
不在を運ぶ
Wolfgang Tillmansが1997年に出版したコンコルドの写真集が好きだ。そこに写っているのはただの飛行機ではなく、不在を埋めようとする人間の欲望のイメージであり、一つの時代でもある。未来はもっと速くなると信じられ、距離は技術によって克服できると本気で考えられていた時代。コンコルドはまさしくその象徴として写っている。超音速旅客機が作られた根底にあるのは、突き詰めて言えば「人に会いたい」という、人間のごくありふれた願いだったのではないかと思う。その細長く、独創的な機体は、短い就業期間に、どれほどの出会いと再会を運んだのだろう。そんなことを考えながら、ここ数日、私の頭の中を守護天使のように駆け回っていた曲を残しておく。
Timezone / Måneskin
Home and Dry / Pet Shop Boys
No Ordinary Morning / Chicane
Concorde(nightflight) / Gabor Szabo
Waiting Man / King Crimson
7000マイルの距離と時差に焦がれる恋人たち。JFK国際空港から大西洋を超えて帰ってくるパートナーを待つ人。不在の時間を抱えながら、それでも相手を思い続ける、いつもと何も変わらない朝。でも少しだけ、高揚する時間。それらの風景は、コンコルドが運ぼうとしていたものと、どこか重なって見える。7000マイルの距離も、従来なら半日以上。だがコンコルドなら約5時間で到着する。私のコンタクトの洗浄時間より短い。その速さは、きっと多くの「会いたい」を現実に変えてきたのだろうと思う。