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モノクロの私に、圩りを-第5ç« -②

    前話

     数日埌の倕方、残業を終えお垰ろうずしたずきだった。゚レベヌタヌ前で埅っおいるず、フロアの奥から、黒川くんず高嶋さんが笑い声を亀わしながら歩いおくるのが芋えた。
     目が合うず黒川くんは䞀瞬驚き、い぀ものように手を䞊げかけたヌヌが、その動きは途䞭で止たった。高嶋さんが圌の腕にそっず觊れ、自然に距離を詰めおいたからだ。

    「黒川さん、この前お話ししたむタリアンのお店、今床の土曜日はどうですか」

     その声はわざず私の耳にも届くような、甘く䌞びる響きだった。

    「土曜日は  」

     困ったように濁す黒川くん。

    「もちろんご郜合が悪ければ構いたせん。でもせっかくなので、黒川さんず矎味しいものが食べたいなっお」

     高嶋さんは黒川くんを芋぀めながら、チラリず私の方ぞ芖線を送った。そしお少し倧きめの声で、私に聞かせるように続ける。

    「黒川さんずお話ししおいるず、本圓に楜しいんですよ。私、自分が䞀番奜きになれるんです」

     胞の奥がざわ぀く。
     それは黒川くんぞのアピヌルであるず同時に、私ぞの挑発だった。
     いたたたれなくなっお階段に向かおうずしたその時、背埌から明るい声が飛んできた。

    「あら、癜石さん。お疲れさたです」

     振り返るず、高嶋さんが満面の笑みでこちらを芋おいた。そしお黒川くんに向き盎り、さらりず蚀う。

    「私、癜石さんず仲良しなんですよ。二人でランチに行こうっお玄束しおお」

     もちろん、そんな玄束はしおいない。圌女は私を巻き蟌みながら、「私たちは芪しい」ずいう印象を黒川くんに怍え付けようずしおいる。

    「え、そうなの」

     黒川くんが私に芖線を向ける。私は嘘を぀くのが苊手で、蚀葉が喉で止たった。

    「ほら、照れちゃっお。可愛いですよね。でも本圓に真面目だから、䌑憩も取らずに頑匵っちゃうんですよね。黒川さんも心配になっちゃいたすよね」

     その口ぶりは、私を『恋愛察象倖の効』のように䜍眮づける巧劙な眠だった。吊定すれば角が立ち、受け入れれば傷぀くヌヌ逃げ堎のない蚀葉。

    「では、たた改めおご連絡したすね」

     高嶋さんは優しく黒川くんに埮笑みかけ、最埌に私を䞀瞥しおから、゚レベヌタヌぞ消えおいった。
     残された私に、黒川くんが心配そうに問いかける。

    「癜石、䜕かあったのか」

     銖を暪に振るだけで粟䞀杯だった。
     圌の優しさは、今の私には痛すぎた。

    「なんでもないよ。お先に倱瀌したす」

     そう蚀っお、私は階段を駆け降りた。


    


     週明けの月曜日。
     い぀ものように゚レベヌタヌホヌルで埅っおいるず、ちょうどドアが開いた瞬間、受付の高嶋さんが小走りでやっおきた。

    「おはようございたす、癜石さん」

     にこやかな笑みを浮かべ、圓然のように同じ゚レベヌタヌに乗り蟌んでくる。䞭には私たち二人だけ。
     圌女はい぀もより䞊機嫌で、たっすぐ私を芋おいた。

    「おはようございたす  」

     ぎこちなく返すず、高嶋さんがふっず唇をゆるめた。

    「週末、黒川さんからメヌルをいただいたんです」

     その䞀蚀で、胞の奥がきゅっず締め぀けられる。

    「『お疲れさたでした』っお。私、『お忙しい䞭お時間を取らせおしたっお申し蚳ありたせんでした』っお送ったら、お返事くださっお」

     蚀葉の䞀぀ひず぀が、わざず私に届くように響く。

    「本圓に  優しい方ですよね」

     恍惚ずした声。その響きは、私の耳には勝者の凱旋歌のように聞こえた。

    「きっず私に興味があるんだっお、思っおもいいんですよね」

     小悪魔のような笑みを浮かべながら、私の反応を探る。目は完党に嘲笑っおいた。

    「  どうかな」

     それだけ絞り出すのが粟䞀杯だった。

    「ふふっ、癜石さんっお可愛いですね。私、もう少し頑匵っおみようず思いたす」

     小さな爆匟を萜ずすように蚀っお、高嶋さんは楜しげに笑った。
     ゚レベヌタヌが開発郚の階に着く。降りようずした私の背䞭に、突き刺さるような声が远いかけおくる。

    「お仕事頑匵っおくださいね。私はこの埌、受付に行きたすので」

     それは、「もう私の勝ちよ」ず蚀っおいるのず同じだった。ドアが閉たる盎前、圌女が満足げに埮笑むのが芋えた。

     垭に戻っおパ゜コンを立ち䞊げおも、画面は䜕も映しおいないように芋えた。心はすっかり色を倱い、モノクロの䞖界に沈んでいく。

     ヌヌやっぱり黒川くんは、私みたいな地味な女より、高嶋さんのような華やかな女性の方が奜きなんだ。
     そう思った瞬間、この恋を手攟すべきだずいう声が、心の奥で囁いおいた。


    


     その倜、手垳を開いたものの、ペン先は動かなかった。

     黒川くんにずっお、私は本圓に「効みたいな存圚」なのだろうか。
     ヌヌ信じたくない。
     でも、高嶋さんの蚀葉が胞の奥で䜕床も反響する。もし本圓にそうだったら  。

     色鉛筆を手に取っおみたけれど、描きたいものは䜕䞀぀浮かばなかった。ため息ずずもにペヌゞを閉じる。

     高嶋さんの攻勢は、これからたすたす激しくなるはずだ。その暪で私は、ただ立ち尜くすしかないのだろうか。䞍安ず答えの出ない思いを抱えたたた、目を閉じた。


    次話


     
     
    玠人の創䜜小説眮き堎です。珟代恋愛モノがほずんどです。カクペム、゚ブリスタでも同䜜品投皿䞭。

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