
自分への「赤信号」
駅前の交差点で、信号が規則正しく切り替わっています。スマホに重なる通知に急かされ、心より先に足取りだけが進んでしまう。そんな瞬間があるかもしれません。
改札の電子音を背に、ホームの端でメッセージを開く。返信に迷い、「あとで」と打ちかけた指を止めてみる。それは決して悪いことではないはずです。横断歩道の白い線の上で、人の流れがふと止まるように。今の自分にも、返事を急がない「余白」が必要だと気づきます。
返信を保留にするのは、逃げではなく、言葉を整えるための手つきです。相手に渡すはずの言葉を、いったん机の上に置いてみる。ポケットの中で鍵の角が手のひらに当たり、現実の質感が戻ってきました。画面を閉じて、電車の行き先表示を見上げるだけでも、不思議と心は落ち着くものです。
迷いが消えないときは、「今は返事を整えています」と一文だけ送るのもいいでしょう。それだけで、自分の呼吸が守られます。
夜になって読み返したとき、あの保留が優しさに変わっているかもしれません。交差点の信号と同じように、進む前の「赤」もまた、私たちを助けてくれる大切な時間なのです。