
悪役令嬢が転生したら婚活していました 17 ~悪役令嬢の婚約~
アンリと陽菜、ビルオーナーの自宅へ行く
2週間後、アンリと陽菜は、ビルオーナーと自宅の最寄り駅で待ち合わせ、一緒に自宅へ行った。陽菜は、アンリに横浜・喜月堂の最中を10個、手土産に持たせている。陽菜が一番好きなお菓子だ。あの、つぶあんがこぼれんばかりの最中がイイ!手土産といえばコレしかないだろう。
ビルオーナーの自宅についた瞬間、陽菜が思ったのは「都会にある、森ですか!?」だ。山手線内に、こんなに広いお屋敷があるんだ。門の中には木々が生え、その場所だけが鬱蒼とした森のような雰囲気を醸し出している。門には門番さんがおり、ご挨拶して敷地内に入る。
中は、意外というか、門が和風ではなかったので洋風のお屋敷を想像していたが、ものすごく和風の家だった。屋敷に入ると、「玄関ってこんなに広いのね」という広さ。この玄関だけで陽菜のワンルームが入ってしまう。
「アンナさん、陽菜さん、入ってください」
ビルオーナーに促されて入る。アンナは、キョウコママに鍛えられた和服力で、お作法も習っているらしく、優雅に靴を脱ぎ、端へ寄せる。
屏風の間
促されるまま、いくつかの部屋を抜けて奥に行く。廊下が無く、ふすまで仕切った昔ながらの和室を通る。上を見上げると、欄干も見事だ。富士山や雪の結晶など、細かい欄干が美しい。
大きな屏風のある部屋に着いたところで、おもむろにビルオーナーが「こちらでお待ちください」と言う。
屏風は、風水画のような、松が書かれた風流なものだった。大好きな狩野派ではない。陽菜は、絢爛豪華な狩野派推しなのだ。
ただ、真ん中が開いていて、風水画は「間(ま)」の芸術なので、不思議に思った。屏風だから、折りたたんでも必ず外側に来る端に、絵があるのはわかるが、この屏風には真ん中に「何か」が書かれていた、ように見える。
一休さんじゃないんだから、虎ってことは無いだろうけど…。松林が描かれた真ん中に、何が入ると一番しっくりくるんだろう。
そう思っていると、ビルオーナーが戻ってきた。
ビルオーナーの秘密
ビルオーナーが、指輪、というにはかなり大きめの箱を持ってきた。
「アンナさん、いえ、アンナミラージュ・ド・クラゥディア。婚約のしるしとして、これを受け取ってほしい。」
アンナがその大きめの箱を開けると、エメラルドを基調にした、「腕輪」が入っていた。アンナは確かにグリーンが似合う。が、指輪じゃなくて、なんで腕輪!?と、陽菜の頭の中には「?」が並ぶ。
「はい、喜んで。」とアンナが応じると、
ビルオーナーが「アンナミラージュ、私の本当の名前聞いて、この屏風の裏を通ってみてから、もう一度返事を聞きたい。」と言い出して、「え?本当の名前?」と陽菜だけが戸惑っているように見える。アンナは、私ほど戸惑っていないようだ。
ビルオーナーが例の山水画の屏風に手を当てると、みるみるという間に、カラーの、立派な虎が真ん中に描かれた上、虎は屏風からひょい、と抜け出てきた。い、一休さんじゃん!!!
しかも、ビルオーナーは虎にチューインガムをあげると、虎は喜んで食べた後、ビルオーナーをぺろりと舐めた。
そして、ビルオーナーは「私の名は、エルマー・ルース・ドラゴン・デ・ロイヤルホスト。」
いきなり、アンナがひれ伏した。「お目にかかれて光栄です、エルマー王子。」えー、エルマーは王子なんだ。それってアンナの世界の王子ってこと?
「驚いたと思うが、わが王家は、この世界と我々の王家が繋がる場所を管理し、お互いの世界の商品を輸出入することで利を得ている。こちらの世界のことを理解し、行き来できるものが妃として要求される資質だ。
アンナミラージュが教会から消えた時、王家では今までのこの屏風にある通路以外に、新しく二つの世界が繋がったことをすぐに理解した。アンナミラージュの婚約者であるコアセ公爵には悪いが、私は父上の命により。すぐにこちらの世界に来て、通路を作ったアンナミラージュを妃として王室の力とするか、アンナミラージュをこの世界から元の世界に戻せないようにするかを見極めなければならなかった。
こちらの世界の友人を作り、すぐに仕事をしてこの世界になじもうと努力するそなたを見て、私の妃としての資質を見た。贈ったその腕輪は、世界を移動するときに必要な道具だ。クラウディア伯爵、および王と王妃に、アンナミラージュとの婚約の許しを得るために、王宮に戻ろうかと思う。一緒に来てくれるか?」
アンナは、「はい、御心のままに。」と伝えると、急に屏風がぱたぱたと閉まり、その後ろが春の、アンナが来た季節のように木々に花が咲いている大きな穴が現れた。
アンナとロイヤルホスト王子は屏風から出てきた虎に乗り、
「陽菜、ご苦労であった。あのマンションは、登記を書き換えるように司法書士に命じておる。アンナミラージュが世話になり、大儀であった。マンションは陽菜の名義になる予定である。ちなみに、贈与税は気にするな。そこもそちの負担にならないよう、税理士が取り計らっている。また、私たちはまた現れるの心配せんで良い。また会えるぞ。」
そういって、屏風の向こう側にある穴に、二人は消えて行った・・・。
2人が消えると、穴はみるみる間にふさがり、もう単に床の間があるだけの空間になった。
陽菜は、よく考えたら成婚料をもらいそびれた気がしつつ、マンションもらえるって、だいぶおつりが大きい。どうしたものやら、と考えながら帰る。しかし、いざマンションに帰ると、そこには確かにアンナと一緒に暮らしたものだらけだった。アンナの洋服、靴、最初に貸したユニクロのワンピース。最近アンナがハマってたスイッチ2。また、いつアンナに会えるんだろうか。ロイヤルホストは、ちょこちょこ海外出張と言っていたのは、あの屏風のことだったのだろうか。
とりあえず、アンナの不在ですぐ迷惑かけそうな「江戸小道」には連絡しないと。
第一部完