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青い雨【#シロクマ文芸部】

    三上留実

     青い雨が降れば、虹色の水たまりは完成するんだ。
    お菓子のおうちの前に、トランペットの形をしたおもちゃ箱があるんだって。
    みんな中に入れるわけではないよ。誰でも子ども達に好かれる訳じゃないから。

     じゃあ誰が好いてもらえるかって?
    予測できないこと、ぽんと飛び出ちゃうといいかな。そうそう、たとえば気分屋なこびと達のような。

     おもちゃ箱に耳を近づけてみようよ。
    ひそひそ声がきこえてくる。
    「青色のシロップをかけちゃおうよ」
    「だめだ。あれは逃げ出したウサギたちを捕まえるためのものだから。使っちゃだめだ」
    「じゃあチョコレートだ」
    「青色のチョコレートなんて見たことある?ぼくはないよ」
     こんなわけなので、いつまで経っても話はまとまらないのです。

     ある日、お菓子のおうちの屋根に、大きな白い花が咲きました。
    こびと達も、おもちゃ箱のおもちゃ達もみんな、見とれています。
    でも、空はずうっとずっとかんかん照り。このままじゃ花は枯れてしまいます。

     「どうしよう、かわいそうだよ。水をあげないと」
     みんなお花をどうしても助けたかったのです。
    「でも、あんなに高い場所にある大きな花、水なんてかけられるのかい?」
    「雨を待つしかないんだ」

     それでも何日経とうが、雨は降りそうにありません。
    花びらが少しずつしぼんでいき、緑の葉が茶色くなっていくのがこびと達にも分かりました。
    どうしよう。どうしよう。
    こびと達の目に、涙が浮かんでいきました。
    でも小さなこびと達には、高いところにあるあんな大きな花を助けてあげることはできません。
    ついには、花はうなだれてしまいました。

     そのとき、
    わーん。
    一人のこびとが泣き出します。
    それにつられ、
    わーん。わーん。
    あちらこちらからこびと達の泣く声が聞こえ出しました。
    わーん。わーん。わーん。
    泣けば泣くほど、こびと達の声は大きくなります。そして、足元にこびと達の涙のみずうみができ始めました。
    わーん。わーん。わーん。
    こびと達の大きな泣く声で、おもちゃ箱全体が揺れ始めます。

     そのとき、
    ぶおーん。ぶおーん。
    なんだか不思議な音が響きはじめました。
    そうそうおもちゃ箱はトランペットの形をしていましたから、こびと達が大きな声で泣けば泣くほど振動して共鳴をはじめるのです。

     わーん。わーん。
    ぶおーん。ぶおーん。
    それはドレミファソラシドのソの音だったか、ラの音だったか分かりませんが、とにかくそれくらいの高さの音が鳴ったのです。
    こびと達はもう驚きで腰を抜かして、涙も止まりました。
    なぜなら共鳴の勢いで、こびと達の流した涙がトランペットの口から勢いよく飛び出していったからです。

     飛び出した涙は青い雨になって、大きな花に降り注ぎました。
    雨は花にはもちろん、葉っぱにもかかりました。
    すると花はとたんに元気になって、その頭をもたげました。
    花は嬉しくなってダンスを踊りはじめます。そしてその大きな葉っぱを上げたり下ろしたりしました。
    その葉が空を掻くと、青色は染みこんで跡になったのです。
    本当に大きな、歓びの騒ぎでした。
    こびと達含め、おもちゃ箱からたくさんのおもちゃ達が出てきました。
    その騒ぎにまぎれて、ウサギたちが一斉に駆けていきます。
    「ああ、ウサギたち逃げてっちゃう」
    「いいよ今日くらいは」
     長い耳を翼のように広げて、白い鳥になったウサギたちは、虹色になった水たまりの空をどこまでも飛んでいきました。

     そう、ここは水たまりの中の世界。
    気づいた誰もが嬉しそうに見あげる虹、それが映りこんだ、そう、あなたが今とびこえようとしたその水たまりの中にも、こんなすてきな世界が広がっているのです。



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