
うちのたぬき……いえ、猫は鋼のメンタル
めげない。
とにかく、めげない。
何度蹴り飛ばされても、
何度布団から落ちても、
うちのたぬきねこは諦めない。
それは愛情なのか。
「飼い主と一緒に寝たい」
という健気な気持ちなのか。
……いや、もしかしたら、
「この布団は私のものだ」
という縄張り意識なのかもしれない。
真実は分からない。
ただひとつ言えるのは、
あのたぬきねこには、
「絶対にそこで寝てやる」
という鋼の意志があるということだ。
うちのたぬきねこは、
必ず寝室で寝る。
さっきまでリビングのふわふわタオルケットで寝ていたと思ったら、
当然のように一緒に寝室へ移動してくる。
そして、
それはもう見事なくらい堂々と、
布団の真ん中に鎮座するのだ。
思わず、
「そこ、私の寝床なんですけど……」
と言いたくなるくらいには、
堂々としている。
私は遠慮がちに布団へ入り、
眠りにつく。
隣にぴったり寄り添って寝ることもあれば、
胸の上に乗って、
「私はここにいる」
と全力でアピールしてくる日もある。
ただ、ひとつ問題がある。
私の寝相が、
とにかく悪いのだ。
自分でも分かっている。
寝ている間、
たぶん運動会でもしている。
無意識なので、
直しようもない。
だから毎晩、
「蹴飛ばさないように……」
「押しつぶさないように……」
と願いながら眠るしかないのである。
ある日、
熟睡していた私は、
何かを蹴飛ばす感覚で目を覚ました。
……やばい。
その瞬間、
反射的に目が開く。
やってしまった。
絶対に、
蹴り飛ばした。
そして次の瞬間、
目に飛び込んできたのは——
宙を舞う、
空飛ぶたぬき……いえ、猫だった。
一瞬、
部屋の空気が止まる。
私は呆然としながら、
たぬきねこが消えていった方向を見つめる。
暗闇。
静寂。
しばしの沈黙。
すると、
暗闇の向こうから、
のそのそと戻ってきた。
その顔は少し不満げだ。
でも、
怒ってはいない。
たぶん、
私の寝相が悪いことを、
もう理解しているのだろう。
ただ、
「何するの……」
とは思っている顔をしている。
そして、
危険だと分かっているはずなのに、
また同じ場所へ戻ってくる。
「危ないよ」
と声をかけても、
まったく動じない。
他の場所で寝ればいいのに。
安全な場所なんて、
いくらでもあるのに。
それでも、
絶対にそこを譲らない。
結局こちらが気になってしまい、
なかなか眠れないまま、
またうとうとし始める。
そして再び、
寝返りを打った瞬間——
また目が覚めた。
今度は、
もう隣にたぬきねこはいない。
……やってしまった。
そう思っていると、
しばらくして、
再び視界に戻ってくる。
今度は少し怒っている。
「いい加減にしろ」
その顔は、
確かにそう語っていた。
でも、
私にもどうしようもないのだ。
だって全部、
無意識なのだから。
それでも、
たぬきねこはまた定位置へ戻る。
なぜ、
危険だと分かっていながら戻ってくるのか。
飼い主と一緒にいたいのか。
この布団への執着なのか。
それとも、
「ここは私の場所だ」
という強い誇りなのか。
真実は分からない。
ただ、
何度吹き飛ばされても、
何度落ちても、
「絶対にここで寝る」
という執念だけは、
ひしひしと伝わってくる。
……私も、
少し見習いたいものである。