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【小説】5000幎生きた吞血鬌倫婊の劻は倫を殺したい。 #ミステリヌ小説郚門

    あらすじ

     ある高玚䜏宅街に、䞍老䞍死の吞血鬌の倫婊が暮らしおいた。5000幎前に結ばれた二人は長きにわたる倊怠期にあった。だが、吞血鬌の倫婊は離婚するこずも互いを殺すこずもできないのだ。劻むナはこの状況にうんざりしおいたが、぀いに倉化が蚪れる。隣家に匕っ越しおきたのは、二人組のノァンパむアハンティングyoutuberだった!

    第1章 すごいセックスレス


     雷岬むナが最埌に倫のラむゎンずセックスしたのは確か、コロンブスがアメリカ倧陞に到達したころのこずだ。

     西掋人が新たな倧陞に到達し、䞖界は新たな時代の幕開け、激動の真っただ䞭だったが、倫婊関係の方は冷え蟌みの様盞をみせおいた。

     ――ような蚘憶がある。

     幎以䞊も前、結構昔のこずなので、さすがの吞血鬌も现かいこずは芚えおいない。

     日本に匕っ越した埌、埳川家光が参勀亀代制をロヌンチしたあたりでも気たぐれに䞀回やったかもしれない。

     ――が、それも随分前のこずなので、いたひず぀刀然ずしない。

     ずにかくこの幎で1回か2回きりずいうこずだ。雷岬倫劻はかなりの期間に及ぶセックスレスにあった。

     どれほど仲の良いカップルだろうが、結婚しお倫婊ずなり、生掻し、眷属を増やし、ずもに時間を重ねおいくうちに、どうしおもすれ違いが出おくるものだ。

     冷蔵庫にあった茞血パックを勝手に飲んだ飲たないずか、䞀芋どうでもよさそうな、小さなずころから亀裂が発生、圓人たちも気づかぬうちに、じわりじわりず広がっおいく。
     
     人間でも、吞血鬌のような長呜皮でも、そのあたりの事情には倉わりがない。

     およそ幎も吞血鬌二人で䞀緒に暮らすず、いいずころ悪いずころ、血液の奜き嫌い、ほくろの数ず䜍眮から、狌男ずの戊いで埌頭郚を噛み぀かれたずきのリアクション、お互いのこずはなにからなにたで知り尜くした関係になる。

     長い間䞀緒に暮らしたパヌトナヌに、こんな意倖な䞀面が みたいな新たな発芋には、残念ながらもう、期埅できない。

     ラむゎンは結婚圓初から吞血鬌倫婊ずしおは特に問題のない倫だったずむナは思う。

     吞血鬌の本胜に刻たれた掟を遵守し、眷属を導いおきた。

     だが、幎も䞀緒に暮らすず、問題がない事それ自䜓がすでに重倧な問題であった。

     だからずいっお離婚するこずも殺すこずもできない。吞血鬌の婚姻の契にはそういう効果があるのだ。

     かくしお雷岬倫婊が地䞋宀の就寝甚棺桶を別々の郚屋に眮くようになり、数癟幎が経過しおいた。

     氞遠に続くかに思われた、そんなマンネリの生掻にも、぀いに劇的な倉化が蚪れた。隣家に有名なノァンパむアハンティングyoutuberが匕っ越しおきたのである。

    第2章 匕っ越しおきたノァンパむアハンティングyoutuber

    「さっき、隣に゜バを持っお行ったんだ。日本では匕っ越したずきに、隣の家に゜バを持っおいく習慣があるらしいからな。そしたらびっくりだぜ。腰を抜かすほどの矎女が出おきたんだ」

     長身にしお筋骚隆々、たるで矎術通から抜け出しおきた圫像かのように圫の深い20代半ばの青幎、アドニスは興奮しながら、盞棒のミハむルにたくしたおた。

    「ぞえ、そんなに矎人なら僕も䞀床あいさ぀に行っおみようかな」

     匕っ越しの荷物を開封しながら、ミハむルは生返事を返した。ミハむルは長身ながら、アドニスずはうっお倉わっお薄い䜓をした、青癜い顔の青幎だった。

    「やめおおけ。お前のようなモダシ男があんな矎女を目にしおみろ。目玉が䞡方぀ぶれお死んじたうぜ」

    「そこたで蚀うほどの矎女か。女優でいうず誰に䌌おる」

    「シドニヌ・スりィヌニヌっおいうセクシヌなハリりッド女優がいるだろ。しっおるか」

    「しっおるよ」

    「お隣の矎女ず比べたら、シドニヌ・スりィヌニヌはたるでキュりリみたいなもんだ」

    「シドニヌ・スりィヌニヌがキュりリに芋えるほどの矎女」

    「ああ。うれしい驚きだな。はるばるギリシャから、吞血鬌の痕跡を远っお東の果おの島囜たでやっおきお、隣の䜏人があれほどの矎女ずは」

    「アプロヌチする気なのか その矎女は既婚者じゃないのか 高玚䜏宅街の3階建おの家に䜏んでる矎女だぞ」

    「たしかにな。ミハむル、お前の蚀う通り既婚者かもしれん。お前は頭がよく、お前の蚀うこずは倧䜓正しいからな。だが、俺を芋ろ」

    「たた始たった」

    ミハむルはあきれながら段ボヌルを開けた。youtube配信甚の機材を取り出し、䞁寧に机䞊に䞊べおいく。

    「俺ほど矎しく、均敎のずれた顔ず䜓を持぀人間は存圚しねえ。ルヌブルから抜け出しおきたミケランゞェロの䜜品、人生で䞀床は寝おみたいギリシャ男ずいえば俺のこずだ」

    「いいから荷ほどき手䌝っおくれ。アドニス、君の荷物は僕には重すぎるんだ」

    「わかったよ」

     蚀うが早いか、アドニスは厳重にテヌプが巻かれた段ボヌルをひょいず持ち䞊げ、郚屋の隅に眮き、䞭身を取り出した。

    「日本に密茞するのは苊劎したぜ」

     拳銃、手りゅう匟、ショットガン、倧量の匟䞞。そしお、銀でできた杭。

     ノァンパむアハンタヌの必需品。

     二人は名の知れたノァンパむアハンタヌコンビであり、youtuberだ。登録者は最近300䞇人を超えた。

     ノァンパむアず戊う過激で血なたぐさい動画は、同業のノァンパむアハンタヌのみならず、䞖界䞭を魅了した。

     ミハむルがノァンパむアの情報を収集し、その隠れ家を暎き出す。

     そしお、ギリシャの元十皮競技王者にしお最高のノァンパむアハンタヌ、アドニスが呜がけの戊いに挑む。

     その様子がドロヌンやハンディカメラで撮圱され、登録者のもずに届けられる。

     二人のコンビネヌションは、぀いに日本に䜏む、雷岬ラむゎンずむナの倫婊のもずたで届こうずしおいた。

     もっずも、たさか匕っ越した家の隣にノァンパむア倫婊が䜏んでいようずは、二人の知る由もなかったが。

    第3章 ラむゎンのスポヌツ芳戊

     吞血鬌ずいうのは匕きこもりがちな生き物である。

     なにせ、昌間に倖に出るず、すごい勢いで日焌けしおしたう。䞞䞀日そずにいようものなら、倪陜光で䞞焌きになり、死んでしたう。

     わざわざ倖に出おそんな危険を冒したがる吞血鬌があたりいないのは圓然のこずだ。

     雷岬倫婊の倫、ラむゎンもその䟋倖ではない。

     ラむゎンはむナずずもに20代䞭ごろで呜を萜ずし、そしお䞍老䞍死の吞血鬌ずなっお甊った。

     若々しさず嚁厳を同時に携えた5000歳の吞血鬌ラむゎンは、宀内の倧型液晶テレビでスポヌツ芳戊するこずを趣味ずしおいた。

     「我が埓僕よ、血をもお」

     柔らかな革匵りの゜ファに腰かけ、倧画面䞊のバスケットボヌルの軌跡を眺めながら、ラむゎンは蚀った。

     「はい、ラむゎン様」

     雷岬家の埓僕、ミダザワケンゞは冷蔵庫の瓶を取り出し、血をグラスに泚いだ。

    ◇

     吞血鬌には埓僕がいるものだ。ドラキュラ䌯爵には匁護士のレンフィヌルドがいた。ラむゎンにはミダザワケンゞである。

     ミダザワケンゞは吞血鬌にあこがれる青幎である。

     氞遠の生を埗お、倜の䞖界を支配するこずを倢芋おいた。

     ずはいえ、本気ではなかった。

     しょせん吞血鬌はフィクションの䞭の存圚、倢物語にすぎないず思っおいたのである。
     
     そんなある日、倕方の路地裏。

     男が女性に襲い掛かり、銖筋に牙を突き立おるのを目撃した。

     その男には圱がなかった。

     吞血鬌。

     ミダザワケンゞはそう確信した。

     吞血鬌は実圚したのだ。

     恐怖、歓喜、畏敬。

     様々な感情が䞀瞬にしおケンゞの胞を満たした。

     ケンゞはその男、ラむゎンに頌み蟌んだ。

     あなたの眷属にしおほしい、吞血鬌にしおほしい、ず。

     そのためならなんでもいうこずを聞く、ず。

     それ以来ケンゞはラむゎンの埓僕、぀かいっぱしりずしお生きおきた。

     西に矎しい凊女がいれば、その血を抜き取っお冷蔵庫にしたい、

     東に違法薬物があれば、手に入れお䞻人に献䞊し、

     北に趣味の蚀い矎術品があれば、盗み出しお屋敷の棚に䞊べ、

     南に酒の競売があれば、予算の限り競り萜ずす。

     そういうふうに暮らしおきた。

     い぀か吞血鬌にしおもらえるず信じお。

     しかし、そろそろ20幎も埓僕をやっおいる。

     いい加枛吞血鬌にしおもらえないだろうか、ひょっずするず、だたされおいるのではないだろうかず、ケンゞは疑心暗鬌に陥り぀぀あった。

     ラむゎンは䞍老䞍死でい぀たでも若々しく、䞀方のケンゞはすでに40過ぎである。

    ◇

     ラむゎンはかぶり぀くように倧画面を凝芖した。

     ゞェヌムズ・レブロンがその長身の䜓躯をふわりず浮かび䞊がらせ、ダンクシュヌトをリングに叩き蟌む。

     ラむゎンは歓声を䞊げた。

     ケンゞの運ぶグラスを奪い、䞀気に血をあおる。

    「すばらしい。レブロンを芋ろ。人間でありながらあれほどの身䜓胜力 䜕床芋おも信じられん。やはりスポヌツ芳戊はたたらんな」

    「レブロンですか。ずいぶんお気に入りですね。ひょっずしお、ラむゎン様はレブロンを吞血鬌にしたいずかお考えになったりしたすか」

    「ばかばかしい。レブロンを吞血鬌にしお䜕になる。人間が3人を空䞭で躱し、ダンクシュヌトを決めるから面癜いのだ。吞血鬌にはそんなこずは朝飯前、できお圓たり前だからな」

    「なるほど」

    「ケンゞ、お前もがんばればあれくらいできるようにならないのか バスケの鍛錬をしおレむカヌズに入団しろ。応揎しおやるぞ」

    「無理です。40過ぎの䞭幎に無茶を蚀わないでください」 

    「やりもしないで無理ずいうのは感心せんな  」

    「そんなこずより、隣に新しい䜏人が匕っ越しおきたようです」

     ケンゞはあたりの無茶ぶりから話をそらした。

    「むナ様が応察なさっおいたしたが、ずいぶん分厚い䜓栌をした倧男でした。スポヌツ遞手かもしれたせん」

    「ほう」

     ラむゎンは興味を瀺した。

     スポヌツ芳戊歎の長いラむゎンだが、実際に遞手を生で芋たこずはほずんどない。

     なにせ、家からあたり出ない。

    「たあ、隣家に䜏んでいるのならば、そのうち䌚うこずもあるだろう」

     嬉しそうにラむゎンは蚀った。

    第4章 雷岬むナは倫を殺したい

     むナはい぀ものように、家から数駅先にあるクラブに出かけ、酒を飲み、螊り、血を吞うために若者を持っおいた。

     むナは吞血鬌には珍しく、お出かけ奜きで䜓を動かすのが奜きだった。

     ラむゎンがむンドア掟、ずいうよりほずんど匕きこもり、尻ず゜ファがくっ぀くのではないかず思うほど䞀日䞭座り通しなのずは察照的だ。

     䞀蚀でいえば、むナずラむゎンずは趣味が合わないのだ。

     珟代になり、そのすれ違いはさらに顕著になっおいた。

    ◇
     
     か぀お、数癟幎前には、倫婊二人で戊争に出かけ、䞀緒に゚キサむトしたこずもあった。

     幎ほど前にルヌマニアで暮らしおいたころには、ラむゎンはワラキア公ブラド・ツェペシュず名乗っおいた。

     倫婊で軍を率い、抌し寄せるオスマン垝囜軍を皆殺しにし、尻から口たで槍で貫いた。

     その死䜓を槍ごず地面に突き立お、敵を心胆寒からしめたのは、二人のいい思い出だった。

     味方たで恐怖のどん底に叩き萜しおしたい、囜を远われる矜目になったが。

     その結果、オランダを経お日本に流れ着き、幎䜙。

    ◇

     むナは音楜に身を任せた。

     数千幎生きおもなお若々しいたたの、䞍老䞍死の矎しい肢䜓が揺れる。

     クラブの男たちのみならず、女たちの芖線をも党身に济びながら、むナは党く意に介さず螊る。

     ひずしきり螊り終え、バヌカりンタヌぞ向かう。

     バヌテンダヌの男は、か぀おラむゎンが血を䞎えた吞血鬌だった。

     このクラブ【ワラキア】はラむゎンが劻むナのために䜜ったもので、埓業員には吞血鬌が玛れおいる。

     人ごみをかき分け、い぀ものように声をかけようずしたずき、こずは起こった。

     也いた砎裂音。

     銃声。

     バヌテンダヌに向けお銃匟が攟たれたのだ。

     この日本で。

     呚囲から悲鳎が䞊がる。

     逃げ惑う客たち。

     数千幎生きた吞血鬌むナもさすがに仰倩した。

     銃を持぀者ぞ目をやる。

     そこには、先ほど自宅に匕っ越しの挚拶をしに蚪れた若者、アドニスが立っおいた。

    「楜しいノァンパむアハンティングの始たりだ」

     かのノァン・ヘルシング教授を倒しお以来、数癟幎の間、むナが目にするこずのなかった吞血鬌殺し。

     吞血鬌殺しがよりにもよっお吞血鬌倫婊の隣家に匕っ越しおきたこずを、むナは知った。

    ◇

     アドニスは銃をベルトずカヌゎパンツの間に挟み蟌むようにしお仕舞った。

     そしお、バヌテンダヌが立ち䞊がるのをゆったりず埅った。

     䞀息に吞血鬌を殺しおしたうこずもできる。

     䞍意打ちしおしたえば簡単なこずだ。

     だが、それでぱンタヌテむンメントにはならない。

     アドニスはノァンパむアハンタヌであるず同時にyoutuberなのだ。

     配信業で倧金を皌ぐためには、スリルのある映像、芖聎者の気をもむような挔出が必芁䞍可欠だ。

     人間の数倍の筋力をも぀吞血鬌ず戊いながら、それだけの立ち回りができる身䜓胜力がアドニスにはある。

     バヌカりンタヌの向こうに倒れおいた吞血鬌は、アむスピックを手に立ち䞊がった。

    「歊噚か。悪くない挔出だ。ちょいず小さいが、ないより党然いい。玠手のや぀を倒しおも芋栄えしないからな」

     吞血鬌は軜々ずカりンタヌを飛び越え、アドニスの喉に向かっおアむスピックを突き出す。

     アドニスはそれをぎりぎり、皮膚をかするほどの距離で躱す。

     本圓はもっず䜙裕でよけるこずもできるが、それでは面癜くならない。

     ヒダリずする䞀瞬を、芖聎者たちが埅っおいる。

    ◇

     むナは逃げ惑う客に玛れながらバヌテンダヌずアドニスの栌闘をながめ、止めに入るべきだろうかず考えおいた。

     アドニスはシャツの䞊からでもわかるほどに筋骚隆々である。

     それだけの䜓栌を備えながら、身のこなしも豹のようにしなやかでよどみない。

     ずはいえ、わざわざ吞血鬌を正面から盞手取り、おたけに持っおきた銃を仕舞った。

     油断するにもほどがある。

     アドニスがバヌテンダヌに殺されるのは時間の問題だろうずむナは思った。

     目にもずたらぬ速さで突き出されるアむスピック、躱し続けるこずなどできはしない。

     だが、お気に入りのクラブで殺人事件が起こっおは事だ。

     営業に差しさわりが出るだろう。

     すこしケガをしたあたりで止めようなどず考えた矢先、目の前で血しぶきがほずばしった。

    ◇

     アドニスはアむスピックをギリギリで躱し続ける。

     吞血鬌の息が䞊がる。

     いったん距離を取ろうずしおか、吞血鬌はアむスピックを前方に構えた姿勢を解き、䞊䜓を起こした。

     その瞬間。

     アドニスは滑らかな動きで、カヌゎパンツのポケットから杭ず鎚を取り出した。

     銀でできた、吞血鬌を殺すための杭。

     そしお、それを叩き蟌むための鎚。

     がら空きになったバヌテンダヌの胞の前に、攟り投げられた杭が浮かび、

     次の瞬間、鎚が杭を叩いた。

     杭の先端が吞血鬌の胞に突き刺さる。

     吞血鬌の胞から血が噎き出す。

     吞血鬌が突き出したアむスピックを躱し、再び鎚が杭を叩く。

     ぐらりず姿勢を厩した吞血鬌の肩を぀かみ、䞉、四、五、六、䞃。

     鎚が杭を叩くたびに、クラブの床がみるみる赀く染たる。

     やがお吞血鬌は力なく厩れ、ばしゃりず音を立お、自らの血だたりに倒れ䌏した。

     䞀仕事を終えたアドニスは銖ず肩を回し、向けられたハンディカメラに向かっお蚀った。

    「そういうわけで今回のノァンパむアハントの盞手はバヌテンダヌだ。クラブの客を倜な倜な物色し、襲っおいたに違いない。超危険な奎だったが、なんずか退治できたぜ。芖聎者のみんな、クラブに行くずきは気を付けおくれよな。それじゃ、いいねずチャンネル登録ボタンを忘れずにタップしおおいおくれ」

    「カット」ずハンディカメラを手に、ミハむルが蚀った。

    ◇

     むナはあっけにずられた。

     吞血鬌が目の前で殺された。

     吞血鬌殺しの男はケガ䞀぀しおいない。

     汗䞀぀かいおいない。

     息も䞊がっおいない。

     あたりにも簡単に、ラむゎンの眷属である吞血鬌が死んだ。

     こんなこずがありうるのか

     呆然ずするむナの前に、アドニスがやっおきお蚀った。

    「お隣の家の人じゃん、倧䞈倫 けがはないか ひょっずしたらあの吞血鬌、あなたのこずを狙っおいたかもしれないぜ。無事でよかったよ」

     あっけらかんず蚀うアドニスの顔を芋おむナの胞によぎったのは。

     こずによるずこの男は、人間でありながら、5000幎生きる吞血鬌、ラむゎンを殺せるのではないか

    第5章 線集䜜業

    「あれは䞋っ端のノァンパむアだ。せいぜいノァンパむア歎10数幎の”なりたお”だよ」

     昚日撮圱した動画を線集しながら、ミハむルは蚀った。

    「そうか 最近戊ったノァンパむアの䞭では、たあたあ匷い郚類だったず思うぞ。俺の敵ではなかったがな」

     自慢げにアドニスは異を唱えた。

    「昔からいるノァンパむアはバヌテンダヌなんかやらないんだ。旧いや぀らは倧抵、昔は王䟯貎族をやっおいるからね。没萜しない限りは金持ちだよ」

     動画のアドニスの動きに合わせ、ミハむルは効果音を的確に挿入しおいく。

    「なるほど 昚日のや぀は金がねえからバヌテンやっおたのか」

    「そういうこずだ。叀株の本物ノァンパむアは働かない。や぀らはリッチな匕きこもりだ。埓者に仕事や面倒ごずをやらせお、自分は屋敷でのんびりしおいる。だから僕たちはこの高玚䜏宅街に匕っ越しおきたんだ。倧物は近くにいる可胜性が高い」

    「ずなりの家の矎女がノァンパむアだったりずか」

    「そういうこずもあるかもしれないね。その矎女の足元に圱はあった」

    「矎女が目の前にいるんだぞ なんで足元なんか芋るんだ。顔を芋るに決たっおんだろ」

    「いやはや」

     動画線集䜜業を終えたミハむルはコンパむルボタンをクリックした。

     あずはの凊理を埅おば、動画ファむルが出来䞊がる。

    「昚日は蚀わなかったけど、隣の矎女がノァンパむアである可胜性は結構あるず思うよ」

    「本気で蚀っおんのか」

    「ちゃんず根拠はあるよ。さっきも蚀ったように、その矎女は高玚䜏宅街に䜏んでいる金持ちだ。それに、これたでにも矎女のノァンパむアはたくさんいた。ノァンパむアだっお、どうせ眷属にするなら矎女がいいに決たっおる。」

    「そういや、いたたでぶっ殺しおきたノァンパむアはあやしい矎女がやけに倚いな。ノァンパむアはめんくいなのか 䞍现工はノァンパむアにしおもらえねえのか ひでえ話があったもんだ」

    「僕は厳しいだろうね。アドニスは、その顔なら、頌めばノァンパむアにしおもらえるかもしれない」

    「俺はノァンパむアになんおなりたくねえな。血を吞っお生きるなんお埡免だぜ。ばっちいじゃねえか」

    「たあ、血は飲みたくないね。マズそうだし、䞍衛生だ」

     くだらない話をしおいたずころに、ドアベルの音が響いた。

    「誰だ、譊察か」

    「だろうね。昚日のクラブの件で事情を聎きに来たかな」

     二人は玄関のドアを開け、固たった。

     そこには、隣の家の矎女、雷岬むナがいた。

    「昚日のお瀌がしたくおお䌺いしたした」

    ずむナは蚀った。

    第6章 殺意

    「こういうお店はお奜きではなかったかしら」

     机の䞊に䞊んだフォヌクずスプヌンを眺め、䜿う順番を思い出そうずしおるアドニスに、むナは尋ねた。

    「あたりこの手のレストランには入らねえんだ。ノァンパむアを殺すずきくらいしか、高玚店には行かねえ。プロテむンずバヌガヌばかり摂っおる。でも、たたにはいいよな」

     アドニスは肩をすくめた。

     本圓は女連れでレストランに入るこずがしょっちゅうある。

     だが、わざわざアプロヌチしようずしおいる女性に銬鹿正盎にいうこずではないだろう。

    「もう䞀人の方は」

    「ミハむル あい぀は䞡目が぀ぶれたから眮いおきた」
     
    「䞡目が  それはお倧事に」

     冗談かどうか぀かめない様子でむナはお芋舞いの蚀葉を述べた。

    ◇

    「昚日のこずは本圓にありがずう」

     むナはメむンのステヌキを切りながら蚀った。

    「あのたたバヌテンダヌが吞血鬌だず気づかずにいたら、どんな目にあっおいたかわからない。殺されおいたかも」

    「どういたしたしお」

     アドニスはステヌキを飲み蟌みながら答えた。

    「しかし、本圓にやばいずころだった可胜性はあるぜ」

     アドニスは眉をひそめながら蚀った。

    「ノァンパむアはかなり危険な奎らだ。俺たちがこの街に来たのは、この街の呚りで行方䞍明の倱螪者がかなり倚いからだ。それでいおこの高玚䜏宅街の近蟺にはそういう話はない。行方䞍明者れロ。ドヌナツみおえにぜっかり穎が開いおる。」

    「それはどういうこず ここだけ無事で呚りは危険」

    「俺が思うに、ノァンパむアは自分のすみかの近くでは獲物をずらない。怪したれねえように家からちょい離れたずころで人を襲っおる」

    「それじゃ、昚日のクラブが 」

    「ちょうど吞血鬌の逌堎だったんだろうな。俺たちがあのクラブにノァンパむアがいるず目を぀けたのはそういうわけだ」

    「すごいわ。本圓に専門家なのね。あなたがいればこの街の吞血鬌は党滅ね」

    「たあ、それほどでもあるな」

     すこしわざずらしい蚀い方でほめたが、アドニスは気をよくしたようだった。

     ここで切り出すのがいいかもしれない。

     むナはそう刀断した。

    「実は、プロの吞血鬌殺しのあなたにお願いがあるの」

    「蚀っおくれ。俺にできるこずなら、やるぜ」

    「私の倫、ラむゎンは吞血鬌なの」

    「なにっ」

    「倫を殺しおほしいの」

    「なにっ」

     圓然だが、アドニスの顔には困惑が貌り付いおいた。

    「それは本気で蚀っおるのか」

    「信じられないかもしれないけれど、本圓よ」

    「  。䞀応確認するが、倫を殺しおほしくお嘘っぱちを蚀っおるわけじゃねえよな」

    「倫は吞血鬌よ。人間じゃないわ。私はい぀、あの人の気たぐれで殺されるかわからない。吞血鬌にされおしたうかもしれない。ずっずおびえお暮らしおきたの」

    「  」

    「あなたがうちの隣に匕っ越しお来たのはきっず運呜だわ」

    「  」

    「あなたは私の救䞖䞻よ」

    「  」

    「どうかお願いしたす。私を助けおください。あなたしかいないの」

     むナはもちろん自分の容姿に぀いお熟知しおいる。

     5000幎前はもちろん、珟代においおも、十二分に通甚する矎を備えおいる。

     敎った顔立ち。现くしなやかな肢䜓。

     か぀お倚くの男がその魅力に぀られ、むナの牙の逌食ずなった。

     そのむナが目をうるたせ、すがるようにしお頌むのだ。

     断れないはずだ。

     断ろうずは思いもしないはずだ。

    「  。ずりあえず、俺ずミハむルで、あなたの倫がノァンパむアかどうか確認するぜ。信じないわけじゃねえが、念のためだ。俺はプロだからな」

    「ええ、もちろん。私に協力できるこずがあれば䜕でも蚀っお。䜕でもするわ。なんでも」

    ◇

     二人はレストランを出お、垰路に就いた。

    「あなたはきっず私を助けおくれる。信じおるわ」

    「もちろんだ。俺に任せろ」

     そういいながら、アドニスは䞋に目をやった。

     むナの足元。

     圱はなかった。

     街灯の攟぀光にに照らされおいるにも関わらず。

    「必ず助けおやるぜ。俺はプロのノァンパむアハンタヌだからな」

     俺はプロだ。

     俺はプロのノァンパむアハンタヌだ。

     だたそうずしおもそうはいかねえ。

     アドニスは心の䞭で呟いた。

     倫を殺したら次はお前だ。

     ざんねんだ。

     こんなに矎人なのにな。

    第7章 ミハむルずアドニス


     アドニスはギリシャの片田舎で生たれた。

     出生時の䜓重2.1kg。

     泣き出さず、呌吞もしおいなかった。

     䞍幞䞭の幞いだったのは、蚭備が敎った病院での出産だったこずだ。

     新生児ICUに運ばれたアドニスはかろうじお生き延びた。

     母芪は出産の際に出血が激しく、そのたた垰らぬ人ずなった。

     アドニスの父芪はアドニスを憎んだ。

     お前が母を殺したのだ。

     おたえのせいだ。

     おたえがいなければ、お前の母芪は生きおいたのだ。

     お前が母芪の呜をうばったのだ。

     父芪は酒を飲むたびに、アドニスをひどくののしった。

     ろくに栄逊を䞎えられず、アドニスの䜓は小さく軜いたただった。

     アドニスは家に軟犁されたたた育おられた。

     誰もアドニスが虐埅されおいるこずに気づかなかった。

     アドニスはずっず腹を空かせおいた。

    ◇

     ある日、アドニスはい぀ものように、腹をすかせたたた、昌間テレビで攟送されるサスペンスドラマを眺めおいた。

     虐埅を受けおいた子䟛――子䟛ずいっおもアドニスよりはずっず幎䞊で䜓も倧きい――が父芪を殺した犯人。

     そんな内容だった。

     アドニスはそれを芋お気づいた。

     自分も同じこずをすればいい。

     そうすれば解攟される。

     どうしおいたたで思い぀かなかったのだろう。

     アドニスは包䞁を握り、父芪が垰るのを埅った。

     父芪は酒堎に立ち寄ったらしく、おそくなっおからべろべろに酔っお垰っおきた。

     アドニスは千鳥足の父芪の正面に立った。

     お前のせいでお前の母芪は死んだんだ。

     い぀ものように、父芪はアドニスをなじった。

     アドニスは包䞁を握りしめ、父芪に向かっお突進した。

     アドニスを殎ろうずするこぶしを躱す。

     そしお腹に包䞁を突き立おた。

     䞀床。

     小さな䜓の党䜓重を乗せ、父芪の臓腑をえぐる。

     払いのけようずする腕を避ける。

     二床。

     倒れこんだ父にたたがり、䞉、四、五、六、䞃。

     生臭い血だたりが郚屋䞭に広がり、父芪は動かなくなった。

     返り血たみれのTシャツを着たたた、アドニスは家の倖に出た。

     こうしおアドニスは斜蚭に送られるこずずなった。

    ◇

     アドニスは腹を空かせおいた。

     い぀も腹を空かせおいた。

     斜蚭の食事は栄逊の条件を満たしおはいた。

     しかし、アドニスには食べおも食べおも足りなかった。

     底に穎の開いたバケツに食べ物を攟り蟌んでいるかのような感芚を味わっおいた。

    「僕の分をあげるよ」

     そういったのはミハむルだった。

     アドニスはミハむルが犬に襲われおいるのを、気たぐれで助けたこずがあった。

    「僕はあたり食べられないんだよ」

     アドニスは二人分を食べるようになった。

     足りなかった。

    ◇

     アドニスはミハむルの分も食べるようになり、䜓が倧きくなり始めた。

     12歳で180㎝。

     䜓重52㎏。

     斜蚭の䞀人分の食事ではずおも満たされなかった。

     おたけにひどい成長痛に悩たされた。

     消えない空腹ず痛みがアドニスを悩たせた。

     アドニスは぀いに耐えられなくなった。

     アドニスは芆面を身に着けお顔を隠し、裏通りで路䞊匷盗を繰り返した。

     奪い取った金で食べ物を手に入れた。

     暎力をふるっおいる間、痛みが和らぐような気がした。

     父芪が唯䞀遺しおくれた。

     暎力が自分を助けおくれる。

     ミハむルはアドニスの所業を知っおいたが、誰にも蚀わなかった。

    ◇

     15になり、身長は195㎝。

     䜓重は100㎏。

     䜓栌を芋蟌たれ、声がかかっおいた陞䞊競技を始めた。

     あらゆる競技に適性があった。

     アドニスは十皮競技で、成人も含めたギリシャの王者ずなった。

     だが、匷盗をしおいたこずがネットにリヌクされた。

     途端に、アドニスをほめそやしおいた連䞭は、蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。

     スポンサヌは぀かなかった。

     アドニスがスポヌツで食っおいく道は、この時閉ざされた。
     
    ◇ 
     
     ミハむルはアドニスに蚀った。

    「きみのその身䜓胜力があれば、おおきく皌げるかもしれない、そういう方法がある」

     ミハむルはアドニスを地䞋の賭けボクシングに連れお行った。

    「戊えばファむトマネヌが手に入る。その金を自分の勝利に賭けるんだ。路䞊匷盗よりずっず皌げるよ。もちろん、勝たなきゃいけないけれど」

     ひず月もしないうちに、アドニスの手元には倧金があった。

     飢えから解攟されたかに芋えた。

     だが、それも長くは続かなかった。

     盞手を䞀撃でKOし続けたアドニスは、詊合を組んでもらえなくなった。

     誰もアドニスずの詊合を受けない。

     誰もアドニスの盞手に賭けない。

    「゚ンタメっおもんがわかっおねえんだお前は。だれがどうやっお勝぀かわかっおる詊合なんお、䜕十回も芋たら飜きるだろうが。もう誰も賭けるや぀はいねえんだよ。うちの箱の儲けが出ねえ。ファむトマネヌの払い損だ」

     そういっお、アドニスずミハむルは地䞋ボクシングを出犁になった。

    ◇ 

    「暎力で皌ぐ方法を考えたんだよ。合法的に」

     ミハむルは蚀った。

    「ノァンパむアハントだ」

    「それでどうしお金が手に入る ノァンパむアハントで支絊される協力金はたかが知れおる。せいぜい120ナヌロだ。䞀日分の食費にもならねえ」

    「食費の狂い方がすごいけど、たあいいや。゚ンタメだよ。芋䞖物にするんだ。ノァンパむアハントを配信するんだ」

    「そんなもん䞀䜓誰が芋る」

    「ノァンパむア盞手に生きるか死ぬか、ギリギリの呜の奪い合いだ。最埌はノァンパむアが掟手に血をたき散らす。栌闘技なんかよりよっぜど手に汗握るよ」

    「そんなもんか。たあ、金が入るならやるか。」

     こうしおアドニスずミハむルはノァンパむアハンティングyoutuberずなった。

    第8章 ノァンパむアハンティングyoutuberの誕生

    「アドニス、君は人間盞手なら敵なしだ。でもノァンパむア盞手では厳しいず思う。ずいうか、どうやればノァンパむアを殺せるのか、䞍確かな情報が倚いんだ」

    「死ぬたで殎る、じゃあだめか」

    「殎っお死ぬのか、正盎怪しいよ。有り金をはたいお䞭叀の察ノァンパむア装備をそろえたから掻甚しおノァンパむアず戊っお。僕がハンディカメラでそれを撮るよ」

    「䞭叀の察ノァンパむア装備」

     ミハむルが机に䞊べたのは、銀の杭ず鎚、拳銃䞀䞁、ヘルメットず肘圓お、防匟ベスト。

    「䞭叀のヘルメットかぶりたくねえな。ばっちいだろ」

    「消毒しおあるから。死ぬよりたしだよ」

    「しかたねえ」

     アドニスはしぶしぶ、ヘルメットをかぶった。

    ◇

     ノァンパむアはアドニスの敵ではなかった。

     ノァンパむアは筋力こそ人間の数倍を誇る。

     だが、珟代のノァンパむアのほずんどは殺し合いに慣れおいないのだ。

     動きに今䞀぀キレがない。

     人類屈指の身䜓胜力を誇るアドニスの前には、吞血鬌は人間ず倧差なかった。

     アドニスの察ノァンパむア初戊はほずんど秒殺で終わっおしたった。

    「ヘルメットいらねえな。雑魚すぎる」

    「あっさり倒しすぎだよ」

     ミハむルは憂慮すべき点を䌝えた。

    「これだず地䞋ボクシングず同じ展開になっおしたう。いたは結構受けおるし、登録者も増えおるけど、そのうち飜きられる。芖聎者に緊匵感を䞎えないずいけないよ」

    「ノァンパむアが匱っちいのは俺の責任じゃないぜ」

    「それはそうだけどね。毎回瞬殺だず゚ンタメ性に欠けるよ」

    「なんかアむデアはねえのか」

    「あるけど、あたりいいアむデアじゃないかもしれない。ノァンパむアにハンデをやったらどうだろう」

     こうしお、アドニスのノァンパむアハントスタむルが完成した。

     䞀察䞀の堎合は拳銃で䞀発䞍意打ちを加え、そのあずは杭ず鎚だけで戊う。

     盞手の攻撃をかわし、距離を詰め、杭を突き立お、鎚で貫く。

     芖聎者にギリギリのスリルを挔出する。

     倚察䞀の堎合はなんでもあり。

    「゚ンタメ性を出し぀぀も、殺されないように、プロに培しないずいけないよ」

     ず、ミハむルはアドバむスした。

    ◇

     それから吞血鬌を倒し続け、今や、金に困るこずはない。

     あの頃のように飢えを感じるこずもない。

     ミハむルの蚀うこずをよく聞き、信じお行動する限り、あの苊しみを感じずに枈む。

     プロのノァンパむアハンティングyoutuberはこうしおノァンパむアを殺す。

     動画を䜜る。

     金を皌ぐ。

    「俺はプロのノァンパむアハンタヌだ」

    第9章 メ゜ポタミアの泥の䞭から


     およそ幎前のこずだ。

     メ゜ポタミアに雚が降り泚いだ。

     その激しさは川を氟濫させた。

     家を抌し流した。

     神殿を打ち砕いた。

     田畑は芋る圱もなく。

     そしお溢れた泥は、墓堎ぞず流れ蟌んだ。

     その墓には、぀い先日、病で呜を萜ずした二十代半ばの倫婊が、仲睊たじく眠りに぀いおいた。

     二人の名は、ラむゎンずむナずいった。

     荒れ狂う泥ず二人の死者は亀じり合う。

     激しかった雚が止み、陜が差したころ、二人の亡骞は、亡骞だったものは、泥の䞭から這い䞊がった。

     二人は抱き合い、互いが生きおいるこずを喜んだ。

     だが、それも぀かの間。

     ラむゎンずむナは気づいた。

     肌がすさたじい勢いで焌けおいくこずに。

     日の光に激しい痛みを感じるこずに。

     二人は逃げるようにしお森に駆け蟌んだ。

     朚陰ならばこの痛みも治たるはずだず。

     しかし、緩やかにこそなれど、皮膚は倉わらずただれおいく。

     二人は掞窟で身を寄せ合った。

     己の䜓に䜕が起きおいるのか。

     死からよみがえったこずの代償なのか。

     倫婊は蚀い知れぬ䞍安に駆られた。

     日が沈み、二人は掞窟を出た。

     月を頌りに町ぞ戻ろうずしおのこずである。

     きっず芪族知人たちは、二人の埩掻を歓迎しおくれるだろう。

     そう考えおいた。

     森の䞭、ラむゎンは空腹を芚えた。

     どれほどの時間かわからないが、土の䞭に眠っおいたのだ、腹も枛るだろう。

     朚の実を採り、半分をむナに枡し、残りを口に入れた。

     だが、食べおも食べおも空腹感は消えない。

     それどころか、果実を口にすればするほど、飢えず枇きが匷くなる。

     むナも、その奇劙さに気づいた。

     日の光に肌が焌けるだけではない。

     この䜓はおかしい。

     䞍安に駆られた二人は、草朚に躓くこずも気に留めず、森の䞭を力の限り走った。

     倜の町はひっそりず静たり返っおいた。

     家は雚に厩され、人々は思い思いの堎所で眠りに぀いおいた。

     むナは甥が道端で垃の䞊に眠っおいるのを芋぀けた。

     先ほどたでの䞍安を忘れ、むナは、起こしお驚かせおみようかず、いたずら心を芚えた。

     そしおむナは甥の肩に手を眮き。

     その銖筋に牙を突き立おた。

     甥は目を開けた。

     むナず甥の目が合った。

     甥は䜕か蚀おうずしお、しかしそのたた息絶えた。

     むナは自分が䜕をしたのか理解できず、甥を抱えたたた呆然ずした。

     口の呚りは血にたみれおいた。

     そしお、自らのある倉化に気づいた。

     空腹感が消えおいた。

     ラむゎンもたた、埓匟の血を吞い぀くし、自らの所業に慄いおいた。

     二人は、自らが人に非ざるものになったこずを知った。

     人の血を飲たねば飢えも也きも満たされない、怪物ずなったこずを知った。

     二人は人々の営みに玛れ、人々の血を吞い、生きおいくこずを遞んだ。

     互いのこずを真に理解できるのは互いのみ。

     倫婊二人、暗い秘密を抱えお。

    第10章 幌子、そしおすれ違い

     15䞖玀の終わりごろ、オスマン垝囜ずの戊いで暎虐の限りを尜くした䞲刺し公、ブラド・ツェペシュ3䞖こずラむゎンずその劻むナは、その暎虐ぶりに敵のみならず味方たで恐怖のどん底に叩き萜した。

     捕虜を皆殺しにし、肛門から口たでを槍で貫いた。

     そしお槍ごず地面に突き立お、死䜓を晒しものにした。

     端的に蚀っお、やりすぎである。

     結果、おびえた味方に远われ、北欧から逃げる矜目になった。

     さらには道䞭、吞血鬌を殺そうず襲い来るノァン・ヘルシング教授の䞀掟を倫婊二人がかりで返り蚎ちにし、あの䞖に送った。

     远われ぀かれた二人はペヌロッパから離れようず、海運業者ずしおオランダを出お、日本の出島にたどり着いた。

     このあたりたでは、二人のあいだに倧きなすれ違いは無かったず、むナは蚘憶しおいる。

     セックスレス気味ではあったが、倫婊ずしおお互いを支えあう気持ちがあった。

     たしおやペヌロッパを離れ、蚀葉もわからぬ囜での暮らし。

     互いを頌りにしおいたのは圓然だった。

     二人の絆に倧きな亀裂が生じたのは、18䞖玀䞭ごろのこずだった。

     日本は江戞幕府が支配し、平和な時代にあった。

     個々人の小競り合いは絶えずずも、囜同士、藩同士の倧きな争いはあたり芋られず。

     戊争もなく、吞血鬌殺しに远われるこずもない時代は、ラむゎンずむナの倫婊にずっお久方ぶりのこずだった。

     出島の邞宅で暮らすむナは、ふず、思った。

     子を育おたい、ず。

    ◇

     吞血鬌に子をなすこずはできない。

     吞血鬌の性亀はひずえに快楜のためだけにある。

     子をなせぬ理由に぀いお、か぀おラむゎンはむナにこのような考えを瀺した。

    「人は死ぬ。それゆえ子をなすこずで皮を氞らえさせる。吞血鬌は䞍老䞍死。めったなこずでは死なぬ。ゆえに子をなす必芁がないのだろう」

     ずはいえ、逊子をずりたいずいうむナに察しお、ラむゎンは寛容だった。

    「昌間に眠り、倜に生きる我々が人の芪に向くかはわからぬが、たあ、逊母を雇えばその心配もなかろう」

     二人は芪を倱った嚘を逊子に迎えた。

     嚘の名はサキ。

     霢䞉぀の女子だった。

     むナはサキを倧局かわいがった。

     早朝ず日没埌、短い間しか顔を合わせられぬこずもあっおか、その溺愛ぶりはかなりのものだった。

     ラむゎンはむナずサキの二人をほほえたしく思い、眺めおいた。

    ◇

     はやり病だった。

     すこし、具合が悪い、ず蚀ったその3日埌、サキは垰らぬ者ずなった。

     霢䞃぀のころだった。

     あたりに急な喪倱。

     むナはうろたえた。

     亡骞を抱え、むせび泣いた。

     悲しみに暮れ、家にこもりがちになったむナにラむゎンは蚀った。

    「人は死ぬ。吞血鬌ずは違う。仕方あるたい。たた逊子を迎えれば良い」

     ラむゎンの蚀っおいるこずは䜕もおかしくなかった。

     人は死ぬ。

     吞血鬌は死なない。

     数千幎生きお、数倚の人々の死を芋おきた。

     もずは人であった吞血鬌も、長く生きれば死生芳は倉容する。

     人ずはかけ離れたものの芋方をするようになる。

     長呜の皮ずしお正しい考え方をも぀のはラむゎンのほうかもしれない。

     むナはそう思った。

     だが、受け入れられない。

     たったの4幎だが、自分の嚘だった。

     血の぀ながりはなくずも、皮が違おうずも、自分の嚘だった。

     あっけらかんず、代わりを探そうなどず蚀われお受け入れられるわけがない。

     倫婊二人の間に、決しお超えられぬ断厖があるずむナが気づいたのは、二人が結ばれお幎以䞊たったこのずきだった。

     そしお400幎のセックスレスを経お珟圚。

     互いを殺すこずのできない吞血鬌倫婊に、機䌚が蚪れた。

    「隣に匕っ越しおきたした。アドニスずいいたす。どうぞよろしくお願いしたす」

     ギリシャからの移䜏者は、倫婊の契りに、終止笊代わりの銀の杭を打ちこもうずしおいた。

    第11章 アドニス vs. ラむゎン

     倜明け前。

     雚が降り始めた頃だった。

     バレヌボヌルの䞭継を芋終えたラむゎンは倧きく䌞びをした。

     「私はそろそろ眠ろう。我が埓者よ、郚屋の枅掃を頌む」

     そういっお1階のリビングから地䞋の就寝甚棺桶ぞ向かおうずしたずころに。

     窓ガラスを砎っお飛び蟌んでくるものがあった。

     䞞いそれは、ボヌルではなかった。

    「埓者よ、䌏せろ」

     叫んだ瞬間、手りゅう匟が火を噎き、倧量の小さな球を高速でたき散らした。

     埓者、ミダザワケンゞの䜓に倧量の小さな穎が開く。

     ラむゎンの䜓に小球が食い蟌む。

     二人は磚き䞊げられた床に倒れこんだ。

    「特性手りゅう匟だぜ。爆発ず同時に銀補のパチンコ玉がドバっず飛び出す仕組みだ」

     玄関を蹎砎り郚屋に䟵入したアドニスの手には、散匟銃が握られおいた。 

    「5000幎生きおる吞血鬌だず聞いたぜ。この皋床で死ぬのか 生きおるよな」

    「私は生きおいる」

     ラむゎンは党身から血を流しながら立ち䞊がった。

    「埓者はだめだろうな。今の爆匟は人間には耐えられたい。たた新たな埓者を探さねばならんな」

     心底残念そうにラむゎンは蚀った。

    「その必芁はないぜ。お前は地獄にいくからな」

     いうが早いか、アドニスは散匟銃の匕き金を匕いた。

     もちろん、装おんされおいるのはただの銃匟ではない。

     銀の散匟がラむゎンめがけお飛び散っおいく。

     ラむゎンは躱さず、党身に匟䞞を受けた。

    「避けられないか。ずいぶん効いおるみたいだな。」

    「いや」

     次の瞬間、アドニスは家の倖に蹎り飛ばされおいた。

    「銀はたしかに吞血鬌にずっお毒ずなる。だがこんな豆鉄砲ではな。いくら济びおも死ねるずは思えん。杭。やはり杭だ。吞血鬌を氞遠に眠らせるには杭でなくおはならん。倪く頑匷な杭だ。物語の吞血鬌が杭で殺されるのには理由がある」

     そう぀ぶやきながら、ラむゎンは郚屋を芋回した。

     床には焊げ跡。

     壁は穎だらけ。

     倧型液晶テレビは完党にお陀仏。

     䞀応確認ず、ラむゎンはリモコンを操䜜しおみたが、テレビは党く反応しなかった。

    「やれやれ。郚屋の修繕にどれほどの期間ず費甚がかかるやら。埓者がおらんのは困りものだな」

    「だから、お前がそんな心配する必芁はもうねえんだよ」

     再び散匟を济び、ラむゎンは床に厩れた。

    「さっさず地獄に行け」

    「あの蹎りを受けお生きおいるのか 殺す぀もりで蹎り飛ばしたのだが 」

     ラむゎンはうめいた。

     小さな銀の匟䞞も心臓郚に倧量に济びれば毒が回る。

     䞀刻も摘出し無ければ危険な氎準に達しおいた。

     アドニスは、痛みからか、顔をゆがめながら匟䞞を2発、散匟銃に蟌めなおす。

     そしお玠早く匕き金を匕いた。

     反撃も回埩の隙も䞎えないずいう意思が芋お取れた。

     ラむゎンは床を転がりながら散匟から身をかわした。

    「5000幎生きお、床を転がる矜目になろうずは」

     ラむゎンは自らぞのあきれが半分、アドニスぞの感心半分で蚀った。

    「ここたで私を远い぀められる人間がいようずは。スポヌツ遞手になったらどうだ。きっず倧成するだろう」

    「だろうな」

     アドニスは散匟銃を床に攟り捚お、カヌゎパンツから杭ず鎚を取り出した。

    「こい぀で早いずころずどめを刺しおやる」

     アドニスは顔䞭に倧量の汗を流しながら蚀った。

     先ほどラむゎンの攟った蹎りのダメヌゞは決しお軜くないこずが芋お取れた。

    ◇

     雚脚が匷たる䞭、むナは庭先から殺し合いを眺めおいた。

     ラむゎンは銀の球を倧量に济び、苊しんでいた。

     アドニスもたた、ラむゎンに十数メヌトルも蹎り飛ばされ、その痛みに苊しんでいた。

     むナは驚いおいた。

     本圓にあのラむゎンを殺せるのか。

     それが可胜な人間がいるのか。

     十党の事前準備ず情報提䟛、䞍意打ちの産物ずはいえ。

     倫殺しを頌んでおいおいうこずではないが、目の前の光景が信じられない。

     ラむゎンは回埩できおいない。

     おそらく最初の手りゅう匟の時点で、球が急所に呜䞭しおいる。

     運はアドニスに、そしおむナに味方しおいるように思われた。

     終わりが近い。

     玆䜙曲折こそあれ、5000幎連れ添った倫婊の契りの終わりが。

    ◇

     アドニスの䜓は悲鳎を䞊げおいた。

     蹎り䞀発でこれ皋の苊痛に芋舞われようずは。

     どこをどうやられた。

     骚か。

     内臓か。

     神経か。

     考えおもいられない。

     次をもらえば終わっおしたう。

     気合が䜓を動かす。

     杭を握る右手を、鎚を携えた巊手を。

     杭を暙的の胞先に攟り投げ、鎚を振るう。

     手ごたえあり。

     杭が深々ずノァンパむアの心臓に突き刺さるのを芋るず同時に。

     ラむゎンの攟った拳がアドニスの胞を盎撃した。


    第12章 終幕


     アドニスは前のめりに倒れ䌏した。

     うたく呌吞ができない。

     肺が砎裂したか、気管がぞし折れたか。

     苊しみをこらえ、䞊䜓を起こす。

     獲物をしずめたかどうか、確認しなければならない。

     顔を䞊げるず、果たしおラむゎンの心臓を、銀補の杭が貫いおいた。

     絶呜しおいる。

     これで死んでいないなら、殺す方法は芋圓たらない。

     ◇

     むナは家の䞭に駆け蟌んだ。

     党身が歓喜の声を䞊げる。

     虫の息のアドニスを抱きかかえる。

    「私は自由 あなたのおかげで、私は自由になった あなたのおかげ」

    「俺は プロだからな 」

     むナの胞に穎が開いた。

     銀の杭。

    「お前も殺すぜ、ノァンパむア」

     そういっお、アドニスは再び床に沈んだ。

     口から、耳から、血があふれ出す。

     ラむゎンから受けた蹎りず拳。

     打撃はそのどちらもがが臎呜傷だった。

     脳内で分泌された倧量のアドレナリンが、少しの間、ほんの5分ほど䜓を動かすこずを蚱しおいたに過ぎなかった。

     心停止。

     呌吞停止。

     瞳孔拡散。

     アドニスは氞遠の眠りに぀いた。

    ◇

    「むナよ、死んだか」

     心臓を穿たれたラむゎンは、それでもなお、しゃべるこずができた。

    「生きおる」

     心臓を穿たれたむナは、小さく囁いた。

    「私はもはや指も動かせんが、お前はどうだ」

    「私も、動けない」

    「むナよ、自由になりたかったのか」

    「ええ、あなたのいない人生を送りたくなった」

    「そうか。い぀のころからだ」

    「400幎くらい前のこずよ」

    「サキか」

    「そう。あの子のこずを芚えおいたのね」

    「もちろんだ。あの子を倱い悲しむお前を芋お、胞を痛めた」

    「そう 」

    「お前を愛しおいる」

    「わたしもよ」

     むナは力なく蚀った。

    「でも、それだけではうたくいかないこずもあるのよ」

    「そうか。そうだな 」

     ただラむゎンが䜕か話しおいるように感じたが、むナにはもう、䜕も芋えず、䜕も聞こえなかった。 

    むナは目を閉じた。

    ◇ 

     雚は匷くなり続け、蚘録的な豪雚ずなった。

     雷岬倫劻の䜏む高玚䜏宅街はぬかるみ、その地盀をも揺るがした。

     家は傟き、抌し流された。

     川は氟濫した。

     荒れ狂う波は、屋敷の惚状をも、こずごずく飲み蟌んだ。

     やがお雚は止み、か぀お高玚䜏宅街があった堎所には、泥濘が残された。

    ◇

     泥の䞭から、アドニスは這い出た。

     なぜ、生きおいる。

     俺は死んだ。

     思い違いではない。

     確信がある。

     確かに俺は死んだ。

     内臓を぀ぶされた。

     骚を折られた。

     肺をやられた。

     血を吹いた。

     死んだ。

     こんなこずがあっおはならない。

     俺は、たさか、俺は。

     匷烈な焊りず䞍安が党身を駆けめぐる。

     ふず、腹が枛っおいるこずに気づいた。

     のどもカラカラだった。

     久しく芚えるこずのなかった感芚。

     飢えず、枇き。

     幌いころ、ほずんど食べさせおくれなかった父。

     倧きくなり続ける䜓に远い぀かなかった、斜蚭での食事。

     路䞊匷盗たでしお埗た金で逃れようずした、あの感芚。

     䜕か食わなければ。

     䜕かを腹に入れなくおは。

     この感芚には耐えられない。

     ぬかるみを抜け出し、目に぀いたコンビニ゚ンスストアに入った。

     店員は泥だらけのアドニスが入店するのを止めようずしたが、アドニスはそれを軜く払いのけた。

     ほかの客がどよめくのも構わず、わき目もふらず、パンコヌナヌに盎行する。

     コロッケパンを぀かむず、䌚蚈も枈たせず、その堎で袋を砎り捚おる。

     パンを握り぀ぶし、䞞ごず口にねじ蟌む。

     ドリンクコヌナヌから氎を取り出し、济びるように飲む。

     そのたた勢いに任せ、パンコヌナヌに䞊ぶものすべおを胃の䞭に抌し蟌んだ。

     だが、飢えは満たされない。

     それどころか逆に、ひどくなるばかりだった。 

     苊しい。

     苊しい。

     幌いころのトラりマず、今たさに感じおいる空腹が、アドニスの神経を苛んだ。

     怒りずいら立ちが募る。

     あの飢えの日々から、俺は抜け出したはずだ。

     ミハむルの蚀うこずを聞き、ノァンパむアを狩り、倧金を手に入れた。

     もう飢えに苊したずに枈む。

     そういう日々を手に入れたはずだ。

     そういう暮らしを手に入れたはずだ。

     そのはずだ。

     そうだろう。

     なぜ俺は今こんなにも苊しいんだ。

     ミハむルはどこにいる。

     あい぀は頭がいい。

     きっずこの状況を䜕ずかしおくれるはずだ。

     ミハむルをみ぀けなくおは。

     金を払えず芁求する店員を無芖し、アドニスは店を出た。

     だが、ミハむルを探そうにも、圓おはない。

     匕っ越しおきたばかりの新居は、泥ずずもに抌し流され、跡圢もなく消えおしたった。

     ミハむルのほうも俺を探しおいるはずだ、ずアドニスは思った。

     それずも。

     ミハむルは泥に飲たれお死んだのか

     ひどい空腹感で、頭がたずもに働かなかった。

     こういうずき、想像は悪いほうぞ、悪いほうぞず転がっおいく。

     そうずわかっおいながら、自分では止められない。

     たさか、ミハむルはずっず俺をだたしおいたのではないか。

     利甚しおいたのではないか。

     俺が十皮競技のギリシャ王者ずなったずき、誰かが俺の路䞊匷盗の経歎をネットにリヌクした。

     おかげで俺には䞀瀟もスポンサヌが぀かなかった。

     俺をほめたたえおいたや぀らは、朮が匕くように消えおいった。

     あれが原因で、俺のスポヌツで食っおいく道は閉ざされた。

     あれはひょっずするず、ミハむルの仕業だったのではないか

     俺が芆面を付け、路䞊匷盗をしおいたこずをミハむルは知っおいた。

     ミハむルしか知っおいる奎はいなかった。

     たさかあい぀は、リヌクするこずで俺が皌ぐ圓おを奪ったのではないか。

     利甚しやすくするために。

     ミハむルは俺を地䞋ボクシングに連れお行った。

     俺の勝利に賭けおずいぶんず荒皌ぎしたはずだ。

     そしお今、ノァンパむアず俺を殺し合わせ、youtubeで芋䞖物にしお金儲けをしおいる。

     危険な目に合うのは俺だけだ。

     䜓を匵っおいる俺を尻目に、涌しい郚屋で楜しお皌いでいやがる。

     泥に埋もれおしたった俺を探そうずもしない。

     俺が死ねば、動画配信の利益はあい぀が独り占めか

     あい぀はずっず、金のために俺を利甚しおきたのだ。

     ふ぀ふ぀ず怒りが沞き䞊がっおくるのを抑えられない。

     泥たみれになった街を県䞋に、やり堎のない怒りを募らせおいたそのずき。

    「アドニス」

     埌ろを振り返るず、声の䞻はミハむルだった。

     ミハむルは息も絶え絶えに、ふら぀きながら立っおいた。

     そのズボンのすそは泥にたみれ、ぐしゃぐしゃになっおいた。

    「倧雚で土砂灜害が起きたんだ。アドニス、もうだめかず思った。君が死んでしたったんじゃないかず思っお気が気じゃなかったよ。生きおいお本圓に良かった。家は流されおしたったから、ホテルの郚屋を君の分も取っおある。シャワヌを济びお泥を掗い流そう」

     アドニスは安堵した。

     ミハむルはアドニスを必死で探しおいたのだ。

     アドニスを利甚するだけ利甚しお、死なせるようなや぀ではなかったのだ。

     アドニスはミハむルの䞡肩を぀かみ、そしお。

     アドニスの牙がミハむルの銖筋を貫いた。

     なにせ、腹が枛っおいたのだ。

    【終わり】


    #創䜜倧賞2025 #ミステリヌ小説郚門


     
     
     
    ナンセンスパルプ小説メヌカヌ No生成AI. Fxxk生成AI. GOOD LUCK REAL HUMAN ARTISTS.

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