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灯りの届くところ

    数字は、静かにそこにあった。
    九十一万。
    何度も更新しているはずなのに、
    まるで時間だけが置いていかれているみたいに、動かなかった。
    あと少し。
    そう思うほど、その「少し」が遠く感じられた。

    本当なら、ここで終わってもよかった。
    十分すごいことだと、誰かに言われなくても分かっていたし、
    自分でもそう思おうとした。
    でも、その日は違った。
    理由は、うまく説明できない。
    ただ、胸の奥で何かが小さく灯ったような気がした。
    ——まだ、届くかもしれない。
    根拠はなかった。
    けれど、不思議と迷いもなかった。

    言葉にするのは、少し怖かった。
    誰にも届かないかもしれないし、
    軽く流されて終わるかもしれない。
    それでも、画面の向こうに向かって、そっと置くように書いた。
    一緒に、見届けてもらえたら嬉しいです。

    それだけだった。

    強く引っ張ることもできたはずだった。
    もっと大きな言葉で、たくさんの人を動かすことも。
    でも、それは違う気がした。
    誰かに無理をさせてまで届くものは、
    きっと長くは続かない。

    少しずつ、空気が変わっていった。
    はっきりとしたきっかけは分からない。
    ただ、同じ言葉を見た誰かが、
    また別の誰かに手渡すように、静かに広がっていった。

    気づけば、
    それはもう「ひとりのもの」ではなくなっていた。

    前の夜、ある言葉が流れてきた。
    明日やろうは馬鹿ヤロウ。
    短くて、強い言葉だった。
    誰に向けられたものなのかは分からない。
    でも、不思議と自分に向けられている気がした。

    そのあと、友達から連絡が来た。
    「きっと届くよ」
    冗談みたいな言い方だったけれど、
    その言葉は、思っていたよりも深く残った。

    夜が、ゆっくりと進んでいく。
    数字も、少しずつ動き始めていた。
    九十九万。
    九十九万五千。
    画面を見つめる時間が長くなる。
    息を止めるようにして、ただ見ていた。

    そして、その瞬間は、あまりにも静かに訪れた。
    百。
    表示が変わったことに、すぐには気づかなかった。
    一拍遅れて、理解が追いつく。

    届いた。

    声にはならなかった。
    ただ、胸の奥にあった何かが、ゆっくりほどけていくのが分かった。

    しばらくして、通知が鳴った。
    何気なく開いたその画面に、
    見慣れない名前があった。
    一瞬、意味が分からなかった。
    見間違いだと思って閉じて、もう一度開いた。
    それでも、同じだった。

    言葉は短かった。
    けれど、その一行が、すべてを満たしていた。

    本当に、届いたんだ。

    あの時、確かに思った。
    もうこれで終わりでもいいかもしれない、と。
    これ以上のことなんて、きっとない。

    でも、時間が経つにつれて、
    少しずつ考えが変わっていった。

    あれは、終わりじゃなかった。

    むしろ、始まりだったのかもしれない。

    あの夜に起きたことは、特別だった。
    同じことは、もう起きないかもしれない。

    それでもいいと思った。

    あの時のように、
    ただ誰かに届いてほしいと思う気持ちがある限り、
    また、何かは動き出す。

    形は違ってもいい。
    同じじゃなくてもいい。

    静かに始まったものは、
    また静かに広がっていく。

    あの夜、確かに灯ったものは、
    今も消えていない。



    #創作大賞2026
    #エッセイ部門

     
     
    山Pを応援しながら、副業0→1に挑戦中。 楽天・note・推し活遠征・SNS発信を実践しています。 遠征やホテル選び、仕事で培ったお客様対応など、実体験を役立つ形にして発信中📚 私の経験が、誰かの「やってみよう」のきっかけになれば嬉しいです。

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