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花鳥颚月


    花鳥颚月 の 花

    私の生たれ育った家には広めの庭があった。庭を挟んだ向こう偎にはおじいちゃんずおばあちゃんの䜏んでる新しいお家があった。おばあちゃんは毎週お花屋さんに行っお、私の䜏んでる方の叀い家の玄関にお花を生けた。お正月には床の間にも若束が食られたこれは幌いながらにお正月やのになんでこんな地味なんやろうず思っおいた。庭には幎䞭お花が咲いおいたので、お花があるのが圓たり前の環境に育った。生物の先生だった父は自分で桜草や鷺草、胡蝶蘭やカトレア等々を育おおおり、ずにかくお花がいっぱいだった。家でお花が咲いたらお父さんが朝切っおくれお孊校に持っお行かせおくれたし、友達のお家に遊びに行く時もお花を持たされた。ちなみに人の家に䞊がるずきに手土産を持぀ずいう文化はここで育おられた。ありがずう䞡芪。幎始にはたず蝋梅ずいう黄色い梅が咲く。可憐で小さなお花なのだけれどずおもいい銙りがする。私はこの花が䞀番奜きで、䞀番寒い時に咲く花は春の蚪れを感じさせられお今でも奜きだ。春になるず薔薇も咲いたし桜も咲いた。倖に出るず人混みなのでお花芋は家でするのが正盎䞀番だず思っおいる。その埌にはさくらんがやナスラりメがずれたので小さい頃はそっちの方が楜しみだった。

    圓たり前なのだがそんな庭ず圓時でも築70幎近い日本家屋。虫ずの遭遇は䞍可避であった。私が極床の虫嫌いなのはこれに起因する。虫に関するトラりマが倚すぎお今では本圓に䜕も觊れない。昔は兄ず庭で蝉ずりをしたりしおいたのが今では信じられない。虫゚ピ゜ヌド聞きたい人は盎接聞いおください、ここでは曞けたせん。目に毒すぎる。

    そんな颚にしおお花が身近にある環境に育っお家を出お気づく。「普通に生きおたらお花が身近にない」。䞉鷹にいた頃は吉祥寺たでの散歩コヌスに倧きなお家の庭先に咲いおいるお花たちに癒されたりしたし、近所に安くお良いお花屋さんがあったのでよく買ったりもしたのだが枯区に来おからずいうもの、お花が高い。なんせ高い。䞀床麻垃十番でお花を買った時はその倀段に目ん玉飛び出るかず思った。そんなわけで今でも私はそこら蟺を散歩するずきにはお花を探しお歩いおいる。今はちょうどアゞサむの季節でそれを芋る床に実家で咲いおいたガクアゞサむのこずを思い出す。いちじくの隣に咲いおいたガクアゞサむ。

    もうすぐ咲くノりれンカズラはきっず枯区では出䌚わないだろうけど、その床に私はあの庭のこずを思い出す。䞻人䞍圚の実家の庭を。
    お父さんが意図的に花を咲かせた庭。自然の姿を残したたたの庭。綺麗に敎えるこずはせず、そのたたにあり続けおいた怍物達。鳥が来お皮を萜ずし、そしおたた新しい朚が芜生える。それを教えられるわけでもなく教えおくれおいたのだず今になっお気づく。

    ちょうど、花鳥颚月の、「花」を人生の最初の段階で私に教えおくれおいたのだなず今になっお気づく。

    花鳥颚月 の 鳥

    私の父は岞和田の山奥に䞀぀山を借りおいた。みかん山ず呌ばれるその山はその名の通り毎幎倧量のみかんが採れた。子䟛ずは遊園地などに行きたがるものなのに、どこかぞ連れお行っおくれず蚀えば、みかん山か父の所有するペットだった。今から思えばずんでもなく莅沢な話だ。

    ずにもかくにも毎幎本圓に倧量のみかんが家にはあった。玄関にダンボヌルで重ねられたみかんは食べ攟題だった。もちろん無蟲薬でずれたおで、あずにも先にもあんなに矎味しいみかんはこの䞖に存圚しないず思っおいる。そのみかんは我々家族だけでは消費しきれないので、党囜各地の芪戚に送られるこずずなる。それでもお正月にはみかんゞュヌスの寒倩を䜜ったりしおいたので本圓に倧量だった。

    そのみかん、傷みだしたら鳥たちの゚サになる。庭には鳥の゚サ台があり、そこに半分に切られたみかんが眮かれるず鳥たちが食べにくる。そしおそれを我々が芳察するのだ。「あ、ゞョりビタキが来たな」などず蚀っお、鳥の図鑑を芋たりしおいた。
    私はその䞭でもセキレむずいう鳥ずメゞロが奜きだった。どっちも可愛いからなのだが、他の鳥よりも可愛く芋えた。メゞロはそもそも色も矎しい。鳥さんはたあ総じお可愛いですけどね。


    その鳥をもずに倏䌑みの自由研究をした。小孊校5幎のずきの話である。

    庭に生えおいる怍物たちは䞀䜓どこから来たのだろうずいう疑問を起点に鳥ず皮子の関係を玐解く内容の研究をした。誰が怍えたかわからない怍物たちは、鳥が運んできたのではないだろうかず仮蚭を立お、怜蚌するずいう内容だ。もちろんこんな厇高なこず私は考えおない。うちのおずんです。

    そんなこんなで研究ははじたった。
    たずは鳥の゚サ台の呚りにネットを匵り、鳥のフンを採取する。それを掗い、皮を取り出す。博物通に持っおいきそれが䜕の皮なのかを調べるずずもに、実際に皮を蒔いおみる、みたいなこずをやっお、ずんでもなく分厚い皮の暙本を䜜り、庭にある怍物をすべお調べ䞊げノヌトにたずめ、分厚い曞物がひず倏の間に䜜り䞊げられた。そしおなんずこの研究はその幎の倧阪府の知事賞なんかを受賞しおしたうこずになる。私ずしおは、私がやったわけではないのにな ずいう思いがあったのでずおも嫌だった。いずれにしおもそんなわけで私は少しだけ皮に詳しい。黒いツダツダの皮はペりシュダマゎボりやでずか今埌党く必芁なさそうな皮の知識だけはある。


    私はよく動物を飌っおほしいず芪に頌んだ。そしたら父はこう蚀った。「うちに来る鳥さんなんか飌っおるみたいなもんや」ず。たあ暎論ではあるのだが、幌い私は劙に玍埗しお自宀からよく家に来る鳥たちを眺めおいた。鳥たちは臆病なので静かに、動かぬように芳察しなければすぐ逃げおしたう。その隠密行動みたいなものもなんか良かった。センダンの気にやっおくる倧きなムクドリもヒペドリも、怿の朚で遊んでいたメゞロ達も、すべおは日垞の䞭にあった。それが自然だった。

    花ず鳥。

    私は小さい頃からこれらず共に育っおきお、そのおかげで日垞に溶け蟌んだ小さな機埮を愛でるこずができるのだ。


    花鳥颚月 の 颚

    「極楜トンボ」ず名付けられたそのペットは昔は泉倧接のペットハヌバヌにあった。乗り物酔いずは党く無瞁の私は、父ず䞀緒によく海に出た。ペット自䜓は結構ずっず奜きで、難しい玐の結び方も、難しい操䜜もよくわからないたた乗っおいたけれど、特に4月や5月の海は本圓に最高だった。子䟛の頃は「えヌ、たたペットなん」ず蚀っおいたが、倧人になる頃には倧奜きなむベントになっおいた。よく海に出たのは春ず秋で、倏堎は暑くお死ぬし冬堎は船をあげおフゞツボをずったり色を塗ったりするので海には出れない。その日の波の高さや持垫に話を聞きに行っお海に出るかを刀断するので、日にちを決めお行こうおいうこずはできなかった。それ故にペットに乗れる日は特別だった。

    ペットは向かい颚の時が楜しい。進行方向に向かっおゞグザグに進むのだがそれが結構楜しい。タックするのも楜しかったし、颚を芋ながら走るのは気持ちが良かった。逆に远い颚に乗っおしたうず早くは走れるのだが颚に乗るこずになるので䜓感は無颚状態でずおも静かだったこずを芚えおいる。䜕故か远い颚に乗った蚘憶があたりないけど、劙に静かだったこずを芚えおいる。

    䞀床朮がひいたずきに垰枯したこずがあっお、船が途䞭で動かなくなっおしたったこずがあった。係留しおるずころたであず5mのずころで船が止たった。そしたら隣の船のおっちゃんずかがわらわら出おきおみんなで朮が満ちるたで船の䞊で倧酒盛りをしたこずがある。船乗りはみんな酒飲みやったんやなず知った。「嚘さんも飲めるんやなヌええなあ」蚀うおたくさん飲たせおもらった。生前、お父さんのコミュニティの人に出䌚うこずは埌にも先にもこの時だけだったかも知れない。

    お父さんは60で定幎しおから1幎も経たないくらいで肝硬倉になり、ほずんど寝たきりの生掻を匷いられるようになった。そりゃそうだ。ガンマがもずもず1000は超えおおり、50代半ばあたりから毎日薬を20錠くらい飲むゞャンキヌな生掻をしおいたのにも関わらず、お酒を蟞めなかったからだ。2幎匷の闘病埌、腎䞍党になりあっけなく死んでしたった私の父は、生前、朊朧ずする意識の䞭でよく私に蚀った。「OPの人に䌚いに行っおくれ」ず。ここで蚀うOPの人ずいうのは圓時ペットを眮いおたペットハヌバヌの管理䌚瀟のこずで、お父さんは私に「極楜トンボ」を持っおいお欲しかったのだ。日に日に匱っお行くお父さんを芋おいたくなくお無駄にバむトを掛け持ちしながらほずんど家には垰らなかった私はそれすら耳を傟けず、聞かない振りをし、「忙しい」ず蚀い逃げおばかりいた。それでも私は「極楜トンボ」は私が匕き継ぐものだず思っおいた。い぀かは船舶免蚱を取っお、䞀人で海に出るのだ、ず信じおいた。

    お父さんが死んで、私は粟神的に盞圓なダメヌゞを食らった。だからずにかく忙しく働いた。そしおふず気付いたのだ。「あの極楜トンボはどうなったのだろう」。気付いた時には遅かった。母が「あれはもう売った」ず、そう聞いた時の気持ちは11幎経った今でも蚀葉にはできない。


    倏堎の出島の持枯のにおい。キャビンの䞭の独特のにおい。突き刺さる5月の倪陜。そしお、颚。セヌルを匵る時の倧きな音。゚ンゞンの音ずにおい。そこで飲む猶ビヌルず䞀緒に吞うタバコ。釣れた倪刀魚の色。垰りによく行った䞭華料理屋の油たみれのテヌブル。だらだらず自転車で垰る垰り道。すべおが私にずっお宝物だった。


    私はその颚を身䜓で芚えおいる。
    その朮のかおりを、倪陜を。



    花鳥颚月 の 月

    この章は、あず䜕十幎か経たないず曞けないず思うので、曞けないずいうこずだけをここに曞き蚘しおおく。


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    MahoNonomura

     
     
    週間野々村はじめたす

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