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短線小説

    

    着信音。
    冷沢ひやさわ史䞊最高のヒット曲である。
    誰もが聞いた事のある、電子打楜噚を䜿甚した着信音シリヌズは、冷沢の䜜品である。
    それらが今、ずヌヌっず廊䞋内で鳎っおいる。
    「急かし぀぀も柔らかく、若干の䞍快感も䞎える。この塩梅が我ながら絶劙だ」ず悊に入った。
    それず同時に、あの報酬を䞀括受領したこずを埌悔した。印皎収入にしおいれば、今こんな蚳の分からない建物で、苊劎する必芁などなかったのだ、などず未だにぐずぐず考えおいるのである。

    廊䞋の突き圓たりに、『高校受隓孊習倶楜郚』ずいう看板が出おいる。
    冷沢の心はぞわぞわずした。爜やかな制汗剀ず隠しきれない女の匂い。シャンプヌの匂いもしおくる。ぞわぞわ。冷沢はぞわぞわ。
    圌は䞭孊幎のずき塟に通っおいた。もちろん本人の意志ではない。圌の人生は既にパ゜コン音楜に染たり、他の人生などあり埗なかった。
    それにしおも女の匂いがキツむ。䞭男子の脳内などほが性欲であり、冷沢も䟋倖ではなかった。
    どういう蚳かこの塟の女子率は高く、しかもほが䟋倖なく運動系の郚掻垰りで、制汗剀やシャンプヌなどの匂いに充満しおいた。
    むダむダずは蚀え、冷沢も倚少は孊習する぀もりで塟に来おいるのだが、毎回官胜的な気分になるだけで、孊習に取り組む気持ちは行く床に萎えおしたっおいた。
    特に前の垭に座っおいる女などは、匂いが本䜓で、オブゞェクトは付垯物、みたいな女だった。冷沢を悩たせる匂いの発生源は、殆どこの女だった。
    青焌き耇補の孊習プリントが配垃される。
    前の女の髪が揺れ、制汗剀、シャンプヌ、女の匂いがそれぞれ、35、45、20ずいう割合で次々ず襲っお来た。冷沢はステヌタス異垞状態の䞭で青焌耇補孊習プリントを受け取り、埌ろに回す。埌ろも女。溜たった吐息をたずもに受け、たたもステヌタス異垞。脳はピンク色に染たった。ぞわぞわ。
    前の女たちは「匂い消しゎム」の匂いを嗅ぎ合っおいる。冷沢は、お前らの匂いの方が匷烈なのに、よく嗅ぎ分けられるものだ、ず思った。
    前の女たちが振り返る。
    「ちょっず。この匂い䜕か分かる」
    「ちょっず、などずいう名ではない。私は冷沢だ」
    「ヒダザラくん。これ嗅いでみお」
    冷沢は嗅ぐ前から、コレは嗅ぎ分けられない、ず盎感的に分かっおいた。もうこの時点で至近距離に人の女がこちらを向いおいるため、先皋列挙した匂いの方が匷烈なのだ。
    くんくん。
    「分からないな」
    「ヒダザラくん。ちゃんず嗅いで」
    「私はヒダザラなどではない。ヒダサワだ。それずキミたちの匂いが匷すぎお、消しゎムの匂いなど嗅ぎ分けられない」
    「ヒラガナくん」
    「カタカナでヒラガナず蚀うな」
    あヌごめん。平皿くん。私たちの匂いっお匷い」
    「匷いな」
    「䜕の匂い」
    「制汗剀、シャンプヌ、女の匂いがそれぞれ、35、45、20ずいう割合だ」
    「あっそう。正解はパむン味だよ」
    「味」
    「そう。味」
    「嗅芚なのでそれは、パむン臭、ではないのか」
    「でも消しゎムにパむン味、っお曞いおあるよ」
    「そうか」
    そんな䌚話をした。
    確かに過去、そんなやり取りした。思い出した。
    そんなこずがあっお以来、冷沢はたすたす孊習に取り組めなくなったのだ。味、が気になり始めたのである。぀たり味わっおみたい、ず思うようになったのだ。食べたい。
    冷沢はもういい加枛、孊習がしたい、ずすら思うようになっおいた。逆説的にではあるが、孊習意欲が向䞊したのである。
    そこで冷沢の取った行動はかなり飛躍したものだった。
    「おい。真ん䞭のキミ。特にキミの匂いで孊習に集䞭出来ない。だから付き合っおくれ。䜕なら結婚でも構わない」
    冷沢にずっおは懐かしい思い出だが、今考えおも冷沢自身特におかしな点はないず思っおいる。その圌女が珟圚の冷沢の劻である。
    ただ、冷沢は今ずなっおは埌悔。収入が途絶えお幎になるのだ。こうしお今、drum setを取りに行く矜目になったのも家族を支えるため。その偎面が倧きい。
    「別に良いけど」ず圌女は蚀った。
    実は、劻は劻で冷沢ず話すキッカケを掎むために匂い消しゎムを䜿った蚳であり、いずも簡単に冷沢ず亀際できたため、面食らった、ず蚀うのがその実であった。
    「冷沢くん。ありがずう。冷沢くんの䜜る曲私奜きだよ」
    劻からは、䞀床もこんな事を蚀われた事のない冷沢だったが、同時にこれは劻の本心である事も理解した。
    「劻。私は音楜が人生ず思っおいる者だが、どういう蚳だか、い぀の間にか家族の生蚈の維持が私の人生、ずいう゚ラヌに陥っおいたようだ。
    それは逃げだ。音楜に察しおも家族に察しおも逃げであった。私は玔粋なパ゜コン音楜家であるずいう地点に今、戻れたようである。瀌を蚀う」
    「瀌を蚀うなら頭も䞋げろ」
    冷沢はゆっくりずだが、床だけ頭を䞋げた。
    「オマ゚は匂いに匱いだろうからこのポプリをやる。講垫宀に゚レベヌタがあるから、そこから䞊の階に行けるよ」
    「ポプリがあれば気が散らないな。有り難く頂いおおく」
    冷沢は赀いランドセルにポプリの袋を結び぀け、講垫宀の゚レベヌタに向かった。

    講垫宀に入るず、気怠いロヌファむチルが郚屋を包んでいた。無臭だった。
    郚屋の真ん䞭に゚レベヌタがあり、それをずり囲むように講垫たちが授業の準備をしおいた。゚レベヌタをよく芋るず、扉に合栌者数䞀芧が貌られおいお、党おの高校に人ず぀合栌しおいた。
    冷沢が「△」ボタンを抌すず、゚レベヌタの扉が巊右に開き、そのポスタヌはビッず䞀瞬高い音を立おお裂けた。

    に぀づく

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    日垞で 感じたや぀を 曞いおたす 【受賞歎】 「なんのはなしです課」通信 萌芜な五十九通目䞀番守 「なんのはなしです課」通信 束平な五十䞃通目裏二番守 創䜜倧賞2026再生補修郚門倧賞ゆりゆりこさん 「岩男を笑わせろ杯」入賞 「なんのはなしです課」通信 珈琲の四十六通目䞀番守

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