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いわくつき出世家からの宇宙人捕獲作戦失敗。

    金縛りにあった。

    普通なら少しは怖がりそうなものだけれど、
    これが意外と間が抜けていた。

    夜中の1時ごろ。
    バイトから帰ってきた妹が

    「ねぇちゃん聞いてよ〜」

    と言いながら、私のベッドにズカズカ
    上がり込んできた。眠くてしょうがない
    私は、うとうとしながら話を聞いていた。
    すると――突然。

    なんか来たーーーーー。
    左の方から ガガガガゴゴゴゴー と工事現場
    みたいな爆音が響き、それが何かまでは説明
    できない。

    “奇妙なもの” が近づいてくる。
    その瞬間、体はピタリと動かなくなった。
    なのに、私に話しかけ続ける妹の姿だけは
    しっかりと見える。そんな話し続ける妹を、
    私は動けないままずっと見つめていた。
    妹はまったく気づいていない。
    しばらくしてやっと体が動くようになったので、

    「げぇ、今さ、金縛り?みたいなのあってた」

    と言うと、妹が首をかしげてこう言った。

    「そう言えば、なんか……ねぇちゃんの左の方から、ブーーーンって小さい電子音みたいなのが私の前を通り過ぎてったよ。あれ何だろう?叩いてみれば良かったかな?(笑)」
    ……。
    「分からないけれど、もしかして宇宙人?」
    (なら捕まえておくべきだったかもしれない。)

    「それとも、もしかして人の仕業?

    「ならそっちの方がよっぽど怖いわ(笑)」

    二人でそんな話をしているうちに、もう
    ひとつ少し昔の事を思い出した。

    あれは、
    先程のマンションではなく、以前借家に
    越してきたばかりの頃のこと。

    確か引越し初日のことだった。
    夜中に一番奥の部屋のクローゼットが勝手に
    開いたのだ。それもギギーッと恐る恐るなら
    怖さもあるが、いきなりバッタン!と勢いよく
    開いたものだから、怖さよりも、

    ーーはぁ?建付け悪いのか?

    という感じしかなかった。しかしその夜のこと。今度は誰かが私の口の中に指を入れてきたので、咄嗟に噛んだような感覚があった。
    そこに来るまではそんな妙な経験はなかったものの、当時は夢かなぁくらいで終わった。
    そしてこれが極めつけだった!

    住み始めて暫くして、あの一番奥の部屋に二段ベッドを置き、妹が上段、私が下段で眠っていたときの事だった。
    その頃、夜な夜な現れるのが、ねずみ色の作業着を着たかなり太ったオッサンだ。
    体を触ってきたり妙に卑猥で、気味が悪い。
    オッサンは私の首を締め、何故かあり得ない程、私はベッドに沈むように押し込まれ、
    何度も体中を触られた。
    それが毎晩、一週間も続いた。

    さすがに私も嫌になって、

    「クソッタレあのオッサンめ」

    と少しムカつきながら、妹にその事を話した。

    「ねぇ、毎夜変な金縛りにあってんのよ」

    説明すると、妹は

    「あはは、そんなことありえんっしょ」

    と笑って、私の言うことを冗談半分に聞いていたような態度だった。だからその夜から妹は下の段に寝ると言い出し、私は上段へ。
    すると翌朝――

    「ねぇちゃん来た。マジで怖かった。ていうかオッサンエロ過ぎ。それより首めっちゃ締めらた」

    そして朝起きてきた妹の首には、くっきりと両手形が残っていた。
    ……ブルブル。

    さらにその年の大晦日には、白髪で目の光るお婆さんまでが出てきた。
    見たのは私ではなく、母と、その時家に遊びに来ていた、彼氏(後の夫)だった。両者の間に座りテレビを見ていたのに、私だけが不思議と全くその事に気付かなかった。
    そしてそのお婆さんが通り過ぎた先のあの奥の部屋にいた父と祖母は、年明けになぜか揃って入院することになった。
    しかも翌年には洗面所の爆発事故まで起きた。
    ただ、その部屋にいたはずの母は、寸前に別の部屋へ移動していて助かった。
    もし母が居たと考えると恐ろしい光景が目に浮かぶようだった。何故ならそこは古い磨りガラスのドアが吹っ飛び、破片が散乱していたからだ。

    ――とまあ、
    ここでは書ききれないほど不可思議な出来事は
    たくさんあった。
    でも、一番恐ろしいのはそこじゃない。
    私たち家族はそんな家に迷いもなく平気で13年も住んでいた。

    しかもその鈍さは折り紙付きで、
    桜並木の側に建つその家で、春にはコタツを庭に出し、週1でバーベキューしたり、また夏には父がビニールプールを出して、花火を見ながら涼を楽しんでいた。
    ……という事実だ(笑)

    実はその鈍さに以前からなんとなく心当たりがある。

    おそらく鈍いのは父なのだろう。と
    何故なら私が始めて車を買った時の話。その車は古い車だった。行き成り父が勝手に私の車のシートを取り替えて、

    「このシートええやろ!
    クルマ屋でな、自損事故した知らんオバサンの車が廃車になっててな。
    シートがキレイやからもろてきてん。
    付け替えたったで」

    そんな訳で私が

    「えーーーっ」と言うと

    「大丈夫やそのオバサンはちゃんと生きてるで」

    と父に言いくるめられた。

    (娘の車になぁ。ていうか普通は縁起くらい担ぐやろ!)

    とツッコミたくはなったが、取り敢えず気にせずそのまま乗っていた私も私。鈍さは親譲り。なのだと悟った。

    そしてもう一つ私が

    「部屋にテレビが欲しい」と言ったばかりに、

    父の仕事の知り合いの人が長く入院していて、後に亡くなったので貰ってきた。と言うテレビがいつしか私のベッドの枕元に置かれていた。

    そしてそのベッドでうたた寝をしていた母も、恐怖体験では無く、毛布の中に誰かが手をいれてきた様な気がしたと言う、卑猥体験をしたらしいと後に聞く。

    しかし不思議な事にそんな奇妙な体験をしたのに、何故なのかこの家に住んだ人は揃って、みんな “今の家より良い家” に引っ越すらしい。何故なら以前に住んでいた家族は父の知り合いで、新築の分譲住宅を買って引っ越していったからだ。その人に聞くと、それ以前の人も新築へと引っ越したらしい。そんな話を知る。

    結局その後、
    父と母は後に妹と住んでいたあの宇宙人事件の分譲マンションへ引っ越し。私も妹も結婚して、後に戸建ての家を持つ事が出来た。

    これってもしかして、
    出世魚ならぬ “出世家” じゃない?
    世間ではいわくつき物件なんてよく聞くけれど、意外と中にはいい方向へ導いてくれるってこともあるのかな。と。
    そう考えるとやっぱりこれって
    【いわくつき出世家】
    としか言いようがない。今でも確かにそう思う。

    でも、
    勿論、普段目に見えない事は信じないし、信じられない。

    結婚して数年後の事、古いアパートを購入した私達は後に、アパートに住んでいた入居者の男性が病院に運ばれ、亡くなったと連絡を貰った。
    後に彼自身が母親の位牌をきれいなまま残していた事に気付く。
    つい一週間程前に菓子折りを持って訪れた時には元気そうだったのに、そう思うととても不思議な気持ちになる。そして彼には身寄りがなかった。
    行政から連絡をもらい、私達は彼の遺品を片付ける事になった。何故なら生前から私達宛に彼は手紙を認めていたからだ。それを託された私達は決断をする。主人が電話で言う。

    「お位牌、このままだと公共に渡してしまう事になるけど、俺達が預かる?持って帰っていい?」

    その言葉に即答で預かることにした私は言った。

    「ねぇ、彼の下の名前わかる?じゃあ、そのお母様のお位牌に名前を入れてあげるのはどうかな?」

    そうして彼らは、私達のご先祖様と一緒に、今でもうちにいる。

    二人がずっと一緒に居られるように。
    そんな願いを込めて。

    そして不思議な事に、それ以来、自転車をパンクさせられたり、単車を盗まれたり、水撒きのホースを千切られたりするようなイタズラがなくなった。関係があるかなんて分からない。やはり鈍い私には、今でも目に見えないものは信じられない。だけれど、

    私達が一つ学んだことがあるとするなら、あの縁起を担がなかったと思っていた父の行動も、見方を変えてみると、誰かから託されたものを残し、大切に守り続けることへと繋がるのだと感じた。

    この全ての経験は、生きる人だけではなく、かつて生きた人達をも慈しみ感謝するという事。
    だから言える。未知なるものは、決して恐ろしいものでも怖いものでもないのだと。
    あの出世家の経験があったからこそ今があるのだと、私はずっとそう思っている。

    これからも感謝する気持ちを忘れずにいたい。そう思っている。

    #創作大賞2026 #エッセイ部門

     
     
    境界線の旅人(ボーダー・ウォーカー) 昭和の金魚鉢のようなちょっと静かで味のある思考メモ。 クリエーターショップ🔗 豆狸稲荷本舗https://suzuri.jp/mameda-inari

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