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3人ぼっち


    「今回もダメだったみたい」妻の真琴が言う。

    「そう、またあるよ。チャンス」夫の恵登。

    「でも、私,諦めないから」

    恵登は、少し微妙。結婚してから10年子供ができない。

    夫の恵登は、このまま二人の生活でも、と最近は思うようになった。

    真琴は、正社員で別の会社に勤めながら、不妊治療をしている。

    不妊治療には、夫も勿論行かなければならないので、精神的な負担は妻だけではない。

    真琴には、二歳違いの弟がいる。最近40歳になって、母親には、どんな人でもお母さんいいから、親の面倒なんてみなくてもいいから、お願いだから結婚して!

    と、ほぼ、強制的に結婚相談所に入るよう促されて活動中。

    結果を母親に何も告げないのが母の不満らしいが、多分、上手くいっていたら報告ぐらいするだろう。

    姉としては、そっとしとくように何度も言っているが、人の話も聞かない母。

    放っておくしかない。

    そして、14年目が過ぎた。

    また、今回も着床しない。夫に報告するも、対して気にしていないように見える。

    もう、子供ほしくないのかな?

    私は、同級生やら、会社の同期が子供を見せに遊びにきたりして、その度に、自分もいつか、と思うと同時に寂しさが込み上げてくる。

    自分だって、いつかは母親になるんだ!と結婚当初から決めてきた。

    そして、こうして、努力だってしてる。

    今のところは、舅、姑はなんにも言わない。あきらめているのかもしれない。

    どんな風に思われているのかは分からないが、嫌みをいわれることなど一切ない。

    でも、それでも辛い。

    誰かに子供が生まれたニュースを聞くたび、それこそ、子宮がチクチク痛むような気がする。

    自分の子供ってどんな顔しているんだろう?

    どっちに似てるのかな?なんて時々空想したりもする。

    だから、この辛い不妊治療だって耐えられてる。

    お金だって半端じゃないし。

    でも、さすがに、14年ともなると、私は、このまま子供のいない人生になるのか?

    旦那の弟さんと妹さんには自然と子供が生まれているし、私の方に原因があるのかな?

    子供が産めないなら、弟さんの子供の甥っ子がいるからいいや、と思われているのかもね。

    そういったプレッシャーからは、解放されているものの、自分自身の問題だった。

    相変わらず、真琴の弟剣士のお見合いは続いており、どうやら、今回は上手くいっているらしい。

    三か月までに成婚し、ひとつのご縁を終わらせるのがルールで、それでうまく行かなかったら次のエントリーらしい。私は、結婚相談所の経験がないので母から聞いて、ホームページではその結婚相談所をみたけれど、そういうルールがあるなら、三か月でその人を見極めないとならないので、結構大変だろうな、剣士も。

    年上でもなんでもいいのよ。と母。将来あの子がひとりで心配らしい。

    子供なんて産んでくれなくても結婚してくれたらそれでいいの。

    お父さんもお母さんもあの子が一人でいるのが心配なだけよ。だれか、面倒みてくれたら。

    というが、面倒?もしかして、介護の時にひとりで居るのが心配だって事なの?

    子供だってまだ、持てる年齢だし、いきなり、介護かよ!

    剣士も今回は、かなり、譲歩して条件を色々はずしたらしい。
    それは、お互いそうなのだろう。

    年齢も、少し高くても良いとして。

    とにかく、話していて気を使わないタイプが一番気が楽だな。と言っていたので、上手くいっているんだと。姉としても少し安心。

    聴けば、お相手の方はそこそこの学歴らしく、同期、友人がみんな結婚してしまい、自分は残ってしまい、この年齢までになってしまった。との事。子供のいない人の事はあまり焦りの対象にはならないものの、子供が生まれた、と聞くとさすがに焦るらしい。

    大概、そんなものだろう。

    誰も、嫁にもらってくれなかったら結婚する、と入社当時いっていた同期の男性社員も後輩と先に結婚したとのことだ。

    同期のその男性社員におめでとう、とエレベータであった時に、言ったらしい。すると、「お前がはっきりしなかったから」と言われたらしい。

    ということは、別にまったくモテなかたわけじゃないのね?というか、彼女の事を待っていたと云う事?

    姉としては、見た目も普通なんだろうな?ぐらいで、弟が幸せになってくれたらそれでいいよね?という感じだった。

    まぁ、よくある話だな、昔は、少しはモテたけど、今は、年齢になって、条件下げたんだろうね。向こうも。

    それにしても、ちょっと好感がもてたのは、正直過ぎるくらいに今の状況を話すところ、

    普通は、自分が今、売れ残ったとか言いたくないだろうし、言わない。

    でも、そのお相手はそういう事も、剣士に話すのか。

    仲良くなれそうだ。

    だって、そういうところで見得を張る人って長い付き合いになるとつかれるじゃない?

    なんか、素直っていうのか。自分の弱みを出せるのはこれから、長い人生になるのだから、いい年齢になり、互いに恰好をつけていられない時もくるしね。

    もしかしたら、もしかするかもね。姉として応援している。

    自分の不妊治療もだが、弟の縁談がどうか上手く行きますように、と祈った。

    それにしても、こちらは上手くいかない。

    また、ダメだった。これで、何回目か?疲れた。ほんとは疲れている。

    泣きたい気持ちだった。

    でも、諦めたくないのだ、がんばれ、私。

    どうか、私のところに来て、私の未来の赤ちゃん。どうして、来てくれないのだろう?

    旦那さんは優しいし、私の作った料理はなんでも文句言わずに食べてくれる。

    不満はない。それなりだけど、子供さえいれば、あとは、子供さえ、だった。

    そうこうしているうち、弟の結婚が決まった。母の喜びようったらない。

    電話口で泣いていた。「後は、子供が生まれたりしたら忙しいわ。」と母。

    私が、不妊治療をしてるの知っているのに、ちょっと、無神経じゃないの?

    結婚が決まるだけで良かったんじゃないの?
    年なんか、条件なんかどうでもよかったとか言って。

    欲がでたな母よ。

    親孝行な弟め。

    うぅ、後は私か。

    あ、まてよ?お相手は何歳なんだろう?ということは、確かに、子供生まれるかもしれない。

    先を越されてしまうかもしれないんだ。これまで、弟がこの年まで独身を貫いたわけじゃないけれど、なんとなく縁がなく、独りで居た。それが、当たり前だった。

    どこか、私は、どこかで自分に子供ができなくても、と安心していたのではないのか?

    ちょっと、待って!

    頭をハンマーでなぐられたような気持ち。

    私、まだ、産んでないよ!

    どうしよう、どうしよう。真琴は思った。

    想定外の、身内のプレッシャー。

    義理の父母からは何も言われないけど、この視えないプレッシャーからは解放されない。

    それを考えると、益々、不妊治療にこだわる真琴。

    弟の心配なんかしている場合か!

    一気に落ち込んだ。

    仕事中もそのことばかりを考えて、ミスも増えた。

    上司から「どうしたの?こんなミスしない人じゃない?」

    会社の帰り道、スーパーで買い物でもするかと立ち寄り、少し、会社休もうかな?

    追い詰められた私。

    これから、弟の結婚により、状況が変わっていく事に恐ろしさを感じた。

    渦に巻き込まれてしまいそう。

    たすけて、誰か、誰か。

    誰も、助けてくれるはずもない、現実にもどれ、冷静になれ。自分に言い聞かせる。

    今日は、お寿司を買って帰ろう。恵登が待ってる。

    疲れているだけ。だから、仕切りなおそう。

    ドアを開けると、いつもの恵登がいた。

    顔みて少し安心する。

    そうだ、この人は味方じゃないか。

    「おかえり!お寿司?いいね!」

    微妙な顔で旦那を見つめる私。

    旦那だけが味方?本当に?

    子供できないから離婚とかいわないよね?

    裏切ったりされないよね?私。

    余計なことばかり考える。

    冷蔵庫からビールを出す旦那。

    「ねぇ、不妊治療の事なんだけどね、」旦那が言う。

    「うん」

     まさか。

    「最近、仕事と両方ですごく疲れているみたいだからさ」

    「まさか、やめろって?」

    「いや、そうじゃなくて」

    「少し、治療を休んだら?」

    「いやよ!」「私はね、私は、このためにいままで頑張ってきたのよ!」

    「わかるよ、知ってる」

    「僕だって」

    「いいの?子供いなくても?」

    「僕は、君が辛そうにしているのがつらいのよ」

    「辛くなんかないよ、全然!」

    「そう?」

    「うん」

    「さ、寿司食おうよ!美味しそう!」

    それ以上、言わなかった。

    自分でも自分が子供で嫌になった。

    こんな自分でいるからできないんだ、子供。

    恵登って大人だな。

    週末になって、恵登が言った。

    「知り合いでさ、設計事務所を自宅兼でやってて、奥さんと二人暮らしのやつがいてさ、

    遊びに来ない?って。

    その前に、保護猫と保護犬の譲渡会があるから、付き合ってくれないかって。」

    聞けばその奥さんは、自宅で英会話教室をやっていたのだけれど、少子化で生徒さんが減ってきたから止めて、事務所のスペースの他に、旦那さんがお客さんを迎えるスペースでカフェをやるらしい。

    それで、やはり、子供がいないので、犬と猫と楽しく暮らしたいとの事。

    優雅な暮らしだな。そんな風に子供がいなくても、二人の暮らしを楽しんでいる人もいるんだな。と思った。

    「どう?嫌いじゃなかったよね?動物」

    ちょっと考えて、「いいよ、空けとくね」

    「うん」

    恵登は私に、猫か犬を飼って、子供諦めさせたいのかな?とも思ったが、昔、猫を飼っていたこと話した事があったからかな?

    その日がきて、会場に出向いた。

    「あ、こんにちは」

    旦那さんも温厚そうで、奥さんが太陽みたいに明るい人で、ちょっとふっくらしていて、

    いかにも、普段子供慣れしていそうな、話しかけやすそうな人だった。

    「今、ダイエット中なんですよー」奥さんがいった。

    「君は、ダイエット中じゃない時ないだろー」と旦那さんが言って、笑った。

    久しぶりに笑ったな。

    きっと、不妊治療で追い詰められてどんな顔していたかも自分でもわからない。

    奥さんは続けた「私はね、子供相手の仕事はしていたんですけれどもね、それほど子供がほしくはなくって、犬と猫と一緒に暮らして余生を旦那と過ごそうかな?と思いまして。

    今日は、無理に付き合わせてしまったようで、すみませんね」

    ニコニコしながら言った。

    「いいえ、私も、こういった会場は初めてで」

    「私たち、トライアルでもう、お迎えする子決めてきました」

    「まだ、飼うかはわかりませんが、慣れさせてかららしいんです」

    「最初は、ペットショップに行ったんですが、だったら、保護猫と保護犬がいいよねってことで、決めたの、ね?」

    旦那さんとうなずきながら話す奥さん。

    「そうなんですか、いいですね」真琴は答えた。

    でも、私は、人間の子供がほしいな、心の中でつぶやく。

    「じゃ、行きましょうか?」

    車を出してくれて、お宅まで向かった。

    旦那さんのセンスがわかる素晴らしい邸宅だった。

    こんなところで飼ってもらえる犬や猫は幸せだろうな。真琴は思った。

    楽しく食事をしながら、久しぶりに4人大声で笑って、おしゃべりが止まらなかった。

    あっと言う間の時間が過ぎた。

    「じゃ、また、是非、遊びにきてくださいね、その時は、ワンちゃんと猫ちゃんがいるかもだけど、アレルギーとか大丈夫だったかしら?」

    「はい、大丈夫です。私も、子供の頃、猫を飼っていましたから」

    「そう、それなら良かった」

    駅まで、車で送ってくれて、二人で笑顔で見えなくなるまで手を振ってくれた。

    帰りの電車の中、「感じの良いご夫婦だね」と言うと、

    「うん、昔から知ってはいたけれど、あちらも仕事で忙しかったし、子供がいない事とか、知らなかったの。で、今回の譲渡会の話をこの間ちょっと聞いたから」

    本当は、奥さんは子供がほしくない主義ではなかったけれど、割り切って英会話教室を開いてみたらしいが、少子化じゃなくて、子供を育てたことがないので、なかなか難しくなる年齢の子供と接するのが少々疲れてきてしまったらしい。

    本当の理由は真琴には言わなかった。

    恵登は、真琴が考えているよりも、ずっと繊細な人だった。

    恵登は少しでも、真琴が明るさを取り戻してほしいし、思いつめているので、保護猫でもほしいと言ったらそれでもいいと思った。

    真琴の性格からして、それはないだろうな、というのもわかった。

    インスタみると、結構動物の写真アップしている人はみかける。

    会社でも、子供みたいに可愛がっている人がいるけど、あんまり、そういうのは好きじゃないほうだった。真琴

    でも、猫は嫌いじゃない。

    「うちも、猫飼う?」

    「え?いいの?真琴」

    「旅行とか行かないけど、行きづらくなるし、世話とかやる?」

    「うん、譲渡会いってみようか?」

    「わかった」

    真琴の弟の方は、まだ、当分子供はいらないらしい。

    奥さんが、仕事を辞める気はないみたいだ。

    それを聞いて、前ならホッとしたはずなのに、どこか他人事な真琴。

    どっちでもいいや。そんな事、自分は自分だしね。心の中でつぶやく真琴

    真琴と恵登も猫を迎えいれ、名前はピケ。オス猫の三毛で大変賢い猫だった。

    何度も、トライアルを重ね、やっと審査に通り親として認められ、ピケの親になる資格を得た二人。

    やはり、子猫から飼うのは大変だけど、可愛くて仕方がなかった。

    ミルク飲む姿なんか天使だなぁ。気が付くと、ピケの存在だらけの家になった。

    二人にとって、ピケがいるのが当たり前で、あんなにこだわっていた子供の事も真琴の中から薄れていった。

    けれども、不妊治療を休んでいた真琴は気が付いた。

    「あれ?生理いつだったけ?」

    妊娠検査薬をドラッグストアに買いに行く。

    まさかね、と思い反応を見る。

    「ん?え?」

    いやいや、これは、何かの間違いだわ。

    恵登をぬか喜びさせてはいけないし、自分も。

    産婦人科に行ってからで、恵登には言わない。

    違ったら、がっかりさせるから。

    違っても、ショックは受けない。

    これまで、何度も何度も、不妊治療でショックを受けてきた真琴。

    それに、ピケが待っててくれる。

    大丈夫よ、私は。

    名前を呼ばれた。

    いつもの、不妊治療外来ではないので、ちょっと緊張。

    一応、妊娠検査薬を持参した。

    産婦人科医が処置室に入り、黙って出てゆく。

    再び、診察室に呼ばれる。真琴。

    緊張するが、覚悟はできてる。

    何て言われても動じないよ。私はもう。

    「妊娠、24週目です」

    耳を疑った。

    「え?」そうなの?

    妊娠検査薬が信用できていなかたので、まだ、そういわれても半信半疑。

    「はい、おめでとうございます」

    「あ、はい、ありがとうございます。」

    「先生、私、ずっと、不妊治療をしていました。でも、妊娠しなくて」

    「はい、そちらの先生にはカルテでお伝えしておきます」
    淡々と終えた。

    「はい、失礼します」

    診察室からでた。

    呆然とした。

    心の中で、どうしよう、どうしよう。

    え?でもなんで?

    あんなにできなかったのに。喜んでいるんだけどさ、だけど。

    次回の予約を取り家路に向かう真琴。

    恵登に伝えなきゃならない事はわかっているけれど、どうしても、顔を見ていいたかった。

    これまで、私を支えてきてくれた恵登。どんな顔するかな?

    家に帰ると恵登はまだ、帰宅してない。

    ピケが出迎えた。

    いつものスリスリの儀式。

    ピケには報告しなきゃね、と思い

    「聞いて、私ね、お母さんになれたよ!」なんの事ですか?というような顔されて、私はピケの頭をなでながら、「恵登、なんていうかな?ピケ」

    恵登から連絡があり、今日は急遽会社の人と会食らしく、遅かった。

    明日の朝打ち明けよう。

    その日は、嬉しさというよりも、不思議さに包まれながら眠りについた。

    「おはよう、恵登」

    「おはよ」

    「恵登、私ね、今日からビールとコーヒーと紅茶を飲まないの」

    「また、なんで?」

    「ね、ピケ」

    「何?どこか具合でも悪いの?」

    ジャーンと言わんばかりに妊娠検査薬と母子手帳を見せた。

    何の事かわからない恵登だった。

    「だよ!」

    「恵登!」

    「ほんとなの?」

    「ピケのおかげかな?」

    「うん、かもね」

    「ピケ、ありがとう、ありがとうな」

    恵登は何度も何度もピケに礼を言った。

    「そうか、それなら、安定期に入るまで大事にしてね。仕事は続けるの?」

    「休職できるならしたいけれど」

    真琴は答えた。

    すると、すこし、考えこんだ恵登が口を開いた。

    いつもは、大概の事は聞き入れる恵登だったが、今回は違った。

    「真琴、願い事はひとつだよ」

    「年齢も年齢だから、一応、高齢出産になる」

    「僕は、仕事をつづけながらは反対なんだ」

    「満員電車にのるなんて、君には無理だから」

    「仕事は、正社員止めなくても、産休を取って戻っても、自分のポジションなくなるかもしれない。でも、それだけのことだよ。でも、あんなに子供の事、思っていたんじゃない?無事に生まれてもらいたいよ。僕は。だから、できたら仕事は辞めてくれないか?」

    「君だけの子供じゃないんだ。だから」

    「正直、僕は、子供は居なくてもいいと思っていて、今だからいうけど、でも、産まれるなら言わせてもらうよ、考えておいて、真琴」

    「仕事の事は、産まれてから。無事に産まれてからね」

    あまりに、真剣な顔で言われたので、「うん、わかった、考える」とだけ答えた。

    不妊治療を続けて14年、恵登の言うとおりだった。

    子供のそばにいてあげたいし、遊んであげたいし、仕事は何とか取り戻せるけれど、子供は授かれないかもしれない。

    何かあったら、一生後悔するかもしれない。

    これは、神様が私に与えてくれたチャンスだったんだ。

    だから、このチャンスを絶対手放してはいけないし、何かあったら自分の責任だと思った。

    恵登は言った「子供が産まれても、ピケの事を大事にしてね、真琴」

    「もちろん」

    「コウノトリみたいなもんだもんな、ピケ」

    ピケは何の事ですか?という顔をして恵登をじっとみてゴロゴロ喉を鳴らしていた。
    安定期に入るまで、互いの両親にも誰にも言わなかった。
    もしもの時、がっかりさせたくなかったから。
    恵登と2人だけで共有した。

    月日が経ち、出産の日が来た。
    自分でタクシーを呼んで病院まで。
    後から恵登がかけつけてくれたが、とにかく子宮口がなかなか開くまで、もう、結構です!と言いたくなるような痛み。
    骨盤が割れそう。

    無事に生まれるか?とか考えてる余裕なんかなかった。
    でも、ココロの中では、どうか無事で、と思う。

    「お母さん、あとちょっと!呼吸合わせて〜
    はい、もう出るよ〜
    助産師さんの誘導で、2583グラムの小さい赤ちゃんだったが、何とか母子ともに健康で無事お産が済んだ。
    女の子だ。

    出産前の羊水検査はしなかった。
    産むって決めていたから。

    この日ほど、神様に感謝した日はないな。
    これまでの、不妊治療の辛さなんか吹っ飛んだ。
    有り難うね。
    私が、お母さん、今日から宜しくね。

    恵登も心配疲れしたようだった。
    「お疲れ様、真琴」
    お互いね。有り難う恵登。
    私を母親にしてくれて。
    不妊治療辛かったね。お互い頑張った。

    「これで、ふたりぼっちじゃないよ、さんにんぼっちになったね、俺たち」 
     恵登が言う。

    3にんぼっちじゃないよ。だって、ピケもいるじゃない?

    「あ、そっか」

    「そうよ」

    「ピケ混ぜると4人ぼっちよ」

    「そうだった」

    ごめんね、ピケ。

    ピケは、新しい家族にいつも寄り添い、二人よりもいつも赤ちゃんにぴったりくっついていた。

    子供の名前を二人で決めた。

    葵と名づけた。

    自分が、この子の親だと思っているのか、いつも、顔をのぞき込んだり、様子を伺っていた。

    いずれ、葵が成長すると共に二人は親友となった。

    ピケが年齢を増し、病気になり動物病院に入院した。その時、心配し、葵は3日間食事をとらなかった。

    二人が食事をすすめるも、ピケがかえってくるまで、食べないという。

    動物病院には毎日通い、ピケを励まし続けた。葵の願いもかない、回復したピケが自宅に帰る。

    葵が思い切りピケを抱きしめる。「もう、どこにもいかないよ」

    ピケは昔のようには動かないけれど、親友をじっとみつめた。

    「ごはん、食べなさい」葵。真琴が言う。

    「ピケ、なんとかいってくれよ、食べないんだよ。」

    すると、ピケにもエサをあげ、食べはじめるのをみると、

    「葵もご飯たべる」と言い始めた。

    以前に、伺った建築事務所のあのご夫婦には、子供の事をなんて言おうか?

    旦那さんはともかくとして、女性はわからないから、旦那さんに伝えてもらおうか?

    恵登は少し悩んだが、ラインでその事を伝えてくれた。

    すると、奥さんからお子さんを連れて遊びに来てください。との連絡が入りホッとした二人。

    表面上は、子供いらないとは言っても、人の真意なんてわからないものだから、だからと言って、知らせないわけにもいかないし。

    こういう事ってむずかしいな。

    散々、不妊治療で悩んだ二人だから、人への気遣いも忘れてはならなかった。

    奥さんがそういう人で良かった。

    具体的に遊びに来てください。と言われるまで、遊びには行かないけれど旦那さんからまた、連絡が来ることになっていた。

    二人とも何日も食事もとらない葵を心配していたが、安堵の表情を見せる。

    #創作大賞2026 #エッセイ部門

     
     
    noteを初めて、約1年が経ちました。 ストーリーの中に登場する人物、内容は架空であるもの、性別、年齢を超えて、その中にもしかすると自分の化身だっだりすることもあるかもしれません。 無理にフォロー、スキをして頂かなくても、全く気にならないタイプです。 考え方人それぞれ。

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