
トン、トン...
暗がりの中、そっと肩を触れられて気がついた。
トン、トン...
...何をしていたんだっけ?
伏せていた顔を上げて、思わず目を細めた。
白い黄色とオレンジ色の残像が、目の奥で瞬いている。
眩しい、けど、あたたかい...?
それは、燭台に灯る蝋燭だった。
小さな受け皿の上で、夕焼けの光が音もなく灯って揺れている。
魅惑的に蝋をとかして私の輪郭を温めながら、ふと誰かそこにいるのを感じた。
よく見ると中性的で綺麗な手が燭台を支えている。
不思議に影が濃くなって、顔はよく見えなかった。
眩しさに目が慣れてきた頃、その人は静かに言った。
これをあげる
温かくも冷たくもない声でそう言って、にこっと笑った気配がした。
よく見えないその顔が、蝋燭の影に揺れながら大きく膨らんでも、怖くはない。
ぼうっと見つめている私の様子をじっと待ってくれているのだと気づいて、慌てて声を出した。
「あなた、誰...?
知ってる人……?」
心の声をなんとか言語化して問いかけると、その人は人差し指を唇にあてながら、蝋燭を床に置いてくれた。
不思議な言葉と共に——...
少しだけ、私のことが気になるくらいの灯りを残しておく
離れていく影を無意識で追いかけながら、鎖骨の下に広がる感触に対応できていない。
熱に照らし出された私の足は暗闇に根を張っていたけれど、それよりも、その人の残した言葉の方が胸に残った。
眠る意識の隙間から何かが動きだしている。
まだ気づかないまま反応する心に、耳を澄ました。
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