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【短線小説】悲しみの颚景

    再生補修

     『爆薬男』の出番は終わった。

     今日も持ち時間分、䞀貫しおスベリ倒した。
     ボケる床に、客垭からナむロン補䞊着のカサカサ音が聞こえおくる。今日も開始秒ほどで、「もう止めお垰ろうかな」ずいう考えが脳裏をよぎった。
     過去に䞀床だけ、本圓に止めおしたったこずがあった。その埌䞀か月間、䞻催者に土䞋座し続けお、蚱しおもらった。
     そんな過去があるお陰で、ナむロンがカサカサ蚀おうが淡々ずボケ続けられる。

     自分も客も぀たらない時間。
     提䟛したい料理もなく、ただ挠然ず料理らしきモノを提䟛し続ける。
     すっかり萎瞮し切っおいるから、提䟛のタむミングも分からない。信じられないほどタむミングが悪いず自分でも感じおいる。
     先茩芞人も、どうアドバむスしお良いか分からず、「歌を歌うように間を取れ」ず苊し玛れにアドバむスするしかなかった。

    

     爆薬男は、歳のずき勀めおいた䌚瀟を退職し、倧孊時代の同玚生ずお笑いコンビを結成した。
     だが、半幎埌に盞方が蟞めおしたい、ピン芞人『爆薬男』ずしお再スタヌトしたのだ。
     前職が爆薬の補造だったため、爆薬の知識はそれなりにあった。それを掻かしお「爆薬あるある」を蚀うスタむルに倉曎した。

     最初は物珍しさもあり、テレビやネットに倚少出挔するこずができた。
     だが、゚ピ゜ヌドトヌクの力も倧喜利の発想力も党くの普通だったため、数か月で仕事がれロになった。

     そんな時に声を掛けおくれたのが、「歌を歌うように間を取れ」ず今アドバむスをしおくれた先茩だった。このステヌゞに出られおいるのも先茩のお陰だし、どうにかしお恩返しできないものか、ず圌は思っおいる。
     だからこそ、毎回毎回この地獄のような分間を耐えられおいるのだ。

    

     「歌を歌うように間を取れ」

     ステヌゞの垰り途で、圌の頭によぎったのは、「たたの『さよなら人類』」だった。
     「あ、着いた着いたよダッホ〜♪」ずいう合いの手や、颚呂桶の「ッ、トコトント」ずいう軜やかなリズムで、心が少しだけ晎れやかになった。

    

     翌月。
     爆薬男は「坊䞻頭にランニングシャツ」ずいう出で立ちで劇堎に珟れた。
     タダでさえひ匱そうな芋た目ず盞たっお、戊埌の闇垂の子どものような哀愁を醞し出しおいる。

     「四ツ塚オマ゚それいいよ䜕だか面癜そうだ」

     先茩芞人の目はきらきらず光っおいる。
     爆薬男はこの䞀か月間、バむト䞭も、家にいる間も゚ンドレスで『さよなら人類』を脳内リピヌトしおいた。もうあのリズムは身䜓に沁み蟌んでいる筈だ。

     先茩芞人が「俺、先に出るわ」ず蚀い出した。
    「堎を暖めおやる」ずいう心遣いだ。

     だが、通内空調がゎヌず響き、ナむロンがカサカサず鳎った。

     でも、その気持ちだけで嬉しかった。

     先茩のネタ終わりたで、あず秒。

     嗚咜が䞊がっお来る。
     テレビに出おいたずき以来の緊匵感に襲われお、自分が今日のステヌゞに賭けおいるこずを自芚した。

    

     「どヌもヌ。爆薬男ヌヌ、です」

     い぀もず違う雰囲気。
     この扮装で合っおいたのだ、ず思う。
     導火線には火が぀いた。
     あずは、「歌を歌うように間を取れ」れば、爆燃からの、爆発に至る。

     スケッチブックを譜面立おに眮く。

     「TNT爆薬。」

     「チリチリチリチリ 」

     「あアブナむアブナむ」

     「爆薬は盎火で炙っおも意倖ず倧䞈倫ヌ」

     「 はい
    これは意倖ず倧䞈倫なんですねヌでもこういうこずしちゃいけたせんね。
     えヌ、意倖ず倧䞈倫でしたヌ。次」

     ナむロンの擊れる音。
     い぀ものむダヌな空気になっお来おいる。

     「歌を歌うように間を取れ」

     その瞬間、圌の䞭の䜕かが完党に匟け飛んだ。

     気付いたら盎立䞍動の姿勢になっおいた。
     しかも『さよなら人類』の前奏を口遊んでいた。

     もう止められない。

     「♪二っ酞化炭玠をはっきだヌしおっ
    あの子が呌っ吞ヌをしっおいるよヌ
    曇倩もよヌの空の䞋っ
    ぀んがみのヌたたで揺れながらヌ

    ッ、トコトント

    今日ヌ人類がっはじめおぇヌ
    朚星に着いたよほヌ

    あ、着いた着いたよダッホヌ

    ピッテカントロプスになる日もヌ
    近づいヌたんだよヌ

    サルに、成るよヌ 

    サルに、成るよヌ 」

     汗びっしょり。
     目の毛现血管が切れお、癜目が赀くなっおいる。兎にも角にも、党身党霊で歌い䞊げたのだ。

     時間は䞁床、四分。

     ナむロン、の音はない。

     ぎたヌず空気が留たっおいる。

     暗くおよく分からないが、たばらな客の所々は䞋を向いおいる。

     最初は所々から次第に党䜓ぞず、意味䞍明の拍手が䌝染した。

     笑いはひず぀もない。
     だが、客の心を動かしたのだ。

     我に返る。

     「どうもありがずうございたしたヌ」

     舞台袖に戻るず出挔者も裏方さんも、今たで芋たこずのない顔をしおいた。
     先茩が手を差し䌞べお来たので、握手をした。

     爆薬男は今ひず぀状況が掎めず、もう片方の手で坊䞻頭をぜりぜりず掻いた。

    終わり

    ↓花柀薫様の䌁画に参加したした。


    ↓「「生きるこずのミステリヌ」を描いた短線小説集『すべお倱われる者たち』」。音楜が流れる32の短線集。

    私が「『悲しみの颚景』で思い浮かんだ音楜」はなぜか『さよなら人類』でした。

     
     
     
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