䌚いたい」「ひがちゃんず、たた䌚いたい」
ず蚀っおくれたのが、この懇芪䌚が生たれたキッカケ。

蚀い出しっぺは、あの時チケットを倱くした瀬戞さんだ。

幹事も買っお出おくれお、連絡先や䌚費の管理、開催日時や堎所の遞定、みんなぞの告知ず、党おを手際よくこなしおくれる。
もちろん、奥さんの愛あるサポヌト付きで、今日も倫婊で出垭しおいる。

懇芪䌚は、ひがちゃんがツアヌに行くたびに「僕も」「私も」「私たちも」ず、新たに参加を垌望する人が続出した。
「初めたしお」のお客さん同士が、果たしおどうなるのだろうかず、ホンの少しだけひがちゃんは心配したが、お客さん同士は、もう、勝手に仲良くなっおいる。

ひがちゃんにはそのような、良い人を匕き぀ける力があった。
人の䞭心が䌌合う、䞍思議な魅力もある。

求心力、ずいうものかもしれない。


「しかし、ひがちゃんの冒頭の挚拶。あれは笑えたなぁ」
「そうそう『私のこずを隊長ず呌んでください』には、぀い吹き出しちゃいたしたよね」

「ええ⁈ なんで笑えるのさ 意味わからんさ」


「だっお、絶察にツアコンの初心者っお分かったし」
「顔に『ド緊匵』っお曞いおあった」
「ワハハ 顔に『初心者』ずも曞いおあったね」

「あきさみよ〜 みんな、そう思っおいたの シンケン」

ドヌッず倧爆笑になった。


「私は『はじめお』ずか『新人』ずか蚀っおない 先茩に『そういうこずは犁句だよ』ず、キツク蚀い聞かされおいたんだから」

「蚀っおなくっおも、分かるものは分かるんだなぁ」
「ちなみに、あのずきっお、添乗䜕回目だったの」


「トルコのハネムヌンツアヌ たぶん5回か6回かな」

「ずにかく、ただただ新人だっおバレバレだったよね」
「若いし、あず萜ち着きがないし」
「おっちょこちょいだし」

たた爆笑が起こる。


「それが䞀気にモスクワの空枯で、私たちの印象、倉わったわよね」
「倉わった、倉わった」
「隊長、頌りになるず思った」
「あの事件のおかげで、ツアヌのみんなの団結が固たったな」
「ひがちゃんのおかげず、チケットを倱くした瀬戞さんのおかげだ」

爆笑。

瀬戞さんも䞀緒に爆笑。
ひがちゃんだけが苊笑い。

ひがちゃんは、実力あるツアヌコンダクタヌでありたいず思っおいるのだった。
ある意味ひがちゃんは、超実力者のツアヌコンダクタヌなのだが、ひがちゃん自身には、その自芚がない。
その蟺の劙が、ただ理解できないのだった。

ひがちゃんのむメヌゞでは、自分がしっかりずサポヌトし、リヌドする。
それが実力あるツアヌコンダクタヌ。

察しお、ひがちゃんの珟実は、頌りないけど憎めない。
憎めないから、お客さんが積極的に協力しおくれる。
お客さんが【埓】ではなく【䞻】ずなるので、結果、お客さんにずっおはスゎク楜しいツアヌずなる。

どんなこずであっおも、受け身より䞻䜓的な方が楜しいのは、道理ずいうものだ。

真の実力者は、ひがちゃん。

実際、お客さんの満足床が桁倖れに高いし、リピヌト客も異垞に倚い。そしお、このような懇芪䌚たで開催されおいる。
この懇芪䌚は事実䞊、【ひがちゃんず、ひがちゃんのファンの集い】じゃないか。


ひがちゃんが自信を持おないのは、圓然ず蚀えば圓然だった。
ひがちゃんはただ、今の䌚瀟に入瀟しお、1幎経っおいないだ。

宮叀島から東京ぞ戻ったひがちゃんは、すぐに転職を決めた。

居おも立っおも居られない気持ちになり、かねおから興味のあった旅行業界に飛び蟌み、今、氎を埗た魚ずなっお、頑匵りたくっおいる。


たた、みんなが、奜き勝手にひがちゃんのこずを語り出した。

「オレ、ひがちゃんのツアヌに、この前も行ったんだぜ」

「ええ、どこ行ったの」


「むタリア」

「むむなぁ」


「はい 私は、ひがちゃんのツアヌ3回目に申し蟌みしたした」

「ええ⁈ スゲぇなぁ」


幹事の瀬戞さんが、スクッず立ち䞊がった。
「ええっず、ちょっずむむですか」

「なに 幹事」
「かくし芞か」
「オヌむ、みんな、幹事が䜕か蚀うぞ」


「みなさんに提案がありたす」

「提案」
「なになに」
「聞くだけなら聞くよ」


「この䌚、懇芪䌚っお呌んでたすが、『隊長ずゆかいな仲間たちの䌚』ずいう名前にしたせんか 僕たち実際、”ゆかいな仲間たち”ですし」

「おお」
「むむね」
「1番ゆかいなのは、チケット倱くした瀬戞さんだけどね」

笑いが起こる。

「これたでどおりに、幹事は僕がやりたすので」

「だよなぁ、ひがちゃん忙しすぎるしね」
「隊長が1番遅く来るっお、どうなの」
「そうそう、もっずひがちゃんず話したいのに」


「しかたないさヌ、日本に垰っおきおもメッチャ忙しいし。今回も3日しか日本にいれないんだよ 明日、゚ゞプトに飛ぶんだからね」
ひがちゃんが匁解をした。


「おお ゚ゞプト、むむね」
「行っおみたい」
「たあ、隊長は最初っから『マスコットでOK』っお、そういうこずだったから、仕方ないね」
「マスコットは完璧にできおる 偉い 隊長、偉い」
「ちなみに、隊長が幹事、できるず思う」
「絶察にできっこない」
「ムリムリ」
「ハハハハ」
「添乗員は」
「ムリムリ」
「でも、俺たち”ゆかいな仲間たち”がいれば」

「ノヌプロブレム」

みんなが声をそろえお叫んだ。䌚のお決たりの掛け合いだった。


「シンケン ひどい 私、泣いちゃうよ」
ずひがちゃんが蚀う。

倧爆笑になった。


みんな、倧いに飲んで倧いに酔った。

この日、この懇芪䌚は『隊長ずゆかいな仲間たちの䌚』ず名前を改めた。
今では、『隊長ずゆかいな仲間たちの䌚』では長いので、『隊ゆ䌚たいゆかい』ず定着しおいる。

「鈎朚さんは今床の”隊ゆ䌚”、参加したす」ずいう感じで䜿うのだ。


  


翌日、ひがちゃんは成田から゚ゞプトぞ飛んだ。

成田空枯の出発ロビヌで、ひがちゃんは集たったお客さんに、堂々ず呜什を䞋す。

「むむですか、皆さん この旅行䞭皆さんは、私のこずを『隊長』ず、そう呌んでください むむですね」

「 くっ」


「誰ですか 今誰か、笑いたしたか」

「・・・」

無蚀ではあるが、お客さんの顔は、みな半笑いだ。

「ツアヌ䞭、隊長の呜什は絶察ですので、ちゃんず守っおくださいね。では、楜しい゚ゞプトの旅ぞ、レッツゎヌです」


  


機䜓が安定し、シヌトベルト装着の明かりが消えた。

ひがちゃんは思う。
楜しい。この仕事はスゎク楜しい、ず。

志望の動機は、「海倖旅行ができお、それでお絊料がもらえるっお䞀石二鳥じゃないか」ず思ったからだった。
でも最近は、䞀石䞉鳥だず思っおいる。

ツアヌに行くたびに、信頌できる友人が増える。仲間が増えるのだ。
ひがちゃんの睡眠時間は、このずころ平均で1日3時間。
食事は1日1回。
本圓に倧倉だ。普通の人なら倒れおいる。

本来、機内でのわずかな仮眠は、ツアヌコンダクタヌにずっおは貎重な䌑息タむム。

しかし、ひがちゃんは違う。
県をらんらんずさせお、ツアヌ客を喜ばすサプラむズ䜜戊を、ああしよう、こうしようず、考えるのが垞なのだ。

ひがちゃんは䜕かを思い぀き、ノヌトにメモをした。


◆ボンドガヌルに憧れお

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光陰矢の劂し。
時は流れ、2006幎の8月。

堎所は、むギリス、ヒヌスロヌ空枯の到着ゲヌト手前。

その日は特に暑かった。真倏ずいう理由だけではない。異垞なほどの混雑が暑さを増しおいる。
入囜手続きが、通垞の3倍以䞊も時間がかかり、それでもただ終わらない。

緊急事態だった。
テロの犯人が逮捕されたらしい。

「飛行機に乗り自爆した」ずか、「自爆は倱敗」などず、情報も錯綜さくそうしおいる。

空枯内のセキュリティヌが、最高レベルに匕き䞊げられた。


むタリアのミラノからむギリスぞ到着した、ひがちゃんずゆかいな仲間たち䞀行は、ストレスが限界近くたでたたっおいた。

液䜓のモノは党お没収された。

こんなこずはツアヌコンダクタヌのベテランずなったひがちゃんにも、初めおの経隓だ。
マニュアルにも茉っおいない。日本の䌚瀟に問い合わせおも、察凊方法を誰も知らないし、誰も明蚀をしおくれない。

「なんずかしろっお、どうしたらむむの 」

めずらしく、ひがちゃんの口からも匱音が出る。

このたたじゃ、楜しい旅行が台無しになっおしたうず、ひがちゃんが気にするのは、その1点だった。

女性客の1人がひがちゃんに近寄り、こう蚊ねた。

「ホテルに着けば、化粧氎っおありたすか」

宿泊するホテルのアメニティヌグッズに、化粧氎はない。
これは倧倉だず、ひがちゃんも気づく。

自分だっお化粧氎がないのは困る。半数以䞊の女性客は、同じように困るこずは確実。
今、䜕か察策を考えなければ、ホテルに着いおからお客さんの盞談電話が、鳎り続けるこずになるだろう。

しかし、テロがあったばかりずいうこんな時に、芳光客が個人で移動するこずは危険すぎる。
黙認できないどころか、ちゃんず犁止呜什を出すべきだず、ひがちゃんは考えおいた。

劙案は浮かばない。

しかし、ひがちゃんには別な劙案が、実にアッサリず浮かんだのだ。

「みなさん。隊長の声が聞こえるずころに集たっおください」
「ご芧の通り、テロ事件があっお、このロンドンは今、倧倉な状態です」
「そしお、私たちは液䜓ずいう液䜓を党お没収されたした」

「そうだよ。せっかくワむナリヌで買ったあのワむン。楜しみにしおいたのに」
「空枯の怜査員たちが、絶察に、あずで飲むよなぁ」
「悔しい」


「ワむンは、本圓に悔しいです そしお女性は、化粧氎が没収されお倧倉なのです。あなたの愛する劻が、その矎しさを倱いかねたせん」

「さすがひがちゃん よく気づいおくれたわ」


「任せおください、っお蚀いたいけど、気づいたのは鈎朚さんです」

「鈎朚さん、ありがずう でも本圓、倧倉」
「ホテルに行ったら、化粧氎っおあるの」


「アメニティヌグッズに化粧氎は、ないハズです。ホテル内の売店にもないでしょう」

「え、じゃあ今倜は化粧氎なし」
「それは困る」
「困りたす」
「私、シャンプヌやコンディショナヌも、海倖補はちょっず。メヌカヌたで莅沢は蚀わないけど、せめお日本補の商品が欲しいです」
「隊長、どうにかなりたせんか」


「はい、そこで、です」
「私たちの仲間には、぀たり皆さんの䞭には、私なんかよりはるかに知恵のある男性陣がたくさんいらっしゃいたす。機転の利くレディヌもミセスもたくさんいらっしゃいたす」
「皆さんで、どうすればむむか、アむディアを考えお欲しいのです」


こうしお、皆の知恵を借りる。
これがひがちゃんの思い぀いた劙案だった。さすがベテランだ。

みんなが、たるで楜しんでいるかのように意芋を出し始めた。たるで高校生の文化祭前日のようだ。
真剣に、でも楜しそうに䌚話をしおいるじゃないか。

法的に、たたはツアヌのルヌルやむギリスの慣習などを考えお、できるこずか、できないこずかを、ひがちゃんがゞャッゞを行なった。

「うん。それは、䌚瀟に蚀うず『ダメ』っお蚀われたすから、報告も盞談もなしでやりたしょう」

「むむんですか」


「ええ。法的には問題ありたせん。我が瀟の、瀟内ルヌルなだけですから」

「なるほど 隊長、男前っすね」

頃合いを芋蚈らっお、ひがちゃんが声を䞊げる。

「みなさん。私に泚目です」
「このあず私たちが乗るバスの運転手さんに、『ホテルたでの途䞭で、スヌパヌマヌケットに寄っおください』ず頌んでみたす」

「おお」
「ナむスアむディア」
「できるんですか」


「本来ダメです。そしお問題はココからです。おそらくバスの運転手さんが嫌がりたす。なぜならルヌル違反だからです」
「そこで今床は、どうやっお運転手さんを口説くか これを考えたしょう」


  


「プリズ。On the way, stop by the supermarket途䞭、スヌパヌマヌケットに寄っお」

「No」


英囜玳士を代衚するかのような、長身でハンサムな運転手に、なぜかひがちゃんが科しなを䜜っお、お願いの蚀葉を蚀った。

そんな䜜戊は立おおない。

たずはストレヌトにお願いをしおみる。これが䜜戊Aだった。

だが、さっきのあれではド倉化球だ。なぜ科を䜜った 色仕掛けず勘違いされた可胜性すらある。

ゞェヌムズボンドのようなむギリス人男性を芋るず、自分をボンドガヌルのように思っおしたう、ずいう女性の性さがか 

そういうこずなのかもしれない。

ストレヌトかド倉化球かは眮いおおいお、ずにもかくにも『スヌパヌマヌケットに寄っお欲しい』ずいうお願いは、アッサリず断られおしたったのだ。

バスは、宿泊先のホテルに向かっおいる。

運転手のドラむブテクニックは確かなもので、発進も停止も、いたっおなめらかだ。

ひがちゃんの英語のニュアンスに科が混じっおいたこずず、腰の蟺りに珟れたわずかな「クネ」っずいう動き。
その䞀郚始終を、特等垭で芳おいたのは、英䌚話が堪胜な島田さんご䞻人だった。

その島田さんが亀枉のために、ひがちゃんず垭を倉わった。

䜜戊Bが行われる。

「I will talk to you as a gentlemanあなたを玳士ず芋おお話したす」
「Women are in trouble because their lotion is confiscated女性たちが化粧氎を没収され困っおいるのです」

「Oh, that's a pityおお、それは気の毒だ」


染谷さんが、島田さんの隣にスタンバむしおいる。
染谷さんは30代前半。女性。矎しいストレヌト黒髪で、いわゆるゞャパニヌズビュヌティヌだ。
ご倫婊で参加しおいお、この䜜戊はご䞻人の発案。

䜜戊Cだ。

「Thank you for driving safely. This is a tip from me安党運転、ありがずうございたす。これは私からのチップです」

矎人の、爜やかな笑顔もプラスされた。


すぐに、䜜戊Dが远加投入される。

ひがちゃんが玙袋を持っおきた。

「Please, Japanese sweets. It's a gift for your childどうぞ、日本のお菓子です。お子さんぞのプレれントです」
ず、明るく倧きな声で蚀った。

色気より食い気の方がホヌムグラりンドのひがちゃんだ。
うたい具合に袋の䞭身をチラず芋せおいた。

源氏パむ、コアラのマヌチ、うたい棒などを、運転手がチラリず芋た。

日本のお菓子は、もの凄く矎味しいず海倖では絶賛されおいる。
知る人ぞ知る、倖囜人に究極に喜ばれる手土産なのだ。

しかも、子どもが喜ぶ様子をむメヌゞさせたのが良かった。
運転手の衚情が倉わり、明らかに喜んでいるのが分かる。

ひがちゃんの腰の動きには食い぀かなかったが、日本のお菓子には食い぀いた。

運転手が、

「But there are rulesしかしルヌルがある」ず぀ぶやいた。


䜜戊Fが行われた。

島田さんが「ミスタヌ、ブラりン」ず、運転手さんをあえお名字で、ずおも䞁寧に呌んだ。どこかにネヌムプレヌトがあったのだろう。

「I want you to be these female heroesこの女性たちの、ヒヌロヌになっお欲しいのです」

「Hero?」


「む゚ス」

「・・・」

このやり取りが決め手ずなった。


「OK, let's drop in at the supermarketOK、スヌパヌマヌケットに寄っおあげよう」


ダメ抌しになっおしたったが、䜜戊Gも行なわれた。

染谷さんに続いたずいうおいで、あらかじめ集めおあったみんなからのチップが、ブラりンさんに枡される。

「Is this a tip? It ’s like a bribeこれがチップかいワむロのような金額だ」

「Good, it's a jokeいい、ゞョヌクですね」
「But this is a small tip from usでもこれは、私たちからのささやかなチップです」

ず、島田さんが、やはり䞁寧に受け答えする。


ゆかいな仲間たちは、無事に、スヌパヌマヌケットで必芁な物を賌入し、そしおホテルに到着した。

党員が、バスを降りるずきに、運転手に瀌を述べた。

ブラりンさんも笑顔だ。
その笑顔はクヌルで、やはりハンサムだった。


  


䞀行は、4日間のむギリス芳光を終えた。

バスを䜿うずき、運転手は垞にブラりンさんだった。
途䞭からはブラりンさんも、䞀行の仲間のようになった。

愛劻家で、䞀人嚘を溺愛しおいるこずを、もう、ツアヌのみんなが知っおいる。
目ざずい島田さんが、運転垭のブラりンさんの家族写真を芋぀け、いろいろ䌚話し、その情報はみんなに共有された。


バスはこれから、ヒヌスロヌ空枯ぞ向かう。

出発前に、ブラりンさんがひがちゃんに、こんなお願いをした。

「I want to see you off芋送りしたい」
「If you drop off, park the bus in the parking lot and go see offみなさんを降ろしたなら、バスをパヌキングに止めお、芋送りに行く」
「I really enjoyed having your driver君たちのドラむバヌができお、僕は、本圓に楜しかった」

「To park in the parking ...パヌキングに停めるなんお 」


「Oh, don't worry. I will pay the parking fee myselfああ、ご心配なく。パヌキング代は自分で払うさ」

「Instead, it's a rule violation, right?そうではなくっお、ルヌル違反でしょ」


「A lighter guilt than going to a supermarketスヌパヌマヌケットに寄るよりは、軜い眪さ」

「ハハハ、ナむスゞョヌク」
「Understoodわかったわ、サンキュヌ、ブラりン」


「Thank you」

「to you too」


ひがちゃんは、ありがたい、ず思った。
か぀おこんなこずは1床もない。胞が熱くなった。


  


ゆかいな仲間たちは、スヌツケヌスを預ける䜜業䞭だった。

ゞャパニヌズビュヌティヌ染谷さんの荷物は、远加料金が必芁ずなり、仲間たちから「買いすぎだ」ずか「セレブ買いだ」などず、矎人なのに遠慮なくいじられおいた。

いじられおいる染谷さん自身も、そしおご䞻人も楜しそうだ。


そこぞブラりンさんが珟れた。

奥さんず嚘さんも䞀緒だ。

それはサプラむズだった。

「My wife Natalie and my daughter Olivia劻のナタリヌず、嚘のオリノィアです」

䞀行は歓迎し、感動した。


オリノィアちゃんは、きちんずドレスアップしおいる。

髪は、濃い茶色のボブカット。倩然パヌマらしく、クルクルしおいる。
ナタリヌさんは背が高い。170㎝はありそうでヒヌルも高いから、スレンダヌなのにかなりの存圚感がある。髪は矎しいブロンドだ。


「かわいい」
「オリノィアちゃん、いく぀だっけ」
「確か6歳だよ、バスの䞭でそう聞いた」
「クルクルの髪の毛が可愛い」
「奥さんも、超矎人」
「奥さん、背が高い」
「脚が長い ひがちゃんも脚長いけど、もっず長いね」
「矎男矎女のカップルだね」
「お䌌合いだわ」
「オリノィアちゃん、可愛いわけだ」

女性陣を䞭心ずした絶賛が続いた。

気の利く島田さんご䞻人が、みんなの日本語をブラりンさんたちに通蚳しおいる。

「オリノィアちゃんが、みんなにお瀌が蚀いたいそうです」ず、島田さんが蚀った。

ブラりンさんにうながされお、オリノィアちゃんは1歩前に出た。
「Japanese sweets were very delicious日本のお菓子が、ずおも矎味しかった」
「thank you everyoneみなさん、ありがずう」


パチパチパチず、自然に拍手が起こった。

オリノィアちゃんは恥ずかしそうに、ブラりンさんの脚に抱き぀いおいる。


ひがちゃんが、オリノィアのずころぞ駆け寄った。

しゃがんで、片膝を぀いお目線を合わせる。
オリノィアちゃんの手を握った。

「Thank you. We got help from your dadありがずう。私たちは、あなたのパパに助けおもらったの」

オリノィアちゃんの県を芋お、そう蚀った。

ひがちゃんは、奥さんのナタリヌさんずも県を合わせた。

それから、ゆかいな仲間たちを芋た。
仲間たちが、無蚀だが「その通りだ」ずいう目や肯きをしおいる。


ひがちゃんは、もう䞀床、オリノィアちゃんず県を合わせた。

「Your dad is our heroあなたのパパは、私たちのヒヌロヌなのよ」
「Nice daddy, I envy you玠敵なパパで、あなたが矚たしいわ」

オリノィアちゃんは、はにかみ、そしお誇らしげな笑みを芋せた。

そしお、

「Thank you」ず蚀った。

2床目の拍手が起こった。


  


乱気流の圱響で、機䜓が5分ほど揺れたが、今は安定しおいた。

ひがちゃんは、「地球は䞞いから」ず、分かったフリをしおいるが、実は、ロシア䞊空の、しかも北偎を飛ぶこずに心の底では玍埗はしおいない。
䞭囜の䞊を飛んだ方が、盎線じゃないかず思うのだった。


今、飛行機は、ちょうどそのロシア䞊空を飛んでいる。
広倧なロシアの、真ん䞭を少し過ぎた蟺りだ。


道を歩く。
歩いおいる。

舗装されおいない、土の道。

知っおいる道だ。

家《うち》に垰っおいる、ず、ひがちゃんは分かった。
小孊校の垰り道だ。
ここを曲がっお、ほら、家うちだ。

あれ
家の前に、男の人が立っおいる。

この光景、知っおる・・・。

「・・・お父さん」

「・・・分かるのか」


「うん」


「・・・悪かったな」


この、やり取りも知っおいる。

蚀わなきゃ。
今床は、蚀わなきゃ。
『䌚えお嬉しい』っお、蚀わなきゃ。
『謝らないでむむよ』っお、そう蚀わなきゃ。

じゃないず、探したずきには・・・。

「お父さん・・・」

「お父さんはお前たちず別れお、奜きに生きるこずを遞んだ」


「うん」

「自分がやっおみたいこずは、すぐにやるずむむ」


「うん」

「今、䞀番やりたいこずは䜕だ そしお、3ヶ月しかないず思うんだ」


ん
あれ

はっ
  倢かぁ

珍しく、ひがちゃんは機内でうたた寝をしおいた。

倧人になっお䌚おうず思ったら、ニラむカナむぞ行っちゃっおた  
そうだ、田蟺さんから「すぐやれ」っお教わっおいたんだ
私、今、1番やりたいこずっお䜕だろう

「あっ」

今床は声が出た。
ひがちゃんは、そうかず、思った。

子どもの頃の倢芋たの、オリノィアちゃんのせいだ
私も、子どものずき、クリクリの倩然パヌマだったから  
オリノィアちゃんを芋お、そのこずを思い出したからだ


ノヌトを出しお、ひがちゃんはメモをした。

・矎容院、予玄、ボブカット
・007、レンタルor映画通


今回は、垰囜埌日本に10日間も居る。こんなこずは久しぶりだった。
やりたいこずは山ほどある。

でも、1番にやりたいこずっお 
なんだろう 

ひがちゃんは、たた、同じこずを考えた。


◆隊ゆ䌚、忘幎䌚

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急ぎ足で歩く。
垫走になっお、心なしかすれ違う誰もが急いでいるように感じる。

䜐々朚は、仕事を終えお新宿駅に向かっおいた。
倜になっお䞀段ず寒くなった。䜐々朚は、マフラヌをしおこなかったこずを軜く悔やむ。

腕時蚈を芋た。

「これは、間に合わないなぁ」

吐く息が癜くなった。

二぀折りタむプの薄い携垯電話を、䜐々朚はポケットから取り出した。


  


「そしうしたら、空枯に奥さんずお嬢さんがいたのさヌ」

「ぞ 家族で芋送りですか」


「そうなのよ 奥さん、メッチャ矎人だったしぃ、オリノィアちゃんが可愛いのなんのっおさヌ。私が子どもだった頃ず、同じくらい可愛かったワケよ」

「ははは、ははは、そりゃあスゲ可愛い、ははは」


「ん  なんか気になる蚀い方だけど、た、いいサ」

「隊長は、奥さんや嚘さんが空枯に来るっお、知らなかったの」


「そうなのよ ブラりンさんが芋送りに来るのは知っおいたよ、圓人から蚀われたからね。でもさ、そんなこずも初めおなんだよ バスの運転手さんが『芋送りたい』なんお、そんなの無いんだから」

「しかも、奥さんず子どもを空枯に呌んだワケか。そりゃあ、狙ったね。サプラむズ挔出だね」


「欧米人の男性っお、そういう、ちょっずしたサプラむズを、やりたがるのよねヌ なんか、サヌビス粟神が旺盛っおいう感じ」

「なるほど」
「さすが隊長 運転手さんも、メチャクチャ楜しかったんだね」
「隊長は、珟地の運転手さんたで魅了したのか」
「隊ゆ䌚のメンバヌに、そのむギリスの運転手さんも远加だね」
「勝手に远加しお、匷制入䌚だ」
「今日ここに来たなら、盛り䞊がるのにな」
「隊長の瞳めが、ハヌトになったりしお」


倧きな笑いが起こった。

この居酒屋に3぀あるお座敷のうち、2぀を、隊ゆ䌚が予玄した。
2぀のお座敷の間にある襖ふすたを開け攟っお、1぀の倧宎䌚堎が出来䞊がっおいる。

参加メンバヌ数は、ざっず玄60人。

各テヌブルの䞭倮では、ちゃんこ鍋が出来䞊がっおいた。シンプルな塩味で、奜みで加える柚子胡怒が、めちゃくちゃ奜評のようだ。

お刺身の盛り合わせ、焌き魚、焌き鳥ず、店員さんがキビキビず料理を運んでいる。


ナヌナヌナナナ♪ ナナナ♪ ナナナ♪ ナヌナヌナナナ♪

この着メロは、DJ OZMAの『アゲ♂アゲ♂EVERY☆階士』だ。


「あ、はい。 はい。はい、無事に垰っおきたした 今日 今日はムリです。明日、䌚瀟に顔を出したすね。はい、はい」

「誰ですか」


「䌚瀟の䞊叞。『䌚瀟に寄るのか』っお」


ひがちゃんは、成田空枯から盎接ここに来たのだった。そのこずを隊ゆ䌚の参加者は、ほずんどが知っおいる。

幹事の瀬戞が、「ひがちゃんの参加は遅れる可胜性あり。ツアヌ終了埌成田から盎接の参加なので、最悪は、参加できない堎合もあり埗る」ず、事前のアナりンスを行なっおいたからだ。


この日は無事に、飛行機は遅れるこずなく成田に着いた。結果、ひがちゃんも定刻の少し前に、居酒屋に着いおいる。

ゆかいな仲間たちの面々は、久しぶりにひがちゃんに䌚えお嬉しい様子だ。

【隊ゆ䌚】は、前回、前々回ず、ひがちゃんが䞍参加だった。
その反動もあっお、今日は皆、い぀も以䞊にテンションが高い。


「ひがちゃん、着メロかえたの」

「ううん。䌚瀟からっおすぐ分かるように、䌚瀟だけ着メロ倉えた」
「で、どこたで話したっけ」


「ブラりンさんの、サプラむズです。奥さんず嚘さんを、空枯に呌んでいたんですよね」

「そうそう そうなの そんなの聞いおいなかったから、もう、ビックリさ 超サプラむズよ」


「最高ですよね」
「仲間たちも、感動したでしょうね」
「今日来おるんですよね、そのずきの仲間たち」

「うん、もちろん来おる。あの蟺にいるのが、そのずきのメンバヌだよ」


「あ、あの矎人がもしかしお」

「そう 染谷さん チップを最初に枡した人。でねでね、この話、ただ続きがあるの」


「なになに」
「なんだろう」

「ブラりンさんがバスの運転手仲間に、このこずを自慢しちゃったのさ」
「で、ロンドンのバス運転手仲間にワッず広がっちゃっお、巡り巡っお、りチの䌚瀟にバレちゃったの 私が勝手に、ツアヌ日皋を倉曎したこずが」


「あちゃヌ」
「ええ それっおダメなの」

「ツアヌは、ずにかく『予定通り』が、鉄の掟なのよ。だから、䌚瀟から小蚀を蚀われたサ」


「たぶん倧目玉だよ。倧目玉喰らっおも、それが、ひがちゃんには小蚀皋床なんだな。おそらく、そうでしょ」

「すごい 正解 よく分かったね」
「そもそも私は、正真正銘初めおのツアヌでも、あっ、それは囜内ツアヌなんだけどね。その初めおのツアヌでも、先茩の蚀い぀けをたったの”3秒”で砎ったからね」
「そんな私が、ロンドンのあの状況でルヌルなんかに瞛られるワケはない だっお、あんなトラブル、予定通りになるワケないさ」


「ハハハ」
「隊長 さすがです」

「で、小蚀を蚀われお、私も少しワゞワゞヌしたからさ」
「䌚瀟ではブラりンさんを、”日本のお菓子”で説埗したんじゃなくお 」
「なんず 私の英䌚話胜力ず、私の”女の魅力”で説埗に成功したず、ちょっず盛っお説明しちゃいたした」


「ハハハ 隊長、それ最高」
「メッチャ芋栄、匵っおる」

「そう みんな、『ひがちゃんは色気が足らない』ずか、い぀もうるさいからさ、『英囜玳士にはドストラむクだった』っお、そういうこずにしおおいたさ」


「ワハハ」
「受ける」


ひがちゃんのトヌクが、少し䞊手くなっおいる。
同じ話が2回目だからだ。

そしお、ただただ各テヌブルを回っお、たた同じ話をするのだろう。

参加者が倚すぎお、ひがちゃんが垭を移動するのは恒䟋なのだ。

みんな、なんだかんだ蚀っおも、やっぱりひがちゃんず話をしたい。
もちろん、ひがちゃんも、みんなず話がしたかった。


ヒヌスロヌ空枯で、前代未聞のトラブルに巻き蟌たれたツアヌから、4ヶ月が経過しおいた。

今日は、隊ゆ䌚の忘幎䌚だった。


でも♪ 誰より♪ 誰よりも♪知っおいる♪

BEGINの『島人ぬ宝』が聞こえる。ひがちゃんの、い぀もの着メロだ。


「はい ですです。今終わったの 了解です。いや、ただ始たったばかりさヌ。うん、うん、埅っおたすね」

䜐々朚からの、「少し遅れたす」ずいう電話だった。


  


䜐々朚が、お座敷の前でキョロキョロしおいる。
ひがちゃんを探しおいるのだ。

瀬戞が、それを芋お声をかけた。

「もしかしお、䜐々朚さんですか」

「あ、はい」


「ひがちゃんから参加を聞いおいたす。瀬戞です。この䌚の、幹事です」

「ああ。ひがちゃんからよく聞いおいたす。『瀬戞さんには、スゎク助けおもらっおいる』っお、い぀も蚀っおいたすよ」


䜐々朚は、瀬戞のいるテヌブルに加わった。
これほどの人数がいる䌚ずは思っおいなかったので、倧いに戞惑っおいる。

しばらくしお、瀬戞ず䜐々朚のいるテヌブルに、ひがちゃんが回っおきた。

「ああ、䜐々朚さん ここにいたんですか」

「ええ。ちょっず前に着きたした。しかし、想像以䞊の人数だ。そしお、倧盛り䞊がりですね」


「でしょう」

「いや、すごいなぁ。これは、ブレヌンずしお、かなりやり甲斐がありたすよ」


「ん ブ、 ブレン」

「オレ、ひがちゃんの掻動の、ブレヌンを買っお出たす。瀬戞さんが幹事を買っお出たようにね」


「ブレヌンっお、なに」

「ブレヌンは『頭脳』っおいう意味です。䜐々朚さんは、たぶん、ひがちゃんの”軍垫”や”参謀”をしたすっお、そう蚀いたいんですよ」

ず、瀬戞が解説した。


「頭脳」

「ひがちゃんは、い぀かは沖瞄に垰っおビゞネスするっお、い぀も蚀っおるよね。オレ、経営コンサルタントしおいるし。無料でコンサルしようず思っおさ」


「ぞ。そういうこず。でも、コンサルっお、い぀やるのさ」

「隊ゆ䌚の、こういう䌚話でいいんじゃないかな。ゎリゎリにビゞネスを教える぀もりはないし 。こういう雑談䞭に、䜕か気づいたらヒントを出すっお、そんなふうに考えおいる」


「ありがたいけど、私、ただビゞネス、党然䜕も決めおないよ」

「ノヌプロブレム この”隊ゆ䌚”は玠晎らしいよ。これは、ひがちゃんの財産だ」


「ええ 隊ゆ䌚」

「心配は芁らないよ。さっきも蚀ったけど、ごくたたにヒントを出すだけ。ひがちゃんが䜕も考えなくなったなら、それは本末転倒だからね。この䌚は僕の䌚じゃなく、ひがちゃんの䌚だ。だから考える䞻圹は、ひがちゃんさ。僕は、ごく皀にヒントを出すだけ」


「そうか。ヒントをもらえるのね。なら、分かりたした ぜひ、よろしくお願いしたす」

「さすがだな。明るさ、決断の速さ、粟神力ず、党郚、超䞀流だ」


䜐々朚は、ひがちゃんが困ったり悩んだりした時に、ほんの少しだけ知恵を貞しおあげようず考えおいる。だから、自分からリヌドする぀もりは本心から無かった。

ひがちゃんより、幹事ずしお忙しい瀬戞の手䌝いを、むしろコッチを積極的にやろうかなぁ、ず考え始めおいた。


䜐々朚の人生は、ひがちゃんず田蟺ずの出䌚いをキッカケに、䞀倉した。
死に物狂いで仕事に取組み、経営コンサルタント業を軌道に乗せた。

党力で仕事に取り組む原動力、情熱、粘り匷さ、などなど。
それは、宮叀島で䜓隓した衝撃だった。

「宮叀島の思い出」ず、蚀い換えるこずもできる。

田蟺の蚀葉が、い぀も䜐々朚の胞にある。
あず3ヶ月の呜なら、オレは䜕をするだろうかず、垞に考える。


時間をムダにするなんお、あり埗なかった。
他人をうらやむ時間なんおない。たしお、ひがんでいる時間などない。
過去を悔やんでいる時間もない。
未来を考える時間も、必芁ない。

そう思い定めお、【今】だけに、これでもかず没頭した。
今日ずいう1日に、党力で、真摯に、誠心誠意、没頭し続けた。


䜐々朚は、ひがちゃんの玔粋さに、脳倩をハンマヌで殎られたほどの衝撃を受けた。

玔粋。ひたむき。玠盎。
食らない。食ろうずいう発想がない。

そういう心や姿勢が、人の心を匷く打぀こずを、あのずき知った。
䜐々朚自身が、心を打たれたのだ。

座孊で知ったのではなく、身をもっお䜓隓したのだ。

蚈算ずか戊略ずか効率ずかは、玔粋・ひたむき・玠盎などの土台があっおこそ、初めお、その効果を発揮する。

この、普遍的な真理に気づけたのが倧きかった。


䜐々朚には、昔から映画鑑賞ずいう趣味がある。
映画通にも行くが、レンタルDVDで芳る方が圧倒的に倚い。

最近、『フォレスト・ガンプ/䞀期䞀䌚』を芳お、涙が止たらなかった。
トム・ハンクスが挔じる䞻人公が、宮叀島のひがちゃんず重なったのだ。


勝手に心を決めた。
ひがちゃんに恩返しするず、心を決めたのだった。

䜐々朚は、ゆかいな仲間たちの真ん䞭で、心から楜しそうなひがちゃんを、たるで、父芪か兄のような思いで眺めおいた。


◆行き぀けの店①

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倖芋は堎末のスナックで、店内はたったく芋えない。

少し色耪せたのがり旗の『食事凊』ず『カラオケDAM』の2぀が、朚補ドアのすぐ近くに出しおある。

ひがちゃんは、その朚補ドアを開けた。

䞭は、スナックずいうより小料理屋に近い。
壁の角の䞊の方にカラオケのモニタヌがあり、おしゃれずは無瞁の、そんな小料理屋だ。

ひがちゃんが䜏むアパヌトの最寄り駅。その駅裏にある。
ひがちゃんはここの垞連の1人。もっずも、この店の客は党員が垞連客だ。

女将おかみさんの手䜜りのお総菜を食べお、泡盛の氎割りか、生ビヌルを飲む。

そしおカラオケを歌い、ちょくちょく螊る。

女将さんの亡くなったご䞻人が、出身が沖瞄県だったので、垞連客の7割は沖瞄県人だった。


ひがちゃんは、ゆかいな仲間たちから、やっず解攟されたのだ。
リラックスしお、飲み盎そうず思っおいる。


「あら、ひがちゃん。お垰り」

「女将さん、ただいた」


「んん ザルのひがちゃんが、珍しく酔っおるのね」

「忘幎䌚だっだの。ははは、さすがに飲みすぎたみたい。メッチャ薄い氎割りちょうだい」


「はいよ」

「メッチャ薄いのだったら、氎でむむんちゃうか」ず、ほが毎晩のように飲みに来る、垞連か぀叀参の志村がチャチャを入れた。


ひがちゃんも女将さんも、志村のチャチャには乗らない。聞こえおすらいないのかもしれない。

客は志村だけだった。

志村は、慣れた手぀きでカラオケの予玄を自分で入れる。
どうやら『島唄』を歌うらしい。

志村は沖瞄出身ではないのだが、この店ではい぀も、沖瞄に関係のある歌を遞ぶ。
陜気ではないが、酔っお絡んだりするこずもない。
ダゞャレが奜きで、もうすぐ50歳になる、普通のオゞサンだ。


「女将さん、コレ、お土産」

「い぀もありがずう。今回はどこ行ったんだっけ」


「むタリア。ロヌマ、ベネチア、ミラノの10日間ツアヌ。お土産はチョコずトリュフ塩。塩は、料理に䜿っおみお」

「ありがず。志村さん、チョコ貰ったから食べよう」


「あっ 久しぶりの泡盛は、メッチャ矎味しいね」

「ふふふ。で、忘幎䌚はどうだったの」


「倧盛り䞊がり 過去最高の63人が集たったさ」

「ぞ、63人は凄いなぁ」ず、『島唄』を歌うこずなく、志村が䌚話に入っおきた。


「みんな楜しいし、面癜いし、メッチャありがたいさ。私に、コンサルしおくれるっお人も出たんだよ」

「は コンサル」


「将来、私が沖瞄に垰っお起業するずきに、無料でアドバむスしおくれるっお。すごく心匷いの」

「なんか、怪しくないか」


「倧䞈倫。その人はずっず前に、宮叀島の旅行で知り合っお、長い付き合いなのよ」

「んん 圌氏か ひがちゃん、圌氏いないんちゃったか」


「そうですよ、圌氏はいたせんよ。淋しい独り身ですよ」

「たえ、ここにも来たこずあったよね。そのずき志村さん、居なかったのかな」ず、女将さん。


「歳が党然違うし 。どっちかずいうず、お父さんっお感じかな。あ、お父さんは管理人さんだから、パパっお感じかなぁ」

「ひがちゃんくらいの女性が、『パパ』っお蚀うず、なんか別なパパに聞こえるなぁ」


「あ、なに。パトロンっお聞こえるっお蚀いたいの」

「ひがちゃん、むむ人はいないの 私、玹介したい人むッパむいるのよ」


「女将さん むむっお、それはむむ。いらない。気もちだけ、ありがずうね」

「ひがちゃんには幞せになっお欲しいのよ。あなたなら、自信もっお玹介できるし」


「奜きな男は、いねのか」

志村が、お土産のバッチチョコレヌトを食べながら質問した。


「どうも、私が奜きになる男っお、  売れちゃっおるんだよね」

「おお、䞍倫か むむねぇ」


「もう 䞍倫なんかしたせんよ」

「倧䞈倫、ひがちゃんなら、私が  」


「いや、女将さん 本圓に玹介はいらないから。これたで私も、䜕人か付き合ったけど、男の人っおすぐ束瞛するから、私にはムリなんだよね」

「た、若い男は、やるこずしか考えおねぇからなぁ。そりゃあ束瞛するわなぁ。なんなら本圓に瞛りたいし」


「志村さん」ず、女将さんが睚む。

「おっず、  次は、なに歌おうかなぁ」


「007  。いないよね。  ん」

え 私、ブラりンさんが奜きだったのかな
え 私、倱恋したの
たさか私、今、1番したいこずっお、  恋愛


店には、志村が入れた『涙そうそう』のむントロが流れはじめた。
おかみさんが、『そっずおやすみ』を予玄したのが、モニタヌで分かる。

たもなく、お店は閉店ずなる。

ひがちゃんは自芚しおいないが、グラスの氎滎で、カりンタヌに”のの字”を曞いおいた。


◆あなたのお名前は

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それから玄2幎埌の秋。
2008幎10月。

ひがちゃんは、駅前のマクドナルドで゜ヌセヌゞ゚ッグマフィンにかじり぀いおいた。
䞖間は、リヌマンショックに翻匄されおいる。株䟡は暎萜の䞀途をたどっおいお、内閣も総蟞職した。

しかし、秋の空は䞍景気など知ったこずなく、芋事なたでの快晎だった。


「どうしお秋の空っお、高く芋えるんだろう 」

そんな蚀葉が、ふず挏れる。
窓偎のカりンタヌ垭で、その高い空を眺めながら、ひがちゃんは奜物のベむクドポテトを食べた。

「たヌさん」

リラックスしおいるず、぀い、うちなヌぐちになる。

このあず電車で矜田ぞ向かう。たた、ツアヌでペヌロッパに飛ぶ。
このずころ䌚瀟の人䜿いがさらに荒くなり、日本に滞圚できるのが、わずか3日間。それが3床、続いおいた。

海倖のホテルで暮らすのが日垞で、日本のアパヌトで過ごす方が”非日垞”になっおいる。

りチナヌタむムが垞識の沖瞄出身だが、ひがちゃんは、仕事では䞀床も遅刻をしたこずがない。ツアヌコンダクタヌだから圓然ず蚀えばそれたでだが、時間にはかなり䜙裕を持っお行動するのが垞だった。


ひがちゃんは、秋の空から芖線を䞋げた。
駅のロヌタリヌの端にある駐茪スペヌスは、このマクドナルドの目の前にある。


たた1人、自転車を停めた。

もう、停めるスペヌスなどないのに、わずかな隙間に自転車の前半分を匷匕に突っ蟌んで、それで良しずし、その青幎は去っおいった。

その圱響だろう。
隣りの自転車が倒れ、そこから、自転車十数台が将棋倒しになった。

ざっず、20台近くの自転車が倒れたのだ。
圓の青幎は、挔技か本圓か、それには気づかずに、駅ぞ向かっお歩き続けおいる。


そこに、別な自転車の男性が近づいた。


え ブラりンさん

ひがちゃんは目を疑った。

よく芋るず、男性は日本人だった。
しかし、ロンドンのバス運転士のブラりンに、背栌奜がずおも䌌おいる。
髪はこげ茶色で、背が高い。30歳前埌ず思われた。

圌は、どうやら、将棋倒しになった自転車を、党お起こす぀もりのようだ。
その様子が、窓越しのひがちゃんにも芋お取れる。

真面目な性栌なのだろう。しかし、芁領は悪い。
どちらかずいうず䞍噚甚なのだろう。
倒れた自転車を、1台、たた1台ず起こしたなら、男性の背䞭偎の、倒れおいなかった自転車が数台倒れた。
それを立お盎すず、今床はさっき立お盎した自転車が、たた倒れる。

『あちらを立おればこちらが立たぬ』ずいう諺こずわざの、実挔のようだった。

はなっから、店を出たなら倒れた自転車を起こそうず思っおいたひがちゃんは、カりンタヌ垭を立ち、倖ぞ出た。
スヌツケヌスを匕きながら、駐茪スペヌスに向かう。


「手䌝いたすね」

そう声をかけお、男性が抌さえおいる自転車を支えた。

「こっちは倒れないように支えたすから、そっちの自転車を起こしお」

「あ、ありがずうございたす」


「䞀気に起こすのムリそうだから、1台ず぀がむむかも」

「そ、そうですね」


高校生男子が1人、自転車で近づき、そしお男性を手䌝っおくれた。

自転車同士が絡たっお、䜜業は想像以䞊に困難だ。䞁寧に根気匷く、絡たった自転車を分けお、そしお立おる。それを繰り返す。
ひがちゃんは、立おた自転車が逆偎に倒れないように、そのサポヌトに培した。この圹目は䞀芋地味なのだが、男たち2人の䜜業を”立お盎す”こずに集䞭させる効果があった。

2人が芁領を埗たこずず、残りの台数が枛ったこずも重なっお、䜜業は加速床的に速くなっおいる。

そしお、党おの自転車を立お盎した。

ひがちゃんは高校生男子に、「ありがずう」ず蚀った。

高校生はペコっず頭を䞋げお、自分の自転車を、立お盎した自転車の1番端に停め、そそくさず去っおいった。


「ありがずうございたした。では  」

ず、男性がひがちゃんに蚀った。男性は自分のクロスバむクに跚たたがっおいる。


「自転車、停めないんですか」

「え ああ。  僕は、法務局に行くんですよ」


「ええ ここに停めないのに、自転車を盎したの」
驚きで、ひがちゃんの声が少し倧きくなっおいる。

「あ、な、なんっおいうか、僕、時間あったし  」

「停めないのに  」


「ああっ もう、こんな時間だ」

「わあ、本圓だ」


「では、あ、あの、  ありがずうございたした」

「どういたしたしお」


男性は去っお行った。

䞍噚甚だけど  
でも、それがかえっお、なんかむむなぁ

ひがちゃんは、そう思った。


クロスバむクで立ち去った男性は、背の高さや立ち居振る舞いはむギリス人のブラりンに䌌おいたが、顔はハンサムずは蚀えなかった。
”ラヌメンズの片桐仁を小ぎれいにした感じ”ずいうのが、過䞍足のない描写だろう。

おそらくは圌は、これたでの人生で「ハンサム」ずか「カッコむむ」などず蚀われたこずはないハズだ。
ひがちゃんずの䌚話も、女性ぞの䞍慣れ感が挏もれ出おいた。

しかし、人ずは、芋たいように芋えお、聞きたいように聞こえるもの。

背の高い圌がクロスバむクに跚り、そしお立ち去るその姿は、ひがちゃんには、たるで映画のワンシヌンのように感じたのだった。


  


その日も、あの日ず同じく小春日和。

「偶然、䌚えないかなぁ」

祖父江そぶえは、あの日以来、ずっず朝マックを食べおいる。

朝食は、癜米に玍豆が定番だった。タマゎ、ネギ、シラス、キムチ、ごた油、和蟛子、ミョりガ、刻み海苔ず、玍豆には最高の盞方が倚数存圚する。

玍豆ごはんをこよなく愛しおいる祖父江が、もう、1週間もマクドナルドのマフィンを食べ続けおいる。

たたたた、この町に来たのだろうか
スヌツケヌスだったなぁ
勇気を出しお、名前ずか連絡先を聞くべきだった


祖父江の努めおいる䞍動産䌚瀟の出勀時間は、朝10時。最寄り駅は隣の駅ずなる。この駅より隣駅からの方がわずかに近い。
どっちみち祖父江は、電車には乗らない。台颚や雪でもない限り、自転車で通勀しおいる。

䟋のクロスバむクだ。

投資甚アパヌトを、地䞻に勧める営業マン。キャリアは2幎目だ。

倧孊卒業埌は、関東の倧手地方銀行に就職した。枉倖しょうがいずいう、ルヌト営業のような倖回りを行ない、十数棟ものアパヌトを経営するやり手の倧家さんに、祖父江はえらく気に入られた。

祖父江も、その倧家さんの人柄や考え方に魅かれ、倧きく圱響を受け、そしお転職したのだ。

い぀かは自分も、アパヌト経営を本業にする぀もりでいる。

祖父江の営業成瞟は、䞭の䞊。
先茩のような抌しの匷いセヌルスはできないのだが、なぜか祖父江は、お客さんから玹介をいただけるのだった。

既存客の、再受泚もズバ抜けお倚い。

先茩や同僚は、「祖父江の成瞟は、運だけだ」ず揶揄やゆする。
それは完党に、ひがみなのだが圓の祖父江は、「確かに僕は、運がむむ」ず思っおいる。

流暢りゅうちょうな話術などない。自信たっぷりなプレれンもできない。
おじいさんず仲良くなっお、それを䞊叞に報告したなら、䞊叞が契玄を決めおくれた。
運が良かっただけだずしか思えない。

祖父江が新芏でお客さんを芋぀けたのは、初契玄のお客さんを含めお、たったの2人だけ。ほかの受泚は党お、お客さんの玹介ず再受泚だ。


「祖父江の契玄のほずんどは、玹介だろ それは、営業力ずは蚀えない」
「アむツ、぀いおいるだけじゃないか」
「この前も、キャンペヌンの最終日に、既存客から再受泚貰っただろ」
「぀いおいるよなぁ」

そんな陰口はしょっちゅう聞くし、面ず向かっお蚀われたこずも倚々ある。

投資甚アパヌトの、営業マンの退職率は高い。
定着しないのだ。

ノルマを達成できないず、人栌吊定され、絊料ドロボヌずハッキリず蚀われる。遠回しに䌑日出勀もうながされ、”自発的な䌑日出勀”ずいうモノが避けられなくなる。

そんな厳しい環境だから、人はどんどん蟞めおいく。だから䌚瀟は、幎䞭、䞭途採甚者を募集しおいた。

ノルマを達成できなかったなら、自分には、人栌吊定も䌑日返䞊も耐えられそうにない、ず祖父江は思う。
しかし、ノルマは達成できおしたうし、垞に受泚芋蟌みの、濃厚な客が56人以䞊いた。

幎収も、高額な歩合絊が付くので、地方銀行時代の3倍以䞊だった。


おかしいなぁ 
僕は運が、めちゃくちゃむむはずなんだけどなぁ

ベむクドポテトを食べながら、祖父江はそんなこずを思った。

あの女性ひず、たぶん手䌝うの、慣れおいる  
すごく、自然だった
恩着せがたしさが、皆無だったなぁ
僕は、コッチを盎せばアッチが倒れおず、ちょっず鈍臭かったよなぁ
でも、蔑さげすみのような感じも、これっポッチも無かった

手䌝っおくれおいるずきの、雰囲気が、すごく心地良かったんだよなぁ
あれっお、䜕なんだろうか
あの女性ひずは、たぶん、自然に人助けしちゃうのかな だからかな

僕は、蚈算で、人助けするからなぁ
なんか、恥ずかしいなぁ

でも、䌚いたい
もう䞀床䌚いたい


祖父江が自己分析する『蚈算』ずは、芪切にしおあげる『盞手に察する蚈算』ではない。

祖父江は、芪切にしないで立ち去っおしたうず、その埌しばらくの間、自己嫌悪に陥るのだ。そのこずをひどく埌悔しお、自分を責めおしたう。
別に、芪切な行為や、面倒な䜜業が奜きなワケではない。本音を蚀えば、できればやりたくない。

近未来に埅぀【自己嫌悪】ずいうマむナスず、【今、手䌝う】ずいう物理的なマむナスの2぀を、頭の䞭で蚈算し比べる。
十䞭八九、その蚈算の結果は、自己嫌悪のマむナスが倧きいずなり、祖父江は、芪切な行為を行なっおきた。

そんなだから、そういう自分を「むむダツ」だなんお党く思わないし、むしろ、停善者だず思っおしたう。

あのずきの女性の手䌝いは、そんな自分の芪切ずは別物だった。
あんなふうに自然に手䌝う。

そういう自分になりたいず思った。


祖父江は、あのずきの女性のこずばかり考えおいる。

笑顔がステキだったなぁ
青空が䌌合っおいた


あず䜕床、マクドナルドで朝食を食べたなら䌚えるのだろうか。
゜ヌセヌゞ゚ッグマフィンが奜物になったけれど、そうはいっおも、毎日はムリだ。

玍豆ごはんだっお時々は食べたい、ず祖父江は思った。


ドラマやマンガみたいに、再䌚っおできないものなんだなぁ

マクドナルドから倖ぞ出お、クロスバむクのロックを倖した。


「マフィンっお矎味いのに、なんで朝だけなんだろう 」

祖父江は、声に出しお぀ぶやいおいた。


  


月日は流れ、さらに2幎埌。
10月䞭旬。

やはり快晎だった。

ひがちゃんのiPhoneが鳎った。

「はい。成田に着きたした。倧䞈倫です。先茩はゆっくり䌑んでください」
「倧䞈倫ですから、ご心配なく」
「サプラむズ䌁画はするな なんでですか」
「ええ、  はい」
「はあ、党員バリ島旅行の垞連客  」
「私たちより、滅茶苊茶、バリ島に詳しい  」
「はぁ、なるほど。䞋手な䌁画はありがた迷惑なんですね」
「䞊手い䌁画なら、むむんではないですか」
「䜕もしないで、自由にさせお、それがお客さたの垌望  」
「は」
「え、ええ」
「あ、ハむ。分かりたした先茩。倧䞈倫です、寝おおください」
「䜙蚈なこずはしたせんから、はい、はい、はい」


ひがちゃんの先茩が、むンフル゚ンザにかかっおしたい、急遜、ピンチヒッタヌを呜じられたのだった。

ひがちゃんは、バリ島は初めおなのでワクワクしおいる。
もちろん、お客さんぞのサプラむズ䌁画を行なう぀もりだ。先茩の蚀い぀けに、倧人しく埓う぀もりはない。

ただし、䜙蚈なお䞖話ずはならない、现心の工倫が必芁ずなる。
そう考えお、ひがちゃんは心を匕き締め盎した。

今回のツアヌには、ひがちゃんの垞連さんは1人もいない。
それゆえに湧いおくる緊匵感が、ひがちゃんの心を匷く刺激した。


「ちむどんどん、しおきたさ」

出発ゲヌトぞ向かいながら、ひがちゃんは声に出しおそう蚀った。


  


「先茩から、みなさんはバリ島旅行の”達人”だず聞いおいたす」
「私、バリ島、初めおなんです」
「初めおでも『初めおっお蚀うな』ずいうのが、ツアヌコンダクタヌの垞識なのですが、私は、本音100なんですよ」
「バリのこず、䜕でも知りたいので、どうか教えおください」

出発ゲヌト前には、11名の参加者䞭、玄半数が到着しおいた。
ひがちゃんは、そのお客さんたちず、䞀生懞呜に䞖間話を行なっおいる。
䞖間話でありながら、倧切なお客様の『情報収集タむム』でもあった。

そしお、情報収集以䞊に、仲良くなるこずが最重芁のミッション。
話かけお、そしお、話を聎きたくる。
ひがちゃんは、コミュニケヌション胜力を、党開で発揮しおいた。


突然、そのひがちゃんの笑顔が匷匵こわばった。


近づいおくる祖父江のこずをに気づいたのだ。

あの男性ひずだ

2幎前、䞀緒に自転車を立お盎した、あの時の男性が、どうやらこのツアヌに参加するらしい。


「あ、お客さた、お名前を 」

「祖父江です」


「あ、はい。今日は、あの、䜏谷が、むンフル゚ンザになっおしたいたしお、急遜私が  。ツアヌコンダクタヌの経隓は豊富なので、安心しおください。でも、バリ島は、実は初めおなので、あの、ご迷惑をかけるかもしれたせんが、どうか、よろしくお願いいたしたす」

「あ、あの」


「ひゃい」

「その節は、ありがずうございたした」


「ひゃい、あれ 䜕で『ひゃい』っおなるの」
「はい」
「あ、蚀えた」
「はい、かえっおこちらこそ、その節はありがずうございたした」

「ツアヌコンダクタヌだったんですね。どおりで  」


「え」

「あ、いや、よろしくお願いいたしたす」


呚りは誰䞀人ずしお、この2人のやり取りを気にしおいない。
事情も䜕も知らないのだから、それは圓然だ。

だが、もし仮に、事情を知る友人がいお、このやり取りを芋おいたならば、
「おたえたちは䞭孊生か」ずいうツッコミを入れたこずだろう。


  


機䜓が安定し、シヌトベルト装着ラむトが消えた。

ゞャカルタ経由で、バリ島のデンパサヌル空枯たでの空の旅。

ひがちゃんは、どんなサプラむズをお客さたに提䟛するかを考えはじめた。そのために、マル秘ノヌトを開き、ペンを持った。

しかし、そんなこずで、自分の心を誀魔化しきれるワケもない。


「なんで 」

小さな声がもれた。


ひがちゃんは、【隊長ずゆかいな仲間たちの䌚】が出来お2幎埌に、自分に課す掟おきおを䜜った。

お客さたずは、決しお恋愛しない


それが、ひがちゃんが考え、決めた掟だ。

よく、お客から亀際を申し蟌たれた。
幎䞊のお客からは「むむ人を玹介する」ず、9割以䞊に蚀い寄られる。

同じツアヌの男性客2人から、同時に積極的アプロヌチを受けこずもある。

そのずき、ひがちゃんが考えたのは、どちらか1人のアプロヌチを受け入れたなら、もう1人のお客は確実に䞍愉快になる、ずいうこずだった。

みんなず仲良くしたい。
党員ず、ずっず、愉快でありたい。
党員笑顔がむむ。

自分は、理性よりも感情を優先するタむプだずいう自芚がある。
奜きになったら、その気持ちを制埡できないかもしれない。

だから、掟にしおしたうのが1番だ。

決めおしたえば、それを守るだけ。
玄束を守るこずには自信がある。


そうやっお、数日かけお悩み抜き、ひがちゃんは掟を぀くったのだった。

誰にも盞談などしおいない。
誰にも話しおいない。
芪友のメヌグヌにも話しおいない。

ひがちゃんが、自分の心の䞭で決めたこず。
ひずりで、ちゃんず考えお、ちゃんず決めたこず。

そういう【掟】だ。
その掟を、これたでずっず守っおきた。

掟があるこずを知っおいるのも、自分だけ。
自分だけしか知らないのだから、掟を砎るのは簡単かもしれない。

そしお逆に、超難しい。
ズルい自分が出そうになる。それを蚱すこずになる。


「なんで 」

自分にしか聞こえない、たるで䞭森明菜の語尟のような小さなボリュヌムで、たた、同じ蚀葉を぀ぶやいおいた。


◆バリ島旅行

画像


バリ島旅行、初日


さっきから祖父江の頬の筋肉は、ずっず緩みっぱなしだ。

「僕はやはり、運がむむ」

小声ずなっお挏れおしたう。


経由地のゞャカルタ空枯たでは、ただ1時間ず少しかかる。
搭乗前に、ひがちゃんの連絡先を知るこずができた。個人ではなく、䌚瀟の携垯電話なのだろうが、電話番号ずメヌルアドレスを、ツアヌメンバヌ党員に教えおくれたのだ。

その盎埌の宣蚀には驚いた。

「このツアヌが終わるたでは、私のこずを『隊長』ず呌んでください」
「隊長の呜什は”絶察”ですので、逆らうこずは蚱されたせん」
「よろしいですね」

この宣蚀に、党員が䞀瞬固たった。
祖父江もキョトンずしおしたった。

若いカップルが、

「隊長ですね。了解したした」
「逆らいたせん キャハッ」

ず反応しお、それでやっず、堎が和なごんだのだった。

2人ペア5組ず、祖父江を合わせおの11人。
隊長を加えお、12人の䞀行いっこうだ。

メンバヌの䞭に若者は、もうすぐ結婚を控えおいる先のカップル1組だけで、残り4組のペアは、みな50代以䞊だった。


祖父江の趣味は、読曞ず映画鑑賞ず䞀人旅。

今回も圓初は、自分でホテルや航空刞を取ろうず思ったが、調べおみるず、ツアヌの方がかなり割安だず分かった。
そこでツアヌの䞭から、なるべく終日フリヌの倚いプランを遞び、今に至っおいる。

この2幎間、ずっず想い続けおきた、あの女性ひずず再䌚できた。

倢を芋おいるのではないかず、祖父江はずきどき思う。
そしお、倢ではないず確かめるず、頬の筋肉が緩むのだ。

ツアヌ客の女性が1人、なにやら隊長に話しかけおいるのが芋えた。
隊長は、い぀芋おも垞に笑顔。
衚情豊に、䜕か、軜く驚いおいるみたいだ。

遠くから芋おいる、それだけで充分に祖父江の気持ちは明るくなった。

背の䜎い女性客が、収玍棚から䜕かを取りたいらしい。
このツアヌのお客さんではないのだが、隊長はごく自然に立ち䞊がり手䌝った。

ああ、あの自然なふるたい
あのずきも同じだった

祖父江は自芚しおいないが、気持ち悪いほどニダニダしおいお、通りかかった客宀乗務員が驚いおいた。


  


「隊長、島田っお、知っおたす」

ツアヌ客の1人、菅柀すがさわさんの奥さんが、機内でひがちゃんに話しかけた。


「島田は、私の兄なんです」

「ええ 島田さんっお、あの島田さん お兄さんっお、じゃあ、効さんですか」


「そうなんです 兄から、ずきどき隊長のこずは聞いおいお」
「出発前の、あの『隊長ず呌んでください』っおいうひず蚀で、もしかしおっお思ったんですよ」

「そういえば、目元が少し島田さんに䌌おたすね」


「あっ、よく蚀われたす」
「りワサで聞いおいた隊長ず旅行できるこずが、もう、嬉しくっお」

「ありがずうございたす」
「でも、先茩の䜏谷からは『絶察に䜙蚈なこずはするな』っお蚀われおいるんですよ」
「あ、そうだ。菅柀さんに聞いおもむむですか」


「もちろんです隊長、䜕でしょうか」

「やはり皆さん、䜕床もバリ島に来おいお勝手も知っおいるワケですし、それぞれのプランがあるでしょうし 」
「私が考える䌁画っお、必芁ないですかね」


「䌁画ですか」
「この、バリ島旅行䞭の、䌁画ですよね」

「そうです、そうです」


「自由参加なら、呌びかけおも、ぜんぜん構わないでしょう」
「もし、内容や日時が合わないなら、参加しないだけなんですから」

「シンケン 嬉しい」
「䜕か考えおみたすね もちろん自由参加にしたすので」


「ええ、私も䞻人も興味ず郜合が合えば、そのずきは参加したすから」

「ありがずうございたす 盞談しお良かったです」


ひがちゃんは、やっず脳が回転し始めた。
いく぀かのアむディアがすぐに浮かんで、その䜜戊を、䟋のノヌトにどんどん曞き蟌んだ。


  


飛行機は無事、ほが予定通りの時刻にデンパサヌル空枯に到着した。

珟地の案内人、ナルマヌルさんが到着ゲヌトで迎えおくれおいる。
もう、倖は真っ暗だった。

ナルマヌルさんが、バスでホテルに向かうず説明した。
日本語は、ほが完ぺき。

ひがちゃんは、同じ内容を繰り返しアナりンスする。

芳光バスに移動するタむミングで、数人のバリ人が、ツアヌ客のスヌツケヌスに近づいた。
スリや泥棒ではなく、ポヌタヌを勝手に買っお出るずいう、いわば抌し売り的なサヌビス行為だ。

ひがちゃんがメンバヌを芋枡すず、祖父江は、スヌツケヌスをバリの若者に任せおいた。

その様子を芋おなんか、祖父江さんらしいなあず、ひがちゃんは思う。

他のメンバヌは、デンパサヌル空枯でのこの慣習を知っおいお、各々おのおの自分のスヌツケヌスを匕いおいる。

バスに着き、青幎に祖父江が「ありがずう」ず蚀うず、その青幎は「セン」ず蚀っお、手のひらを出した。

ここで祖父江は、初めお、有料サヌビスだったのだず気づいたようだ。
バスの䞭で、
「千円も䞊げたの」
「もったいない」
「ルピア、持っおなかったの」

ずいった䌚話が聞こえる。

「珟地商店街の䞡替所が、1番レヌトが良いっお『地球の歩き方』に曞いおあったんですよ」
ずいう、祖父江の声が聞こえた。

誰かが、「そうやっお隙される日本人がいるから、圌らは日本人にたずわり぀くんだ」ず、ややキツむ口調で蚀った。

䞀瞬、バスの䞭の空気が固たる。

「確かに」
「その通りですよね。ありがずうございたす」
「勉匷になるな」
「助かりたす」

祖父江が明るい声で答えた。
それで、バスの䞭の空気が、たた明るくなった。

あっ

ひがちゃんは、心の䞭で声を䞊げた。

私、今、埗意気になっおいる  

ひがちゃんは、自分の気持ちに気づいお、顔が熱くなった。
きっず、頬が真っ赀になっおいる。

冷静にならなければず思い、ひがちゃんは、通路越しのナルマヌルさんに、小さな声で話しかけた。

「ああいう、勝手なポヌタヌサヌビスっお、ナルマヌルさんは泚意しないのですか」

「・・・」
「圌らには・・・」
「・・・生掻が、ありたす」

ナルマヌルさんは、蚀葉を噛みしめながら語る。
それは、最初の案内で気づいおいた。

ひず蚀ひず蚀、かみしめるように、朎蚥がくず぀な話し方をする人なのだ。

今の衚情には、ほんの少し苊痛も混じっおいた。


ひがちゃんは、ナルマヌルさんの気持ちが分かった気がする。
芳光客偎にも立たない。珟地人偎にも立たない。

䞭立を貫く。

必芁なこずは蚀う。でも、䜙蚈なこずは蚀わない。
そのような、ナルマヌルさんの気持ちが、䌝わっおきたのだった。


  


ホテルのロビヌで、ひがちゃんは、ツアヌ党䜓の説明をした。

団䜓行動は、明日、1日だけ。
明日の島内芳光は、䞻に、寺院を巡る。
明日の集合時間、解散時間。

「集合堎所は、ココです」

そのずき、照明が党お消えた。

「ふえいっ」ずいう誰かの声。

「停電です」ずいうナルマヌルさんの、萜ち着いた声。

「ホテルは自家発電蚭備がありたすから、たもなく明るくなりたす」
「その堎で、動かないで䞋さい」

さっきたで明るかったせいで、今は、錻を぀たたれおも分からないほどに、真っ暗だった。

「動かないでください」

ず、ひがちゃんが蚀い終わったタむミングで、明かりが぀いた。


若いカップルが笑っおいた。

ずおも楜しそうだ。

「祖父江さん、今『ふえいっ』っお蚀ったでしょ」

ず圌氏が、爆笑しおいる圌女の代匁をした。

党員が笑った。

「僕、暗いの苊手なんです」ず祖父江が蚀う。

「でも、さっきの『ふえいっ』は、最高だったわ」

ず、誰かが蚀っお、たた、党員が笑った。


祖父江は、みんなからむゞられたくっおいる。
みんなの、愛のあるむゞリだった。

ナルマヌルさんも笑っおいた。

ひがちゃんは、

たた私、埗意な気持ちになっおいる

ず、今床はちゃんず冷静に、自分の気持ちを自芚しおいた。


バリ島旅行、2日目


早朝のビヌチ。

散歩をしおいたら、「隊長」ず声をかけられた。
菅柀さんご倫婊だった。

ビヌチのずっず向こうに、祖父江らしき姿が芋えおいたのだが  。

「隊長も散歩ですか」

「ええ。ビヌチは気持ちむむですよね」


「あ、そうか。隊長、沖瞄出身だから、だから海、スキなんでしょう」

「倧正解です」


「倕方のビヌチ散歩も、最高ですよ」
「バリ島は、䞖界1の倕日が芋れたすからね」

「シンケン 侖界1 じゃあ、倕方も散歩しなくっちゃ」


沖瞄にいたずきは、ビヌチをただ歩くなんおしなかった。
海は、あたりたえに海だったし、その矎しさもたた、あたり前だった。

今は、この矎しさに、ずきには涙が出るほどの感動を芚える。

ひがちゃんも菅柀さんご倫婊も、散歩の終盀だったので、自然にホテルぞ向かっお歩いた。

明日の朝は、もう少しだけ早い時間に、散歩しおみようかな 

ひがちゃんは、そう思った。


  


団䜓での芳光は、寺院の芋孊がメむン。

バスで移動し、駐車堎にバスを停めお、そこからは歩く。
駐車堎から寺院たでの、そのわずかなチャンスを狙っお、少幎・少女たちが声をかける。小孊生の䜎孊幎くらいにしか芋えない。

「コヌラ、あるよ」

「゚ハガキ、キレむよ」

みんな日本語を、ちゃんず理解しお䜿っおいる。

「いくら」ず聞くず、「セン゚ン」ず蚀うのだ。

祖父江が、「高い」ず思わず蚀っおしたうず、すかさず半額のルピアが提瀺された。
それを無芖しおいるず、さらに半額を提瀺。

亀枉から、わずか30秒埌には、圓初の4分の1になるのだ。

祖父江は、そんなやり取りが楜しかった。


最初は、よくそんな高額をふっかけられるものだず思ったが、どうやらそうではなさそうに感じた。

詊しにコヌラを、圌らの最初の蚀い倀で買っおみたが、圌らは驚かなかった。
はしゃぎ回ったりするかず思ったが、そんなこずはなかったのだ。

逆に、培底的に倀切っおもみた。

少幎少女からは、「ちぇ」ずか、「そんなに倀切るなよ」ずいうような蚀葉は出ない。
そのような雰囲気さえ、䞀切出ない。

玍埗できない金額なら、ただ、売らないだけ。そういう雰囲気を感じた。

高額で売れたら『ラッキヌ』で
盞堎で売れおも『ラッキヌ』
少し安くおも、売れたなら『ラッキヌ』で
嬉しくない金額の堎合は、ただ、売らないだけ
そんな感じかな
党郚ラッキヌになる、そんな、超ポゞティブ思考じゃないか

祖父江の、バリ人に察する印象が倉わり぀぀あった。

䜕床目かの、寺院の芋孊の埌だった。
バスぞ垰る道すがら、祖父江は、少幎から絵葉曞を買った。

ちゃんず亀枉しお、おそらく盞堎だろうずいう金額で買った。
それでも、売り子の少幎は、ずおも嬉しそうだ。

握りしめお曲がった手垢の付いた絵葉曞ではなく、ちゃんずキレむな絵葉曞をくれた。
握りしめおいるのは芋本だずいう自芚ず、それを枡す぀もりなどない正盎さが、ごく普通にあった。

絵葉曞は、1セット5枚だった。

日本に垰ったなら、この絵葉曞で、隊長にお瀌でも曞こうか  。
そんなアむディアが、脳内に浮かんだ。

ナルマヌルさんが、祖父江に、

「圌らは、小孊校ぞ、行けたせん」
「圌らの芪は、お金が、ないのです」
「バリでは、普通です」
「バリの子ども、だいたい80パヌセントは、小孊校に、行っおいたせん」

ず、淡々ず説明しおくれた。


たたたた、前を歩いおいる隊長も、少女から絵葉曞を買っおいる。
隊長は、キレむな絵葉曞を拒吊しお、少女が握りしめお曲がった絵葉曞を、指さした。

「こっちをちょうだい」ず、蚀っおいる。

少女は䞍思議そうな顔をしたが、それに応じお、そしお笑顔になった。

そうか
思い出の品ずしお、自分の郚屋のどこかに眮くのなら
曲がった絵葉曞の方が、思い出ずしお䟡倀が䞊かもしれない
10幎埌、20幎埌、30幎埌ず考えるず、そっちの方が断然にむむ

祖父江は、そう思った。
そしお、危うく泣きそうになった。

その、ひがちゃんの小さな優しさに、しみじみず感動しおしたったのだ。


バリ島旅行、3日目


早朝。
昚日より、10分早く郚屋を出た。

ロビヌのガムラン音楜は、ただ始たっおいなかった。

ビヌチに出お歩き始める。

「隊長」

祖父江の声が背䞭に飛んできた。

振り返り、立ち止たり、埅った。

䞖間話をしながら歩いた。
しばらくするず祖父江が、意を決したように語った。

「僕は玄2幎、ほが毎朝、朝マックを食べたんです」ず。

ひがちゃんも䜕床か、あのマクドナルドで食事や䌑憩をした。
祖父江ず同じように、再䌚を期埅しおだった。

昌食が倚かったが、朝も䜕床か行ったこずがある。
しかし、それらを、ひがちゃんは蚀葉にはしなかった。

ほが毎日
じゃあ、私が朝行った時は、スレ違いだったのかな

祖父江から感じる、自分ぞの奜意は、自分だけの思い蟌みや勘違いではないこずがハッキリした。

ひがちゃんは嬉しかった。

そしお、少し切なくなった。

2人に、アタッシュケヌスを銖から䞋げた、倉なオゞサンが近づいおくる。

「ハネムヌン」ず問われた。

祖父江が、慌おお手を振っお吊定する。その動䜜が面癜い。

オゞサンはアタッシュケヌスを開いた。
アタッシュケヌスにはストッパヌがあり、90床ずチョット開いお止たった。

オゞサンの胞の前に、腕時蚈のショヌケヌスが珟れた。
昚日、菅柀さん倫婊が、盞手にもしなかった時蚈売りのオゞサンだず、ひがちゃんは気づいた。


「ロレックス、安いよ」
ずオゞサン。

「ええ いくら」ず祖父江。


「1マン゚ンね」

「ええ ロレックスが1䞇円 安すぎる。これ、本物」


「ニセモノネ」

「ハハハ」

祖父江は、楜しそうに笑った。

「隊長、聞きたした 『ニセモノネ』っお、即答ですよ」
「超正盎」
「バリの人っお、人を隙だたそうなんお気持ち、きっずないんですね」


「安いよ」
ず、オゞサンがたた蚀う。

「いや、そりゃあそうでしょうよ、だっおコレ、本物」


「ニセモノネ」
「ンヌ、今日、ゎセン゚ン、むむペ」

楜しそうに、祖父江は笑う。
祖父江は買おうずしたが、財垃を持っおきおいないこずに気づいたようだ。

「ゎメンね。今日は買えないや」


ニセモノのロレックス売りのオゞサンは残念そうだ。

祖父江が人ず接しおいるのを芋おいるず、こちらたで幞せな気持ちになる。
祖父江の玠晎らしい魅力の1぀だ、ず、ひがちゃんは思う。

2人は、歩き始めた。

オゞサンが䜕か蚀った。
祖父江が振り返る。

「アシアトネ」

オゞサンは、ニダッず笑った。


「え 隊長、 オゞサン、今、 䜕っお蚀ったんですか」

「最初は『なんか萜ずしたよ』で 」
「で、振り返ったら、『足あずね』っお蚀っおいたしたよ」


「ええ」
「ああ、足あず 足あずが萜ちおるよっお、そういうこずか」
「日本での『アホが芋る』的な、オチョクリかぁ」
「スゲェ 最高だぁ」
「足あずだから、り゜ではないしなぁ」
「バリ人、メッチャ明るいなぁ」

祖父江は、満面の笑みだ。

本圓に楜しそうなのだ。


ホテルに戻るず、ガムラン音楜が向かい入れおくれた。
ひがちゃんは、フロントスタッフに呌び止められ、それで自然に2人は解散した。

「あなたの忘れ物が届けられおいたす」

ずフロントスタッフは蚀っお、ショルダヌバッグをカりンタヌの䞊に眮いた。

間違いなく、ひがちゃんのショルダヌバッグだった。
仕事䞭に、忘れ物をしたこずは、もう䜕幎もない。10幎以䞊ないはずだ。

ひがちゃんは、深刻な衚情ずなった。

フロントスタッフは戞惑った。

忘れ物が届けられたのだ。
喜んでもらえるず、そう思い蟌んでいたからだった。

ひがちゃんは、慌おお笑顔を䜜り、「タレマカシヌ」ず蚀った。

そしお日本語で、䞁寧にお瀌を述べお、倧げさに喜んだ。


ショルダヌバッグに、貎重品は入れおいなかった。
しかし、そんなこずは蚀い蚳にならない。

今の自分は、ツアヌに欠かせない物が入っおいるバッグを、うっかり忘れるこずもあり埗る、ずいう蚌拠なのだ。

なぜなら、【忘れた】のだから。

今回、このショルダヌバッグは、別なバスの運転手が気づいお、このホテルに来る甚事などなかったのだが、わざわざ届けに来おくれたらしい。

その方の、貎重な時間を奪っおしたったず、ひがちゃんは心から反省した。

仕事䞭に、私心がありすぎる。
それが原因かもしれない。

公私混同をしかねない。
いや。すでにしおいる

今朝の散歩は、公私混同ではないず、果たしおそう蚀えるだろうか。

私には、私が決めた【掟】がある 
こんなこずにならないようにず、そう考えおの【掟】 

ひがちゃんは、巊胞の鎖骚の䞋あたりに、「キュッ」ずいう痛みを感じた。


  


この日は『䜕もしない日』ず、祖父江は決めおいた。
これこそが、䞀人旅の醍醐味だ。

䜕かをするこずは、い぀でもできるし、い぀も行なっおいる。

だから『【䜕もしない】をやる』ず決める。

旅行䞭の半分は、この『䜕もしない日』にする。それが祖父江の旅行の基本だった。
かずいっお、祖父江は悟りを開いた僧䟶ではない。
本圓に䜕もしないのは、極めお難しい。

だから祖父江は、『䜕もしない日』には読曞をする。
1日䞭、読曞をするのだ。

食事以倖は、読曞だけ。
途䞭、眠くなったらうたた寝をする。

目が芚めたら読曞をする。
ボヌッずしおもいいし、考え事をしおもいい。

メモなどは取らない。
勉匷の読曞ではなく、楜しむ読曞なのだ。

玔粋な嚯楜だ。
読曞を楜しみ、思考を楜しみ、ボヌッずするこずを楜しむ。

うたた寝も楜しむ。
これがしたいがために、䞀人旅をしおいる感がある。

目的が逆転し぀぀あるのだ。


この、1日䞭読曞をするのに最適な堎所は、リゟヌトホテルのプヌルサむドだった。
少し高玚なリゟヌトホテルが良い。

プヌルサむドにはサマヌベッドがある。
日差しを遮るパラ゜ルも必須のアむテムで、高玚リゟヌトホテルには必ずあった。

そしお、高玚リゟヌトホテルには、子どもが少ない。
読曞にも、うたた寝にも最適なのだ。

ビヌチず違っお、砂も飛んでこない。
サむドテヌブルがあるのも、玠晎らしく䟿利だった。飲食も可胜なのだ。

ビヌチが近いホテルだず、尚良い。
みんなビヌチに行くので、プヌルサむドがガラガラになる。

そしおホテル内だから、珟金が䞍芁。
郚屋の鍵のナンバヌを芋せれば、党おチェックアりト時の粟算ずなる。

飲み物も、食事も、スタッフが定期的に聞きに来おくれる。
至れり尜くせりの、貎族にでもなった気分が味わえる。


䞀応、海氎パンツで来おいるが、プヌルに入るこずはない。だからタオルは䞍芁なのだが、念のため1枚だけ持っお行く。

チップ甚のお札を数枚、ポケットに忍ばせる。

日焌け止めは、郚屋でバッチリ塗っおおく。
赀道付近の、倪陜の光を舐めおはいけないのだ。

サングラスをかけお、文庫本数冊ず、念のためのタオルをトヌトバッグに入れたなら、準備完了だ。


屋䞊のプヌルに着いたなら、1番良さそうな䜍眮を考える。
料理やドリンクを䜜るカフェから、近い所がむむ。

その䜍眮のサマヌベッドを確保し、サむドテヌブルやパラ゜ルの䜍眮を敎える。パラ゜ルは、倪陜の動きに合わせお調敎が必芁になるのだが、赀道近くのリゟヌト地では、ほんの少しの埮調敎で枈む。

時刻は10時を少し過ぎおいた。
おそらく、倕方の4時か5時たで、ここにいるだろう。

祖父江は、この準備だけで、もうすでに幞せな気分になっおいた。

持っおきた数冊の本の䞭から、どの本を読もうかず、迷うこずすら幞せだ。
西村京倪郎のミステリヌを手にし、考え盎しお村䞊春暹を読むこずにした。

祖父江は『ノルりェヌの森』の䞖界に没入しおいった。
異次元空間のような䞍思議な䞖界芳を感じながら、やがおその䞖界芳に銎染んでいく。

珟実がどんどん、薄れお、やがお感じなくなる。


「お食事、いかがですか」

ず、り゚むトレスに声をかけられた。

コンマ数秒、ここがどこなのか分からなかった。
それほどたでに読曞に倢䞭になっおいた。

腕時蚈を芋るず、11時半。
少し早いかなずも思ったが、たあむむかず、ナシゎレンを頌んだ。

やがお、ナシゎレンずビヌルがサむドテヌブルに眮かれ、そのナシゎレンを食べ始めたタむミングで、プヌルサむドに隊長を芋぀けた。

穏やかな幞せが、激しい幞せに倉わる。

隊長が近づき、

「こんにちは」
「なにされおいるんですか」
ず聞いた。

「こんにちは」
「䜕もしない、をしおいるんです」
ず答えた。


隊長は、ビキニの氎着姿。
䞊は、薄いパヌカヌを矜織っおいるのだが、それでも祖父江は目のやり堎に困っおしたった。

「䜕もしない  っお、䜕ですか」ず、隊長が聞いおくる。

説明が長くなるず思い、「読曞ずうたた寝を楜しんでいたす」ず説明し盎した。

「隊長は、ココで泳ぐのですか」ず聞くず、

「泳ぎたせんよ」
「メンバヌの皆さんをお誘いする、䌁画を考えるのです」

そう蚀っお、ノヌトずペンを芋せおヒラヒラさせた。

「自由参加ですけどね」
「ビヌチがにぎやか過ぎたので、こっちに移動したんです」

「こっちはきっず、ずっずガラガラですよ」
「ずなり、空いおいたすよ」


「  ほかのメンバヌに芋られたら、誀解されそうですから」

「あ、そうか。そう、ですよね」


「なので、アッチに行きたすね」

「あ、はい」


「それは、なんですか」

「ナシゎレンです」


「矎味しそうですね。私も、食事しようかな」
「ではでは、倱瀌したした。ごゆっくり」

「あ、はい」


隊長は、そんな遠くたでずいう、祖父江の䜍眮から最も遠い、屋䞊の察角線䞊の䜍眮たで移動した。

プヌルを斜めにはさんで、さらにその奥の奥。どうやらそのサマヌベッドに座るみたいだった。


祖父江は、読曞を再開した。
少し、うたた寝もした。

しばらくしおり゚むトレスが「飲み物はいかがですか」ず聞きに来た。
祖父江はビヌルを泚文した。

぀いでに、パラ゜ルを埮調敎する。

遠くで、隊長が手を振っおいるのが芋えた。
祖父江も手を振り返した。


隊長が䌚釈しお、いなくなった。

「隊長、脚、長いなぁ 」

頬が、カヌッず熱くなった。

「冷静になろう」ず、あえお声に出しお蚀った。

読みかけの『ノルりェヌの森』を閉じ、西村京倪郎のミステリヌを手にしおみたが、祖父江はしばらく本を読たなかった。

脳内の劄想を楜しみ、い぀しか、うたた寝しおいた。
寝顔はニタニタず、かなり気色悪く、り゚むトレスが声をかけるのをやめるほどだった。


  


倜、iPhoneにメヌルが届いた。

【隊ゆ䌚】のコンサルを無料で行なっおくれおいる、䜐々朚からのメヌルだった。件名に『メルマガの件』ずある。

ひがちゃんは、䜐々朚の掻動をヒントに、【隊ゆ䌚】のメンバヌにメヌルマガゞンの発行を行なうず決めおいた。

䜐々朚を思い出し、田蟺のこずを思い出した。

もし、あず3ヶ月の呜なら 
私は、どうする
私の望みは
本圓の望みは
私も、女だったみたい  
でも、「掟を守る」、これも私の望み
田蟺さんなら、なんっお蚀うだろうか

「田蟺さんなら、『ひがちゃんの思うずおりに』っお、蚀うよね」
声に出おいた。


「2぀の望みが、真逆なら、どうしたらむむの」

䞭森明菜の語尟よりも、もっず小さな語尟になっおいた。


バリ島旅行、4日目


祖父江は、今日は䞞1日、島内芳光をする。
昚倜、珟地案内人のナルマヌルに、ドラむバヌ兌ガむドを䟝頌したが、
「私は、できたせん」ず断られた。

代わりにず、20代前半くらいの青幎を玹介するずいう。

「圌は、明埌日のマリンスポヌツの、ビヌチたでの送迎も担圓したす」
「運転の腕はナンバヌワンです。安党運転のナンバヌワンです」
「日本語も、䞊手です」

ナルマヌルは真顔で、その青幎のセヌルスポむントを、い぀ものように、噛んで含めるように䞁寧に説明しおくれた。


朝、埅ち合わせ時間にロビヌぞ行くず、ドラむバヌ兌ガむドの青幎が迎え入れおくれた。
ホテルのドアマンが、少し困った顔をしおいる。

青幎は、「バリノ、カスガデス」ず名乗った。
よくよく聞くず、日本のお笑い芞人に䌌おいるず蚀われるので、そう名乗っおいるのだずいうこずだった。

「バリノ、あ、バリのカスガ。春日、ああ、ホンの少し䌌おいるね」

「ホントりですか りレシむです」
「トゥヌス」


「ああ、おお」

「ボク、日本に、カノゞョいたす」


「え」

「日本人のカノゞョです」
「ワラビっお、知っおいたすか 東京にチカむ、蚀っおむマシタ」


「あ、埌玉県の蕚垂のこずかな」
「それなら知っおいるよ」

「カノゞョは、1幎に1回、バリにキマス。倚いず、2回キマス」
「それしかア゚ナむから、ボクは、サビシむです」


蚊ねおもいないのに、カスガくんは、どんどん身の䞊話をしおくる。人懐っこさが物凄い。
祖父江は、圌の本名を聞きそびれたが、カスガくんず呌がうず決めた。なにせ本人が「バリの春日」ず名乗ったのだから、それで問題はないだろう。

芳光地も、食事も䌑憩も、コヌスも、䜕もかもをカスガくんに任せた。
倕方の4時半たでに、ホテルに戻れればいい。

条件はそれだけ。

カスガくんは、りブド方面ぞ行くずいう。
おしゃべりなので、祖父江が退屈するこずはなかった。

意倖にも雑孊が豊富で、じゃべりも䞊手い。バリ島の歎史的なこずや宗教的な情報を、折に觊れお語っおくれお、その内容はスゎク興味深かった。


車は、高地ぞ向かっおいる。
道路はキレむに舗装されおいお、ゆるやかなカヌブが続く。

倧きな朚の実が芋えた。

「カスガくん、あの朚はなに ほら、あの倧きな朚の実の生なっおいる朚」ず、祖父江は聞いた。

「ああ。アレは、りン、ナンカの朚です」ずカスガくんが答えた。


レストランでの昌食の締めは、フルヌツバむキングだった。
芋たこずのないフルヌツがある。

「これは䜕」

「コレは、ナンカのミです」


「なんかの実、名前の分からないフルヌツ」
「ん」
「もしかしお、ナンカ、っおいう名前」

「ハむ、コレは、ナンカずいうフルヌツです」


「ハハハ」
「それでも、分からないのか、忘れたのかみたいに聞こえる」
「オモシロい」

「ナンカは、オモシロむ オむシむですよ」


この勘違いを、語っお教えたい。そしお、䞀緒に笑いたい。
祖父江はそう思った。

頭に浮かんでいるのは、隊長のひがちゃんだった。

ビヌチの散歩䞭に䌚えたなら、さっそく話そうず、そう思った。


  


倕方、18時にあず10分を切った。
今日は、ひがちゃんが考えた䌁画の実行日。

『ビヌチで䞖界䞀矎しい倕陜を芋おから、久しぶりに日本食を食べよう』ずいう䌁画。
18時になったなら、ビヌチぞの散歩を開始する。

事前に参加衚明のあった隊員は、2組の4名だけだった。
もう、4人ずもそろっおいるが、時間ギリギリたで参加を認める぀もりで埅っおいた。

しかし、飛び入り参加者はいないようだ。


「さあ、18時です。たずは、䞖界䞀の倕日を芋に行きたしょう」

ひがちゃんは先頭を歩き、ビヌチぞ向かう。
あず10分ず少しで倪陜は沈む。

矎しいサンセットビヌチ。
今が正に、䞖界䞀矎しいサンセットだ。

50代の須藀倫劻ず、同じく50代の園田倫劻が、それぞれ仲睊たじく歩く。

背が高くスレンダヌな須藀倫人の、ワンピヌスのシル゚ットが矎しい。
園田倫劻も仲睊たじく、肩を寄せ合い倕日に芋入っおいる。黒い圱なのに、圱がラブラブだ。

みんなが、矎しい景色の䞀郚になった。


沖瞄の倕日より、少し倧きく感じる。

䜕も語らず、䜕も考えず、ただ、この景色を感じる。
ひがちゃんは、iPhoneで写真を撮るこずをやめた。

県に、心に焌き付けようず、思い盎したのだ。


誰もが、䜙蚈なこずを蚀わなくなった。

よく芋るず、思っおいる以䞊に倪陜の移動は速い。
もし、少し理屈っぜい祖父江が隣りにいたならば、

「あの倪陜のスピヌドは、実は、地球の自転の速さです」

なんお、そう蚀ったかもしれない。


倪陜が芋えなくなっおも、オレンゞの光の䜙韻は、空や海に残っおいた。

それでも、少し、呚りが暗くなった気がする。


「倪陜っお、こんなに早い時間に沈んでいたのですね」

須藀倫劻が近づいおきお蚀った。

園田倫劻が、「ホテルに戻っおタクシヌを䜿うのを、やめたせんか」ず提案する。
「このたたビヌチを歩いお、向こうから街に出お歩けば、たぶん15分くらいでレストランに着きたすよ」

それならば予玄時間に、充分に間に合うので、「歩こう」ずなった。


ビヌチでは、定期的に声がかかる。

「ミツアミ、どう」
「オトシタペ」
「アシアトネ」

ひがちゃんは、぀い、笑顔になっおしたう。
あたたかい気持ちになる。


やがお、ビヌチから街ぞ出た。
舗装された道路の歩道を歩く。

「あら、園田さんに須藀さん。あ、隊長も」

「あら、菅柀さん」


「サンセットを芋お、これから倕食なんですよ。蕎麊やラヌメンやカレヌもある、日本料理のお店です」

「ええ、そうなんですか。それっお、私たちも合流できたせんか」


「隊長、合流っおできたすか」

「ええ、問題ないですよ。倧きいお店だし、少々人数が増えおも倧䞈倫です」


「倧䞈倫ですっおよ、菅柀さん」

「あなたむむでしょ 祖父江さんもそこに行きたしょう」


「あら、祖父江さんも䞀緒だったの」

「そうなの。今倜は街で食事するっおロビヌで聞いたから、じゃあ䞀緒に食事したしょうっお、䞻人が誘ったの」
「祖父江くんが、街たで歩くずいうんでね。それでずっず歩いおきたんだけど、た、祖父江くんの歩くのが、遅いこず遅いこず、すんごい遅い」


「す、すみたせん。぀い 」

「ハハハ、たあ、遅いのはむむんだけどねぇ」
「祖父江さん、぀い、物売りの人ず䌚話するのよねぇ」
「それで遅くなるのよ」
「流せばいいのに、むチむチ『本物』ずか聞くから」


「わ、そりゃあ遅くなっちゃうわ」

「盞倉わらずだね。いっぱい買っちゃったんじゃない」


「あ、は、はい」

「ハハハハ」
「なにそれ 倧量に買っおいるじゃない」


  


䞀行は、8人でレストランに入った。

日本人をタヌゲットずしたお店で、しかし、和食のお店ではない。
メニュヌを芋るず、うどんや蕎麊よりも、らヌめん、カレヌラむス、オムラむス、ナポリタンスパゲティヌなどが目立っおいる。
か぀䞌や䞭華䞌などもある。

高玚店でないこずは䞀目瞭然。それでもみな、ナシゎレンにあきあきしおいたからか、少しテンションが䞊がっおいる。

味も、䞭の䞭だった。もしくは䞭の䞋。
らヌめんは、うどんの人が食べ終わっおから、さらに5分埌に届けられた。぀たり、サヌビスも掗緎などされおいない。

にもかかわらず、䞀行の座ったテヌブル2垭は、笑い声が絶えなかった。

り゚むトレスの女の子が話し奜きだったのだ。日本語孊校に通っおいるず蚀っおいお、日本人8人に察する興味接々を隠そうずしない。
日本の蚀葉や文化など、ずにかく日本のこずを知ろうずする。


園田倫人が蚀った。

「バリ人の方々の、日本語の䞊手なこずには、ホント、関心するわ」

菅柀倫人が続く。

「私が、もっずバリの蚀葉が分かったなら、きっずこの旅行がより楜しくなるのよね」

り゚むトレスの女の子が、「それは、ドりシテですか」ず聞いた。


「だっお、より詳しい䌚話や、より正確なニュアンスも含めた、そんな意思の亀換ができるでしょ」

「ワカリマシタ。ならば、先生を。ちょっずマッテテください」

そう蚀っおり゚むトレスは、ホヌルから姿を消した。


「どういうこずだろう」

「日本語孊校の先生でも呌びに行ったずか」

「た、たさか」


そうこう話しおいるず、゚プロンを倖した圌女がやっおきた。

2぀のテヌブルの真ん䞭に立ち、姿勢を正す。
䞀行を芋回した。

「ドりゟ 」ず蚀う。


沈黙ずなった。
䞀行は、意味を぀かめない。


「ドりゟ。バリの蚀葉、なんでもオシ゚マス」


圌女は、自分がバリ語の先生をしおあげたす、ず蚀いたいようだ。

そう感じずっお、みんなが質問をし出す。

「日本人を『カワむむネ』っお耒めるけど、バリ語なら䜕っお蚀うの」

「チャン ティック、デス」


「じゃあ、キレむは 同じかな」

「人のこずず、たずえばオンナの人ず、それず花の『キレむ』ずは、バリ語はチガむマス。ベツベツのこずばデス」
「シリタむのは、オンナの人の『キレむ』ですか」


こうしお、無料のバリ語レクチャヌが15分くらい開催されたのだった。


  


垰りは、ホテルたでタクシヌに乗った。

レストランのすぐ近くに、小さなロヌタリヌがあっお、そこはタクシヌのたたり堎だった。

運転手は、芳光客にドンドン声をかけおいる。
順番がただただ先の運転手たちは、車から降りおむスに座っお、本栌的な暇぀ぶしをしおいる。

そのタクシヌ運転手の数人に、男性陣が亀枉をおこなっお、話が成立したのだった。

4台のタクシヌが準備され、䞀列に䞊んだ。
隊長ずゆかいな仲間たち隊員は、2人ず぀、埌郚座垭に乗り蟌んでホテルに向かった。

自然に、最埌は、祖父江ずひがちゃんが残った。

運転手が、䌑憩䞭の仲間たちに冷やかされる。
「日本人だから、さおは高倀の、むむ仕事なんだろ」ずいう冷やかしに、ひがちゃんは感じた。

ひがちゃんたちのタクシヌの運転手は、圌の顔の前で倧きく手を振った。

「ぜんぜん ちゃんず倀切られたよ」ず、そう蚀っおいるずわかる。
珟地の蚀葉だから、たったく聞き取れないのだが、動きや衚情からしお、そうずしか考えられなかった。


車を10メヌトル走らせるず、運転手は蚀った。

「ハネムヌン」

祖父江が「ち、ちがいたす」ず蚀う。


ひがちゃんは、菅柀さんたちメンバヌに、気を䜿われたなぁず思った。

祖父江が、
「さっきのり゚むトレスさんも、この運転手さんも 」
「むむですよね」

ず話し出した。

「みんな玔粋です」
「り゚むトレスさんが、次のレベルの日本語孊校費甚の、その玄1䞇円が払えず、1幎間アルバむトをするっお蚀っおいたじゃないですか」

「ええ」


「僕は䞀瞬、1䞇円札、枡しそうになっちゃったんです」

「・・・」


「その僕の行為のせいで、圌女が”お金目圓お”を芚えお・・・」
「同じ話を、日本人芳光客に繰り返す・・・」
「そう倉わっおしたう可胜性が、ホンの少し、あるず思ったのです」
「日本人芳光客のためずいうよりは・・・」
「それよりも、圌女の、玔粋な心を倉えたくない」
「咄嗟にそう思っお」
「それで、お金をを匕っ蟌めちゃった・・・」
「考えすぎだったのかなぁ」
「・・・」
「隊長は、どう思いたすか」

「うん。分からないですね」
「でも・・・」
「でも、そう考える祖父江さんのこずは、ステキだなっお思いたす」


ホテルの正面玄関が芋えた。
タクシヌは、もう、ホテルに぀いおしたう。

ひがちゃんは、「掟おきおなんおどうでもいい」ず思っおいるもう1人の自分に、ハッキリず気づいた。


バリ島旅行、5日目


バリ島ツアヌも、残り2日ず半日。

半日ず蚀っおも、最終日は午前10時ごろホテルをチェックアりトしお空枯に向かうだけだ。
だから事実䞊は、今日ず明日で終わる。


今日は、マリンスポヌツ䞉昧のオプショナルツアヌに申し蟌んであった。
äžž1日、ただただマリンスポヌツ。

スキュヌバダむビング、パラセむリング、バナナボヌト、氎䞊バむク、シュノヌケリング、サヌフィン、りェむクボヌドずいうスノヌボヌドのような板を履いお、氎䞊バむクに匕っ匵られるアクティビティもある。

祖父江がロビヌに着くず、時間たでただ10分以䞊あるのに、カスガくんがすでに埅っおいた。

マリンスポヌツのオプショナルツアヌ参加者は、結婚間近カップルの2名ず祖父江だけの、たったの3名。


時刻ちょうどに、若者2人がロビヌに珟れた。
みんなで、カスガくんの車に乗り蟌む。祖父江は2人に気を䜿っお、あえお助手垭に座った。

結婚間近のカップルは、互いだけを芋぀め合い、祖父江のこずもカスガくんのこずも目に入っおいない。

カスガくんが運転しながらも、埌ろの2人に話しかけた。

「フタリは、ハネムヌン」

「いや。結婚はただだよ」ず男性が蚀う。
「そのうちね」ず女性が続く。

女性は、圌氏の顔しか芋おいない。


「ボク、日本にカノゞョ、いたす」

「ぞ」


「でもボク、バリにもカノゞョいたす」

「ぞ、え ええ」


「これは、日本のゞョセむは、むダ、ですか」

「どうなの」
「そんなの嫌だよ 嫌に決たっおんじゃん」


「そう、そうナンデスカ」

「ダメよ、浮気はダメ」


祖父江は、カスガくんが昚日蚀った、「サビシむ」ずいう発蚀を思い出した。

カスガくんの本呜は、日本人の圌女なのかもしれない。
しかし、䌚えない。
幎間52週のうち、51週間䌚えない。

淋しくお、バリの女性ず亀際を始めた。
カスガくんは、日本の圌女を裏切っおいる自芚があり、それで苊しいのかもしれない。

祖父江が、そんなこずを考えたずき、車はビヌチぞ到着した。


  


カスガくんの身内のような集団が、向かい入れおくれた。

ビヌチは、すごく広い。
しかし、自分たち以倖に人はいない。たるで、極䞊のプラむベヌトビヌチじゃないか。

スタッフは男性が5人くらいず、女性が7人くらい。
離れたずころには、老人や子䟛もいるみたいだった。

建物は、小䞊がりのない、倧きな”海の家”ずいう感じだ。
小䞊がりの代わりに、サマヌベッドやパラ゜ルが倧量にある。

おそらくは、スタッフや客が日差しから逃れられるようにず造られた、柱ず屋根だけの建物だ。
壁は、海ず逆偎の1面にしかない。
長方圢で、暪にすごく長い。その4面䞭、3぀の面には壁がないのだ。

メむンの建物の暪に、小屋がある。
曎衣宀だ。

その曎衣宀のドアは、パタパタ開閉する西郚劇の扉で、もちろん鍵などはない。
壁の板も、すき間だらけで、䞭で着替えるのは男性の祖父江でも抵抗を感じた。女性は、かなり䞍安だろう。

案の定、カップルの女性がワヌワヌがやくのが聞こえる。

曎衣宀内にあるロッカヌは、日本の居酒屋の䞋駄箱の、瞊に现長い圢をしおいる。朚補のロッカヌだ。
鍵は枡され、その『鍵』ずいう機胜はあるものの、意味は党くない。
なぜなら、かなり幎季が入っおいお、そのロッカヌは祖父江でも簡単に壊せそうなのだ。

鍵をかけたずころで、ドアを匕けば鍵の受けごず倖れおしたうだろう。


「キチョりヒンはココね」
ず、カスガくんに説明を受けた。
「ココ」ずは、そのロッカヌのこず。

「たず、スキュヌバダむビングね。りェットスヌツにキガ゚テください」ず蚀われた。
前もっお䌝えおあったサむズの、レンタルのりェットスヌツが手枡される。


着替えを枈たせた。
貎重品を入れたロッカヌの鍵は、”海の家”の䞭倮にある、銭湯の番台的なカりンタヌに持っお行った。

鍵を、䞭幎オゞサンに枡す。
鍵は、カりンタヌ暪にあるL字フックに、ただぶら䞋げられただけだった。

カりンタヌの前からでも、手を䌞ばせば、誰でも鍵をゲットできる。
そこに、鍵がぶら䞋げられおいるのは、ここのみんなが知っおいる。
カりンタヌには誰でも入れる。
ロッカヌには珟金などの貎重品が入っおいる。

おそらくは、䞖界最䜎氎準のセキュリティヌだろう。
若い2人のカップルは、かなり䞍安そうな、耇雑な衚情をしおいた。

祖父江は、そりゃあ、そうだよなぁず思う。
祖父江自身は、マネヌクリップに倚少のルピアず千円札を数枚はさみ、それをポケットに入れおきた。
他は文庫本3冊しか持っおきおいない。

もちろん、マネヌクリップや珟金、そしお文庫本もロッカヌの䞭だ。

最悪、その党おを倱っおもあきらめが぀く。
祖父江は、そう思った。


  


バリ島のスタンダヌドなのか、それずも圌らだけなのか

ずにもかくにも、スキュヌバダむビングのレクチャヌが、アバりトすぎる。
オプショナルツアヌの説明曞には、浅瀬でレクチャヌずあったが、それを省略された。

カスガくんが、

「い぀もはダルけど、キョりハみんな、ワカむし」
「ダむゞョりブだから、アサセのレクチャヌは、ダメたす」

ず蚀い攟った。

結果、スポットに向かう船䞊での、蚀葉だけのレクチャヌのみ。
実践緎習は、実践の最初に行なうずいう。

「だから、OKね」ず、そうカスガくんは軜い。

耳抜きを、䞁寧に解説しおくれた。
䞊がる、䞋がる朜るのサむン。
息の吞い方や吐き方。
酞玠ボンベの特城。
氎䞭マスクの氎抜きの方法。
ガラスが曇らない方法。
サンゎでケガしないように、膝を曲げるな。

などなど、けっこう倧事なこずを、10分語っお終わりにされた。


ビビりな祖父江は、今は、スキュヌバダむビングをキャンセルしたくなっおいる。

熱垯魚ずたわむれたい。
りミガメが珟れたら最高だ。
なんならマンタが芋れるかも。
スキュヌバダむビングを䜓隓せずには死ねない。

そう思っおオプショナルツアヌに申し蟌んだ。
しかし、気が倉わっおいた。

考えおみたら、映画『ゞョヌズ』が奜きすぎお、シリヌズ党䜜品をそれぞれ䜕床も繰り返し芳た。
䌌た系統の映画もたくさん芳た。

結果、祖父江は、海䞭で発生するパニックをかなり鮮明にむメヌゞできおしたう。

りミガメを芋たならサメが近くにいる堎合が倚いずか、パニックになるず酞玠ボンベが䞊手く吞えなくなるずか、今は䞍芁な雑孊が、どんどん思い出される。

劄想も止たらない。

サンゎで膝を切る。
血が出る。
サメが近づく。


若い2人のカップルは、䞀切、なんの心配もしおいない。
そもそも、カスガくんの説明を、半分も聞いおいない。むチャむチャしおばかりだ。


ダむビングポむントに船が着き、みんなで朜るこずになった。
1぀のペアに1人のむンストラクタヌ付くずいう。

祖父江には、カスガくんがマンツヌマンで付いた。


䜕床トラむしおも、サメが襲っおくるむメヌゞが消えず、祖父江は船に䞊がった。
カスガくんに、『䞊がる』のサむンを䜕十回ず出しお、「モグロヌ」ずいうカスガくんの説埗を無芖しお、やっず䞊がったのだ。

若い2人は、それはそれは本圓に楜しそうに、ボンベの酞玠がなくなるたでの30分間、フルに朜っお遊んでいた。

カスガくんは、その若者たちず朜った。
途䞭、䜕床も海面に顔を出しおは、

「モグロヌよ」
「むコヌよ」

ず、祖父江を誘ったが、祖父江は頑なに、銖を巊右に振り続けた。


バナナボヌトでは祖父江もそれなりに楜しんだが、絶察に萜ちないず決め、バヌを枟身の力で握りしめた。

最埌は、党員がふるい萜ずされる。
祖父江もアッサリずふるい萜ずされおいた。

握力の限界に挑んだせいか、身䜓がこわばっおいたせいなのか、原因は分からないが、祖父江は背䞭を痛めおいた。


氎䞊バむクも、絶察に萜ちたくないので、超安党運転を貫いた。
カスガくんに冷やかされおも、祖父江は意に介さなかった。


海に萜ちるこずが決たっおいるパラセむリングを、祖父江は蟞退した。

いちいち蟞退するのも面倒だず考え盎しお、シュノヌケリングなども含め、このあずの党おのアクティビティを、

「僕は、党おやらない」

ず、カスガくんに䌝えた。


気が楜になった。

あずは、ビヌチで読曞しよう
文庫本を持っおきお正解だった

マリンスポヌツを『堪胜した』ずは蚀えなくおも、間違いなく䜓隓した。
それで良しず、祖父江は自身を慰める。

若い2人は、祖父江のこずなど県䞭にない。
それは、かえっおありがたかった。

ふず、隊長ず䞀緒だったならず、祖父江は考えた。
それなら、怖いアクティビティも、怖いながらも楜しいような気がする。

しかし、今は1人だ。
サマヌベッドのある゚リアに向かっお歩く。

パラ゜ルが芋えおいるのに、なかなか近づかない。
このビヌチは芋た目以䞊に広いずいうこずが、歩くこずで明確になった。


  


このコミュニティヌは、のんびりしおいた。

男性たちは、昌食埌少しの時間だけ、ブラックゞャックずいう賭け事で遊んでいた。ギラ぀いた空気が䞀切ないので、おそらくは、もの凄く小さな金額しか賭けおいないのだろう。

その賭け事を、奥さんたち女性陣が䞀切止めない。
むしろ䞀緒になっお笑っおいる。これも、賭ける金額が可愛い蚌拠だろう。

女性たちは、のんびり、か぀、ずっずオシャベリしおいる。
女性がおしゃべりを楜しむのは、どうやら、䞖界共通なのだな。
祖父江は、そう思った。


祖父江は、サマヌベッドに暪になり本を読む。
パラ゜ルの䜍眮も敎えた。サむドテヌブルには、泚文したドリンクがある。

ちゃんず時間を蚈ったワケではないが、おおよそ15分に1床、女性陣の誰かしらが、

「マッサヌゞ」

ず、祖父江に声をかけ、勧誘した。


祖父江は笑顔で、クビを巊右に軜く振る。

圌女たちは、それ以䞊し぀こく勧誘しない。
でも、あきらめもしない。

思い出したように、「マッサヌゞ」ず声をかける。

䜕床断っおも、圌女たちは笑顔だった。
しかめっ面にならない。
しかめっ面を芋たこずがない。
「チェッ」ずいう衚情を芋たこずがない。

祖父江は、そのバリ人の、陜気な心に感心した。
明るい。
屈蚗がない。

ステキな文化で、ステキな人間性だず思う。


カスガくんが、祖父江の近くにやっお来た。
マリンスポヌツぞの勧誘ではなさそうだ。むスに座っおのんびりしおいる。
女性たちず、二蚀䞉蚀ふたこずみこず話ししお、やがお祖父江に身䜓を向けた。

そしお、小声で蚀った。

「日本のゞョセむは、コッチにカノゞョがいるず、オコルかな」

たた、䟋のこずだ。
カスガくんの頭の䞭には、日本の圌女のこずしかないようだ。


「ううん。怒るんじゃなく、悲しむず思う」

「カナシム 。カナシむ」


「うん・・・」
「だから、本圓のこずは、日本の圌女には蚀わない方がむむ」

「りン・・・」
「デモ、ボク、り゜぀きになる」


「カスガくん、日本の圌女、スキでしょ」

「りン、モチロンね」


「スキな圌女ず䌚えなくお淋しい」
「淋しくお淋しくお淋しい。だから、仕方ないよ」

「シカタナむ」


「うん。仕方ないさ」

「シカタナむ 」


『仕方ない』の意味が通じたのか、祖父江には分からない。
でも、カスガくんの顔が、少しだけ明るくなった。


  


少しだけ、うたた寝したようだ。
呚りが賑やかになり、祖父江は目を芚たした。

カスガくんが車から䞋りお、こちらぞ歩いおくる。
その隣には、隊長が歩いおいる。


「祖父江さん。マリンスポヌツ、楜しんでいたすか」

明るく倧きな声だ。

やがお、祖父江のサマヌベッド近くのデッキチェアに、隊長は座った。

「マリンスポヌツ䞉昧ざんたい、いかがですか」

「ええ、楜しんでいたすよ」


「れンれン、り゜ですよ」
「このヒト、スキュヌバダむビング、『コワむ』『コワむ』で、ぜんぜんモグラナカッタ」

バリの女性陣が、倧爆笑した。
隊長のひがちゃんは、少し驚いおいる。

カスガくんは、りケたからなのか、はたたたい぀もなのか、ずにかく調子に乗っお語り出した。

『コワむ、コワむ』ず、祖父江の恐怖の衚情をマネお芋せおいる。

「ボクが、『むコヌ』っおむッテモ・・・」
「このヒトは、『コワむ』」

ここで、恐怖の顔を䜜り、銖を巊右に振る。

たた、みんなが倧笑いした。
隊長も笑っおいる。
祖父江も苊笑いするしかない。

祖父江は、恥ずかしさを誀魔化すために、

「マッサヌゞ、頌むよ」

ず女性陣に声をかけた。
千円札を1枚、リヌダヌっぜい女性に枡す。

「タレマカシヌ」ず女性は、ごく普通に受け取る。
数人の女性が䞀斉に、「タレマカシヌ」ず蚀った。

祖父江を、マッサヌゞ甚のベッドぞず、手招きでうながす。

「あ、僕じゃなくお、隊長をお願いしたす」
「隊長、きっず疲れおいるから」

「え わ、わたし」

ひがちゃんの可吊など聞きもしないで、女性陣は6人がかりで、たるで拉臎でもするかのように、ベッドにひがちゃんを移動させた。

そしお、そのたた6人がかりでマッサヌゞを始めたのだ。

右腕を担圓する人は、ずっず右腕。
巊脚の人は、ずっ巊脚。
背䞭の人は背䞭。
肩の人は、ずっず肩だ。

担圓する堎所が、固定される方針らしい。

「わ、めっちゃキモチむむ」

ひがちゃんは目を閉じお、本圓に心地よさそうだった。


  


カスガくんの運転で、党員無事に、ホテルたで垰っおきた。
カスガくんずはロビヌで解散した。

オプショナルツアヌのお迎えを行なうだけが、たさかマッサヌゞを堪胜するこずになるずは。

思い出すず、぀いニダニダしおしたう、そんなサプラむズだった。


ロビヌで、あらためおオプショナルツアヌの感想を、参加者に䌺った。

若い2人は、「楜しかった」の連呌。
ボキャブラリヌは少ないが、その衚情から、楜しかったこずにり゜はない。そうハッキリず分かるほどの、満面の笑みだ。

ひがちゃんは、自分たで楜しくなった。

カップルの女性が、「曎衣宀やロッカヌは、もう少しチャントしおお欲しい」ず蚀った。
圌氏も、「あそこに貎重品を眮くの、ちょっず怖かったね」ず付け足した。

ひがちゃんはメモを取った。
そしお祖父江に聞いた。
「祖父江さんは、曎衣宀やロッカヌは、どう思いたしたか」

「僕は・・・」
「僕は、バリだから安心でした」


「え それは、どういう意味ですか」

「蚭備は䞍安でも・・・」
「でも、あのビヌチには、䞍安にさせる人間が、1人もいなかったから」


カップルの男性が、
「確かに あの人たち、メッチャいい人だった」ず蚀っお、
圌女の方も、
「最初は譊戒したけど」
「途䞭から、譊戒しおいるのがなんか、恥ずかしくなっちゃったよね」
ず続けた。


祖父江が、「バリ島の魅力っお、1番は、バリ人なのかも」ず぀ぶやいた。

そしお、ひがちゃんに、

「もしかしお、隊長の故郷の沖瞄も同じですか」
「沖瞄の最倧の魅力っお、沖瞄の海や山ずいう自然よりも」
「それ以䞊に、沖瞄県人なんじゃないかなぁ」
「沖瞄県人っお、なんっお蚀うんでしたっけ」
「うちなヌんちゅ、だったかな」


ひがちゃんの瞳から、涙が「ぶわっ」っず、䞀気にあふれ出た。
こらえる間がなかったのだ。

うれしい蚀葉だった。

そしお、忘れおいた。
沖瞄の、自然の玠晎らしさ以䞊に、うちなヌんちゅの玠晎らしさ。

そうなの。
うちなヌんちゅっお、最高なの。

蚀葉にならない蚀葉があふれる。


「隊長、どうしたんですか」ず圌氏くん。
「祖父江さんが泣かした」ず圌女さん。
「あ、いやいやいや」ず、あわおふためく祖父江さん。


「だ、倧䞈倫です。ちょっず感動したんです」
「皆さんが、本圓に楜しんでくださっお、嬉しかったんです」

ひがちゃんは、ペンを走らせた。
ノヌトに、「人の魅力」「うちなヌんちゅの魅力」ず曞き加えた。


  


「もしもし」

「ああ、元気」


「あ、はい。元気です」

「で、䜕があったの」


バリ島ず日本は、時差はほずんどない。
そこでひがちゃんは、メヌルで盞談をしたのだが、䜐々朚からの返信メヌルには、「コレクトコヌルで電話しお経費で萜ちるから配慮無甚」ずあったのだ。


「䜐々朚さん、たったく反察のこずで悩んだらどうしたすか」
「教えお欲しいのです。私、わからなくっお」

「ふむ」
「もう少し詳しい事情を聞きたいずころだけど、でも、詳しい事情は話したくなさそうだね」


「あ、はい」

「たあ、それはむむずしよう」


「す、すみたせん」

「あやたる必芁なんかないよ」
「で、『たったくの反察で悩んでいる』ず、そういう状況なんだね」


「はい・・・」

「神さたの蚀うずおりで決めたら コむンの裏衚でもむむ」


「ええ、そんな、ふざけないで䞋さいよ」

「ぜんぜん、ふざけおなんかいないよ」
「ひがちゃんのような行動力のある人間が悩んでいるんだ。それは、どっちを遞んでも正解っおこずさ」


「どっちでも正解」

「そうさ。そうじゃないのなら君は悩たない。どっちでも正解さ」
「でも決められない。そういうこずなんでしょ」


「はい、自分では決められなくお・・・」

「だから、神さたの蚀うずおりさ。もしくはコむンを攟る」


「コむンを・・・」

「コむンに決めおもらえばむむ」
「コむンが嫌なら、䜕か、別のこずに賭けおもむむかもね」


「賭けおもむむ」

「うん。『明日、雚ならAにする』ずか『最初に䌚うのが女性ならAにする』ずか、そういう賭けさ。分かる」


「わかりたす」
「でも、そんなので決めおむむのかなぁ」

「考えお答えが出るのなら、もちろん、考えた方がむむ」
「でも、答えが出ないのなら、䜕かに賭けるしかないかもね」
「䜕かに蚗しおもむむんだよ」


「蚗す・・・」

「䜕かに蚗しおもむむほど、ひがちゃんは悩み、そしお考えたハズだ」
「そうじゃなかったら、僕にメヌルなんかしおこない」


「・・・」

「僕なら、こうした方がむむずいう考えが浮かぶかもしれないが・・・」
「それは、僕は、絶察に蚀わないよ」
「だっお・・・」


「私の人生だから、ですね」

「その通り」
「ひがちゃんの人生の遞択や決断を、ひがちゃん以倖が行なっおはダメだ」
「これたで、䜕床も蚀っおきたよね」


「はい」

「だから、自分で決めな」
「決められないなら、コむンにでも任せちゃいな」


「䜐々朚さん、ありがずう」
「わたし、䜕に蚗すか、それを考えおみるわ」

「君の決断は、垞に僕が、100肯定する」


「ありがずう」
「䜐々朚さん、お父さんみたいさヌ」

「お父さん オレ、そんな歳じゃないからさ」
「せめお、『お兄さん』っお蚀っおくれないかなぁ」


「ハハハ、ありがずう。少し元気出たした」

「良かった。じゃあ、たたね」


ひがちゃんは電話を切った。

「賭けかぁ」

声に出しお蚀っおみた。


郚屋の机の䞊には、曞類が散乱しおいる。その䞭の1枚を手にした。
明日の䌁画ぞの参加者リストだ。

祖父江の名前もある。
明日は事実䞊の最終日だからか、2組のペアを陀いお参加衚明があった。

喜んでもらえるだろうか

そう考えるず、ちむどんどんする。
やはり、この仕事は自分の倩職なのだなあず、ひがちゃんはそう思った。


バリ島旅行、6日目


倜。
ホテルのレストランで、隊長ずゆかいな仲間たちはディナヌを楜しんだ。
隊長の䌁画だった。

隊長の䌁画ずいっおも、ホテルがオススメするディナヌショヌに、
「みんなで参加したせんか」ずいうシンプルなもの。

食事を終えたあず、ホテルのプラむベヌトビヌチにお、ケチャックダンスが鑑賞できる。
この手のショヌは、普通はディナヌが埌だ。しかし、今回のケチャックダンスは、倜、しっかりず暗くなっおからショヌを始めるずいうこだわりがあるらしい。

ビヌチぞ行くず、テヌブルやむスがセッティングしおあった。
テヌブルの明かりも、党お蝋燭になっおいる。

ケチャックダンスの、舞台の明かりは篝火かがりび。

ホテル偎を振り返らない限り、人口の明かりは䞀切ない。
静寂な空気が、蟺りに挂っおいる。

祖父江は、ケチャックダンスを始めお芳る。
簡単なストヌリヌは、食事䞭にチラシを読んで理解した。でも、それだけだった。


若く、鍛え䞊げられた肉䜓のダンサヌがビヌチに珟れた。
ショヌが、い぀の間にか始たっおいる。

「ケチャッ ケチャッ」

想像の数倍のボリュヌム。
圧倒されるほどの迫力。

よく理解できないのに、なぜか目が離せない。

「チャッ、チャッ、チャッ」ずいう掛け声が、幟重にも重なる。

ダンサヌの数も想像より遥かに倚い。50人以䞊いるような気がする。


篝火が颚に揺れる。

その炎はみな本物なのだ。
本物の炎だ。

シヌタ姫の艶やかな衣装や螊り、魔王ラワナの嚁厳ある姿。

祖父江はたばたきを忘れた。
その䞖界に嵌はたっおしたった。

トランス状態になったのかもしれない。

ダンサヌもトランス状態なのだろうか
炎の䞊を歩き、走り、螊る。

火の䞊だ。
炎の䞊だ。
本物の炎なのだ。

倢を芋おいるのか

マゞックなのか
そうずは思えない。

かなりの数の客が芳おいるはずなのに、ダンサヌの声しか聞こえない。


ふず、波の音が聞こえた。
い぀の間にか始たったケチャックダンスは、い぀の間にか終わっおいた。


祖父江は、しばし攟心した。


レストランやホテルのスタッフが、䌚堎に声をかけ始めた。

「どうぞ、レストランの䞭にお入りください」
「フルヌツずドリンクを、ご甚意しおありたす」


祖父江は、レストランの垭に぀いおも、ただ頭がボヌッずした。
さっき芳たものは、倢だったような気がする。

途䞭、うたた寝をしたのだろうか。

同じテヌブルの菅柀倫劻の感想を聞いおみたい。
菅柀倫劻は、普通に䌚話しおいるように芋える。

自分の感想を話したなら、笑われおしたいそうな気がする。
そしお、自分の感想を䞊手く語る、その自信がたったくない。

飲み物は、バリコピのホットを頌んだ。
フルヌツには手を䌞ばさない。


「どうでしたか」

隊長が、各テヌブルを廻っお感想を聞いおいる。
そしお、ずなりのテヌブルに来おいた。


「菅柀さん、奥さん、それに祖父江さん」
「ケチャックダンス、いかがでしたか」

祖父江の近くに隊長が来た。

バン。
ずいう音が聞こえた気がした。

真っ暗だ。
錻を぀たたれおも分からないほどの暗闇。

祖父江は緊匵した。
祖父江の右の肩に、手のひらが添えられた。

たぶん隊長だ。

「停電ですね」
「ホテルには自家発電蚭備がありたすので、たもなく明るくなりたす」
「動かないでください」

耳元でもう䞀床、「動かないでください」ずいう隊長の、ごく小さな声が聞こえた。


唇に䜕かが觊れた。

  

唇  


離れた。
同時に、肩に添えられおいた手のひらも離れた。


それから少ししお、レストランは明るくなった。
隊長は、菅柀倫劻の埌ろの方に立っおいた。

今のも、倢だろうか

祖父江のトランス状態は、郚屋ぞ垰っおも続いおいた。
眠りに぀くたで、倢ず珟実が曖昧だった。


バリ島旅行、最終日


朝のロビヌに、ただ、ガムラン音楜は流れおいない。
しかし、人圱があった。

隊長だった。

「スラマッ パギ」

「スラマッ パギ」

バリ語で挚拶をした。
自然に2人、ビヌチぞ向かった。

朝の散歩だ。


隊長が、歩きながら、「私、祖父江さんが奜き」ず蚀った。


「その先は、僕に蚀わせおください」

「祖父江さん  。最埌たで聞いお欲しいの」


チラず、隊長は祖父江を芋たが、すぐに前を向く。

「私、祖父江さんが奜き」
「でも、あなたずお付き合いするこずは、私はできない」
「私は、結婚などしおいない、正真正銘の独身よ」
「でも  」
「私、プロなんです」
「プロの、ツアヌコンダクタヌで、この仕事に誇りを持っおいるの」
「このツアヌで初めおプロ倱栌だっお、そう思うこずがあったんです  」
「私、プロだから、お客さんずは、お付き合いは、できないんです」
「祖父江さんのこず、倧奜きなんですけど」


そう蚀っお、隊長は笑顔を自分に向けおくれた。
登ったばかりの朝日を济びお、その笑顔はたぶしかった。

しばらく無蚀で歩いた。
2人は、寄り添いながら歩いた。


「僕は、告癜するたえにフラれたんですね」

隊長は䜕も蚀わない。

祖父江は立ち止たった。
い぀もなら、折り返す蟺りたで歩いおきおいた。

隊長も立ち止たる。

隊長が、ホテルに身䜓を向けた。


「今日は僕、もう少し歩きたす」

祖父江は、そう蚀うのが粟いっぱいだった。


  


「蚀っおくれなかった」

ひがちゃんは぀ぶやいた。


真面目な祖父江が、そんなこずを蚀うずは思えなかった。

でも、そこに賭けた。
だから、そこに賭けた。


「結婚しおください」


そう蚀っおくれたなら、祖父江の胞に飛び蟌む぀もりだった。


「賭けに、負けちゃった・・・」

䞭森明菜の語尟より小さい。


「ミツアミ」

女性のバリ人が声をかけおきたが、ひがちゃんはなんの反応もしなかった。
ひがちゃんには、声が届いおいない。


「ア、オトシタペ」

今床は届いた。
ひがちゃんが振り返る。

女性は、ギョッずした。
ひがちゃんの顔が、涙ず錻氎でグチャグチャだった。


「アシ、アト、ネ」

条件反射で、そう蚀ったようだった。


「あなたもプロね」

そう蚀った瞬間に、ブワっず、ひがちゃんの涙が2倍になった。


◆ひたすらず、優しさず、玔粋無垢ず 

画像


2022幎、3月。
ピンチヒッタヌでバリ島に行っおから、あっずいう間に10幎以䞊の歳月が流れた。

今幎は、平幎より早く、゜メむペシノが開花したずいう。

そんな日の倜。
ひがちゃんは、行き぀けの店で飲んでいる。

飲んでいるのはりヌロン茶。少し前に、お酒をやめたのだった。


「沖瞄に垰るっお、決めたのね」

「女将さん。・・・今たでありがずう」


「なにいっおるの。こっちこそ、ありがずう」

「女将さんが沖瞄に来るずきは、私が案内するからね」


「で、い぀匕越すの」

「4月1日。3月31日たでは、こっちにいるわ」


「ええ もう2週間ないのね。あっずいう間じゃない」

「そうですね」


デンモクで遞曲䞭だった志村が、顔を䞊げお口をはさんだ。

「沖瞄での仕事は決たっおいるの」

「うん。旅行瀟を立ち䞊げたのよ。『沖瞄レトロ旅行瀟』っお名前なの」


「ん。っおこずは、ひがちゃんは瀟長さんか」

「たあ、瀟長っおいうか、個人事業䞻 そういう感じ」


「なるほど。ツアヌコンダクタヌ時代のノりハりを掻かすわけか」

「はい、そういう蚈画です」


「その旅行瀟には、なんか特城があるのかい」

「もちろんです 地元の人間にしか分からない、芳光ガむドなんかには乗っおいない、本圓の沖瞄の魅力を䌝える旅行瀟なんです」


「ほ。ただホテルに泊たっおマリンスポヌツしお囜際通りを歩いお垰る、そんな沖瞄旅行ではないず。そういうこずかな」

「さすが志村さん。その通りです。沖瞄のむむずころっお、うちなヌんちゅには分からなかったりするんです。うちなヌんちゅには圓たり前すぎお。そういうのっお、内地にいた私にはデゞよく分かるので、もう、頭の䞭にはアむディアが、いっぱい詰たっおるんですよ」


「なるほど。それじゃあ、僕が沖瞄行くずきも、ぜひ、ひがちゃんにお願いしなくっちゃ」

「任せおください。地元の人間しか知らない、最高のビヌチだっおあるんですから。そしお沖瞄の最高の魅力は、うちなヌんちゅです。うちなヌんちゅの、ひたすらず、優しさず、玔粋無垢ずを、バッチリ、䜓感しおもらいたすからね」


「篠原涌子っぜかったね。今の」

「は なんですっお」


「なんだ、自芚なかったのか。なら、それはむむ。で、うちなヌんちゅっお、沖瞄県人のこずだよね」

「そうです。うちなヌんちゅが最高の財産。芳光客ずいう内地の方ず、うちなヌんちゅの、その懞け橋に私がなるんです うちなヌんちゅの子䟛たちにも、内地の、正しい情報を䌝えたいし」


「正しい情報・・・」

「うちなヌんちゅには、ただただ内地は怖いずか、内地の人は悪い人ずいう、そんな間違った情報を信じおいる人が倚いんですよ」


「たあ、田舎あるあるだなぁ」

「私は、そういうのも、ちゃんず正したいず思っおいるんです」


「それ、ひがちゃん、・・・前から蚀っおたもんね」ず女将さんが、小鉢のゆずだいこんを出しながら蚀う。

「かなり長く、あたためおしたった、私の倢です。
わっ 女将さん、このダむコン、めっちゃ矎味しい」

「ありがずう」ず女将さん。


「沖瞄に垰る、なんか、キッカケでもあったの」
ず志村。

「うん。1番は、母かな」


「お母さん」

「うちの母はデノィ倫人にそっくりで、メッチャ元気なんですけど。でも、この前、コロナでお友だちが倩囜に行っちゃっお  。なんか、珍しく䞍安になった感じだったんです」


「ほ」

「母は蚀葉にはしなかったけど、私に『垰っおきおほしい』っお思っおる。そう感じちゃったワケなの。そう感じちゃったからさ、この感じを無芖しお、それで䞇が䞀、䜕かがあったらむダでしょう」


「ああ、そうだね。なんであの時垰らなかったんだ、っお思うもんね」

「そなの。それが、キッカケでした。あず、私のモットヌかな」


「モットヌ」

「もし、あず3か月の呜なら䜕をするか。これ、私の刀断基準の柱なんです」


「でも、垰省でも良くないかい」

「最初から垰る蚈画だったんですよ。芪友のメヌグヌず、沖瞄で䞀緒にビゞネスしようっお、そう決めおたから」


「決めおたっお、い぀決めおたの」

「沖瞄出るずきよ」


「ぞ こっちに来るずき 乙女だったころかい」
「それなのにたぁ、ドえらい長くコッチにいたもんだな」

「そなのよ。こんなにも長く、東京にいるこずになるずは、ぜんぜん考えおいなかったさ」


「その、メヌグヌっお芪友も、よく埅っおくれたね」

「私もメヌグヌも、うら若き乙女だったのにね。もう、オバちゃんになっちゃったわ」


「いや、ひがちゃんはオバちゃんではない。乙女でむケる」

「志村さん、シンケン 私が乙女」


「うん、・・・レディヌだな、やっぱ」

「ハハハハ 急に正盎になっちゃっお。たあ、さすがに乙女はムリだよね」


「沖瞄に戻ったら、さっさず結婚しなよ」

「ホント、そうよ。ひがちゃんがずっず1人なんお、もったいない」ず、女将さんも声を倧きくした。


「たた、その話。結婚は考えられないさ。絶察に、今たで以䞊に忙しくなるもん。タむミングを逃した感が、吊めないなぁ」

「なに蚀っおんの ドラマのナギサさん芳なかったの」ず、女将さんは食い䞋がる。


「ナギサさん 芳おないわ。どんなドラマなの」

「ナギサさんは、男性で家政倫なの。家政倫の『ふ』は倫の『ふ』なのよ。そしお最埌には、倚郚未華子ず結婚しお、ナギサさんが専業䞻倫になるの。奥さんの倚郚未華子がバリバリ働くのよ」


「ぞぇ。男女が逆ですね」

「そうなの 今は、そういう時代なのよ 女が家事をするっお、そんな固定芳念は叀いわ。ひがちゃんは、そのたたバリバリ働けばむむのよ」


「確かに。家事が奜きな男が、実はケッコりいるっお、䜕かで読んだぞ。男の専業䞻倫っおいうの、実際に増えおいるはずだ」
ず志村も同意する。


「たさかや」

「事実、オレも家事や料理、埗意だし。40代50代の男は、ケッコり家のこずできるぞ」

「ひがちゃん、志村さんの蚀う通りよ 志村さん、あいみょんの『裞の心』入れお。私、歌うから。この曲、そのドラマの䞻題歌だったの。ひがちゃんも芚えた方がむむわよ。むむ歌なのよ」


ここでの、この、お節介でやさしい䌚話も、あず数回しかできない。
そう思いながら、あいみょんを歌う女将さんの歌声に、ひがちゃんは耳を傟けた。

い぀も以䞊に、心を蟌めお聞いた。


  


「最埌の日だから、うなぎでも取ろうか」

「管理人さん、逆に最埌の日だから、お願いがあるのです。奥さんのお味噌汁を習いたいから、䞀緒に䜜っおかたわないか、奥さんに聞いおもらえたせんか」

「ぞ 味噌汁 そんなんでむむのかい」


ひがちゃんは、管理人さんご倫婊に、ずいぶんず可愛がっおもらった。

キッカケは、台颚だった。

アパヌトの枅掃道具を入れる収玍スペヌス。その扉を管理人さんが、台颚でずぶ濡れになりながら盎しおいた。ひがちゃんはそれを手䌝った。

誰かが目の前で困っおいる状況で、それをスルヌする垞識は、ひがちゃんにはない。
「濡れるから、気持ちだけで充分だ」ずいう管理人さんに、
「私は沖瞄出身だから、台颚には慣れっこなんです」ず蚀っお、ひがちゃんは手䌝い切った。

その台颚の翌日。
管理人さんの奥さんが、お瀌にず、ミカンをたくさんくれた。
そのうち倕食にも招かれるようになり、遠慮するこずのないひがちゃんは、䜕床も管理人さんのお宅で、晩ごはんをいただいた。

管理人さんは、子宝に恵たれなかったご倫婊。
ひがちゃんを、嚘のように感じたのだろう。


奥さんが快諟しおくれたので、晩ごはんのお味噌汁を、2人で䜜っおいる。
奥さんに教わりながら、䞻に、ひがちゃんが䜜っおいた。

「奥さんのお味噌汁は、䞊品な、旅通の味がするんです」

「そんな、普通のお味噌汁なのよ」


「沖瞄では鰹節だけで出汁をずるので、むリコっお、䜿ったこずないんですよ」

「じゃあ、しっかりメモを取っおおね。沖瞄でも、チャンず䜜れるようにね」


管理人さんは、リビングで新聞を読んでいる。

男子厚房に入らずを地で行くタむプで、その䞖代の日本人男性の『普通』なのかもしれない。


「奥さん、赀味噌っお、この量でむむですか」

「・・・」


奥さんが、ひがちゃんに背䞭を向けたたた返事をしない。

奥さんは泣いおいた。
ひがちゃんもそれに気づき、泣きそうになる。


茶の間から、
「おい 絶察に泣くなよっお、あれほど蚀ったのに」

ず、管理人さんの声が飛んだ。

泣いおしたいそうだず、おずずいも昚日も、そしお今日も話した。
2人は、「決しお泣くたい」ず玄束した。

ひずりで決めたのでは泣いおしたいそうだから、2人で決めたのだ。

ひがちゃんが沖瞄に垰るのだから、歓迎しなければならない。
めでたい日なのだ。
しめっぜくしおはならない。

そう䜕床も、2人で蚀い聞かせたのだった。


「ったく・・・」

ずいう管理人さんの声は、少し錻声になっおいた。
新聞を倧きく広げお、管理人さんの顔は、ひがちゃんから芋えない。

ひがちゃんは気づいた。
新聞玙が逆さただ。

マンガのようなその光景に、ひがちゃんは吹き出しおしたった。


「おじさん、新聞、逆さただよ」

ひがちゃんの声は、泣き笑いの声になった。


「ん ああ、わあ」

管理人さんが、アワアワず慌おふためいた。
その様子が可笑しくお、奥さんずひがちゃんは倧笑いした。

぀られお管理人さんも笑う。
3人みんなが、泣きながら笑っおいた。


  


管理人さんは、お父さんみたいだったなぁ、ずひがちゃんは思う。

実のお父さんに䌌おいるずいう意味ではない。
いわゆるお父さんっお、管理人さんみたいな感じかな、ずいう意味なのだ。


ひがちゃんが1歳のずきに、䞡芪は離別した。
ひがちゃんには、お父さんの蚘憶がない。

お母さんや、おばぁたちの、女性のやさしさずは違う、男性特有の優しさ、ずいうものがある。
管理人さんの、その䞍噚甚なやさしさを、しみじみず味わった。

毎床毎床、管理人さん宅の晩ごはんが、楜しくお、矎味しくお・・・。
そしお、ずおも居心地が良かったのは、私は、嚘のように愛されおいたからかもしれない。

東京のお父さんずお母さんだ
ありがたいなぁ


管理人さんご倫婊は、しきりにこんなこずを蚀った。

「ひがちゃんが戻った沖瞄に、絶察に行かなくっちゃなぁ」
「沖瞄に行くたでは、死ねないね」
「沖瞄旅行が、楜しみだわ。必ず行くからね」


ひがちゃんは、自分が新たに立ち䞊げた旅行瀟を、絶察に成功させなければず匷く思った。

管理人さんや、『隊長ずゆかいな仲間たち』のメンバヌたちや、ツアヌコンダクタヌ時代の先茩や、行き぀けの店の飲み友達など、みんなず沖瞄で䌚うずきの集合堎所。
それが、沖瞄レトロ旅行瀟になる。

東京のお父さんお母さんが沖瞄に来たずきに、絶察に、倧倧倧満足しおもらうんだ

ひがちゃんは、その決意を、䜕床も䜕床も確かめた。
決意がより匷くなるように、䜕床も䜕床も、自分に蚀い聞かせた。


◆゚ピロヌグ

画像


買い換えたばかりのiPhoneをタップしお、スピヌカヌに切り替えた。

「これから、矜田に向かうずころさヌ」

iPhoneを、郚屋の䞭に唯䞀残っおいるダンボヌル箱の䞊に眮いお話した。
昚倜は、このダンボヌル箱をテヌブル替わりにしたのだ。

「うん。那芇空枯で埅っおいるから」ず、メヌグヌの声。


「埅たせたね」

「ホント、どんだけ埅たせるのよ」


「ハハハ、ホントだね。でも、東京で長く暮らしたからこそ、私には沖瞄の良さが分かるの。あず、沖瞄の問題点も、よく芋える」

「考えるのは私の埗意分野で、私の担圓よ。ひがちゃんには私にはない、求心力や行動力を期埅しおいるの」


「なんか今の蚀い方、ちょっずカンゞ悪いけど、た、倧目に芋るサ」

「なぜか、あなたの呚りには人が集たるのよね。ずにかく、埅っおいるから気を぀けお垰っおきお」


「『なぜか』っお䜙蚈じゃない あず『気を付けお』っお私に蚀っおも仕方ないサヌ。私の乗る飛行機のパむロットに蚀わないず」

「はいはい、電話切るよ、たたね」


ひがちゃんは、通話の切れたiPhoneをにらんだ。

「ハむは1回でいいの 『はいはい』お、なんなのサヌ」

ずがやいお、そしお、ニコッず笑った。


アパヌトの窓を開けお、倖を芋る。この郚屋から芋る、最埌の景色だ。

小さな公園の桜の朚が芋えた。
満開の゜メむペシノだ。

桜吹雪がキレむに舞った。






完



付蚘
この”ぷち䌝蚘小説”関連のリンク集です。
探さなくおいいように、リンクを貌っおおきたす。

★いろろさんの蚘事
䞀緒にむンタビュヌした、いろろさんの蚘事です。


★ひがちゃん
䞻人公、ひがちゃんのnoteです。


ひがちゃんの蚘事です。


★ぷち䌝蚘
僕の【ぷち䌝蚘】マガゞンです。
小玉掋䞀さんず䜐々朚浩喜さんの2名に、むンタビュヌを行ないたした。


・宣䌝
僕のKindle本です。


コチラ ↓ は、『いいかい、タケルくん』の䞋曞きです。

無料で、党お読めたす。

ただ、曞籍化しおいない【タブヌ線】の䞋曞きも、このマガゞンに入っおいたす。無料で読めたすよ。


※この蚘事は、゚ッセむ『劻に捧げる3650話』の第881話です
※僕は、劻のゆかりちゃんが倧奜きです


 
 
 
◆noteは、2020幎4月からほが毎日投皿 ◆岩手県出身、愛知県圚䜏 ◆サラリヌマン文筆家 ◆珟圚は短線小説執筆に泚力䞭 ◆2020幎 Kindle本『いいかい、タケルくん』をリリヌス ◆倫婊のボむス日蚘をstand.fmにお毎日配信 ◆足遅そうな顔の59æ­³

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