
血糖値と朝の戦争、そして僕はうたた寝した
これほとんどノンフィクションなんだ。
人類はまた油断していた。
手術を前に、私はかかりつけ医へ向かった。
だが私は、 まるで血糖値チャレンジ大会の参加者だった。
血液検査やる事自体想定外。
タケノコの甘煮。 シーフードヌードル。 しかもスープは、 「もったいないが勝って、スープも完飲した。」
検査の30分前の話である

さらに昨日のトマト飴まで参戦している。今思えば、 血液検査に対する態度ではない。
数値270。
機械の向こうで、 たぶん血液まで少し照れていた。

主治医から、 診療時間外に電話が来る。それだけで、 言葉の重さが分かる。
「酒はやめて下さい」
「甘いものも控えて」
「痩せましょう」
「この数値では手術が難しいです」静かな声なのに、 ひとつずつが胸に残る。
私は電話を切ったあと、 少し黙った。こむら返りだの、 膝クラッシャーだの、 朝の絶叫マシーンだのと騒いでいた身体が、 急に現実の輪郭を持ち始める。
そして翌朝。
私は早朝から、 疑いを晴らすため、 クリニックへ並ぶ。
たぶん本当は、 「疑いを晴らす」ではなく、 これから身体と折り合いをつけるためなのだと思う。
朝の待合室は静かだった。みんな、 それぞれの数値を抱えて座っている。人間とは不思議だ。
痛みは笑いに変えられるのに、 数字だけは、 時々やけに現実的である。
ふくらはぎ /夜逃げするかに/ 裏返る
いたたたた/こむら返り/朝告知
最初は、ふくらはぎだけの小競り合いだった。 だが敵は強かった。
甘く見た /こむら大将 /太ももへ/ 絶叫マシーン /朝の地獄参り
戦線は太ももへ拡大。 布団は一夜にして戦場となり、 朝は遊園地と地獄の合同開催となった。
人は薬局へ向かう。
こむらには/ ツムラのたまう/ 薬局/ むらが繋がり /癒着なのか
「こむら」 「ツムラ」 「むら」
言葉は増殖し、 ついには製薬会社と言語体系の裏取引まで疑い始める。
そして翌朝。私はまだ、生き残っていた。
だが敵は完全には去っていない。
次の朝、こむら返りの未遂あり。 太ももの裏に、 「来るぞ…来るぞ…」 という嫌な引っかかりだけを残し、 今回は本隊が現れなかった。
私は慌てて水を飲む。 まるで古代の儀式である。
しかし災厄は連鎖する。階段を降りた瞬間、 右膝を強打。
無言の廊下に響く、 朝の絶叫マシーン。人はなぜ、 痛い時ほど、 さらに別の痛みを呼び寄せるのか。
ただ幸い、 今は大丈夫。
こむら大将軍も、 膝クラッシャーも、 ひとまず今日は休戦らしい。
こむら返りとは何か。それは筋肉の反乱であり、 深夜ならぬ早朝の絶叫マシーンであり、 人類が定期的に敗北する、 小さな自然災害なのかもしれない。
朝風呂入りうたた寝した。
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