
何ミリですか?
行きたくないなぁ
ヤダなぁ
そう言いながらコメカミの毛をくるくると弄るが、行かなければ
今日は散髪に行く日だ。
予定を立てている時は良かった。
どんな髪型にしようか、長さにしようか
ただ夏休みの子供の多い時期は避けたい。
そんな後ろ向きの衝動が僕を動かした。
今日に限って30度超えの猛暑日
「明日からにしてくれよ」
手で庇を作って空を睨むが、涼しくはならない。
結露のように汗をかきながらも到着
昼頃に安くなるが、この時期はずらしてほしいと思いながら自動ドアをくぐる
いらっしゃいませーと、何人かのスタッフさんの挨拶が聞こえた。
タッチパネルで受け付け出来て、会話が少なくて助かる。
なんだけど、ここの待合場所は苦手だ、座る場所がロッカーの近くや、ドアの近く
必ず人の通りがあるから落ち着かない。
まぁ安く切れるなら良いか。
番号札20番でお待ちのお客様
僕のは23番か、そして番号札をポケットに入れ、興味のない冬野菜のアレンジレシピを読む
「この時期うってつけ、かぼちゃの」
かぼちゃなんていつでも美味しいだろう。
と思ってページをめくっていると
番号札23番でお待ちのお客様と、手を高らかに上げている美容師さんの元へ向かう。
回転椅子が回らないか気をつけながら、座る
「本日はどんな感じにいたしましょう」
サイドを刈り上げて、トップと前髪を半分くらいにしてほしいです。
「長さはどれくらいに致しましょうか?
長さ?今のじゃないのか?
「何ミリにいたしましょうか?」
ミリ?横の刈り上げは指定がいるのか
平静を装い、「一番短いのは何ミリですか?」
「0.5ミリからですね、それから1ミリから15ミリになります」
今まで何ミリだ、「出来るだけ短く」だから匙加減すぎる。
こうなりゃ感だ
「2ミリでお願いします」少し手が震えていた。
カットが始まってからは、自分の髪が落ちてくるため目を瞑って寝ていた。
まぁ、目を開けていたとて名前も分からない器具や机のデザインを眺めるだけだから良いか
寝ようと思った時に
「ーは低めにしますか?、高めにしますか?」
何だ?一番気になる所が分からない。
「あー、……そうですねー」
良くない、良くない、さっきより美容師さん表情暗くなってる。
「あー、じゃあ低めで」「かしこまりました」
こうして何が低いのか分からずカットは進んだ。
完成した髪型を見て思った。
短くね、なんか刈り上げが浅いぞ。
そして鏡を持って美容師さんが近づいてくる
「後ろこういうふうになってまーす」
それ言われてもどう直せば良いんだよ
しかし口からは、「ちょうどの長さです、ありがとうございます」と出た。
お会計を済ませて、灼熱の帰り道へ
自動ドアの後ろのありがとうございましたを聞きながら、頭を撫でて思う。
やっぱり短くない?